2015 年 5 月 14 日 第一東京弁護士会 知的所有権法研究部会 恵古 陽一

2015 年 5 月 14 日
第一東京弁護士会
知的所有権法研究部会
恵古
「Tripp Trapp」チェア
陽一
著作権侵害行為差止等請求控訴事件
知財高判 平成 27 年 4 月 14 日(平成 26 年(ネ)第 10063 号)
(原判決:
東地判 平成 26 年 4 月 17 日(平成 25 年(ワ)第 8040 号))
1.事案の概要
本件は、被控訴人の製造・販売する椅子の形態が、控訴人らが製造等する椅子「TRIPP TRAPP」
の形態に酷似しており、(i)控訴人らの著作権等を侵害する、(ii)不正競争行為に当たる、(iii)一般
不法行為に当たるとして、控訴人らが被控訴人製品の製造・販売等の差止め及び破棄、損害賠償、
謝罪広告の掲載を求めたのに対し、すべての請求を棄却した原審の判断を結論において維持しな
がら、その理由付け(特に、応用美術の著作物性)において、原審とは異なる見解をとることを
明らかにしたケースである。
2.事件の概要
(1)当事者
控訴人(原告)
: ピーター・オプスヴィック・エイエス(ノルウェー法人。
「オプスヴィック社」)
ストッケ・エイエス(ノルウェー法人。「ストッケ社」)
被控訴人(被告): 株式会社カトージ(日本法人。各種育児用品、家具の販売等を目的とする
株式会社)
(2)事実の概要
昭和 47 年頃、オプスヴィック社の代表者が幼児用椅子「TRIPP TRAPP」(判決の別紙1及び
別紙3のⅠ参照)
(「控訴人製品」又は「原告製品」
)をデザインしてストッケ社
から発表
その後、ストッケ社が控訴人製品を製造、販売、輸出
昭和 49 年~現在、日本国内で輸入、販売(平成2年度~平成17年度までの間に約37万台)
遅くとも、
平成 18 年 2 月以降、被控訴人が被控訴人製品3を製造、販売
平成 22 年 8 月以降、被控訴人が被控訴人製品4を製造、販売
平成 23 年 1 月以降、被控訴人が被控訴人製品1を製造、販売(平成 25 年 2 月に製造終了)
平成 24 年 5 月以降、被控訴人が被控訴人製品2を製造、販売
現在、被控訴人が被控訴人製品5及び6を製造、販売
(被控訴人製品1~6については、判決の別紙2及び別紙3のⅡ参照。
「被控訴人製品」又は「被
告製品」)
1
(3)請求
(1) 被控訴人製品の製造、販売、販売のための展示の差止め
(2) 被控訴人製品の破棄
(3) オプスヴィック社に対する 1592 万 6856 円の損害賠償と遅延損害金の支払い
(4) ストッケ社に対する 1 億 1945 万 1420 円の損害賠償と遅延損害金の支払い
(5) 謝罪文の新聞掲載
(請求原因)被控訴人による被控訴人製品の製造等の行為は、
(i) 控訴人製品をデザインした同社代表者から著作権の譲渡を受けたオプスヴィック社の著作権
及びオプスヴィック社から独占的利用を許諾されたストッケ社の独占的利用権を侵害する
(ii) 控訴人らの周知又は著名な商品等表示に該当する控訴人製品の形態的特徴と類似する商品
等表示を使用した被控訴人製品の譲渡等として不正競争行為に該当する
(iii) 控訴人らの信用等を侵害するものとして一般不法行為が成立する
(根拠条文)
(1) 著作権法 112 条 1 項及び 2 項(オプスヴィック社のみ)、不正競争防止法(
「不競法」)3 条
1 項及び 2 項
(2) 同上
(3) 著作権法 114 条 3 項、不競法 4 条、5 条 3 項 1 号、民法 709 条
(4) 著作権法 114 条 2 項、不競法 4 条、5 条 2 項、民法 709 条
(5) 不競法 14 条
(4)争点と判断(原審)
(1) 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無
ア 原告製品の著作物性の有無並びに著作権及び独占的利用権の存在:
イ 侵害の有無:
否定*1
判断せず
(2) 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性
ア 周知性のある商品等表示該当性:
イ 類似性の有無:
該当する余地がある*2
否定*3
ウ 混同のおそれの有無:判断せず
(3) 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性:
否定(著名と認められない、類似性なし)
(4) 一般不法行為上の違法性の有無: 否定(類似性なく、混同も認められない)
(5) 各請求の当否:
否定
ア 差止請求の当否
イ 損害賠償請求の当否
ウ 謝罪広告掲載請求の当否
2
(*1)原告製品の著作物性について
(i) 原告の主張(下線は報告者)
「原告製品のデザインは,一見して驚くべきシンプルさで見る者の芸術的感性に訴えかけてく
るものであり,
・・・一定の美的感覚を備えた一般人を基準として純粋美術と同視し得る程度の
美的創作性を備えており,「美術の著作物」に該当する。
我が国及びノルウェーは,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベル
ヌ条約」という。)の加盟国であるから,原告製品のデザインは,我が国の著作権法上,応用美
術として保護されるべきである(著作権法6条3号,ベルヌ条約2条1項)。」
(ii) 原審の判断(下線は報告者)
「原告製品は工業的に大量に生産され,幼児用の椅子として実用に供されるものであるから・・・,
そのデザインはいわゆる応用美術の範囲に属するものである。そうすると,原告製品のデザイ
