平成27年度 事業計画 - 全国信用組合中央協会

平成27年度 事業計画
Ⅰ.経済・金融環境
1.経済環境
昨年のわが国経済を振り返ると、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政
策の効果もあり、景気は緩やかな回復基調にあったが、4月の消費税引き上げ後の反
動や夏場の天候不順の影響などで、2四半期連続してマイナス成長となった。その後
は、在庫投資のマイナスの剥落、消費マインドの改善を通じた個人消費の回復や企業
の投資意欲が底堅いことから、民需を中心に緩やかな回復軌道に戻っているものとみ
られる。
一方、10 月の日銀の追加緩和を受け、円安・株高が一段と加速したが、円安の進展
に伴い、負の側面も顕在化している。特に、地方経済にはアベノミクスの効果が十分
に行きわたっておらず、中小企業・小規模事業者は、円安に伴う原材料費の高騰によ
る収益悪化の懸念もあり、依然として景気回復を実感するには至っていない状況にあ
る。
27年度については、消費再増税の先送りによって家計の負担増といった影響が取
り除かれることや、追加の金融緩和や法人減税を含む成長戦略の効果が徐々に浸透す
るとともに、雇用・所得環境の改善傾向が続くことで、国内需要の持ち直しにつなが
り、景気は回復基調を維持すると見込まれている。
日本経済のリスク要因としては、中国の「シャドーバンキング」問題、米国の量的
金融緩和政策の出口戦略に伴う金利上昇等が考えられる。
また、第3次安倍政権では、少子高齢化の進展や人口の減少に歯止めをかけるとと
もに、大都市圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確
保し、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、
「まち・ひと・しごと
創生」に関する施策を総合的かつ計画的に実施するとしている。
政府には、さらなる景気対策とともに、アベノミクス効果が全国の隅々まで行きわ
たり、中小企業・小規模事業者と地域の活性化に資する実効性のある政策が期待され
ている。
なお、27年度の経済見通しについて、政府は「国内総生産の実質成長率は1.5%
程度(名目成長率は2.7%程度)と見込まれる」としている。
2.金融環境
26年度の民間金融機関を取りまく金融環境は、役務取引等利益や債券等関係損
益が増加したものの、資金利益の減少等により実質業務純益は減少しており、金融
機関の金利競争の一層の激化により貸出金利が更に低下するなど、全体として利ザ
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ヤは縮小しており収益状況の先行きは厳しい状況にある。
一方、地域金融機関には、適切にリスクを管理しつつ、新規融資を含む積極的な
資金供給を行い、顧客企業の育成・成長を強力に後押しすることや中小企業の真の
意味での経営改善が図られるよう、他の金融機関や外部専門家等と連携・協力しつ
つ、コンサルティング機能を一層発揮して、経営改善計画の策定支援をはじめとす
る経営改善・事業再生の支援に、これまで以上に積極的に取り組んでいくことが求
められている。
また、地域金融機関においては、人口減少・少子高齢化に加え、国・地方の財政
制約、経済のグローバル化の進展等が将来の地域経済や経営基盤に大きな影響を与
えると予想されることから、経営統合などの動きが活発化している。
Ⅱ.信用組合の経営環境
中小企業・小規模事業者の業況は、円安の進行に伴う原材料費の高騰等により、
収益環境の悪化が懸念されており、依然として景気回復を実感するには至っていな
い状況にある。
特に、地方経済にはアベノミクスの効果が十分に行きわたっておらず、少子高齢
化や人口減少などの構造的な要因もあり、未だ停滞感は強く、景気回復の実感に乏
しい状況にある。
26年度の信用組合の業況は、仮決算の状況では、預金・貸出金とも増加してお
り、預貸率は横ばいの見込みとなっている。また、収益状況は、金利の低下に伴う
資金運用収益の大幅な減少と一般貸倒引当金繰入額の増加により、業務純益は大幅
に減少する見込みとなっている。また、個別貸倒引当金の繰入額の減少等もあり、
当期純利益は減少する見込みとなっている。
なお、利ザヤの縮小から貸出金利息、預け金利息は引き続き減少しており、基礎
的な収益力が低下傾向にある。
27年度は、景気の緩やかな回復が期待できるとみられるが、中小企業・小規模
事業者の業況の先行きが引き続き不透明なことや貸出金利競争の更なる激化、市場
金利の低下が続くことから、信用組合の経営環境は引き続き厳しい状況が続くもの
と思われる。
Ⅲ.信用組合の課題
他金融機関との競争がますます激化するなかで、貸出金の増強、貸出金利回り
の引き上げによる適正収益の確保が喫緊の課題である。そのためには、渉外担当
者等の訪問活動を通じて取引先の情報を収集し、ニーズを的確に把握する信用組
合の強みを生かした営業推進体制の一層の整備・充実と人材育成が求められてい
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る。
また、地域経済が疲弊する中で、信用組合は、地域・業域・職域の各分野で、
目利き能力を発揮して組合員(小規模事業者)や生活者の資金ニーズに応えると
ともに、公的支援制度の有効活用やコンサルティング機能を一層発揮し、創業、
事業承継、経営改善の支援、取引先の販路拡大の支援等に引き続き積極的に取り
組んでいく必要がある。
この他、制度の改廃や創設等に適切に対応していくとともに改正大口信用供与規
制の施行、マイナンバー制度への対応(税及び社会保障の分野での個人番号の利用)
などの諸課題に適切に対応するために、内部管理態勢の一層の整備・充実を図ると
ともに、経営の健全性の維持・確保に努めていくことも必要である。
