(平成24年度~平成26年度)の評価

第3次中期事業計画(平成24年度~平成26年度)の評価
和歌山県信用保証協会は、公的な「保証機関」として、中小企業者・小規模事業者の資金調達の円滑化を図り、中小企業者・
小規模事業者の健全な育成と地域経済の発展のために尽力してきました。
平成24年度から26年度までの3ヵ年間の信用保証協会の実績についての評価は以下の通りです。尚、実施評価に当たりま
しては、辻本圭三弁護士、山中盛義公認会計士・税理士により構成される「外部評価委員会」の意見・アドバイスを踏まえ作成い
たしましたので、ここに公表いたします。
1.地域の動向及び信用保証協会の実績
(1)地域経済及び中小企業の動向
和歌山県の経済動向は、平成24年度以降は、平成23年台風12号災害からの復興需要もあって、雇用情勢は緩やか
ながら持ち直しの状況にあり、平成25年度も、消費税率引上げに伴う駆け込み需要およびその反動がみられるものの、
緩やかに持ち直しつつありました。
平成26年度は、個人消費は弱い動きが続いておりますが、生産活動は緩やかに回復しつつあり、一部に弱さが見られ
るものの緩やかに持ち直しつつあります。
なお、先行きについては、各種政策効果などを背景に県内経済が回復に向かうことが期待されます。ただし、原材料価
格の上昇や海外景気の下振れなどにより県内景気が下押しされるリスクがあるなど、これらの動向を注視する必要があり
ます。
(2)中小企業向け融資の動向
県下の主要金融機関別貸出残高の推移では、平成27年3月末は前年同月比で 101.0%と若干上回りましたが、26年度
中は期首の残高を基点としてほぼ横ばい推移で、全般的に資金需要は低調でありました。
(和歌山財務事務所統計数値 平
成27年3月末参照)
中小企業向け貸出のうち信用保証協会の推移については、景気対応緊急保証の反動等により、全国的に保証残高は減少
傾向にあり、当協会においても平成24年度から26年度にかけて減少傾向となり、保証債務残高は平成26年度末には
2,404億円となっています。
(3)和歌山県内中小企業の資金繰り状況
県内における企業倒産は、景気回復の広がりや中小企業金融円滑化法が終了した中で、経営支援のための政策パッケー
ジに基づく経営支援・再生支援の充実・強化などにより、倒産件数は前年比 79.3%、金額では前年比 83.5%と減少しまし
た。ただし、原材料価格の上昇、労働者不足、消費税増税後の反動減といった課題への懸念は広がっており、引続き中小
企業等を取巻く諸情勢の動向を注視していく必要があります。
(4)和歌山県内中小企業の設備投資動向
県内における設備投資動向については、全産業では前年を下回る見込みとなっています。産業別でも製造業、非製造業
ともに前年を下回る見込みとなっています。
(5)和歌山県内の雇用情勢
平成 27 年 3 月の新規求人倍率は 1.69 倍と前年を上回り、有効求人倍率は 0.99 倍と年度当初からほぼ横ばいで推移して
いることより、県内の雇用情勢は、持ち直しつつあります。
2.中期業務運営方針に対する評価
(1)利用企業者数の増加および政策保証等保証利用の推進
①各部署横断的な小委員会を発足させ、利用企業者数の増加策を検討し、必要な事から順次実施することとしました。
②平成25年度より金融機関感謝店舗記念式典を復活し、ホームページやマンスリーレポートの充実を行い、各種提携保
証制度のリーフレットを制作するなど広報を強化しました。
保証制度の創設や見直しを実施しました。(創設した保証制度は、「当貸プライム」(提携保証)、「小規模企業者カード
ローン」、「連携融資保証」(提携保証)、「MAX200」)
③金融機関向け説明会の実施や訪問により、政策保証制度や提携保証制度ならびに金融機関感謝店舗選考基準などの周知
活動を積極的に行いました。
④平成26年4月より事前相談システムを稼働させ、申込み相談の進捗状態の一元管理を行い承諾率の向上に努めました。
(2)経営支援・再生支援の積極的な取組み
①平成25年度より、毎年度当初に主要金融機関本部、再生支援協議会との経営支援・再生支援を必要とする「大口保証
付案件」の支援方針について目線合わせを行う連携会議を開始しました。
②地域金融機関に「企業概要」の作成を要請し、同書に基づき企業内容、支援方針等の情報共有に努めました。また、平
成25年度より、経営課題を抱える企業へ無料で中小企業診断士等専門家を派遣する「わかやま連携サポート」を、さ
らに同年度より、国の「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」利用先に対し自己負担部分への補助金制度を
創設し、積極的に同事業を推進するとともに、同事業の金融調整の場として当協会が事務局を務める「経営サポート会
議」の活用をいただきました。
③平成24年度は各金融機関に対し、条件変更先の経営改善計画策定状況など複数の質問項目につき回答をいただき、そ