ンが・・・著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護
と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を離れて見た場合に,それ
が美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要する・・・。
本件についてこれをみると,原告製品は,・・・幼児の成長に合わせて,部材G(座面)及び
部材F(足置き台)の固定位置を,左右一対の部材Aの内側に床面と平行に形成された溝で調
整することができるように設計された椅子であって,その形態を特徴付ける部材A及び部材B
の形状等の構成・・・も,このような実用的な機能を離れて見た場合に,美的鑑賞の対象とな
り得るような美的創作性を備えているとは認め難い。したがって,そのデザインは著作権法の
保護を受ける著作物に当たらないと解される。また,応用美術に関し,ベルヌ条約2条7項,
7条4項は,著作物としての保護の条件等を同盟国の法令の定めに委ねているから,著作権法
の解釈上,上記の解釈以上の保護が同条約により与えられるものではない。」
(*2)周知性のある商品等表示該当性について
(i) 原告の主張(下線は報告者)
「原告製品は,①側面部分が部材A及び部材Bで構成されており,部材Bは地面と平行に配置
され,部材Bの先端と部材Aの下端が接続されている,②側面から見た場合,部材Aと部材B
とで略L字型の形状を形成しており,部材Aと部材Bの成す角度は約66度である,③部材A
と部材Bとから構成される側面部分は二組あり,いずれも地面に対して垂直に配置され,また,
二組の上記側面部分は並行に配置されている,④部材Aに地面と並行に14本の溝が形成され
ており,1枚ずつある部材G及び部材Fは,この溝に挿入され配置されている,⑤部材Aの下
部及び中央部に部材L及び部材D(金属棒)が配置されている,⑥部材Aの上部に部材H(背
板)が配置されている,⑦アクセサリーとして,部材Aに部材I(転落防止用のベビーガード)
を装着することが可能になっているという,製作当時の同種の製品には見られない特異な形態
的特徴を有している。
このような原告製品の形態的特徴は,
・・・遅くとも被告製品3の製造・販売が開始された平
成18年2月の時点では,原告らの周知性のある商品等表示になっていた。」
3
(ii) 原審の判断(下線は報告者)
「原告製品は,側板が左右一対の部材A及び部材Bによりそれぞれ略L字状(これらが成す角
度は約66度)に構成されるという形態的特徴(以下,この特徴を「第1の形態的特徴」とい
う。)を有している。また,原告製品は,幼児の成長に合わせて部材G(座面)及び部材F(足
置き台)の固定位置を調整することができるよう,左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝
が多数形成され,この溝に沿って部材G及び部材Fをはめ込んで固定するという形態的特徴(以
下,この特徴を「第2の形態的特徴」という。)を有している。」
「原告製品は,部材Aが部材B前方の斜めに切断された端面でのみ結合されており,座面から
部材Aに伝えられる力が,上記端面のみにかかり,視覚的に不安定さを感じさせる構成となっ
ている。それだけに,原告製品の形態は,必要最小限の部材以外の部材は使用しないという,
シンプル,スタイリッシュかつシャープな印象を与えるものである。このように,原告製品の
第1の形態的特徴が視覚的にシンプルな印象を与えることは,・・・原告製品を紹介する記事に
おいても多く言及されているところであり,原告製品の重要な形態的特徴ということができる。」
「第1の形態的特徴及び第2の形態的特徴のいずれか一方ないしそれに近い形態的特徴を備え
た椅子は他に存在するものの,これら双方を兼ね備えたものが原告製品以外に存在すると認め
ることはできない。」
「以上によれば,原告製品は,第1の形態的特徴と第2の形態的特徴とを組み合せた点におい
て,従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているから,原告製品の形態が需要者
の間に広く認識されているものであれば・・・,その形態は不競法2条1項1号にいう周知性
のある商品等表示に当たり,同号所定の不正競争行為の成立を認める余地がある」
(*3)類似性について(下線は報告者)
(原審の判断)「被告製品は,・・・いずれも,床面に平行な部材Bの後方から上方に延びる部
材Cが部材Aと結合されており,部材Aを後方から支えるように構成されている。・・・
また,被告製品は,いずれも側板に部材Cが設けられていることで,座面にかかる荷重が後
方にも分散して伝えられ,通常のパイプ椅子と同じような安定感を与える形態となっており,
視覚的にも,不安定かつシンプル,スタイリッシュ,シャープな印象を与える原告製品とは異
なる
印象を与えるものである・・・
したがって,被告製品は,各側板が部材A及び部材Bにより略L字状に構成されるという第
1の形態的特徴を備えていないと解すべきである。」
「以上のとおり,被告製品は,第1の形態的特徴を備えておらず,原告製品の商品等表示とは
重要な点で相違するから,それが第2の形態的特徴を備えていることを考慮しても,取引の実
情の下において,取引者又は需要者が両形態の外観に基づく印象,記憶,連想等から両者を全
体的
に類似のものとして受け取るおそれがあるとは認められない。したがって,被告製品の形態が
