「総支配人マニュアル」抜粋内容ご紹介

「総支配人マニュアル」抜粋内容ご紹介
◎ホテル総支配人の仕事
ホテル総支配人の役割
ホテルのリーダーである総支配人は、これら3つの要素を正確に理解し、活用し、利用客はじめ
ホテルに係わるすべての人々に満足を与えなくてはなりません。そのためにはホテル運営のた
めの戦略が必要となります。
戦略という言葉は、さまざまな捉え方があるでしょうが、ここではシンプルに「方向」とか「行き先」
といった意味に捉えてください。
ホテルを船に例えると、このホテルという船がどこに向かうかの「方向」が戦略だと理解いただくと
わかりやすいと思います。客船の場合、船がどこに向かって進むかが、乗船前に決まっていなけ
れば乗客を乗せるわけにはいきませんね。したがって、船の行き先を決めることは当たり前のこ
とで、決めないで船を出港させることはあってはならないことなのです。こうして考えると船の行き
先つまり「方向」は重要なことなのです。この船の行き先「方向」こそが“戦略”なのです。“戦略”
は一旦決めたら簡単に変更できません。勿論、港を出る時や嵐がくれば一時的に「方向」を変え
たり避難することはありえますが最終的な行き先「方向」は変わらないのが普通です。
船の場合、決められた「方向」に船を進めていくのが船長ですが、ホテルの場合は総支配人なの
です。
ホテルを事業として戦略に則り成功させるためには、総支配人の手腕によるところが非常に大き
いと理解ください。また、同様に重要なのが従業員の役割です。従業員は、総支配人の指揮のも
と与えられた任務をただひたする遂行するわけですが、その原動力は月給や身分だけではあり
ません。従業員に何よりも必要なことは彼らに“やる気”を起こすモチベーションです。
モチベーションを構築する最大の要素は“心”です。金銭や物も無論効果がありますが、これらが
すべてだと考える人が非常に多いのですが、要注意です。金銭や物を重視し過ぎると大きな間違
いを犯す場合があります。
総支配人は、心から従業員に接します。すると従業員は総支配人を信頼します。総支配人を信
頼している従業員は今度は、心からお客様に接するようになります。従業員を教育するには、こ
の手順が重要です。従業員のモチベーションを無視した教育指導はホテルの場合効果がありま
せん。
また、モチベーションを維持させるために、従業員をよく見守ってあげて下さい。従業員は教えら
れたことがうまく出来たとき、総支配人に誉めてもらいたいのです。子供と同じだと思っていただ
いて結構です。人間は何歳になっても人に誉められたいと願っています。自分の努力が誉められ
るほど嬉しいことはないのです。こうした努力がお客様からも喜ばれるとなると、従業員はお客様
に喜ばれることを率先して行うようになります。お客様に喜ばれることつまり満足していただくこと
が、総支配人にも誉められることだったなら効果抜群です。
ホテル全体にこうした好影響が循環されるようになれば、顧客満足度の高いホテルとなり、営業
1
的にも効果をもたらすのです。結果的に、これは利益の創出にも寄与し、経営者やオーナーを満
足させることにもなるのです。
運営のリーダーである総支配人は、経営者やオーナーに満足してもらうためにはまず従業員に
満足してもらい、従業員はお客様に満足してもらう循環作用が働くことがホテルには大変重要に
なります。こうしてホテルが順調に運営されれば、利用客、オーナー、株主、マネジメントや従業
員、地域住民、取先業者など関係者の人々に対しても満足をもたらすことになるのです。ホテル
を事業として成功させる上で、ハードウェア・ソフトウェア・ヒューマンウェアの3要素が重要であり
ますが、この中で特に欠かすことのできないのがヒューマンウェアであり、さらにこのヒューマンウ
ェアにおける人の“心”がすべての原点になるということを忘れないでください。
人の“心”についても、さまざまな内容が含まれますが、“心”の軸となるのは
ホスピタリティーです。
以下に記した総支配人業務マニュアルは、総支配人の業務遂行がよりスムーズになされるため
の、基本事項を整理しまとめたものです。しかし、その背景には「ホテルとは何か」を総支配人自
身が充分理解していただいた上で、実際の業務に当たっていただくマニュアルであるあることを
忘れないでいただきたいと思います。
現役の総支配人にとっては、当然のことながら、ご担当のホテルに適合した業務が既に存在する
はずです。本マニュアルは、そうした業務をより効果的に遂行できるよう併用しご活用いただき、
ホテル現場で素晴らしいホスピタリティーが発揮いただけることを期待、業績が向上さることを願
っております。ホテル総支配人のご健闘を祈ります。
2
目
次
ホテル会社の基本理念企業理念 ....................................................................... 3P
ホテル会社の経営方針とホテル運営十則 .......................................................... 4P
総支配人業務マニュアル使用に当たって ........................................................... 5P
総支配人心得.................................................................................................... 7P
ホテル運営推進事項9P
目標達成のためのサブシステム........................................................................11P
