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2015.03.03
今話題のマインドフルネスとは
佐藤 久子
私が主な技法として 使わせていただいているのは、 マインドフルネスをベースにした ハコミセラピー です。
これは1970年代の終わりに、アメリカのロン・クルツ氏がメソッドに応用して発展したサイコセラピー
で、 日本には1980年代に 入ってきました。
私自身は1990年代後半に、 ハコミセラピーを学んでいらした手塚郁恵氏と出会い ました。
私は 10 代の後半からずっ と、乳幼児 の こころの健康な 発達はどのように阻害されてしまうのか 、無 意
識下から現れる感覚的思い込みや信じ込み・認識はどのように作られ、終わらせる ことが可能なのか
ということに関心を持 ちながら、 2008年まで 手塚氏に学ばせていただきました。
金 銭 的 ・ 時 間的 事 情もあ り 、 日 本 ハ コ ミ 研究 所 の 認 定 は と り ませ ん で し た が、 日 本ハ コ ミ 研 究 所 代 表 の
高 尾 氏 に もご 了 解 をい た だ て 、手 塚 氏 ・玉 木 氏 ( 現 日本 ハ コミ 研 究 所 の オ ー ガナイ ザ ー) と と もに 、 ハコ
ミに関する共著も出版させていただきました。
その後、 手塚氏の元を離れた今も、 継続して講座やセッションを行わせていただいて います。
現在では都内のメンタルクリニックの心理士としても活動をしており、また、出張で行う個別カウンセリ
ングでも、ハコミセラピー の技法を随所に取り入れさせていた だき、 大変ご好評をいただいています。
不 安 を 煽 られ る よ う な 出 来 事 ば か り の 今 、 ネ ガ テ ィブ な 感 情 ( 不 安 だ け で な く 、 悲 し み ・ 憎 し み ・ 怒 り ・ 辛
さなど)を 投げつけ合っている ような この現代で生きるのは 、大変なことです。
ハ コ ミ セ ラ ピ ー で 用 い る マ イ ン ド フ ル ネ ス と い う 意 識 状 態 は 、 簡 単 な わ り に は 、 ス ト レス 解 消 に も大 き な
効果があり、これにハコミセラピーのメソッドを併用すると、トラウマの昇華に も非常に効果的です。
私たちは普段、イライラや不安・焦りなど 、たくさんの感情を感じています。
つい「相手が悪い」 、「 なぜ解らないのか 」と相手にぶつけたくなります。
しかし感情を投げても、感情がかえってきて、大抵の場合はエスカレートしてしまいます。
感情の投げ合いという連鎖を自分の中で終わらせて、(相手が理解できなくても)揺るがない自分へと
ステップアップすることは可能です。
人本来 の持 つ、 あた たか さ・や さ し さ・喜 びなどのよ うな ポ ジ テ ィブな気 持ち を プ レゼン ト しあ う 世 の 中に
なっていって欲しい・ ・・その ために も、このセラピーは ぜひ必要だと思う のです。
このセラピーで、ご自分の成長プロセスを、さらに 高めて欲しいと思っています。
マインドフルネスを使ったセラピー
近 年 、 グー グ ル 社やイ ン テル 社 も社 内 の作 業 効 率 ア ッ プに 使用 し て い る「 マイ ン ドフル ネ ス」 は 、 日 本 う
つ病学会や日本産業精神保健学会など、あち らこちらでその名前が聞かれるようになりました。
マインドフルネスとはいったい何でしょう?
版権・著作権は Rejoice Communion と佐藤久子 にあります。コピー配布は可能ですが、加筆・修正等を禁じます。
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電車の中で夢中で本を読んだ経験は、誰にでもあるものと思います。
こ の 本 に 集 中 し て い る 状 態 で 、 本 の 代 わ り に 自 身 の 感 情 ・ 感 覚 に フォ ー カ ス す る の が マ イ ン ド フ ル ネ ス
です。
セ ッ シ ョ ン で は 、 マ イ ン ド フル ネ ス と い う 瞑 想 の 状 態 を 用 い る こ と で 、 普 段 は 気 づか な い よ う な 微 細 な 感
情・感覚にも気づくことができます。
た だ し 、 夢 中 で 本 を 読 ん で い る 時 と 同 じ 状 態 で す か ら 、 途 中 で 辞 め よ う と 思 え ば 、 簡 単 に 辞 め る こ とが
できます。
無意識と繋がる ということ
大 抵 の 場合 、人 は 悩ん だ り 苦 しん だ り してい る 時、 頭で はど う した らい い の か そ の 解決 方 法 は知 って い
るにもかかわらず、その通りにしようとしても、心や感情やいつもの行動は 思うように変ってくれないと
いう現実 があります。
た と え ば 人 目 が 気 に な る 人 が 、 「 人 目 を 気 に し な け れ ば い い の だ 」 と 解 る こ と と 、 気 に な らな い よ う に な
ることは別です。
「気にしないよう にすればいい」という、 頭 の理解は簡単です。
け れ ど そ の 方 は 、 気 に す る こ と を 止 め よ う と し て も、 「 止 め た く て もや め られ な い “ 感 覚 ” や “ 気 持 ち ” 」 が
湧き上がってきてしまう ・・・だから止めたいのに止められないので す。
この感覚 や気持ちの奥に、やめられない 訳(一般的には原因と呼ばれる理由)があります。
無 意 識 に 気 に し て し ま っ た り 、 気 に す る こ と を 止 め られ な い 感 覚 や 気 持 ち は 、 生 ま れ た 時 点 で あ っ た も
