乾癬・アトピー性皮膚炎の治療戦略

2015年9月10日 第6回薬剤師のためのイブニングセミナー
京都府立医科大学附属病院
尋常性乾癬
薬剤師のためのイブニングセミナー
•厚い雲母様の鱗屑を伴った紅斑局面が,物理的刺激を受け
やすい場所に好発する.
•欧米では50人に1人と高頻度.日本では600人に1人.
乾癬・アトピー性皮膚炎の治療戦略
京都府立医科大学
皮膚科
•厚い鱗屑をはがすと下床に点状出血がみられる(アウスピ
ッツ現象).無疹部皮膚に摩擦,外傷,日光などの刺激が加
わると,その部位に乾癬の皮疹が生じる.
(ケブネル現象)
•乾癬を発症しやすい遺伝的素因が基盤にあると考えられて
いる.
益田浩司
マンローの微小膿瘍
Munro’s microabscess
乾癬治療のピラミッド
水疱内容が膿性(好中球主体)であった場合は膿疱と呼ばれる.
角層下に現れた小さな膿疱をマンローの微小膿瘍と呼び,尋常性乾
癬に特徴的である.
生物学的
製剤
シクロスポリン
エトレチナート
光線療法
(PUVA・UVB・NB-UVB)
外用療法
(ビタミンD・ステロイド)
尋常性乾癬
飯塚
一:乾癬治療のピラミッド計画,日皮会誌:109(6)
1285-1293,2006
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2015年9月10日 第6回薬剤師のためのイブニングセミナー
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簡易版 アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2012
簡易版 アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2012
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PUVA療法
・光反応を増強する物質 ソラレン
(psoralen)を外用または内服後、
UVAを照射する。
・表皮細胞・リンパ球のDNA合成
阻害、色素細胞刺激などの紫外
線の作用により効果を発揮
・乾癬、白斑、掌蹠膿疱症などに
有効
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乾癬とその併存疾患にはTNFが深く
関与していることが示唆されています
抑うつ、疲労感、
睡眠障害、認知症
ブドウ膜炎
Eyes
Nervous
System
心血管系疾患
心血管系疾患
Vascular
System
Heart
TNF
慢性閉塞性肺疾患、
睡眠呼吸障害
メタボリック症候群
(糖尿病、脂質異常)
Pulmonary
System
Metabolic
Syndrome
Joints
Gastrointestinal
Tract
関節症性乾癬
クローン病
乾 癬
Skin
Nijsten T, et al. J Invest Dermatol 2009; 129:1601–3.より作図
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生物学的製剤の対象患者
①
皮疹がBSAの10%に及ぶ患者
(広く使用されているのが、“rule of 10s”でBSA10%以上、またはPASIスコア10
以上、またはDLQI(Dermatology Life Quality Index)スコア10以上のいずれ
かを満たす患者)
②
既存の全身療法で満足のいく効果が得られない患者
③
既存治療抵抗性の難治性皮疹または関節症状を 有し、QOLが高度に障害
されている患者。
④
紫外線療法・内服の全身療法で、
(ⅰ) 満足のいく治療効果が得られない患者
(ⅱ) 副 作 用 が 発 現 し て お り 、 十 分 な 用 量 の 内 服 ま た は 照 射 が で き な い
患者
(ⅲ) 治療は有用であるが減量や中止により容易に再燃を繰り返すため減量
中止が困難で、長期にわたる蓄積性副作用が強く懸念される患者
(ⅳ) 治療禁忌となるような合併症などの存在により治療が困難な患者
乾癬における生物学的製剤の使用指針および安全対策マニュアル(2011年版)
薬剤名
Adarimumab
Infliximab
Ustekinumab
Secukinumab
商品名
ヒュミラ
レミケード
ステラーラ
コセンティクス
構造
ヒト型モノク
ローナル抗体
キメラ型モノク
ローナル抗体
ヒト型モノク
ローナル抗体
ヒト型モノク
ローナル抗体
標的
TNF-α
TNF-α
IL-12/23p40
IL-17A
注射形態
