PLM

課題:
PLM の価値を高める
ビジネス・インテリジェンス
解析により新しい価値の創出を
可能にする成熟した PLM
© Tech-Clarity, Inc. 2009
目次
目次............................................................................................... 2
課題の概要 .................................................................................... 3
PLM データの付加価値の発掘 ...................................................... 4
PLM の BI 化による付加価値の源泉 .............................................. 6
PLM の BI 化に関する特別な考慮事項 .......................................... 7
まとめ ........................................................................................... 8
推奨事項 ....................................................................................... 8
著者について ................................................................................ 9
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© Tech-Clarity, Inc. 2009
課題の概要
これまでに登場してきた他のエンタープライズ・アプリケーションのように、
製品ライフサイクル管理(PLM)は成熟期を迎え、膨大な量の価値あるビジ
ネス情報を扱えるようになりました。しかしながら、これまでのアプリケー
ションと同様、導入直後は、データを取り出せなかったり、活用できなかっ
たりすることがよくあります。現在の PLM は、次の 2 つの重要な側面におい
て成長しています。
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製造企業では、成長曲線に合わせて PLM の利用が拡大
進化し拡張された PLM には、技術的な情報に加えて、より価値のある
ビジネス重視のデータを蓄積
PLM に投資したほとんどの製造企業では、製品データを管理するという PLM
導入当初の目的を達成しています。現在、それらの製造企業は PLM をさらに
拡張し、1990 年代後半に大手製造企業の間で考案された、製品データの「唯
一の正しい情報源(one source of truth)」へと発展させています。PLM の利
用が成熟するにつれて、製造企業はコア機能を利用して、新しい付加価値の
源泉となるように PLM を拡張させています。PLM の利用は、製品ライフサ
イクルのさまざまな人や業務、さらには製品のさまざまな側面に拡張されて
います(図 1)。PLM ソリューションも、製品コンプライアンスやサービス
管理などのビジネスプロセスをサポートできるまでに拡張されています。同
時に、PLM に含めることができる情報も拡張され、より詳細な製品情報を提
供できるようになりました。今では技術的な仕様だけでなく、市場情報が含
まれるケースもよくあります。この進化によって、優れたビジネス上の意思
決定を行うための情報活用の潜在的価値が、非常に大きくなっています。
図 1:PLM の拡大と進化
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アプリケーションと導入の成熟が相まって PLM の大きな真価が発揮される条
件が整っています。PLM システムに今蓄えられているデータは、製造企業に
とって未開発の付加価値の源泉です。現在、PLM リポジトリで生成および保
存される豊富な製品ナレッジを開発するために、企業はビジネス・インテリ
ジェンス(BI)に目を向けています。ERP、カスタマー・リレーションシッ
プ・マネージメント(CRM)、およびこれまで実証されてきたその他のエン
タープライズ・アプリケーションのように、戦略的および戦術的なビジネス
バリューの登場を待っています。
PLM システムに今蓄えられているデータは、
製造企業にとって未開発の付加価値の源泉です。
PLM データの付加価値の発掘
PLM データは、企業の PLM の導入および拡大により、静かに蓄積されてきた
資産です(図 2)。信頼できる製品およびプロセスのデータが利用可能で上手
に管理できれば、ビジネス上の詳細情報を把握でき、もっと豊富な情報に基
づいた意思決定を行うことができます。今日の成熟した PLM システムは、製
品データを製品ナレッジ、そして製品インテリジェンスへと進化させ、付加
価値を拡張する準備が整っています。次の定義について考えてみてください。
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データ – 収集および管理されている情報
ナレッジ – データを検索および再利用が可能な状態にしたもの
インテリジェンス – ナレッジを集約して解析し、企業側へ見える状態
にしたもの
企業がこの論理を発展させることで、情報から得られる付加価値は指数関数
