31号(15年5月11日) - いきいき福祉ネットワークセンター

第 31 号
いきいき通信
2015 年
5 月 11 日発行
第 31 号
いきいき通信
2015 年
2015 年 1 月 30 日(金)
、
「第 7 回高次脳機能障害者支援セミナー」が目黒区総合庁舎大会議室にて開催されました。
今回は社会学者であり、星槎大学副学長の細田満和子先生を講師に迎え、
「高次脳機能障害者の障害受容について」をテーマ
に、約 2 時間にわたっての講演が行われました。参加者は 90 名にのぼり、医療・福祉の関係者が約 7 割、3 割は当事者・
いき いき 通 信
ご家族・一般の方でした。参加者の感想として「社会学の視点からの障害受容の話を聞けて勉強になった」
「患者会について
5 月 11 日発行
第 31 号/2015 年 5 月 11 日発行
発行所
特定非営利活動法人
いきいき福祉ネットワークセンター
〒152-0003
東京都目黒区碑文谷 5-12-1-3 階
TEL 03-6808-8575
FAX 03-6808-8576
Mail [email protected]
HP http://www.ikiikifukushi.jp/
知ることができた、参加したいと思った」「フォトボイスは自分を認めていくのに役立つと思う」「支える人がいることで新
しい自分を感じることができるとい
う話が印象に残った」といった、様
々な意見が寄せられました。
今年度のいきいき通信のテーマは、「地域コミュニティ」です。いきいき福祉ネットワークセンターの理念は、
“福祉制
(文・森田)
度のはざまにある方々を支援すること”です。障害やご病気のある方や、法律で守られていない方も、一緒に住みやすい
地域づくりを目指しています。年3回のいきいき通信では、介護、防災、美術の視点から、
「障害があってもなくても住み
写真右:講師の細田先生
写真左:当日の講演風景
やすい地域コミュニティ作り」をお伝えしていきたいと思います。
厚生労働省が2025年目途に推進している国の方針は、
「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期
SAN フラワー見守りサービス
“みんなの見守
みんなの見守りで「安心できる毎日」を実現
見守りで「安心できる毎日」を実現”
りで「安心できる毎日」を実現”
まで続けることができるよう、医療・介護・福祉が一体的に提供される仕組み作り」
、つまりは「地域包括ケアシステム」
NEWS
認知症の高齢者は10年後には730万人になると推計され(※1)
、安全確保の一環として、地域での見守り
対策が急務となりました。このような背景から、加藤電機株式会社より地域参加型の見守りシテムを構築し、企業、自治体、
見守り隊を結びつける日本で初めての見守りサービスが 2015 年 4 月 27 日より開始されることになりました。GPS を使
用せず、日本で初めての Web(ネット)を利用しているため、マンションや屋内でも使用でき正確な居場所にたどり着く
※1:2014 年度厚生労働省推計
ことができる日本発の検索システム(特許)です。
<SAN サポーター>
SAN フラワーの普及に賛同
し、その活動を支援していた
だける団体企業。
<SAN 見守り隊>
地域ボランティアグループ
で依頼時には SAN レーダー
より捜索を行い、いち早く駆
けつける団体。
お問い合わせ先:加藤電機株式会社 セキュリティラウンジお客様サポートセンター」
TEL:0569 -26-0088 営業時間:月~金 10:00~17:00(祝日、年末年始などを除く)
の実現です。要介護者にとっては、そういった手厚い支援体制が検討されつつありますが、一方で介護者のケアに至っては
まだまだ未整備な部分が大きいのが実情ではないでしょうか?
介護者が孤立しないために、地域でどんな支え合いの形を
作っていけばよいか、今号は『介護と地域コミュニティ』をテーマにお届けします。
介護負担について
(Zarit介護負担感尺度
(Zarit介護負担感尺度)
介護負担感尺度)
●介護者が孤立
介護者が孤立するとどうなる?
者が孤立するとどうなる?