皮下注射
静脈注射
皮下注射
皮下注射
投与間隔
2週間
0,2,6週
以後8週間隔
0,4週
以後12週間隔
0,1,2,3,4週
以後4週間隔
・NYHA分類III度以上のうっ血性心不全
を有する患者
乾癬における
国内での承認
状況
尋常性乾癬
関節症性乾癬
尋常性乾癬
関節症性乾癬
乾癬性紅皮症
膿疱性乾癬
尋常性乾癬
関節症性乾癬
尋常性乾癬
関節症性乾癬
・現在、悪性腫瘍を治療中の患者
国内における
他の適応疾患
関節リウマチ
強直性脊椎炎
クローン病
潰瘍性大腸炎
ベーチェット病
関節リウマチ
強直性脊椎炎
クローン病
潰瘍性大腸炎
ベーチェット病
なし
なし
投与禁忌
・活動性結核を含む重篤な感染症を有
する患者
・脱髄疾患(多発性硬化症等)及びその
既往歴がある患者
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TNFα阻害療法(RA)と心血管系イベントの発生率の関係
乾癬患者における心筋梗塞の調整相対リスク(年齢別)
TNFα阻害療法
10
30歳の乾癬患者は,
重症乾癬患者群
軽症乾癬患者群
相対リスク( %信頼区間)
心筋梗塞のリスクが
軽症の場合1.29倍
重症の場合3.10倍!
95
未施行
件数
人・年
件数
人・年
20-39
0
13.1
1
19.4
40-49
0
14.7
0
54.2
50-59
2
58.1
4
126.7
60-69
1
43.5
9
176.9
70-79
0
11.4
12
137.3
男性(年齢層)
女性(年齢層)
1.0
0.5
施 行
20
30
40
調整相対リスク(対数グラフ)
50
年 齢
60
70
80 (歳)
20-39
0
89.9
1
136.4
40-49
1
102.1
1
235.6
50-59
3
165
60-69
3
乾癬治療のピラミッド
402.8
19
406.5
70-79
3
60.5
24
370.9
合 計
13
655.6
85
2066.7
年齢・性別調整/
1000人・年(95%Cl)
Gelfand J, et al. JAMA 2006 ; 296(14) : 1735–1741.
97.5
14
14.0(5.7-22.4)
35.4(16.5-54.4)
Jacobsson LT, et al. J. Rheumatol 2005; 32 (7): 1213-1218.
*アトピー性皮膚炎とは
皮膚のバリア機能低下(乾燥肌)による刺激に対する敏感さ
生物学的
製剤
(敏感肌)に、アトピー型アレルギーなどさまざまな増悪因子
が加わることによって、皮膚炎が悪化と軽快を繰り返す疾患。
シクロスポリン
エトレチナート
光線療法
(PUVA・UVB・NB-UVB)
アトピー性皮膚炎≠アレルギー
アトピー性皮膚炎≠一つの原因
外用療法
(ビタミンD・ステロイド)
飯塚
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アトピー性皮膚炎のできるしくみ
① 表皮のバリア機能低下(乾燥肌)
*角質細胞間脂質
乾燥肌(敏感肌)
セラミドが主成分
刺激
*皮脂膜
トリグリセリドが主成分.
思春期に増加
*天然保湿因子
アトピー性皮膚炎
フィラグリンなど
*皮膚の保湿因子
アトピー性皮膚炎では、表皮のバリア機能低下によって、汗、衣服との摩擦などの
軽微な刺激に反応して、皮膚炎を起こしやすい。
アトピー性皮膚炎患者の乾燥肌と敏感肌
*乾燥皮膚の角層構造
健常な角層
角質細胞間脂質を除去した角層
アトピー性皮膚炎患者は、表皮からの水分蒸散量が多く(乾
燥肌)、さまざまな刺激に過敏に反応して皮膚炎を起こしや
すい(敏感肌)。
バリアの改善が重要
→
保湿
角質細胞間脂質が減ると、皮膚の表面が粗くなり、すき間がたくさんできてくる
(モルモット皮膚の走査電顕写真)
8
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アトピー性皮膚炎患者の
年齢別特異IgE抗体陽性頻度
アトピー性皮膚炎のできるしくみ
② アレルギーの合併
乾燥肌(敏感肌)
刺激
ヒョウヒダニ
100
刺激
アトピー性皮膚炎
陽性頻度(%)
80
アレルギー
60
40
卵白
20
0
0
アトピー性皮膚炎では、アレルギー反応によってさらに皮膚炎が悪化すること
がある。
アトピー性皮膚炎の定義・診断基準
アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある
湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー
素因を持つ.