的に増加します。企業が製品インテリジェンス思考になれば、PLM 情報を活
用して、製品、プロジェクト、および製品に関連したプロセスの詳細情報を
把握し、提供できるようになります。集約されたデータを活用すると、改善
に向けた傾向や機会を特定するのに役立ちます。例外をレポートすれば、具
体的な問題を迅速に特定できるため、問題が大きくなる前に対応できます。
ダッシュボードは、プロセスとチームの管理に役立ちます。アドホック分析
では、戦略的観点からビジネスに関するより良い意思決定を行うために必要
な情報を入手できます。成熟の最終段階では、データマイニングにより傾向
や例外の特定ができるのです。これらの傾向や例外を分析することで、新た
な理解を得たり、継続的な改善に役立てることができます。このように、BI
は、日常の問題を特定して解決するのに役立つだけでなく、戦略的な問題を
発見するのにも役立ちます。
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企業が製品インテリジェンス志向になれば、PLM 情報を活用して、
製品、プロジェクト、および製品に関連したプロセスの
詳細情報を把握し、提供できるようになります。
図 2:PLM ビジネス・インテリジェンスのバリューマップ
PLM におけるデータの収集は、部品表(BOM)および CAD ファイルを管理
し、仕様などのクリーンな製品データのための中央集約型のソースを準備す
る程度の「簡単」なことです。ナレッジになれば、製品およびコンポーネン
トを検索できるようになり、再利用が促進されます。また、エンジニアが既
存の製品データを活用できるので、ホイールを何度も作成せずに済みます。
重複する部品やコンポーネントを検索するメカニズムを活かして、部品の統
合によるコストおよび品質面でのメリットを活用することもできます。製品
インテリジェンスへと拡張されると、市場投入時間の短縮に役立つステータ
スレポートの作成が可能になります。ステータスレポートによって、早い段
階でのプロジェクトの問題の報告、製品の投入を遅らせかねない成果物の不
備を見つけたり、BOM が法令を順守しているかどうかの分析、安価なコン
ポーネントと本質的に変わらない高価なコンポーネントの特定、製品要件の
解析、継続的な改善を通じて対処できるようなサービス共通の問題をサービ
スデータのマイニングによって見つけることなどができます。たとえば、BI
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を使用して故障を解析し、現在および将来の FMEA(故障モード影響解析)
を改善したり、根本原因を解析することができます。または、解析を行って
多数の変更が要求されている製品を特定し、その理由を調査して、改善方法
を決定できます。
PLM を BI 化することで、現在のプログラムおよびプロジェクトに対する可
視性を高めたり、変更が人、時間、コストなどのプロジェクトリソースに与
える影響を軽減したりできます。ダッシュボードおよびレポートでは、人、
製品、プロセス、成果物、ライフサイクル情報に関する詳細情報を把握でき
るため、製品を深く理解でき、製品の収益性を高めることができます。情報
を見える状態にすることで、製造企業は製品イノベーション、製品開発、エ
ンジニアリングパフォーマンスを把握して改善することができます。
ダッシュボードおよびレポートでは、人、製品、プロセス、成果物、
ライフサイクル情報に関する詳細情報を把握できるため、
製品を深く理解でき、製品の収益性を高めることができます。
PLM の BI 化による付加価値の源泉
PLM は、既に大きな付加価値を製造企業にもたらしています。レポートおよ
び解析機能を導入することで、それらの付加価値をさらに拡張できます。BI
により個々の効率を向上させる機会を特定するのは、難しくありません。た
とえば、レポート機能を使用すれば、多くのプロジェクトで成果物の作成を
効率化できます。BI 構想による確かな ROI を得るには、これだけで十分かも
しれません。とはいえ、BI は、さらに大きな利益の獲得が見込める多くの分
野にも応用できます。以下のような例があります。
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問題を早期に特定できるため、コストの超過および市場投入期間の
遅延につながるプロジェクトおよび製品のやり直し作業を削減できる。
サービス部門とエンジニアリング部門が連携し、設計内容を改善する
ことで、製品の品質を向上させることができる。
製品開発プロジェクトの適時性および審査会の効果を改善できる。
コストを削減できる機会や問題の原因を特定できます。
部品を統合できる機会を特定できる。
コスト、品質、納期など、サプライヤの総合的なパフォーマンスを
把握して改善するためのサプライヤダッシュボードを作成できる。
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これらの改善だけでなく、BI 化することで、プロセスを継続的に改善するこ
とができます。製品、プロジェクト、プロセスの履歴を解析することで、企
業はベストプラクティス(効果があるプロセス)および改善点(効果がない
プロセス)を特定できます。シックスシグマ形式のプログラムで形式化され
たプロセス指標を使用するか、マネージャにとってのパフォーマンスの可視
性を向上させることで、これを実現することができます。いずれにしても、
PLM の BI 化には、「知識(ナレッジ)は武器なり」という古い格言がよく
当てはまります。
PLM の BI 化には、「知識(ナレッジ)は武器なり」という
古い格言がよく当てはまります。
