大阪市立科学館研究報告 25, 111 - 114 (2015) 企画展「はやぶさ2」実施報告 飯 山 青 海 * 概 要 2014 年 9 月 から 11 月 の期 間 に、企 画 展「はやぶさ2」を開催した。打 ち上 げが間近 に迫った小惑星探 査 機 「はやぶさ2」について、イラストや模 型 、関 連 実 物 資 料 などを展 示 して、探 査 計 画 について紹 介 す るとともに、隕 石 資 料 の展 示 や、大 学 における惑 星 科 学 分 野 の研 究 の紹 介 などを行った。この期 間 中 の 展示場の入 場 者 は 99,783 名 であった。本 稿では、この企 画 展 のコンセプトおよび展 示内容について報 告する。 1.企画の背景とねらい 味と親しみを持ってもらえるように紹介することとした。 小 惑 星 探 査 機 「はやぶさ2」の打 ち上 げが 2014 年 12 月に予定されており、打 ち上 げの頃 には多くのマス 2.展示品と展示場の構 成 メディアがニュースとして取 り上 げることが予 想 されてい 企 画 展 の会 場 は、展 示 場 4階 の「太 陽 系 のなかま」 た。そこで、打ち上 げ前の 2014 年 9 月~11 月の時期 付近から「宇宙地球を作るもの」付近と、地下 1 階アトリ に「はやぶさ2」をテーマとした企 画 展 を開 催 することに ウムとした。「太 陽 系のなかま」付近には、主に「はやぶ より、プラネタリウムとあわせて、「はやぶさ2」について さ2」打 ち上 げから小 惑 星 到 着 頃 までに関 連 する資 料 の情 報 を広 く市 民 に提 供 し、当 館 の 来 館 者 が打 ち上 を配置し、「宇宙地球を作るもの」付近では、小惑星 到 げの報 道に接 した時 に、大 阪 市 立 科 学 館 で事 前 に知 着 後の探 査から地 球 帰還 頃 に関 連する資 料や、隕 石 識 を得 ていることによって、より興 味 を持 って報 道 に接 資料、研 究室 紹介のパネル等を配置した。地下 1 階 してもらえることを意 図 した。 アトリウムには、「はやぶさ2」原寸大模型を展示した。 また、プラネタリウムでは、限 られた時 間 の中 で見 学 2-1.「はやぶさ2」スケジュール・機体関連資料 者 が 情 報 を受 け取 るのに 対 して、企 画 展 では見 学 者 「はやぶさ2」のミッションスケジュールを時 系 列 に沿 自 身 がそれぞれの興 味 に合 わせてじっくりと見 学 がで って追 うとともに、探 査 機 の 機 体 に 関 連 する資 料 を集 きるので、実 物 資 料 とともに、池 下 章 裕 氏 のイラストパ めた。 ネルで「はやぶさ2」計 画 の全 体 を紹 介 することとした。 ・「はやぶさ2」原寸大模型 さらに、プラネタリウムでは解 説 しきれない探 査 機 の機 (有限会社アクセスより借受 ) 体 についてや、隕 石 資 料 の分 析 等 の話 題 についても 紹介することとした。 さらに、「はやぶさ2」の帰 還 が 2020 年に予 定されて いるが、2014 年の時 点での中 学 生 、高 校 生は、「はや ぶさ2」帰 還 の時 点 では大 学 生 、大 学 院 生 になってい るであろう年 代 である。京 都 大 学 、大 阪 大 学 、神 戸 大 学 といった近 隣 で惑 星 科 学 分 野 の 研 究 を行 っている 大 学 に協 力 を求 めるとともに、その研 究 内 容 を紹 介 す ることで、見 学 者 が 惑 星 科 学 分 野 の 研 究 につ いて興 * 大 阪 市 立 科 学 館 、中 之 島 科 学 研 究 所 [email protected] 飯山 青海 ・「はやぶさ2」イラストパネル(池 下 章 裕 画 ) 9点 ・H-2A ロケット 1/20 模 型 (JAXA 関西サテライトオフィスより借 受 ) ・衝突装置地上模擬試験のターゲットと弾丸 (神 戸 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科より借 受) ・イトカワ微粒子輸送用ステンレス容器 (京 都 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 土`山 教授より借受 ) ・イトカワ微粒子拡大模型 (無 着 色 2 点、着色 3 組) (京 都 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 土`山 教授より借受 ) ・太陽電池パドル支 柱 用 部 材・構 造パネル用部材 ・イオンエンジン原 寸 大 模 型 (JAXA 宇 宙 科 学 研 究 所 より借 受) ・ターゲットマーカー原 寸 大 模 型 (JAXA 宇 宙 科 学 研 究 所 より借 受) ・サーマルブランケット ・ターゲットマーカー初 期モデルと落 下 テスト装置 (JAXA 宇 宙 科 学 研 究 所 より借 受) ・はやぶさ帰還 カプセル方 位 探 知 アンテナ 2-2.