風 のかたち No.18 安田小学校長 新田 哲之 2015 年 12 月 16 日 体験から広がる想像力 安田小学校には、くすのきという授業があります。くすのきというのは、自立、人間、自然、 社会の分野があり、いろいろな体験的活動を通して「調べる」 「聞く・話す」 「書く」 「まとめる」 といった学習に必要な具体的活動能力や情報活用能力、構想力、コミュニケーション能力とし ての表現力を身につけることを目標にしています。そして、体験活動をする中で、きまりを守 ることや相手を敬うこと、自然を大切にする心や公徳心といった道徳性を身につけることを目 標にしています。 4 年生に学習単元「共に生きる」があります。高齢者体験や車いす体験、ろうあ者体験を行い、 体験を通じてその人について理解し、自分の身の回りのことに気づき、自分には何ができるか を考える授業です。高齢者疑似体験セットを身につけて目がかすみ、膝や肘が曲がりにくくな ることを身をもって体験した子どもは、身の回りのお年寄りにも思いをはせることができるよ うでした。 「店のレジに行った時に前にいるおじいさんがお金を払うのが遅いのでいらいらした けど、遅くなるのは当たり前だと分かった。」と気づく子ども。「車いすに乗ってみると歩く人 たちのスピードがとても速いと分かった。車いすに乗っている人と歩くときは車いすの人の速 さに合わせなければ」と考える子ども。めいめいが体験を通して生活の不便さを理解し、心寄 り添う気づきを持つ子どもたちでした。ろうあの方の話を聞く機会があり、耳が聞こえなくて 困ることの多い生活を知ったのですが、 「手話があって便利なことがありますか?」という質問 があり、大人にはない子どもの楽天性が見えました。ろうあの方から、 「海にもぐったときも話 ができるから手話は便利だよ。」と教えられ、不便なことばかりではないことも理解しました。 体験活動を組み合わせ、理解と気づき、思考のある学びをつくった教師の授業力と、体験を受 け止める素直な心を育んでいる保護者の力を感じます。 子どもの想像力の確かさもあります。ろうあの方の質問にこんなものがありました。 「朝起きるとき、どうするのですか?」 「買い物に行ったとき、金額がわからないからどうするのですか?」 耳が聞こえないことはどういうことなのか?聞こえない者でなければわからないことですが、 想像することならできます。目覚まし時計の音が聞こえない世界が想像できる子ども。この想 像力が、「共に生きる」学習の鍵です。 心で感じる体験をさせて、想像力をかきたてる学習で、子どもは社会にも目を向けるように なります。 今日、バスに乗って帰っていると、くすのきで学んだバリアフリーの工夫をたくさ ん見つけました。一つ目は、車いすの人のために乗り降りの時、スロープが引きおろ せるという工夫です。二つ目は、目の見えない人のために車内アナウンスがありまし た。三つ目は、耳の聞こえない人のために電光けいじ板がありました。このように、 しょうがい者のための工夫をユニバーサルデザインというそうです。 わたしは大きくなったら、ユニバーサルデザインの仕事をしてみたいです。 4 年生の生活ノートより抜粋
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