アトピー素因:①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレル
ギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、
あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生しやす
い素因
2
4
6
8
10
12
14
16
年齢(歳)
アトピー性皮膚炎の定義・診断基準
1. 瘙痒
2. 特徴的皮疹と分布
皮疹は湿疹病変
分布は左右対側性(好発部位:前額、眼囲、口囲・口
唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹)
3. 慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する)
乳児では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上を慢性と
する
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治療目標
検査値による評価
1. 症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生
活に支障が無く、薬物療法もあまり必要としない
血中好酸球数
血清総IgE値
正常値の場合もある
LDH
肝機能障害でも上昇
血清TARC
短期的な病勢マーカー
2. 軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化
することはまれで悪化しても遷延することはない
悪化因子の検索・生活指導・薬物療法
アトピー性皮膚炎の発症・悪化因子
2歳未満
2-12歳
13歳以上
生活指導
 入浴やシャワーにより皮膚を清潔に保つ
 室内を清潔に保ち、適温適湿の環境を作る
 規則正しい生活を送り、暴飲・暴食は避ける
 刺激の少ない衣服を着用する





食物
汗 乾燥 掻破
物理化学的刺激
ダニ、ほこり、ペット
細菌・真菌






汗 乾燥 掻破
物理化学的刺激
細菌・真菌
ダニ、ほこり、ペット
ストレス
食物
 爪は短く切り、搔破による皮膚障害を避ける
 顔面の症状が高度な例では眼科医の診察を定期
的に受ける
 皮膚感染症を生じやすいので、皮膚を良い状態に
保つよう留意する
10
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*
*
卵や小麦といった分子量の大きなアレルゲン
通常は透過しない×
透過して感作成立○
ピーナッツアレルギーを発症した児は、ピーナッツから抽出したオイルの使
用頻度が有意に高い。(P=0.02、 χ2検定)英国では新生児から入浴後にオイ
ルを塗布している。
Lack G et al :N Engl J Med. 2003
13;348(11):977-85
ピーナッツアレルギーを発症した乳幼児は、乳幼児と母親以外の他の家族の
ピーナッツ摂取量が有意に多く(P<0.0001、 Wilcoxon rank-sum 検定)、
妊娠・授乳中の母親の摂取量とは関連性はない。また、生後12ヵ月までに摂
取を開始した乳幼児が、12ヵ月以降に開始した乳幼児よりもピーナッツアレ
ルギーになりにくい。(P =0.0012、Wilcoxon rank-sum 検定)
Fox AT et al : J Allergy Clin Immunol
123(2):417-23, 2009
乳児期の湿疹をしっかり治療することは、
アレルゲンの経皮感作やアトピー性皮膚炎の発症予防につながる
監修:国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 アレルギー科 医長 大矢 幸弘 先生
乳幼児期に湿疹のある児は、湿疹のない児に比べて、その後の食物抗原に対
する感作の頻度が有意に高い(P<0.001 trend test)。重度な湿疹がある
とピーナッツ特有IgEを保有する。
監修:国立成育医療研究センター
医長 大矢 幸弘
Du Toit G et 生体防御系内科部
al : J Allergy アレルギー科
Clin Immunol
*二重アレルゲン曝露仮説
先生
アトピー性皮膚炎の治療
保湿剤
乾燥肌(敏感肌)
アレルゲンの侵入
アレルギー
バリア機能低下
刺激
掻破
抗アレルギー剤
痒み
アトピー性皮膚炎
ステロイド
プロトピック
Lack G, J Allergy Clin Immunol, 121(6), 1331-1336, 2008 一部改変
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アトピー性皮膚炎の診療の手順
塗り薬の使用量の目安
(診療ガイドラインより引用改変)
剤形による使い分け
•軟膏