総支配人の部門管理........................................................................................14P
Ⅰ料飲部門 ......................................................................................................14P
料飲部門の対策事項........................................................................................15P
料飲サービスにおける総支配人の指導ポイント.................................................16P
料飲サービスにおける徹底指導事項 ................................................................16P
料飲サービスマネージャー重点習得事項..........................................................17P
総支配人の調理部署管理.................................................................................18P
総支配人の戦略的調理部署指導......................................................................19P
調理長重点習得事項........................................................................................19P
Ⅱ宿泊部門 ......................................................................................................21P
宿泊部門の対策事項........................................................................................22P
宿泊マネージャー指導事項...............................................................................24P
総支配人のフロント強化のポイント....................................................................26P
予約受注と管理指導.........................................................................................26P
フロント・予約担当者のインフォメーション指導事項............................................27P
総支配人のハウスキーピング指導ポイント ........................................................29P
総支配人デイリー業務 ......................................................................................33P
総支配人の職場点検のポイント ........................................................................34P
総支配人マンスリー業務...................................................................................38P
総支配人ウイクリー業務 ...................................................................................39P
総支配人業務―突発事項―.............................................................................40P
総支配人業務―特別事項―.............................................................................41P
目標管理と課業の分析 4 ....................................................................................2P
参考資料マーケティング戦略について...............................................................54P
ホテル企画ストック(宿泊・宴会)........................................................................56P
ホテル企画ストック(レストラン) .........................................................................59P
