4 ラボ日本語教育研修所 Ⅰ 日本語教育施設の所在地及び代表者 1 所 在 地 〒160-0023 東京都新宿区西新宿 8-4-5 電話 置 者 03−3367−2441 2 設 財団法人 3 役職・代表者名 Ⅱ 研究内容 1 研究課題 新聞読解に必要な語彙・表現(中・上級用) 2 研究組織 (代表者名)黒崎亜美 会長 ラボ国際交流センター 平野龍一 (研究員名)関口ゆり 黒崎誠 松森ハルミ 3 新井陽子 斉藤佐和子 丸山伊津紀 研究目的 ビジネスを目的として日本語を学習する者にとっても、また進学を目指す学習者にとっ ても、新聞の読解力を身につけることは大変重要な学習項目である。しかし、新聞記事で 扱われる語彙は多岐にわたり、新聞を読むために導入すべき語彙の選択が難しい。そこで 前年度に引き続き、当研修所では、学習者に新聞記事を与える際に講師の指針となり得る 語彙表の作成を目指し、最近の新聞語彙の出現頻度を調査し、傾向を分析することを研究 課題とした。 Ⅲ 研究成果の概要 1 教材の作成 今回は、出現頻度の高い語彙のうち、慣用句および慣用的表現を扱った。前年度作成し た、新聞でよく使われる語彙をピックアップした語彙表の中から慣用句(および慣用的表 現)80 語を取り上げ、それぞれに例文をつけて教材にした。例文は最近の新聞記事からの 引用である。最近の新聞記事から引用する利点は、1)タイムリーな話題で学習者に印象 付けることができる。2)新聞でよく使われている語彙・表現を同時に学ぶことができる、 である。しかし、これらの例文はいずれは古くなり、そこに使われている語彙・表現も学 習者にとって必要のないものになってしまう可能性がある。したがって、例文は数年ごと に新しいものに差し替える必要があるだろう。 この教材は、ピックアップされた語彙に例文をつけただけのシンプルなものである。こ れをどのように授業に活用するかは各講師に任せられた。以下にその一例を示す。 2 授業での活用 対象:就学生 レベル:中級後半(日本語学習歴約 1000 時間終了) 国籍:韓国・中国 授業手順: (1) 導入すべき語彙の意味を理解させるため、教材の例文とは別に、既習語彙のみか らなる簡単な例文をいくつか紹介する。 (2) 口頭で例文を作ることで、意味の確認。 (3) 教材の例文を読む。 (4) 例文を利用して、慣用句以外の語彙・表現の学習、および話題をもとに自由なデ ィスカッション。 以上の授業を1∼2時限(1時限45分)で行った。1回の授業では6語の慣用句(慣 用的表現)を導入した。 3 授業の成果 扱った慣用句(慣用的表現)は、「拍車がかかる」「本腰を入れる」「針を刺す」「裏目に 出る」など、80語である。前述のように、比較的最近の新聞記事から例文を引用し、語 の意味(概念)を印象深く導入できるようにした。この教材を使用した授業と並行して、 『新 聞要約』(新聞記事を要約する)という授業を行い、導入された語が定着するようにカリキ ュラムを工夫した。 学習者の書いた作文を読むと、導入された慣用句のいくつかを見つけることができ、こ のことから、理解語彙から使用語彙への移行が比較的早く行われていることがわかった。 語句(慣用句)を単独で導入するのではなく、学習者に強い印象を与える例文とともに導 入することで、語句の定着から運用まで(理解語句から試用語句への移行)の時間短縮の 可能性が確認できた。 4 問題点と今後の課題 例文で使われている語句の中には、このレベル(中級後半)の学習者にとっては難しい ものもあり、そのため一つの語句導入に時間がかかってしまうという欠点があった。また、 話題が学習者にとって馴染みの薄いものであったときには、使用されている語句の難しさ と相まって、まったく学習者に受け入れられないというケースもあった。 しかし、逆に話題がタイムリーであったり、学習者の興味と合致した時には、教師の予 測以上に定着した。かつて、同じような構成の市販教材では例文の難しさばかりが浮き彫 りになり、なかなか定着しなかった。それは、その例文の話題が古く、時事性を欠いてい て、学習者が内容を理解する手掛かりがまったくなかったためと思われる。 このように、今回作成した教材は、新聞の読解力をつけるためのもので、印象深い導入 を維持するためには、常に新しい、時事性を有した例文をつけることが重要である。した がって、今の例文も数年ごとに新しいものに差し替える必要があるだろう。 さらに慣用句以外の語彙に関しても教材化することを今後の課題としたい。
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