皮膚表面を覆い、蒸散する水分を貯留させる
ベタつくため使用感が悪い
•クリーム
直接の保湿作用
ベタつかず使用感がよい
•ローション
皮膚刺激性が強い
個人により使用感に差
季節により使い分け
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スキンケア(異常な皮膚機能の補正)
本症患者にはさまざまな皮膚機能異常があり、それらが皮膚炎の発症および
増悪に深く関わることが知られている。これらの皮膚機能異常の補正のために
適切なスキンケアが必要である
スキンケア(異常な皮膚機能の補正)
1. 入浴、シャワーによる皮膚の清潔
 汗や汚れは速やかにおとす。しかし、強くこすらない
アトピー性皮膚炎における主な皮膚機能異常
 水分保持能・バリア機能の低下:
アトピー性皮膚炎の皮膚では角層の天然保湿因子の減少、細胞間脂質の主な成分で
あるセラミドの低下がみられる。このため、角層の水分保持能、皮膚バリア機能の低下
がみられ、抗原の侵入が容易な状態にある
 痒みの閾値の低下:
アトピー性皮膚炎では知覚神経の表皮内への侵入・伸長がみられ、軽微な刺激でも
痒みが生じやすい
 石けん・シャンプーを使用するときは洗浄力の強いものは避ける
 石けん・シャンプーは残らないように十分にすすぐ
 痒みを生じるほどの高い温度の湯は避ける
 入浴後にほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤は避ける
 患者あるいは保護者には皮膚の状態に応じた洗い方を指導する
 入浴後には、必要に応じて適切な外用薬を塗布する
 易感染性:
伝染性膿痂疹、単純ヘルペス、伝染性軟属腫など皮膚の感染症に罹患しやすい
スキンケア(異常な皮膚機能の補正)
付表2.保湿・保護を目的とした主なスキンケア外用薬(医薬部外品を含む)
一般名
2. 外用薬による皮膚の保湿・保護(付表2)
保湿・保護を目的とする外用薬は皮膚の乾燥防止に有用で
ある
ヘパリン類似物質含
有
ヒルドイドクリーム、ヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイド
ローション(0.3% ヘパリン類似物質含有)
尿素製剤
ケラチナミン軟膏(20%)、
パスタロンソフト(10%)、パスタロンローション
(10%)、
ウレパール(10%)、ウレパールローション(10%)、
フェルゼアHA20クリーム(20%)、フェルゼアDXロー
ション(10%)
入浴・シャワー後には必要に応じて保湿・保護を目的とす
る外用薬を塗布する
患者ごとに使用感のよい保湿・保護を目的とする外用薬を
選択する
軽微な皮膚炎は保湿・保護を目的とする外用薬のみで改善
することがある
代表的な製品名
1)皮表の保湿を主としたもの
2)皮表の保護を主としたもの
白色ワセリン
局方白色ワセリン、
サンホワイト(精製ワセリン)、プロペト(精製ワセリ
ン)
亜鉛華軟膏
サトウザルベ(10%亜鉛華軟膏)、
ボチシート(リント布に10%亜鉛華軟膏塗布)
その他
アズノール軟膏(ジメチルイソプロピルアズレン含有)
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* ステロイド外用剤の種類
* ステロイドはどこに塗るのか
ステロイドはいつまで塗るのか
Ⅰ群
strongest
デルモベート
ジフラール、ダイアコート
Ⅱ群
very strong
フルメタ、アンテベート、トプシム
マイザー、ネリゾナ、リンデロンDP
Ⅲ群
strong
ボアラ、リンデロンV、フルコート
メサデルム、プロパデルム
Ⅳ群
mild
ケナコルトA、アルメタ、ロコイド
キンダベート、リドメックス
Ⅴ群
weak
プレドニン、
ステロイドを塗るべき部位
皮膚に丘疹、浸潤、掻破痕など立体的な変化を
ふれる部位
保湿剤を全体に塗るときの触感を参考にする
やめるタイミングは
皮膚の立体的な変化がなくなるまで
見た目(赤みがひいた)や痒みの有無で決めない
reactive 療法
ステロイド外用剤について
proactive 療法
●ステロイド外用剤は、体の部位に
よって、吸収率が違います。
●悪化因子対策、スキンケアは忘れ
ないようにしましょう。
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2015年9月10日 第6回薬剤師のためのイブニングセミナー
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*タクロリムス軟膏(プロト
* タクロリムス軟膏(プロトピック®)
ピック®)
かゆみに対してはステロイドよりも効果が高く、かゆみによ
る掻破のため皮疹の改善が得られない例にきわめて有効であ
る。
strongのステロイドに匹敵する抗炎症作用があるが、即効性
はステロイドに劣る。
アトピー性皮膚炎の診療の手順
使用上の注意点
1.