年間ホテル基本プラン例...................................................................................61P
ホテル集客強化対策例.....................................................................................63P
ユニフォーム会計システム ................................................................................67P
人材育成について ............................................................................................67P
料飲部門の充実の重要性.................................................................................68P
インスペクションシート .......................................................................................70P
3
あなたがホテルの総支配人であるなら、運営を任されているホテルの「ホテル運営理念」を掲げ
全従業員に理解させるようにしてください。
<ホテル運営理念例>
ホテル運営理念
私たちのホテルは人と文化と自然環境を大切にし、
明確な自己主張の出来る新しい価値を創造する
21世紀型企業として成長し社会に貢献します。
私たちホテルマンは、魅力に輝くホテル運営事業を人
の心を大切にし、技術、勇気、創造力をもって挑戦し、
まず、従業員が楽しく仕事をし、お客様に満足して頂き、
その結果ホテルに係わる全ての人々に喜んで頂くよう努力いたします。
ホテルを運営する上で、全従業員に特に守ってもらいたい重要事項があれば、簡潔にまとめ従
業員の目の付くところや、社員手帳に掲載させましょう。
<ホテル運営十則例>
ホテル運営十則
1、何事にも迅速な対応
2、職場は常に整理・整頓・清潔に
3、円滑なコミュニケーション
4、心からの笑顔
5、挨拶と礼儀を忘れずに
6、最小の経費で最大の効果を
7、コミュニティとの共存共栄
8、自己研磨し一流を目指す
9、国際的な視野と感覚
10、何事も心と技術、勇気、創造力をもって挑戦
4
ホテル総支配人マニュアルについて
何故ホテル総支配にマニュアルが必要なのか
現役の総支配人は誰でも、現在所属しているご自分のホテル独自のホテル運営に取り込み、
日常のマネジメントを行っているはずです。しかしながら、そうしたホテル総支配人の仕事が一
体何なのか、ホテルを取り巻く周辺の人々に充分理解されていないのが現実ではないでしょう
か。融資先の金融機関、株主、ホテル所有者(オーナー)、経営者(ホテル経営者)、取引先、
従業員、お客様、学校(新卒社員を送り込む各種学校当局)、その他ステイクホルダーたちは、
ホテル経営や運営の実情を知るためにも総支配人の仕事を知ってもらいたいものです。
私は、ホテルの経営内容や顧客満足度の向上、順調な投資回収、よい取引関係の持続などホ
テルステイクホルダーたちが期待するホテル事業を成功に導くのは、ホテル運営の専門家であ
る総支配人であると思っています。
ホテル総支配人マニュアルは、現役の総支配人には、ご自分の毎日やっておられる業務の確
認のために、部下の育成の材料に、組織の活性化のために、ホスピタリティー強化のためにご
活用いただければと思っております。しかし、現場業務は、繊細で現実的な事柄が多く含まれ
ます。ホテルによってさまざまな決め事や処理方法があるはずです。私は、本マニュアルを10
0%そのまま使えるホテルは皆無だと思います。あくまでもの本マニュアルを参考に、ご自分の
ホテルであいまいになっている部分や、欠落している部分を補いながら、ご自分の目指すホテ
ル運営に相応しいマニュアルを完成するための素材として役立てていただければ思います。大
所高所から見たホテル運営に必要な考え方や方向を付け加え、本当に生きたマニュアルが完
成されますことを祈っております。
本来総支配人にマニュアルが必要か否かについても議論があるところでしょうが、私の考えは、
総支配人がホテル運営を行う上で、運営の軸になる部分をずらさないということでは、やはりマ
ニュアルはあっても良いと考えています。
本マニュアルを活用いただく現役の総支配人は、出来ることならご自身の職務分析を試み、任
せられたホテルが進もうとしている方向に、現在ご自分のやっているマネジメントが適合してい
るかの確認をしていただくと良いと思います。その際は。本マニュアルをご自分の指針やホテ
ルの戦略作りの補助書としても活用いただけるのではないかと思います。
5
本総支配人業務マニュアルのカバー範囲
本ホテル総支配人マニュアルは日常の総支配人業務に必要と思われる事項をまとめました。た
だし、総支配人がホテルマンとして本来習得しておくべきホテル業務やや現場サービス技術に
関わる基礎的などは除外してあります。
特に以下に掲げた経理や労務の基礎知識、ホテルマンとして必要なプロトコールや現場の各種
サービス技術やシステム、各種管理システムなどの内容は総支配人マニュアルの範疇から敢
えて除外させていただきました。
〇経理的基礎要素
・
・
・
・
バランスシート(BS)の読み方
損益計算書(PL)の読み方
キャッシュフローマネジメント