主介護者の約 8 割が配偶者、副介護者の約半数は子供でしたが、実際
に介護へ参加している副介護者は約3割にとどまっており、主介護者
20~29
点, (8人)
4%
32% 20%
50~59
点, (5人)
16%
が日常的な協力を得られずに介護生活を送っていることが分かりま
28%
した。また、介護者のうち4割の方が介護負担を大きく感じており
(zarit 介護負担感尺度 88 点中 40 点以上)
、神経症・うつ病が疑わ
◎少しずつではありますが、
「地域で協力し合う」という意識が、企業からも高まってきています。当センターでも、
「GPS
では○○方面にいるみたいだけど、今仕事中ですぐには探しに行けなくて困っている」といった相談も聞かれています。す
ぐには難しいことかもしれませんが、地域の中の少しの関わり方次第で、“誰でも住みやすい地域”を実現することが出来
るのではないかと思います。
60~点,
(1人)
東京都若年性認知症支援モデル事業の調査報告(2012 年度)では、
40~49
点, (4人)
30~39
点, (7人)
れる対象者(SDS40 点以上)は8割近くにのぼるという結果もみら
図 1. n=25
Zarit 介護負担感尺度は、全 22 項目について 0~4 段階で
自己評価を行う。(0→88 点=負担感が小さい→大きい)
れました。
(図 1・2 参照)
。
●介護者も「住み慣れた地域で自分らしい暮らし」を
介護者も「住み慣れた地域で自分らしい暮らし」を
上記結果より、長期的な介護生活には本人のみならずご家族へのサ
新規 NPO 会員のみなさま
抑うつについて
ポートも不可決です。負担軽減のためには、サービスを上手に利用し
*会員とは*
て介護の比重が一人に偏りすぎないこと、定期的に相談をしながら不
・NPO法人の会員とは、主に賛助会員で構成され、事業活
動を理解して応援して下さる方をいいます。
・当NPO法人の場合、若年性認知症や高次脳機能障害の啓
発活動を応援して下さる方が会員となります。
・施設利用の有無に関わらず、応援することができます。
秋冨幸範様、上田正様、佐藤恵美子様、原敦様、志
村竜応様、黒澤みどり様。どうもありがとうござい
ました。今後ともよろしくお願い致します。
安やストレスを抱え込まないこと、最新の情報を収集すること、同じ
立場の者同士で集う機会を活用すること、などが挙げられます。当セ
4%
24%
ンターでも、ご家族のお悩みを聞きつつ、情報提供等に努めています
BPSD をご存知ですか?
認知症における周
が、介護者自身も仕事や養育、親の介護など日々忙しく、自由な時間
辺症状(行動・心理症状)と言われることです。
*会費とは*
をなかなか作れないという制約がある中で、いつでも気軽に話ができ
軽度から中等度に進行した時によく見られま
・事務局の運営、並びに通信の発行や講座等の啓発活動に使
われます。
【会費】
うつ病,
(1人)
たり情報収集できる場や仲間の存在が身近な地域にあれば、より安心
抑うつ~
うつ病,
(11人)
正常~
神経症,
(6人)
44%
28%
神経症~
抑うつ,
(7人)
す。日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、
・入会金…1,000 円
・年会費…1,000 円
介護負担も大きくなります。そのような症状が
できるのではないかと考えます。また、各地域の拠点と連携をはかり
見られたら、まずは専門家へ相談をしてみてく
つつ、介護者自身も「住み慣れた地域で自分らしい暮らし」に近づい
ださい。
(文:重藤)
ていくことを期待します。
4
1
図 2. n=25
SDS(Self-rating Dpression Scale)は、うつ性評価尺
度であり、介護者自身が評価する尺度。
(23~35 点:正常,
39~59 点:神経症,53~67 点:うつ病)
第 31 号
いきいき通信
2015 年
5 月 11 日発行
第 31 号
いきいき通信
2015 年
5 月 11 日発行
ケアラーズカフェ・リポート
ケアラーズカフェ・リポート
新高円寺駅から徒歩5分程にある「ケアラーズカフェ&
