資料提供 (県政・南部同時) 提 供 日:平成 27 年(2015 年)12 月 17 日(木) 部 局:琵琶湖環境部 所 属:滋賀県立琵琶湖博物館 担 当:大塚泰介 電 話:077-568-4811 E - m a i l:[email protected] 琵琶湖博物館の市民研究グループが、福井県の ラムサール湿地から297種もの珪藻を報告しました 琵琶湖博物館の「はしかけ」グループの『たんさいぼうの会』は、福井県 敦賀市の中池見湿地で「珪藻」の調査を行い、297 種もの珪藻を見出しました。 この研究成果は日本珪藻学会誌『Diatom』に掲載されます。 「はしかけ」は、琵琶湖博物館と理念を共有する人たちが、博物館を利用して自主的な活 動を行う制度です。『たんさいぼうの会』は、その「はしかけ」グループの一つで、単細胞 生物、特に珪藻の研究をしています。現在、滋賀県とその周辺の湿原を主なフィールドとし て、珪藻の種類や組成を明らかにする調査研究を進めています。 中池見湿地は、福井県敦賀市の海岸近くにある泥炭湿地です。日本の重要湿地 500 に選ば れ、またラムサール条約の登録湿地にもなっています。 乾燥化やアメリカザリガニの蔓延などにより、中池見湿地の生物群集は 危機に瀕しています。2012 年に北陸新幹線のルート変更問題が浮上し、今 春に計画が撤回されたのも記憶に新しいところです。今回の『たんさいぼ うの会』の研究成果は、これからの湿地環境の変化を捉える上での重要な 基礎資料であり、日本珪藻学会誌『Diatom』のオンライン版(11 月 26 日 付)や冊子版(第 31 巻)に掲載されます。 論文の概要 『たんさいぼうの会』は、NPO 法人「ウェットランド中 池見」のご案内により、中池見湿地で 2008 年 5 月と 11 月に珪藻の調査 を行いました。 採集した計 50 本のサンプルを手分けして精査することにより、61 属 297 種もの珪藻(うち 36 種は未同定)を分類しました。同定された 261 種中、実に 244 種が、中池見湿地でこれまでに報告がなかった種です。 また、中池見湿地の珪藻植生が、一般的な泥炭湿原よりも水田や潟湖の それに近く、汽水性とされる種を含んでいることがわかりました。 Kihara, Y. Tsuda, K., Ishii, C., Ishizumi, E. & Ohtsuka, T. 2015. Periphytic diatoms of Nakaikemi Wetland, an ancient peaty low moor in central Japan. Diatom 31: 18-44. 写真: Sellaphora moesta (Temp. et H.Perag.) Ohtsuka in Kihara et al. comb. nov. 本論文で Navicula 属から Sellaphora 属へ移され、変種から種に昇格された。
© Copyright 2024 ExpyDoc