原告製品の商品等表示と類似のものに当たるということはできないものと解される。」
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(5)争点と判断(本件)
(1) 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無
ア 控訴人製品の著作物性の有無並びに著作権及び独占的利用権の存在:
イ 侵害の有無:
肯定
否定
(2) 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性の有無
ア 控訴人製品にかかる「商品等表示」に該当する形態:
肯定(特定)
イ 控訴人製品にかかる「商品等表示」の周知性の有無:
肯定
ウ 控訴人製品にかかる「商品等表示」の形態と被控訴人製品の形態との類似性:
エ 「混同を生じさせる行為」該当性の有無:
否定
否定
(3) 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性の有無
ア 控訴人製品にかかる「商品等表示」に該当する形態(前記(2)アと同一)
イ 控訴人製品にかかる「商品等表示」の著名性の有無:
ウ
判断せず
控訴人製品にかかる「商品等表示」の形態と被控訴人製品の形態との類似性(前記(2)
ウと同一)
(4) 一般不法行為の成否:
(5) 各請求の当否:
否定(模倣とは認められず、混同も生じない)
否定
ア 差止請求の当否
イ 損害賠償請求の当否
ウ 謝罪広告掲載請求の当否
(6)応用美術の著作物性について
(i) 控訴人の主張(下線は報告者)
「応用美術について,著作物性が認められるためには通常よりも高度の創作性を要すると考え
ることは相当ではなく,それ以外の美術の著作物と同程度の創作性,すなわち,表現者の個性
が何らかの形で表れていることが認められれば著作物性が肯定されるものと解すべきである。」
「著作権法上,応用美術につき,著作物として保護されるためには「美的鑑賞の対象となり得
るような美的創作性」を要する旨定めた規定は,存在しない。
著作権法は,書籍やCDなど大量生産される物についても,著作物として保護されるために
特別の要件を課すことはしておらず,学説及び裁判例においても,そのような要件が必要とは
考えられていない。・・・
意匠法との関係についても,応用美術を著作物として著作権法の保護対象とすると,直ちに
意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが減殺されるとはいえず,・・・創作性のある表
現について著作権法による保護を自制しなければならないことを正当化する理由になるとはい
えない。」
「控訴人製品については,応用美術以外の美術の著作物と同程度の創作性があること,すなわ
ち,表現者の個性が何らかの形で表れていることが明らかといえるから,著作物性が肯定され
るべきである。
5
控訴人製品は,後記の控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴を備え,見る者に脚立を
連想させるものであり,そのデザインには,デザイナーである控訴人オプスヴィック社代表者
の個性が表れている。」
(ii) 被控訴人の主張
「応用美術の著作物性が肯定されるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適
切な調和を図る見地から,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得
るような美的創作性を備えていることを要する。」
「⒜ 著作権法及び意匠法の重複適用は相当ではな(い)・・・。
・・・重複適用を認めると,存続期間を短く定めた意匠法の趣旨が没却される・・・。
・・・意匠権は経済財であるところ,上記重複適用を認めれば,事実上,意匠権に人格権を認
めたのに近い状況が生じ,・・・好ましくない。
現行著作権法の立法過程においても,
・・・意匠権とのすみ分けの必要性を強く意識して検討さ
れたという経緯がある。
・・・①著作権は,創作のみによって発生し,公示制度は存在しないこと,②著作権には,長
期の保護期間が認められていること,③著作者人格権等の支分権が存在することなどから,応
用美術に著作権法上の保護を付与すれば,当該応用美術の利用,流通が妨げられる。この点に
鑑みると,応用美術については,そのような利用,流通に係る支障を甘受してもなお,著作権
法を適用する必要性が高いものに限り,著作物性を認めるべきである。」
(iii) 本件の判示(下線は報告者)
「実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とする表現物(以下,この表現物を「応用美術」
という。)が,「美術の著作物」に該当し得るかが問題となるところ,応用美術については,著
作権法上,明文の規定が存在しない。
しかしながら,著作権法が,
「文化的所産の公正な利用に留意しつつ,著作者等の権利の保護
を図り,もって文化の発展に寄与することを目的と」していること(同法1条)に鑑みると,
表現物につき,実用に供されること又は産業上の利用を目的とすることをもって,直ちに著作
物性を一律に否定することは,相当ではない。同法2条2項は,
「美術の著作物」の例示規定に
すぎず,例示に係る「美術工芸品」に該当しない応用美術であっても,同条1項1号所定の著
作物性の要件を充たすものについては,
「美術の著作物」として,同法上保護されるものと解す
べきである。」
