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腹膜透析に伴う被嚢性腹膜硬化症により死亡した一剖検例
岡山済生会総合病院 内科
○松浦郁子、山村裕理子、野村祥久、藤田計行、西村晋輔、桃木律也、
上野明子、丸山啓輔、遠部恒人、山村昌弘、平松 信
【症例】73歳男性。腎硬化症による末期腎不全により15年間の腹膜透析ののち3年間
の血液透析を施行していた。1年前より腹部膨満感が出現し、炎症反応上昇と腹部
CTにて腹膜肥厚と被嚢化腹水を認め、被嚢性腹膜硬化症(EPS)と診断された。そ
の後プレドニゾロン5mg/日投与が行われたが、イレウス症状を頻回におこし入退院
を繰り返していた。X年5月8日に下肢動脈硬化症の精査のため入院したが、入院後
よりイレウスによる腹痛が出現し経口摂取困難となり低栄養が進行し全身状態は悪化
した。第71病日に永眠された。病理解剖の結果は、広範囲の腸管壊死と左大葉性肺炎
を認め、EPSによって低栄養状態が遷延し全身状態が著しく低下していたことに加え
て、広範囲の腸管壊死、肺炎発症による呼吸不全に陥り、致死的となったと考えられ
た。 【考察】EPSは腹膜透析の重要な合併症の一つであり、びまん性に肥厚した腹
膜の広範な癒着によりイレウス症状を呈する症候群である。EPSは腹膜劣化に伴い発
症し、特に8年以上の腹膜透析継続期間、酸性液使用、頻回の腹膜炎既往、高張透析
液使用が誘因と考えられている。EPSの治療法としてステロイド投与や腹膜癒着剥離
術があるが、生体適合性の良い透析液の使用、計画的な腹膜透析の離脱を行うなどし
てEPSを発症させないことが重要である。今回EPSより死亡した剖検例を経験したた
め若干の文献的考察を加えて報告する。
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非外傷性腎周囲出血を来した腹膜透析患者の一例
鳥取大学医学部附属病院 卒後臨床研修センター1)、
鳥取大学医学部 機能病態内科2)
○石津聡美1)、高田知朗2)、福井毅顕2)、福田佐登子2)、宗村千潮2)
【症例】55歳、女性
【主訴】左腰背部痛
【現病歴】IgA腎症による末期腎不全にて、X- 5年9月より腹膜透析導入し以後は当科通院中
であった。自尿が少なくなってきており、血液透析への移行のためX年1月に内シャント造設
を行っていた。また、X年2月に撮影したCTで両腎にaquired systic kidney disease(ACKD)、
左腎に7mm大の充実性腫瘤の存在を指摘され、画像検査にて経過観察中であった。X年5月22
日に当科外来の定期受診した際は著変なかった。同日17時頃に突然誘引なく左腰背部の激痛を
自覚し、当院救急外来を受診した。腹部単純CTにて左腎周囲に出血を疑う高吸収域を認め、
造影CTを施行し活動性出血を示唆する所見があり、緊急動脈塞栓術を行う方針とした。左腎
動脈造影を行うと左腎末梢部に微小なextravasationが多発性に認められた。既に自尿がなく、
血液透析への移行が準備されている状況であったため止血については腎動脈中枢の塞栓術を行
い止血が得られた。その後は、腹膜透析を行うも腹腔内出血を示唆する経過もないため、腹膜
透析の継続が可能であった。今後は待機的な左腎摘出術予定となっており、透析についても腹
膜透析から血液透析に移行する方針としている。
【考察】透析患者における腎周囲出血は稀ではあるが、長期透析に伴う合併症の一つとして挙
げられる。この発生にはACKDが関与するとする報告もある。透析患者における腎周囲出血に
ついて、文献的考察を加え報告する。
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PD カテーテルはスタイレットを用いずに挿入するべきであ
る ~ノンスタイレット挿入法~
松江生協病院 腎・透析科1)、
松江生協病院 泌尿器科2)、協和会協立病院 腎臓内科3)、
白報会王子病院 腎臓内科4)
○松井浩輔1)、佐藤陽隆1)、塩野 学2)、岡本貴行3)、都筑優子4)、
窪田 実4)
【目的】腹膜透析(PD)カテーテルを腹腔内へ挿入する際に、スタイレットはカテーテルに腰をもたせるための
器具として一般的に使用されており、様々なテキストブックにも全てスタイレットを使用する挿入法(スタイレッ
ト挿入法)が記載されている。しかし、スタイレット挿入法は適正な位置への挿入が困難なことがあり、腹膜前
脂肪層への誤挿入や腹腔内臓器の損傷を起こす可能性もある。さらに、全長が65cmや80cmの長いカテーテルの
スタイレットは操作性が悪く、術中汚染の可能性が高くなる。岡本らは、平成18年11月から平成22年3月の間に
119例中115例で、スタイレットを使用せずにカテーテルを挿入(ノンスタイレット挿入法)できたと報告した(透
析会誌43(7):569-573, 2010)。その後も連続してノンスタイレット挿入法を行っており、その結果を報告する。
【対象・方法】平成22年4月から平成27年4月の間にカテーテル留置術またはカテーテル入れ替え術を行った251
例を対象とした。先端がストレートのカテーテルを腹腔内の前腹壁に沿わせてノンスタイレット挿入法で挿入した。
【結果】251例全例でノンスタイレット挿入法で適正な位置に挿入できた。またノンスタイレット挿入法での合併
症は認められなかった。
【考察】岡本らの報告では、4例で高度の肥満があり、カテーテルの挿入が不確実であったためにスタイレット挿
入法に切り替えたとのことであったが、今回の検討では肥満患者も含め、全例でノンスタイレット挿入法が可能
であった。
【結語】ノンスタイレット挿入法は非常に容易であり、スタイレットを扱う時間も短縮できる。さらに、安全かつ
確実にカテーテルを挿入できるため、先端がストレートのカテーテルを用いる際には標準的な方法となるべきで
ある。
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腹膜透析から血液透析へ移行する患者の指導時期と内容の検
討
山口県済生会下関総合病院 血液浄化センター
○松田直子、前川直子、谷口裕子、新田和美
【目的】腹膜透析から血液透析へ移行した患者の思いを分析し、今後腹膜透析を選択した
患者に対し、どのような関わりが必要であるかを明らかにする。
【研究方法】1。期間:平成27年2月~平成27年6月 2。対象:当院で血液透析を受け
ており腹膜透析を行ったことのある患者7名 3。調査方法:対象患者へ腹膜透析開始時
から現在までの思いについて半構成的面接調査を行った。インタビュー内容を分析し、カ
テゴリー化した。
【結果】187のコードから7つのカテゴリーが抽出された。「水分・食事管理について」の
コードが一番多く、血液透析期の水分管理の難しさを訴えるコードが多かった。次いで「腹
膜炎予防について」「外出・旅行への思い」「日常生活の中の腹膜透析」「チューブ接続へ
の思い」のコードが多く、腹膜炎予防のために行っていたことや機械トラブル時の不安・
生活に合わせた腹膜透析の方法の知識不足についてのコードが多かった。
【考察】水分制限については血液透析に完全移行する前から指導を受け理解していても、
実行に移すことに困難を感じていると考える。また、腹膜透析導入前は、腹膜炎予防の説
明が重点的となり、患者一人ひとりの生活背景に合わせた説明が十分でなかったと考える。
【結論】腹膜透析と血液透析を併用する時期に水分制限の十分な指導が必要である。腹膜
透析導入時には、現在の指導内容に加えて、患者の生活背景に合わせた指導も行う必要が
ある。
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