活動報告書 以下の通り、研究活動を行いましたので、報告致します。 会 名 日 時 場 所 概 要 早稲田大学里親研究会 (菅井 惇平=記録) 5 月定例会 2015 年 5月9日(土)13 時〜16 時 30 分 早稲田大学 22 号館 510 教室+508 教室(保育室) (参加者)計 14名 Ⅰ.話題提供者:徳永祥子さん(国立武蔵野学院) 「社会的養護の子どもの記録保存と開示」についてライフストーリーワークの視点から 話題提供いただいた。 社会的養護の子どもは誰しも当然知り得る成育歴や家族史を知らない。 例えば、両親を知らない子どもは将来自分がどんな大人になるかの指標がない。遺伝 性の病気などの情報も知り得ない。 故に、ライフストーリーワークとは、実親の名前、出生、出生状況、体重、名前の由 来、実親の職、国籍、実親と暮らしていない”理由” などのどんな子でも知りたいと 思う事を専門職などの支援者が「伝える」事で子どもの「知る権利」を保護するものであ る。しかし、「伝える」だけの情報がない、里子として受け入れても貰える情報は A4 の紙 1−2 枚というのも現状である。 また、日本とは違い英国では家系図への興味関心が高く、ナショナルアーカイブスに 行けば自分の家系図が何代も前まで見られる等、記録=情報を歴史的財産と捉え永く 保管している。「知る」事により85%の社会的養護の子どもがアイデンティティの補強に なったと答え、また、95%の養子が実親に会う事で養親との関係が深まったと答えた。 「知る権利」に関する問題点として、当人の情報から両親、その先のつながりをどの範 囲までを開示するかという「第三者情報」の範囲が挙げられている。 日本の場合はこれに習い、情報を保管するための法整備と専門職の支援を備える事 が必要と語られた。 Ⅱ.話題提供者:丸山 雅子さん(里親) 「約40年の里親体験から」と題して話題提供いただいた。 雅子さんは今まで里親として40年、20数人の里子を育てあげているが、元々里親に なるつもりはなかったという。 あるとき川口で保育園をしていた縁から父子家庭の子どもを預かるようになった。最 初の内は父親が会いに来ていたのだが、数日たって消えてしまい最終的に里子として 預かる事になった。これが里親としての始まりである。 預かった里子さんのエピソードとして、1か月くらい経つと、雅子さんをママと呼び始め たという。なにより夜泣きがひどかったといい、また、どこに行っても恐怖を感じ、優しく する男の人はみんなパパだと思うなど難しいことも多かったという。 そんな始まりではあったが、20数人育て、やんちゃだった子が教頭先生になった例も あるなどの喜びもあり、現在も里親として過ごしている。 児童相談所を知ったのは後々になってからだと言うが、あまり役にはたたなかったとお っしゃられた。 その中でも子どもたちと接する際に意識している点として、食事はおいしいもの、見た 目は他と変わらぬものをという点を強調された。 Ⅲ.話題提供者:丸山 智也さん(里親の実子、ファミリーホーム運営者) 「ひかりの子ホームの現状」と題してファミリーホームの経験から話題提供いただい た。 智也さんは雅子さんの三男として、里子の弟、妹と接しながら育てられた。ファミリーホ ームを始めようとしたきっかけとして、実家である雅子さんが養育里親の上限である6人 を超えて7、8人育てていた事、また、雅子さんの入退院があった事により、仕事を辞め て里親として手伝いに入ったことから始まった。 1 その後、ファミリーホームを始めようとしていた折に、埼玉県がファミリーホームをしてく れる人を募集していたことから補助金も得て、埼玉県で初のファミリーホームとしてやっ ていくことになった。最初の内は入居する里子も少なく苦しい経済状況であったという が現在は順調とのこと。 子どもに接する上で大事な事として、その子の最善を考える、自信が持てるように頑 張らせてやり通させて自分を認められるように、一つのことを続けさせる事だとおっしゃ られた。父母がいなくとも、なりたい題材を持っている子なら、将来像を極められるとい う。 また、地域や周りの環境を感じさせる事は子どもだけでなく周りにもプラスになるとお っしゃられた。 Ⅳ.話題提供者:松本 素子さん(神奈川県里親) 里親界の現状の問題点と今後の課題について話題提供いただいた。 現在、里親間がバラバラであるということ。里親が子どもを選びたいという意見がある こと。行政は仕事として関わり、使命感があまりないということ。社会的に子どもや若者 が大切にされていないということ。 今後は、里親が子どもの代弁者になるということ。育てる側のライフスタイルと子どもの 問題の調整が必要ということ、乳幼児期から個人的関係を結ぶ事が良いということ。 日本では法の壁があり、教育がおろそかであり意識を根付かせるべきということ。をおっ しゃられた。 コメント (菅井) 今回初めて、里親経験者の方々の話を聞く機会となり、今までの意識が瓦解するほ どのお話もあり。考えさせられる事ばかりで勉強になりました。 また、日本と海外の差についてもなるほどと感じ、これについては世論の喚起し、日 本人の感性まで変えていくレベルの事が必要だと思いました。 出 席 者 ・横山 絵麻 (早稲田大学 e スクール・川名研) (順不同) ・藤田由里子 (早稲田大学 e スクール・川名研) ・一瀬 佳子 (早稲田大学 e スクール・川名研) ・宮崎 理歌 (早稲田大学 e スクール・川名研) ・菅井 惇平 (早稲田大学・川名研) ・石井 敦 (里親) ・丸山 雅子 (里親) ・丸山 智也 (里親・ファミリーホーム) ・川名はつ子(早稲田大学 里親研究会顧問) ・徳永 祥子(国立武蔵野学院) ・中川 友生(早稲田大学川名研修士2年) ・平田 修三(早稲田大学) ・石井佐智子(埼玉県里親) ・松本 素子(神奈川県里親) <次回の研究会ご案内> ・ 日時:2015 年 6 月 6 日(土)13 時~16 時 30 分 ・ 場所:早稲田大学22号館 510 教室+508 教室(保育室) http://www.waseda.jp/jp/campus/waseda.html ・話題提供者 ① マーフィー 京子さん・レイナさん :「新しい授かりかた -実親の親 族と交流している養親子― 」 ② 竹中 勝美さん(里親) :「東京都社会的養護推進計画の問題点」 話題提供をもとに、参加者全員でディスカッションしたいと考えています。 2
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