「目黒区高次脳機能障害者家族会」は、2010 年にいきいき福祉ネットワークセンターを利用させて頂いていた 9 家族
「ケアラーズカフェ」とは、介護者(ケアラー)のため
ダイニング アラジン」に行ってきました。長年親しまれ
に地域に開放されたカフェのことです。特定非営利活動法
てきた阿佐ヶ谷の地から移転して1週間、新装オープンし
人介護者サポートネットワークセンター・アラジンが、日
たての店内に入るとスタッフの方が笑顔で出迎えてくれ
で立ち上げました。
当初、私は娘が高次脳機能障害者となり、混乱の中にいました。まだ 20 代だった娘は、アルバイトですらすぐに解雇さ
れてしまい、これから先のことが親子ともに見えなくなっていました。目黒区にいきいき福祉ネットワークセンターという
高次脳機能障害者の支援施設があったことはラッキーでしたが、やはりそこに通っている方達や、ご家族の方とは挨拶程度
本ケアラー連盟と共に行った 2010 年度のケアラー実態
ました。入ってすぐに大きな机があり、一息つきながら食
調査によると、ケアラーの中で孤立感を抱える人の割合は
事やお茶を楽しんだり、介護に関する情報収集をしたり
20%を超えており、その孤立感やストレス、葛藤を軽減
(チラシ類も豊富)
、スタッフや来店者同士で話ができる
するためにケアラーが日常的に、行きたいときにいける場
スペースになっています。来店された方たちは話したいこ
が必要と考えられ、開設されました。
とがたくさんあるので、一般のカフェとは異なり、
「一人
取組み・内容は多種多様—
ひとりに必ず一声かけるように心がけています」と、スタ
の関係で、皆さん自分のことで一杯のご様子で、話しかけられなかったことを覚えています。内心、
(誰かと話してみたい)
という気持ちでした。そんな時、いきいき福祉ネットワークセンターさんから「目黒区にも家族会を作りませんか」と声を
掛けて頂き、後先考えずに「ハイ」と答えてしまいました。それから 4 年が過ぎました。
たった 4 年間ですが、とても変わった自分がいて、ずいぶんの時を過ごしたような気がして
います。高次脳機能障害を持つ娘も嫁ぎ、一児の母となりました。
家族会は隔月に定例会を開いていますが、会員の皆さんが積極的に参加しています。定期的
に参加することで、仲間の報告に一喜一憂したり、わが身に照らし合わせて(ああ、そうか)
と気づかされることも多くあります。また、日々悶々と考えていたことが整理されたり、自分
ケアラーズカフェでは様々な取り組みをしています。毎
ッフの方が話されていたのが印象的でした。福祉サービス
日お店を開いてランチやデザートなどを提供し、一般の方
など利用せずに生活している方もいますが、ケアラーと同
でも気軽に利用できるところ、定期的に自宅を開放して開
じ立場になって、
「地域包括支援センターっていう場所が
催しているところ、ハンドマッサージやアロマを楽しむ会
あるよ」とさりげなく情報提供をすることもあるそうで
などの各種イベントを行っているところもあります。介護
す。介護者と地域の支援機関を緩やかにつなぐ役目も果た
専門職がスタッフやボランティアで常駐していたり、ケア
しているのではと感じられました。
(文:守屋・野々山)
の中でこの障害と向き合う覚悟ができたりします。身内にも理解してもらえない事が、ここで
はスッとわかり合えてしまうのです。一番つらいのは障害を負ったご本人ですが、それを支え
る家族の心が安定していくことは、ご本人にも良い影響を与えることになります。
3区(目黒・大田・品川)合
同家族会にて(2013 年 11 月)
そして、4 年経って思うことは、高次脳機能障害を持つ方がより良く地域で生活していくためには、自ら声を上げていか
ないと世の中は何も変わっていかないということです。「いきいきがあって良かった」といって、すべてお任せでは地域の
仕組みは変わっていきません。市民である自分たちが地域や行政に訴えていかなければならないということです。当事者や
家族が声を出していくことによって、いきいき福祉ネットワークセンターを中心に高次脳機能障害者支援の体制が地域に整
っていくということになります。
ケアラーズカフェ&ダイニング
ラー同士の情報交換だけでなく、専門職が親身になって話
コマーシャルの様ですが、