PLM の BI 化に関する特別な考慮事項
ほとんどの製造企業にとって、BI 化によって新しいビジネスバリューが見出
されるのは目新しいことではありません。多くの企業では、既に BI インフラ
ストラクチャが整備されています。とはいえ、PLM には他のエンタープライ
ズ・アプリケーションと大きく異なる点があることを認識しておくことが重
要です。効果的なダッシュボードおよびチャートが提供されているかどうか
も大切ですが、最も実用的かつ目的に適した方法で付加価値を引き出せるか
どうかという点から、使用するツールを決定する必要があります。BI ツール
は、BI の導入を成功させる必要条件の 1 つにすぎません。PLM 戦略において
効果的な BI を開発するには、エンジニアリングおよび製品開発、さらにはマ
イニング対象の特定のソフトウェアアプリケーションに関する知識が必要で
す。最も優れた BI ツールであっても、特定の要件を満たしていなければ、
PLM データを開発する最も効率的でコスト効果の高いアプローチになるとは
限りません。PLM の BI 戦略を開発するうえで考慮すべき条件には、次のよ
うなものがあります。
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データセキュリティは知的財産(IP)の保護と同等の価値を持つものであ
ると認識していること。
政府が請負業者に求めている成果物、一般的なプロジェクトレポート、
ポートフォリオビューなど、標準的な成果物が利用できる。
BI ツールは、ビジネス解析やカスタマイズの追加を必要とすることな
く、データモデルを認識できなければならない(BI の導入で最も難し
い課題の 1 つ)。
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届いてすぐの状態で、ソフトウェアを使用して業界固有のレポートお
よび規制に的確に対応できなければならない。たとえば、国際武器取
引規制(ITAR)などの規制では、企業に特定の重要情報に対するアク
セスを制限(または報告)することを求めている。
PLM 情報と他のソース(ERP など)のデータを結合する機能が、意思
決定を行ううえで重要な役割を果たす場合がある。
PLM 戦略において効果的な BI を開発するには、エンジニアリング
および製品開発、さらにはマイニング対象の特定の
ソフトウェアアプリケーションに関する知識が必要です。
まとめ
PLM の利用範囲および状況は、ベースとなるデータのマイニングにより大き
な潜在的付加価値を提供できるまでに成熟しています。これらの情報にアク
セスすることで、例外の特定、プロセスの管理および改善、さらには、重要
な情報および付加価値の発見につながることがある戦略的傾向の特定が可能
になります。これらのナレッジを開発する製造企業は、個々の効率および企
業のパフォーマンスを改善することで付加価値を得ることができます。ただ
し、PLM に関して考慮すべき特別な事項があることも認識しておくべきです。
統合された PLM-BI レポートおよび解析アプローチでは、迅速にメリットが
得られ、企業の BI 戦略を補完することができます。
推奨事項
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信頼できる PLM を通じて、完全かつクリーンな製品データを収集して
いることを確認しましょう。
PLM データを活用してビジネス上の意思決定を改善できる機会がない
か探しましょう。
製品の収益性を向上させる優先度の高いレポートや解析を特定しま
しょう。
知的財産や法令に関する要求事項を遵守し、機密性の高い PLM の
データを保護しましょう。
届いてすぐに業界標準の成果物およびレポートが使用できるかどうか
を確認しましょう。
データモデルやリレーションを事前に定義する統合ソリューションに
ついて検討しておきましょう。これにより、どの BI 戦略においても有
利なスタートを切ることができます。
あらかじめ準備された既存のレポートを最初に活用しましょう。新し
いレポートやダッシュボードを早く作成する場合は、これらのレポー
トのベースとなっているデータモデルを活用することがより重要です。
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著者について
独立した調査およびコンサルティング会社である Tech-Clarity 社の社長を勤め
る Jim Brown 氏は、同社の創設者でもあります。Tech-Clarity 社は、ソフト
ウェア技術やサービスに含まれる真のビジネス価値を紹介することを専門と
しています。Brown 氏は、製造業界のアプリケーションソフトウェアの分野
において 20 年以上のキャリアを持ちます。その幅広い経歴には、工業界、
経営コンサルティング、ソフトウェア産業界での役割、PLM や ERP、SCM
など多岐にわたる企業アプリケーションの研究などがあります。
Brown 氏は、経験豊富な研究者であると同時に、執筆および講演活動にも
携わっています。同氏は、会議など、ソフトウェア技術を通じてビジネスパ
フォーマンスを向上させることに情熱を持つ人が集まる所ならどこへでも
足を運び、積極的に講演を行っています。
Jim Brown 氏の連絡先は [email protected] となっています。Twitter ア
カウントは@jim_techclarity です。ブログ(www.tech-clarity.com/ClarityonPLM)
もご覧ください。
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