「著作物性の要件についてみると,ある表現物が「著作物」として著作権法上の保護を受けるた
めには,
「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることを要し・・・,
「創作的に表現したも
の」といえるためには,当該表現が,厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの,
作成者の何らかの個性が発揮されたものでなければならない。・・・
応用美術は,装身具等実用品自体であるもの,家具に施された彫刻等実用品と結合されたも
の,染色図案等実用品の模様として利用されることを目的とするものなど様々であり・・・,表現
態様も多様であるから,応用美術に一律に適用すべきものとして,高い創作性の有無の判断基
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準を設定することは相当とはいえず,個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを
検討すべきである。」
「そして,著作権侵害が認められるためには,応用美術のうち侵害として主張する部分が著作物
性を備えていることを要する・・・。」
「控訴人製品の形態的特徴は,①「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,
「部材Aの内側」
に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定
し」ている点,②「部材A」が,
「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接
床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において,作成者である
控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されており,「創作的」な表現というべきである。
したがって,控訴人製品は,前記の点において著作物性が認められ,
「美術の著作物」に該当す
る。」
「応用美術には様々なものがあり,表現態様も多様であるから,明文の規定なく,応用美術に
一律に適用すべきものとして,
「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定すること
は,相当とはいえない。
また,特に,実用品自体が応用美術である場合,当該表現物につき,実用的な機能に係る部
分とそれ以外の部分・・・を区別できないものについては,常に著作物性を認めないと考えること
は,実用品自体が応用美術であるものの大半について著作物性を否定することにつながる可能
性があり,相当とはいえない。
・・・「美的」という概念は,多分に主観的な評価に係るものであり,何をもって「美」ととら
えるかについては個人差も大きく,客観的観察をしてもなお一定の共通した認識を形成するこ
とが困難な場合が多いから,判断基準になじみにくいものといえる。」
「応用美術に関しては,現行著作権法の制定過程においても,意匠法との関係が重要な論点にな
り,両法の重複適用による弊害のおそれが指摘されるなどし,特に,美術工芸品以外の応用美
術を著作権法により保護することについては反対意見もあり,著作権法と意匠法との調整,す
み分けの必要性を前提とした議論が進められていた・・・。
しかしながら,現行著作権法の成立に際し,・・・応用美術の保護の問題は,今後検討すべき課
題の1つに掲げられていたことに鑑みると,上記成立当時,応用美術に関する著作権法及び意
匠法の適用に関する問題も,以後の検討にゆだねられたものと推認できる。
そして,著作権法と意匠法とは,趣旨,目的を異にするものであり・・・,いずれか一方のみが
排他的又は優先的に適用され,他方の適用を不可能又は劣後とするという関係は,明文上認め
られず,そのように解し得る合理的根拠も見出し難い。
加えて,著作権が,その創作時に発生して,何らの手続等を要しないのに対し・・・,意匠権は,
設定の登録により発生し・・・,権利の取得にはより困難を伴うものではあるが,反面,意匠権は,
他人が当該意匠に依拠することなく独自に同一又は類似の意匠を実施した場合であっても,そ
の権利侵害を追及し得るという点において,著作権よりも強い保護を与えられているとみるこ
とができる。これらの点に鑑みると,一定範囲の物品に限定して両法の重複適用を認めること
によって,意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律に失われるといった弊害が生
じることも,考え難い。」
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「応用美術は,実用に供され,あるいは産業上の利用を目的とするものであるから,当該実用目
的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があるので,・・・作成者の個性が発
揮される選択の幅が限定され,したがって,応用美術は,通常,創作性を備えているものとし
て著作物性を認められる余地が,上記制約を課されない他の表現物に比して狭く,また,著作
物性を認められても,その著作権保護の範囲は,比較的狭いものにとどまることが想定される。
以上に鑑みると,応用美術につき,他の表現物と同様に,表現に作成者の何らかの個性が発