「まずは家族会に一度参加してみませんか」
。みんなで少しずつ知恵や勇気を出し合って、高次
アラジン
を聞いてくれる場所でもあります。入店前は塞ぎ込んだ表
脳機能障害があっても普通に暮らしていけるような地域にしていきましょう。目黒区の家族会は、定例会、近隣三区合同講
杉並区梅里 2-11-14-渋谷ビル 1F
演会開催、当事者参加型のイベントなど楽しく活動し、その活動を通して当事者や家族が困っている事などを要望としてま
情をしていたケアラーの方々も、話を聞いてもらえたこと
(丸ノ内線・新高円寺駅下車)
とめ、行政に働きかけています。
TEL 03-6317-1634
で表情が晴れやかになってカフェを出られるようです。
目黒区高次脳機能障害者家族会
代表・濵出昌子
◎2012 年の第1号開設から、地域に徐々に増えつつありますが、当初の目標である「行きたい時に行ける場」として毎日開放してい
るところは少ないのが現状です。行政からの資金の補助などもないため、運営面での厳しさもあり、利用される方にとっても「行き
たくても時間が合わない」ことが課題として残っています。
今回、
“自分達にとって住みやすい地域とは?”というテーマで、生活している中で「手伝ってもらって助かった!」
「こ
れは困った」など地域への想いを、いきいき*がくだいへ通所されている森久保昇さんがお話して下さいました。
いきいき*がくだい通所
Co もれび
おれんじ
ケアラーズカフェ&ダイニング
第 2・4 木曜/13 時~16 時
毎月第 4 火曜日
アラジン
ホームページあり
13 時半~16 時半
毎週月~木曜日/12 時~16 時
大山駅
新高円寺駅/ホームページあり
木・々
毎月第 1・3 水曜日
14 時~16 時/保谷駅
ホームページあり
カフェいと
仙人の家
毎週木曜日
毎月第 2・4 月曜日
11 時半~14 時
本所吾妻駅
10 時~16 時/西武柳沢駅
ホームページあり
ホームページあり
森久保昇さん
1.地域の方々に手伝ってもらうと助かることは何ですか?
『歩道橋降りる時さ、上からずっと下まで(自分が降りるのを)待っていてくれたおやじさんがいてさ。ほんとあー(あり
がとう)って思ったな。降りるまで見ていてくれた。やっぱ(見ていてもらえると安心感が)違うもんな。(直接手助け
されるとやりにくいこともあるから)見守られる方がいいな』
2.手伝われて困ったことはありますか?
『あるある。電車降りる時、俺、1テンポ遅れんだよね。そうすると大体、手をさ、持ってくれんだよ。でも(麻痺側は脱
臼しているから)いてえんだよ。一応、すみませんって言うけどさ。俺は(手伝ってもらわなくても)いいと思ってる』
3.地域とのつながり
『商店街の人とか(昔からの顔なじみの人)助けてくれる。“何かあったら連絡しろよ”って言われる。
だから1週間に一度はぷらーっと(商店街に)言って顔を見せてる。そういう関係性があるし、自分
の住んでいるところは元々倒れる前から知ってる人が多いから、引っ越したくないんだよ。そういう
の(地域の人との関係性)は重要だよ。だから(障害を持っていても)もう少し(自分から)話して
(関係性を作って)いった方がいいんだよ。
でも自分から言うのは嫌なんだよね。
(地域の人との関係性を作るのは)時間はかかるよな』
KIMAMA
わたぼうし
ケアラーズカフェ金森
毎月第 3 木曜日
毎週火~土曜日/10 時~16 時
第 1・3 金曜日及び第 2・4 木曜日
13 時~16 時/千歳船橋駅
八王子駅/ホームページあり
13 時~17 時/町田駅/ホームページあり
ホームページあり
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地域の方との関係性を自分から作っていくことで、
「自分にとって住みやすい地域にする」と話してくださった森久保さ
ん。また、手を貸すことだけが支援なのではなく、
“見守る”ということも大切であり、支援とは様々な方法があるとい
うことを改めて実感しました。森久保さん、貴重なお話ありがとうございました。 (文:合木)
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