ホテルユニフォーム会計システムの基礎知識
〇運営計画書立案
・
ホテル・施設収支(事業)計画書の作成の仕方
〇ホテル・施設運営システム各種の掌握と効率改善
・
・
・
・
・
・
・
・
レストラン運営システム
婚礼・宴会運営システム
購買システム
施設管理システム
調理システム
フードコントロールシステム
総務・人事基本システム
経理・財務基本システム
〇安全管理と指導
・
・
・
・
・
・
防災管理
食品衛生管理
労働災害管理
防犯管理
事故防止管理
セクハラ防止と管理
6
総支配人心得
以下に掲げた「総支配人心得」は、一般的にホテルのオーナーや経営者が総支配人に求める人
物像と、現役の総支配人自らが「総支配人はこうあるべきだ」と感じている事柄をまとめたもので
す。
あなたがホテル総支配人であるなら、ご自身が何を心得とするかの参考に利用ください。また、
ホテルの総支配人は、ホテル運営のリーダーとしての責務があります、それらが日常の業務遂
行に当たって疎かにならないためにも、自分自身の心得は整理しまとめておくことが必要です。
1. 総支配人は強靭なリーダーシップで部下を指揮、指導することが必要。
2. 総支配人は部下の教育を常に心がけなければならない。部下にはお客様に心から接しホ
スピタリティーを充分発揮するよう教育訓練しなければならない。
3. 総支配人は“CS”の前に“ES”あり、こそがモチベーションマネジメントの根幹であることを
充分意識し、日ごろの業務に当たらなくてはならない。
4. 総支配人は経営者やオーナーから預かった大切なホテルを常に一流志向の精神で運営し
なければならない。一流志向とは、競合他社に負けないグレードということである。
5. 総支配人は経営者やオーナーと有効なコミュニケーションを保つことが必要。経営者やオー
ナーとの相互理解・協力によりホテル運営を成功に導く努力を怠ってはならない。
6. 総支配人は現場主義に徹すること。お客様の動向、部下の仕事ぶり、館内外施設の状況を
こまめな巡視で掌握し、迅速な指示命令を出すこと。
7. 総支配人はお客様の声を最優先に。ゲストコメントには自ら目を通し、部下への情報開示、
迅速な改善措置、お客様への対応などルーティン作業として実施すること。
8. 総支配人自ら顧客主義に徹すること。「お客様はストレス解消のためにいらしている」事を
肝に銘じ、従業員の応対、施設の状態、料理の内容、室温、BGM・・・・あらゆる要件に不
備のないよう管理監督を徹底する。
9. 総支配人は常に部下に対し CS の基本「予感」「体感」「実感」の大切さを教えること。お客様
が予約の段階から楽しさを予感でき、到着してからは感動や感激を心に焼き付け喜びを体
感し、家に帰ってからも思い出を実感としていつまでも残す。このような演出や対応を常に
出来るよう部下を指導すること。
7
10. 総支配人は、職場で起こる全ての問題に関し無関心であってはならない。また、トラブルを
解決しないまま放置してはならない。
11. 総支配人はリスクマネジメントを重視しなければならない。総支配人は365日24時間ホテ
ルの施設、お客様、従業員を危険から守る義務がある。そのための体制作りを怠ってはな
らない。
また、各種災害事故の防止に努めることは無論、止む無く起きた事態の的確な措置を行う
ため、関連法規・加盟保険等の内容を充分理解し遵守すること。
火災災害消防犯罪防犯食品衛生労働災害傷害損害その他事故の予防と対応には手を抜
いてはならない。
12. 総支配人は、ホテル・施設の建物図面を自ら保持し、施設の内容配置状況を確実に掌握し
ておくこと。更に、消防用設備や非常用設備等の使用方法を自ら熟知しておくこと。
13. 総支配人は、経営者やオーナーから預かったホテルの資産を確実に管理しなければならな
い。破損、紛失、劣化等は経営者やオーナーに報告する義務がある。
14. 総支配人は、各種会議を招集し案件の議論、報告、指示、解決をはからなければならない。
会議開催は緊急会議以外は事前に開催期日・場所・議題を提示し、決められた時間に終了
させなければならない。
議事録は必ず作成し、未決事項は放置せず次回に必ず案件とし結論づけること。
朝礼総支配人会議各部門会議定例会議各種プロジェクト会議ほか会議は計画的に開催す
ることが重要。
15. 総支配人が運営会社から派遣されている場合は、運営会社本部との連絡・報告・相談を密
に取り、常に本部の方針などとずれがないよう心がける必要がある。
16. 総支配人は日ごろから従業員に尊敬され憧れられるような言動、身だしなみ、ほか総支配
人に相応しいライフスタイルを心がけなければならない。
17. 総支配人は従業員に心から接し、従業員が充分にお客様にホスピタリティーを発揮できる
環境を維持しておかなければならない。
18. 総支配人はホテルに直接関わる情報は無論のこと、世の中の動きについてアップツーデイ
トの情報が集まるような環境作りをしておかなければならない。
19. 総支配人は地域や顧客とのコミュニケーションを絶やしてはならない。
20. 総支配人はホテル業務遂行するに当たって、率先垂範を心がけなければならない。
8
21. 総支配人は何事においても敏速に行動し、問題の結論なども可能な限り早く出すよう心が
けなければならない。
22. 総支配人はホテル組織を効果的に活用し、組織が有機的に動くよう、日ごろより訓練指導
する必要がある。特に、部門相互のコミュニケーション不足が顧客や組織に支障をきたさな
いよう注意すること。
以上のほかにも、総支配人が心がける内容は多々あると思います。ご自分のホテル
に合った事項を「総支配人心得」として、是非まとめてみてください。
9