揮されていれば,創作性があるものとして著作物性を認めても,一般社会における利用,流通
に関し,実用目的又は産業上の利用目的の実現を妨げるほどの制約が生じる事態を招くことま
では,考え難い。」
(7)侵害の有無について(下線は報告者)
(本件の判示)
「控訴人オプスヴィック社の著作権及び控訴人ストッケ社の独占的利用権の侵害
の有無を判断するに当たっては,控訴人製品において著作物性が認められる・・・点につき,
控訴人製品と被控訴人製品との類否を検討すべきである。」
「控訴人製品は,・・・①「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,②「部材Aの内側」に形
成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」
ている点に著作物性が認められるところ,被控訴人製品は,いずれも4本脚であるから,上記
①の点に関して,控訴人製品と相違することは明らかといえる。
他方,被控訴人製品は,・・・上記②の点に関しては,控訴人製品と共通している。・・・
しかしながら,脚部の本数に係る前記相違は,椅子の基本的構造に関わる大きな相違といえ,
その余の点に係る共通点を凌駕するものというべきである。
以上によれば,被控訴人製品は,控訴人製品の著作物性が認められる部分と類似していると
はいえない。」
(8)商品等表示該当性と類似性について(下線は報告者)
(i) 控訴人の主張(下線は報告者)
「控訴人製品は,一般的な椅子とは異なり,見る者に脚立を連想させる,・・・「左右一対の部
材Aの内側に床面と平行な溝が複数形成され,その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足
置き台)をはめ込んで固定し,部材Aは床面から斜めに立ち上がっている」という形態的特
徴・・・を有しており,これは,控訴人製品を他の同種製品と識別し得る顕著な形態的特徴と
いえ,控訴人らの「商品等表示」に該当する。
この点について,原判決は,控訴人製品は,・・・「第1の形態的特徴」と,・・・「第2の形
態的特徴」とを組み合わせた点において,従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有し
ている旨認定しているが,同認定は,誤りである。」
(ii) 本件の判示(下線は報告者)
「控訴人製品は,作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されている点,す
なわち,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち,①「左右一対の部材A」の2本
8
脚であり,かつ,
「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置
き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点並びに②「部材A」が,「部材B」前方の斜め
に切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度
を成している点において,特別顕著性が認められる。」
「控訴人製品は,平成18年2月頃までには,控訴人らの「商品等表示」に該当するに至った
ものということができる。」
「控訴人製品の形態的特徴のうち,①「左右一対の部材A」の2本脚であり,かつ,②「部材
Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ
込んで固定し」ている点に特別顕著性が認められるところ,被控訴人製品は,いずれも4本脚
であるから,上記①の点に関して,控訴人製品と相違することは明らかといえる。そして,脚
部の本数に係る前記相違は,椅子の基本的構造に関わる大きな相違といえ,その余の点に係る
共通点を凌駕するものというべきである。」
3.応用美術の著作物性について
半田正夫「著作権法概説」(第 11 版)法学書院
「ベルヌ条約・・・ブラッセル規定以後は応用美術を保護する著作物の中に含め、世界の主要国
も・・・著作権法において保護するという法制を採っている。・・・(日本の現行著作権法)におい
ては・・・美術工芸品だけを美術著作物に含め、これを保護することとしている(2 条 2 項)。したが
って、
・・・一品製作の美術工芸品については著作権法の保護を受けるが、量産される実用品につい
てはそれが美的な形状、模様あるいは色彩を有するものであっても著作権の保護の外におかれ、ま
た図案その他量産品のひな型または実用品の模様として用いられることを目的とするものについて
は、原則として意匠法など工業所有権制度による保護に委ね、ただそれが純粋美術としての絵画、
彫刻等に該当するものであるときに限り美術著作物として保護されることになる。」
(P88。下線は報
告者)
加戸守行「著作権法逐条講義」(五訂新版)社団法人著作権情報センター
「本項(報告者注:著作権法第 2 条第 2 項)では、美術工芸品、即ち壷・壁掛けなどの一品製作の
手工的な美術作品に限って、応用美術作品ではあるが純粋美術あるいは鑑賞美術の作品と同視する
という考え方を採りまして、著作権法上の美術の著作物に含めております。逆に申しますと、産業
用に大量に生産される工芸品あるいはその他の実用品については、美術の著作物という概念には入
れないということで、意図するところは、著作権法にいう美術の著作物というのは鑑賞美術の著作
物であって、応用美術の領域に属する産業用の美的な作品は、美術工芸品を除いて著作物とはみな