の で は な い は ず で す か ら 、 そ の 感 覚 や 気 持 ち を ゆ っく り 感 じ て い く と 、 イ ン プ ッ ト さ れ た 時 の 記 憶 に た ど
りつくのは、 実はとても自然なことと言えると思っています 。
ただ、日常の意識レベルでこれらを行おうと思っても、容易な ことではありません。
実は私は長年の経験やつたないながらの知識をもとに確信 していることがあります。
そ れは 、辛 さ・ 悲 し さ・ 恐怖・ 恥ず か し さなど 、強 い感 情・ 感覚を 伴 った 記憶 と い うの は、 身体 の 緊張 とセ
ットで起こるのだ ろうということです。
突然怒られて「ビクッ !」とした経験は誰 にでもあるものと思 いますが、大きく体が動かな くても、肩が上
がったり、上半身が一瞬硬直したりします。
極端な身体反応でなくても、記憶というのは一般的には脳の中にあると考えられていますが、実は身
体の記憶というのもあるのではないかと思うのです。
事実、マインドフルネスになると、8割がたの確 率で、 まず出てくるのは身体の変化です。
「 肩の 辺 り が何 と なく固 い 」 とか 、「胸 の 辺り が 苦 し い」 と か、「の ど の付 け 根に ふたの よ うな 感 じが ある 」
など・・・
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こ の 出 て き た もの に 対 し て 、 無 理 な く 安 全 に ハ コ ミ セ ラ ピ ー の 技 法 を 用 い な が ら ア プ ロ ー チ を し て 、 マ イ
ンドフルネスの状態を深めていきます。
すると自分でも忘れていたようなその時の記憶が出てきたり、 辛い体験をした時に感じていた、こころ
の中のつぶやき などがでてくる ・・・ という流れが生じます。
意識 レベ ルでの 会話 ではなかな かたど り 着けな い記 憶に、マ インド フルネス はか なりの 確率で たどり 着
くことができます。
また、記憶その もの が辛いの ではなく、 記憶に伴 う感情・感 覚が辛い のですか ら、感情・感覚の デドッ ク
スができれば良い ということになります。
お 大 雑 把 に 言 え ば、身 体 感 覚 と い う 入 り 口 を 通 し て 記 憶 の 原点 に た ど り 着 き 、これ らの 感 情 ・ 感 覚 のデ
ドックスを行 う方法と 言えるでしょう 。
慣れて来れば 比較的簡単に、ある程度まで自分でセルフワークできるようになります。
セッションのたどり着くところ
さらに マインド フルネ ス になると、 良い 感じ や嬉し い感 じなど 、 ポジテ ィブな感 じ が 出てくること も良くあ り
ます。
そ れ は こ こ ろ の 基 礎体 力 を つ け る サ プ リ メン ト と 同 じ で す か ら 、 さ らに ゆ っく り と 感 じ て 、 自 自 己 肯 定 感・
自己信頼感を大きく根付かせていく・・・感情デドックスという側面だけではなく、いわば「こころの健康
度をあげる 」ような使い方もできます 。
また、 余談にな りま すが、感情 や感覚・ 身体感覚 の傾 聴が 基本ですの で、 話 し たくないよ うな記 憶 (状況
説明)は、お話しいただかなくても セッションが 可能です。
話したければ話して くださればいいし、話 したくないことは話さ なくてもいい・・・
大切なのは出来事ではなく、その方の中に残ってしまった辛さや苦しさ、悲しみなどのネガティブな感
情・ 感覚なのですから。
ことばに頼らない 感情・感覚を傾聴していく メソッドだからこそ できることと思います。
ご相談者の方が過去の状況を説明する時に、よく言われるトラウマの再体験のような 心理的負担がほと
んど無くて済むと言えます。
(感情・感覚の傾聴というと、他の技法と間違われることがあるのですが、ハコミセラピーをベースにして
いますので、安全にプ ロセスを促す〝プローブ“”ナリッシュメント“などの技法も用いますので、別のもの
と言えます 。)
こ の よ う な 点 で も、 感 覚 ・ 感 情 を 中 心 と し た こ と ば に 頼 らな い こ の 方 法 は 、 従 来 の カ ウ ン セ リ ン グ や セ ラ
ピーとは大きく違うものだと思 います。
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癒しの次にある もの
さ ら に 、 ネ ガ テ ィブ な感 情 や 感 覚 を 「 出せた 」 「受 け 止 め て もらえ た 」 と い う “ 癒 し” で終 わ らず に 、 自 分 自
身が、 苦しい中で今まで精一杯生きてきた自分を 許し、認めることで、真の肯定感を甦えらせます。
こ れ らのセ ッ ショ ンの 積 み 重ね が、 何が おき て も立ち 直 れる自分 を 感 じ、自 分 への信 頼 感に つな が っ て
いき ます。
誰 も が 本 来 持 っ て い る 、 い の ち の 力 強 さ ・ た く ま し さ を 取 り 戻 す こ と・ ・ ・ そ れ は こ こ ろ の 自 己 治 癒 力 と 言
える かもしれま せん。
セ ッ シ ョ ン の 中で 、ネガ テ ィブ な 感 情や 感覚 ・ 記 憶 が出 てき て も、 そ れ が 大き い もの で あ れ ばあ る ほど 、
乗り越えた時の自己信頼感も 、素晴らし いものがあります 。
このように部分的問題解決ではなく、こころの体質改善・根源 からの自己変容可能なこのセラピーを、
これからもぜひお伝 えしていきたいと思っています 。
佐藤久子の共著「ハコミ8つの物語」(2005 年 12 月/春秋社)も合わせてご参照下さい。
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