使用初期には約半数に皮膚刺激性がある。まずステロイドの外用でび
らんや掻破痕を軽快させてから使用する。
2.
高度の苔癬化や痒疹結節を伴う重症の皮疹に対してはステロイド外用
剤にて改善後に使用すること。
3.
0.1%は16歳以上、0.03%は2~15以下を対象とする。妊婦・授乳
婦には使用しない。
4.
5.
6.
7.
使用量は成人には1日1~2回、1日10gまで。
潰瘍、びらんや、粘膜、外陰部には使用しない。
紫外線照射は併用できない。
皮膚感染症を伴う場合には使用しない。
アトピー性皮膚炎の痒み
・ヒスタミン 1 レセプター
・オピオイドペプチド
・ヒスタミン 4 レセプター
・表皮内神経線維
・好酸球由来組織障害性蛋白(ECP. MBP)
・神経ペプチド(サブスタンスP)
・サイトカイン(IL-1, 2, 31, TNF-a)
・プロテアーゼ(トリプターゼ、トリプシン)
・ロイコトリエン
(診療ガイドラインより引用改変)
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シクロスポリン内服療法
フェキソフェナジン併用群*1はステロイド外用剤単独
群*2に比べ痒みスコアを投与開始翌日より有意に減少
•ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬など既存の治療で
十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が体表面積の
30%以上に及ぶ16歳以上の患者
•1日量 3mg/kgを1日2回に分けて経口投与する
•血清クレアチニン(s-Cr)、血圧およびシクロスポリン血
中濃度の測定を、原則として治療開始2週後、4週後に行
う
•8週間、最長12週間で中止し、中止後に再燃が見られた場
合は2週間以上あけて再投与する
大規模なランダム化二重盲検群間比較試験により有用性が証明
Kawashima M, Tango T, et al. Br J Dermatol. 2003; 148: 1212-21
安全性に関するポイント
アトピー性皮膚炎に対するシクロスポリン
腎機能
S-Crが異常を示した場合、または投与前値より 30% 以上
上昇した場合は、25~50 % 減量、あるいは中止
血圧
血圧上昇時は腎保護作用を有する降圧薬(ARB, ACE-I など)
抗ヒスタミン薬が無効の痒みに著効することが多い(痒疹
などの頑固な痒みにも有効)
外用量の減量
広範囲な皮疹の速やかな改善
薬剤血中濃度
トラフ値が 200 ng/mLとなるよう調整する
免疫低下
感染症が発症した場合には投与を中止する
間歇投与による寛解維持
中止により5割が2週間以内、8割が6週間以内に再燃1)
間歇投与をくりかえすことにより症状が軽快し、効果の
減弱も認めない2)
1) Harper JI et al. Br J Dermatol. 2000: 52
2) ネオーラルによるアトピー性皮膚炎治療研究会.臨皮.2009:163
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アトピー性皮膚炎に対するシクロスポリン
投与のポイント
急性増悪に対するレスキュー
大学入試や試験前など、期間限定の悪化やストレスに対して
アトピー性皮膚炎に対する最新の治療
Apremilast
経口選択的ホスホジエステラーゼ4(PDE4)
Dupilumab
間歇投与による寛解維持
抗インターロイキン-4受容体α抗体
紅皮症・痒疹など重症患者のコントロールに有効
定期的な血液検査と休薬期間の厳守
NF-κBデコイオリゴ軟膏
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