小惑星探査・物 質 科 学 関 連 資 料 「はやぶさ2」が小 惑 星 に到 着 した後 の探 査 活 動 に 関 連する資 料や、探 査 対 象 の小 惑 星 に関 する資 料や 「はやぶさ」が持ち帰 った小 惑 星 「イトカワ」の試 料分析 ・アエンデ隕石(自然形) に関連する資料を集 めた。 ・アエンデ隕石(スライス) ・分離カメラ(DCAM)開 発 中 モデル (大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 寺 田 教 授 より借 受) (JAXA 宇 宙 科 学 研 究 所 より借 受) ・イブナ隕石 ・衝突装置地上 試 験の弾 頭 回 収 片 (大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 寺 田 教 授 より借 受) (JAXA JSPEC より借 受) ・オルゲイユ隕石 企画展「はやぶさ2」実施報告 (大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 寺 田 教 授 より借 受) 企画展「はやぶさ2」は、2014 年 9 月 2 日(火 )から ・マーチソン隕石 11 月 30 日(日)の期間に開催し、この期間中の展示場 (大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 寺 田 教 授 より借 受) 入場者数は 99,783 名 であった。 ・タギッシュ レイク隕 石 この企画展に合わせて、科学館のミュージアムショッ (大 阪 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科 寺 田 教 授 より借 受) プでは、筆 者が執 筆したミニブック「はやぶさ2、新たな ・神 戸 隕 石(薄 片) る挑 戦 」を 発 売 した 。また 、展 示 場 内 で、本 企 画 展 の (神 戸 大 学 大 学 院 理 学 研 究 科より借 受) 出 展 資 料のリストを配 布 した(次ページ)。2014 年 10 ・ダルムサラ隕石 月 9 日(木 )の中之島研究所コロキウムでは、筆者が本 企 画 展 について講 演 し、講 演 後 にコロキウム参 加 者 と ともに、展示会場を見学して回った。 4.謝辞 本 企 画 展 で は 、 JAXA( 独 立 行 政 法 人 宇 宙 航 空 研 究 開 発 機 構 )をはじめ関 係 各 位 より多 大 なご協 力 を頂 き、展示品をお貸 し下さったことに、この場を借りて篤く お礼申し上げる。 2-3.研究紹介その他の資 料 は や ぶ さ 2 と 相 乗 り で 打 ち 上 げ ら れ る 、 ARTSAT2 DESPATCH の関 連 資 料 や、近 隣 大 学 等 での研 究 内 容を紹介する資料を展 示した。 ・ARTSAT2 DESPATCH 機 体 1/5 模 型 (多 摩 美 術 大 学 久 保 田 教 授 より借 受) ・ARTSAT2 DESPATCH 搭 載 通 信 機 原 寸 大 模 型 (株 式 会 社 西 無 線 研 究 所 より借 受) ・ARTSAT2 DESPATCH 機 体 原 寸 大 イラスト ・「遠 い宇 宙 から弱 い信 号 を受 信 し、宇 宙 機 を追 跡 する技術」 (JAXA 研 究 開 発 本 部 広 報 誌「宇 宙 開 発 最 前 線!」 vol.3 掲 載 記 事) ・研究 紹 介 (京 都 大 学 、大 阪 大 学 、神 戸 大 学 、多 摩 美 術 大 学) 3.まとめ 大阪市立科学館研究報告 25, 111 - 114 (2015)
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