さないという趣旨であります。」(P66。下線は報告者)
「なお、最近の判例においては、一品製作物に限らず大量生産される工芸品であっても鑑賞的色
彩の強いものであれば美術の著作物に該当するとする例が多くなっております。これは先程申し上
げた立法趣旨から一歩踏み込んだものとして注目されるところであります。」(P67)
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東京地判昭和 54 年 3 月 9 日(ヤギボールド事件第一審)
「著作権法上「美術」とは、原則として、鑑賞の対象たるべき純粋美術のみをいい、応用美術
でありながら著作権法により保護されうるのは、同法第二条第二項の規定によつてとくに美術
の著作物に含まれるものとされる美術工芸品に限られる、と解するのが相当である。」(下線は
報告者)
神戸地判昭和 54 年 7 月 9 日(仏壇彫刻事件)
「応用美術であつても、本来産業上の利用を目的として創作され、かつ、その内容および構成
上図案またはデザイン等と同様に物品と一体化して評価され、そのものだけ独立して美的鑑賞
の対象となしがたいものは、当然意匠法等により保護をはかるべく、著作権を付与さるべきで
はないが、これに対し、実用品に利用されていても、そこに表現された美的表象を美術的に鑑
賞することに主目的があるものについては、純粋美術と同様に評価して、これに著作権を付与
するのが相当であると解すべく、換言すれば、視覚を通じた美感の表象のうち、高度の美的表
現を目的とするもののみ著作権法の保護の対象とされ、その余のものは意匠法(場合によつて
は実用新案法等)の保護の対象とされると解することが制度相互の調整および公平の原則にて
らして相当であるというべく、したがつて、著作権法二条二項は、右の観点に立脚し、高度の
美的表現を目的とする美術工芸品にも著作権が付与されるという当然のことを注意的に規定し
ているものと解される。」(下線は報告者)
東京地判昭和 56 年 4 月 20 日(Tシャツ事件)
「応用美術については、現行著作権法は、美術工芸品を保護することを明文化し、実用目的の
図案、ひな型は原則として意匠法等の保護に委ね、ただ、そのうち、主観的な制作目的を除外
して客観的、外形的にみて、実用目的のために美の表現において実質的制約を受けることなく、
専ら美の表現を追求して制作されたものと認められ、絵画、彫刻等の純粋美術と同視しうるも
のは美術の著作物として保護しているものと解するのが相当である。」(下線は報告者)
東京高判昭和 58 年 4 月 20 日(ヤギボールド事件控訴審)
「著作権法が第二条第一項第一号の「美術の範囲に属するもの」とした著作物は、そのうち実
用に供されるものについては、創作されたときに、これを客観的にみて、鑑賞の対象と認めう
る一品製作の著作物というものと解するのが相当である。・・・」(下線は報告者)
東京高判平成 3 年 12 月 17 日(木目化粧紙事件控訴審)
「応用美術のうち、例えば実用品の模様などとして用いられることのみを目的として製作され
たものは、本来、工業上利用することができる意匠、すなわち工業的生産手段を用いて技術的
に同一のものを多量に生産することができる意匠として意匠法によって保護されるべきである
と考えられる。けだし、意匠法はこのような意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与す
ることを目的とする(同法第一条)ものであり、前記の品の形状、模様、色彩又はそれらの結
合は正に同法にいう意匠(同法第二条)として意匠権の対象となるのに適しているからである。
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もっとも、実用品の模様などとして用いられることのみを目的として製作されたものであって
も、例えば著名な画家によって製作されたもののように、高度の芸術性(すなわち、思想又は
感情の高度に創作的な表現)を有し、純粋美術としての性質をも肯認するのが社会通念に沿う
ものであるときは、これを著作権法にいう美術の著作物に該当すると解することもできるであ
ろう。」(下線は報告者)
大阪高判平成 13 年 1 月 23 日(装飾用街路灯デザイン図事件控訴審)
「本件デザイン図は、それ自体、美的表現を追求し美的鑑賞の対象とする目的で製作されたも
のでなく、かつ、内容的にも、純粋美術としての性質を是認し得るような思想又は感情の高度
の創作的表現まで未だ看取し得るものではないから、美術の著作物に当たるものとは認められ
ない。」
知財高判平成 25 年 12 月 17 日(平成 25 年(ネ)第 10057 号)
知財高判平成 26 年 1 月 22 日(平成 25 年(ネ)第 10066 号)
「応用美術であることから当然に著作物性が否定されるものではないが,応用美術に著作物性
を認めるためには,客観的外形的に観察して見る者の審美的要素に働きかける創作性があり,
これが純粋美術と同視し得る程度のものでなければならないと解するのが相当である。」(下線
は報告者)
知財高判平成 26 年 10 月 17 日(平成 25 年(ワ)第 22468 号)(ファッションショー映像事件控訴
審)
「著作権法2条2項は,単なる例示規定であると解すべきであり,そして,一品制作の美術工
芸品と量産される美術工芸品との間に客観的に見た場合の差異は存しないのであるから,著作
権法2条1項1号の定義規定からすれば,量産される美術工芸品であっても,全体が美的鑑賞