の結果をまとめるとともに主要金融機関本部と情報共有に努めました。また平成25年度と26年度は条件変更先に対
して「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」など各種経営支援策の広報物及び経営改善計画策定に係るアン
ケートを実施し、前向きな回答があった企業に職員が訪問して、各種経営支援策の推進に努めました。
④平成25年度、上記した無料の専門家派遣の後、
「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」の利用につなげる方
策が、中小企業庁等に「和歌山方式」と呼ばれ、評価いただき、その結果、平成26年度、和歌山が中小企業再生支援
全国本部の選定した同事業のモデル地域(全国5地域)のひとつに選ばれ、TKC 全国会や地域金融機関と連携して推進した
結果、同事業の利用件数が前年度と比較して飛躍的に増加しました。
(3)関係機関と連携強化および顧客サービスの充実
①毎年 11 月に信用保証書を発行した顧客に、「中小企業者の生の声を聞く」をコンセプトとしたアンケートを実施。結果
や意見については集計の後に協会のホームページへ掲載しました。内部においても回覧し周知を図りました。貴重な意
見等を踏まえ各部門で事務改善に努めました。
②保証部門では、金融機関に対して定期的な訪問を行い相談・申込に関する情報交換、および各種保証制度のリーフレッ
トを配布して連携の強化に努めました。
③平成25年度から和歌山県中小企業診断士協会と連携した「経営相談会」を、また複数の創業支援機関の後援をあおぎ、
「創業支援セミナー」を開催しています。各創業支援機関の会合に積極的に参加し連携強化に努めました。特に、日本
政策金融公庫国民生活事業とは、平成26年度に創業に係る情報交換会議を実施し、平成27年度に創業支援等に係る
「業務連携・協力に関する覚書」を締結する礎を築きました。平成26年度からは、平日営業時間内では相談が困難な
経営者や創業予定者向けに「休日・夜間相談窓口」を設置しました。
(4)コンプライアンス態勢の一層の充実およびリスク管理態勢の定着
①反社会的勢力等の不正利用の防止、苦情申出に対する再発防止など、コンプライアンス委員会において積極的な審議を
行いました。
②「反社情報データ」ならびに「個別データ特記情報」の事務対応マニュアルを改正し、電算システムを利用して反社情
報データと顧客情報の照合を開始しました。
③コンプライアンス研修では、県警察本部の担当官による講演を受け、DVD で反社勢力からの不当要求に対する対処法等の
講習を行いました。また、若手職員を対象にコンプライアンスマニュアルの熟読講習会も実施しました。
④コンプライアンス態勢の強化を図るため、コンプライアンス統括室の創設を決定しました。(平成27年4月1日創設)
⑤年度毎の内部監査実施計画に基づき、全部署対象に内部監査を実施しました。また引き続き「近畿ブロック内部監査担
当者会議」に参加し、内部監査に係る問題点等の意見交換を行い、監査手法等のレベルアップに努めました。
(5)システム対応等
①保証申込から求償権までの書類管理については、ファイリングシステムの導入により個人情報の管理強化に努めました。
②現行の基幹システムとの互換性などの検証を行い、次期基幹システムを「ORBIT」と決定しました。
●外部評価委員会の意見
・県内経済が緩やかながら回復しつつある中、中小企業者が利用し易い保証制度の創設や、既存の保証制度見直しを実施す
る等積極的に中小企業者の資金需要に対応し、中小企業金融の円滑化に貢献したと評価できます。
・経営支援・再生支援については、専門部署において、中小企業金融円滑化法が終了した中で、金融機関や再生支援協議会
等との連携を強化し、支援体制の充実を図り、事故の調整に努めたことにより、代位弁済を抑制できたことは評価できま
す。
・利用企業者数の増加策を検討する各部署横断的な小委員会を発足させ、必要な事から順次実施し、保証付き融資の付加価
値向上を目指して取り組んでいることは評価できます。また、次期基幹システム「ORBIT」への移行により、更なる事務効
率化や利便性の向上等を期待します。なお、個人情報の漏洩等のリスクに対しては、万全の態勢で臨んでいただきたいと
思います。
・コンプライアンスに関する事項については、コンプライアンス・プログラムに基づいた活動が行われ、特に研修・啓蒙活
動についても、外部研修や内部研修が定期的に実施されており、役職員の意識の向上に努めておられます。今後もコンプ
ライアンスの重要性を認識し、継続的に体制の充実、強化を図られることを期待します。
・信用保証協会を巡る諸情勢は年々大きく変化しており、今後の協会経営は厳しさを増すものと思われることから、事業計
画の達成に向け重点課題の着実な遂行に取り組まれることを望みます。