最近のスポーツ歯学を学ぶ

第
号
平成 年 月 日発行
最近のスポーツ歯学を学ぶ
GSHP
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月 日(日)午後 時から県歯会館 階第 会議室で、会員
人(うち新入会員
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人)が出席し開催した。
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引き続き午後 時から講演会を開催し会員
人と空手、学校関係者
人の計
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人が参加した。講師に鈴木浩司・日本大学松戸歯学部口腔機能学講座専任講師を招へい !
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し、「マウスガードの作製方法から、最近のスポーツ歯学まで」と題し講演した。
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平成
年度岐阜県スポーツ・健康づくり歯学協議会(GSHP協議会)の総会を
総会では岡田東洋志副会長(県歯副会長)
(案)
」の作成。
②プロサッカーチーム「FC岐阜」へのデ
の開会の言葉に続いて髙木幹正会長(同会長)
があいさつした。次に平成
と第
年度事業報告
回国民体育大会準備の進ちょく状況
について岡田副会長から報告があり「GSH
ンタルサポートを、健康サポートとして
月
講話や歯科健診などを行う。
③スポーツ歯学普及啓発事業は、次年度に
P協議会としては出場選手が顎顔面を受傷し
た際の応急処置、マウスガードを中心とした
マウスガード作製セミナーを検討する。
全ての議案は滞りなく可決し、定刻通り閉
スポーツ歯学の普及啓発などのブースの設
置、期間中の選手や関係者に対して救急歯科
日に登録選手・監督・コーチを対象に
会した。
診療を行うなどを検討している」と述べた。
閉会後、廣瀬永康・同事業委員会委員長が
続いて議事と協議に入り、協議では今後の
講師を紹介した後、学術講演会に移った。講
演要旨は次の通り。
活動について次のように決定した。
▽
①「スポーツデンティスト救護マニュアル
マウスガードの作製方法から、最近のスポーツ歯学まで=鈴木浩司講師
.外傷予防とし
話や歯科健診、口腔衛生指導を実施してい
てのマウスガー
る。選手には「なぜ歯が大切なのか」を教育
ド
している。
MGは既製の物とカスタムメイド(CMG)
現在、スポーツ
歯学における研究
の物があるが、既製のマウスガードは適合が
課 題 は、マ ウ ス
良くないので外れやすく会話がしにくい。適
ガード(MG)の
合の良いCMGに替えただけでも集中でき
性能評価と新たな
る。CMGの材質にはEVA(エチレン酢酸
役割とスポーツ選
ビニル共重合体)とポリオレフィンが普及し
手の口腔健康問題である。スポーツ歯学の臨
ている。EVAは加熱するとやや酸味臭があ
床ではいかに選手たちと長く付き合うかが重
る。当科ではポリオレフィン系軟質弾性材料
要であり、MGはあくまで導入にすぎない。
(MG
演者は大宮アルディージャ(サッカーJ
ンの利点はラミネート加工する際に接着剤を
リーグ)のチームドクターを担当しており、
使用せず加熱溶着できることである。またE
選手の歯科的コンディションを整えるため講
VAに比較して吸水性が低い。
講師の鈴木浩司・日本大学松戸
歯学部口腔機能学講座専任講師
―
―
)を使用している。ポリオレフィ
第
種郵便物認可
CMGの一番の目的はスポーツ時の顎顔面
領域の外傷予防である。特にコンタクト系ス
ポーツ(空手道、相撲、ボクシングなどの格
闘技、レスリング、ラグビー、アメリカンフッ
トボール、ラクロスなど)に有効である。歯
列不正(上顎前突、下顎前突、過蓋咬合や捻
転歯)の場合は歯の外傷が多い。
片山幸太郎(陸上自衛隊)氏は、空手道で
CMG装着による外傷予防効果を調べたとこ
ろ、競技のMG装着の義務化前の
年
度以前とCMG装着を義務化した
年
以降では口腔領域の外傷の発生率は全外傷の
% (MG装着義務化以前の
分の
)に激
減したと報告している(図)
。また組手競技
では安全具であるメンホー装着時にも歯の破
折や口唇裂傷が発生したことから、メンホー
装着時でもCMGの必要性がある。その際、
素面用CMGを充当するのではなくメンホー
用CMG(薄い
ミリのシート)の方がより
に対し、顎二腹筋は開口筋である。この結果
快適に使用できる。
CMGは重心動揺を減少し、身体バランス
から最大筋力を発揮するような運動時には強
が向上する効果があり、パワー系(重量挙げ、
い噛みしめは行われず、開口を伴わない顎二
野球、ソフトボール、バスケットボール、ハ
腹筋の強い収縮によって安静空隙以内で顎位
ンドボールなど)
、バランス系(射撃、
スキー、
を保っていることが示唆された。
またMGを装着した状態で最大筋力を測定
ボブスレー、自動車レースなど)のスポーツ
にもCMGが有効であることが分かった。
すると、顎二腹筋の活動量が減ることも分
.MGとスポーツパフォーマンスの関係
かった。このことからMGを装着することで
スポーツ選手は力を発揮するときに本当に
顎が固定され、咀嚼筋の活動量が減ることに
よってプレーに集中でき、その結果パフォー
噛みしめているのだろうか?
トップアスリート達がパフォーマンスして
マンスの向上につながると考えられる。
いる映像を分析すると、力を最大に発揮する
ただしCMGを装着したからといって直ち
時には歯を噛みしめるのではなく顔を引き締
に重い物が持ち上がるというわけではない。
めているというイメージが強い(写真)
。選
トップアスリート育成のためには若年齢から
手の中には舌を突出させて、あたかも顎を固
歯を健康に保ち、早期にCMGを装着するこ
定させているような選手もいる。そこで力を
とが有効である。若い世代からMGを使用し
最大限に発揮した状況での咀嚼筋(側頭筋、
ていれば、大人になっても必要不可欠な物に
咬筋と顎二腹筋)の筋活動様相を計測する実
なるからである。
講演後、活発な質疑応答が行われ、岡田副
験を行った。背筋力を発揮する場面では側頭
筋、咬筋で約
% 、顎二腹筋で
%近
会長が講師に謝辞を述べ閉会した。
【酒向
い筋活動がみられた。側頭筋と咬筋は閉口筋
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秀明】