目的のために制作されるものであれば,美術の著作物として保護されると解すべきである。ま
た,著作権法2条1項1号の上記定義規定からすれば,実用目的の応用美術であっても,実用
目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できる
ものについては,上記2条1項1号に含まれることが明らかな「思想又は感情を創作的に表現
した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみることができるのであるから,当該部
分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきであると解すべきである。他方,実用
目的の応用美術であっても,実用目的に必要な構成と分離して,美的鑑賞の対象となる美的特
性を備えている部分を把握することができないものについては,上記2条1項1号に含まれる
「思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物」と客観的に同一なものとみること
はできないのであるから,これは同号における著作物として保護されないと解すべきである。」
(下線は報告者)
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4.感想
1) 応用美術の著作物性に関しては、応用美術についてだけ高度の創作性や純粋美術と同程度の美的
鑑賞性を求めることに従来から違和感を覚えていた。本件は、このような見解を正面から否定す
るものであり、その理由付けや結論には個人的に非常に納得のいくものである。ただ、この判断
は従来の判例、学説とは異なるものであり、最高裁判決ではないので、今後の推移を見たい。
2) 本件の結論に関していえば、被控訴人製品には控訴人製品の最も個性的な部分(2本脚で角ばっ
ている、シンプルでスタイリッシュなデザイン)が欠けているため、控訴人敗訴の結論はやむを
得ないように思える。類似性を認めさせようとして創作性のある部分(特徴的部分)とされる部
分を広く主張しすぎたり、他の部分を強調しすぎたりすると、創作性や特別顕著性がなくなり、
結果として著作物性や商品等表示該当性が否定されてしまうという関係にあるように感じた。控
訴人が、本件では原審における主張とは異なり、
「脚立を連想させる形態的特徴」が控訴人製品の
特徴的部分であると主張している点に関しては、確かにそのように表現できる余地がないわけで
はないものの、控訴人製品のスタイリッシュなイメージからは違和感を感じる連想のように思わ
れ、また、主張としても原審における主張と一貫性がなく、戦術としてやや疑問に感じた。
3) なお、本件では、まず著作物性(特別顕著性)のある部分を特定し、その部分につき類似性の判
断をしているが、著作権侵害の多くのケースでは、まずは類似点を挙げた上で、その部分に著作
物性があるかどうかを判断することが多いように思われる(だからこそ、類似点につき「ありふ
れた表現である」という認定も多い)。そうであれば、本件においても、まずは両製品の類似部分
を特定し、その部分に著作物性があるか否かを判断することも可能であったと思われ、その場合
には、控訴人製品と被控訴人製品の類似部分には著作物性がないという判断で終わらせることも
可能だったはずであり、あえて応用美術の著作物性に踏み込んで判断する必要があったのかとい
う疑問もある。
以上
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(関連条文)
〔著作権法〕
(目的)
第一条
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定
め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを
目的とする。
(定義)
第二条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
2
この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
(保護を受ける著作物)
第六条
三
著作物は、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護を受ける。
前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物
(差止請求権)
第百十二条
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人
格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2
著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成
した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又
は予防に必要な措置を請求することができる。
(損害の額の推定等)
第百十四条
2
著作権者、出版権者又は著作隣接権者が故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対し
その侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているとき
は、その利益の額は、当該著作権者、出版権者又は著作隣接権者が受けた損害の額と推定する。
3
著作権者、出版権者又は著作隣接権者は、故意又は過失によりその著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者に対
し、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を自己が受けた損害の額として、
その賠償を請求することができる。
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〔不正競争防止法〕
(定義)
第二条
一
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示
するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又
はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは
電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二
自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用し
た商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供
する行為
(差止請求権)
第三条
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者
又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2
不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、
侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した
設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。
(損害賠償)
第四条
故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する
責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって
生じた損害については、この限りでない。
(損害の額の推定等)
第五条
2
不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその
侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、
その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。
3
第二条第一項第一号から第九号まで、第十二号又は第十五号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者
は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に
定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することがで
きる。
一
第二条第一項第一号又は第二号に掲げる不正競争
当該侵害に係る商品等表示の使用
(信用回復の措置)
第十四条
故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては、裁判所は、その営業上の信
用を害された者の請求により、損害の賠償に代え、又は損害の賠償とともに、その者の営業上の信用を回復するのに必要
な措置を命ずることができる。
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〔ベルヌ条約〕
第二条 〔保護を受ける著作物〕
(1) 「文学的及び美術的著作物」には、表現の方法又は形式のいかんを問わず、書籍、小冊子その他の文書、講演、演説、
説教その他これらと同性質の著作物、演劇用又は楽劇用の著作物、舞踊及び無言劇の著作物、楽曲(歌詞を伴うかど
うかを問わない。)、映画の著作物(映画に類似する方法で表現された著作物を含む。以下同じ。)、素描、絵画、建築、
彫刻、版画及び石版画の著作物、写真の著作物(写真に類似する方法で表現された著作物を含む。以下同じ。)、応用
美術の著作物、図解及び地図並びに地理学、地形学、建築学その他の科学に関する図面、略図及び模型のような文芸、
学術及び美術の範囲に属するすべての製作物を含む。
(7) 応用美術の著作物及び意匠に関する法令の適用範囲並びにそれらの著作物及び意匠の保護の条件は、第七条(4)の規定
に従うことを条件として、同盟国の法令の定めるところによる。本国において専ら意匠として保護される著作物につ
いては、他の同盟国において、その国において意匠に与えられる特別の保護しか要求することができない。ただし、
その国においてそのような特別の保護が与えられない場合には、それらの著作物は、美術的著作物として保護される。
第七条 〔保護期間〕
(4) 写真の著作物及び美術的著作物として保護される応用美術の著作物の保護期間を定める権能は、同盟国の立法に留保
される。ただし、その保護期間は、それらの著作物の製作の時から二十五年よりも短くてはならない。
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