このように信用組合には課題が山積していることから、信用組合、地区協会、
本会、全信組連等は適切に役割を分担するとともに、中央機関である本会と全信
組連は連携しながら経営のサポート、業務の支援を適切に行っていく必要がある。
本会としては、特に、信用組合の本部的な役割をより一層果たしていく必要があ
り、そのため、業務の支援、人材育成、ビジネスマッチング等において信用組合の
取り組みを支援するとともに、全信組連、地区協会等との連携をさらに強化し、引
き続き経費の節減に努めつつ、人材育成や信用組合の業務に資する施策に積極的に
取り組んでいくものとする。
以上の認識のもとに27年度に業界が重点的に取り組むべき課題は次のとおりで
ある。
1.経営基盤の拡充・強化
信用組合が顧客(組合員)の信頼に基づくより強固な経営基盤を確立していくた
めには、信用組合の強みである地縁・人縁を活かした地域密着に徹し、円滑な資金
の供給はもとより、顧客ニーズに応じた提案、情報提供、経営指導・相談業務等に
取り組んでいくことが必要である。
(1)経営理念の周知徹底
信用組合は、協同組合組織金融機関としての意義を再確認し、明確な経営理念、
経営方針の下に事業を推進していく必要がある。
そのためには、自組合の理念や経営方針を役職員全員の共通認識とするのみな
らず、組合員にも周知し、組合員として自組合への参加意識を醸成することが重
要である。
また、他の金融機関にはない信用組合の経営理念や特性を強みとして環境変化
に対応させた施策を具体化していくことも必要である。
(2)信用組合ビジョンの策定
顧客(組合員)に対し、信用組合の利用価値、存在意義を再認識してもらうた
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め、信用組合の将来像を確立する必要性がある。
本会では「10年後を見据えた信用組合の目指すべき姿、持続可能なビジネス
モデル」を検討し、将来の社会・経済環境の変化を踏まえた信用組合のあるべき
姿を「信用組合ビジョン」として取りまとめることとする。
なお、今後のしんくみ運動については、信用組合ビジョンを踏まえ、これまで
の運動における問題点等を検証しつつ、そのあり方も含め検討を行うこととする。
(3)広報活動等の充実・強化
27年度における広報活動は、信用組合の知名度向上を図るため、テレビによ
るメディア広告をはじめとする各種PR活動を実施することとする。これに併せ、
信組業界挙げてPR活動を行っていくことが重要であり、個々の信用組合及び地
区協会等においても積極的な広報活動を行っていくことが必要である。
「しんくみの日週間」
(9月)は、
「社会貢献」と「信用組合の知名度向上」を
図ることを目的に、引き続き、献血活動やピーターパンカードの寄付活動を実行
するとともに、個々の信用組合や地区協会等が独自に企画立案した活動を積極的
に支援する。27年度は、社会貢献表彰及び「しんくみの日週間」表彰について、
従前どおり全国信用組合大会において行うこととする。
また、信用組合の理念である「相互扶助(助け合い)」をテーマとする第6回
懸賞作文「小さな助け合いの物語賞」を引続き実施する。
(4)組合員及び地域社会とのつながりの強化
地域信用組合、業域(医師系)信用組合、職域信用組合は、それぞれの特性を
踏まえつつ組合員の活性化やつながりを深め、経営基盤を強化していくことが重
要であり、本会は、信用組合の取り組みを積極的に支援する。
① 地域信用組合
昨年6月に施行された「小規模企業振興基本法」に基づき、10月には、小
規模企業振興に関する計画的な推進を図るため「小規模企業振興基本計画」が
定められたなど、昨年は、地域の経済や雇用を支える存在としての小規模企業
の存在が、改めて見直され、小規模企業にスポットを当てた新たな施策が強化
された。
地域信用組合は、様々な外部機関・外部専門家と連携を図りながら、地域経
済の活性化の一助となるよう創業支援や事業承継、経営改善、再生支援などの
分野を強化し、地域の小規模事業者の育成・振興の支援に積極的に取り組む必
要がある。
② 業域(医師系)信用組合
医師系信用組合では、組合員(医師)の高齢化が進んでおり、勤務医が増加
する反面、医師系信用組合の主たる取引先である開業医が減少している。今後
は、顧客のニーズを的確に把握し、いかに勤務医や若年層の取り込みを図るか
について積極的に取り組む必要がある。
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③ 職域信用組合
職域信用組合では、住宅ローン等で他金融機関との競合が激化しており、母
体組織職員等から選ばれる信用組合へ変革していくことが、大きな経営課題と
して挙げられている。職域信用組合は店舗数の少ない組合が多く、それを補う
ためにITを有効に活用することも求められている。
(5)産学連携による私立大学等との連携強化
信用組合の地域社会等への貢献を積極的推進する観点から、信用組合と関わ
りの深い産学との連携を強化するなど、地域社会等の発展に寄与する施策を支
援していくこととする。
全国の私立大学等の学生に対する講義を通じて「地域社会における信用組
合の意義や役割」についての理解を深め、信用組合の人材確保にも資する観
点から、引き続き私立大学等に対し「信用組合金融論」等の開設を積極的に
働きかけることとする。
(6)しんくみ研究会(学者グループ)による調査・研究
協同組織金融機関に精通する学識者をメンバーとする「しんくみ研究会」にお
いて、信用組合の地域貢献策等の共同研究を行い、報告書を取りまとめることと
する。
2.経営力、組織力の強化
信用組合が地域・業域・職域のそれぞれの地域・社会から存在価値が認知され、
支持されていくためには、それぞれの業態の信用組合が役割と機能を十分に発揮で
きるよう経営力、組織力を強化していく必要がある。
(1)収益力の強化
厳しい経営環境の下、信用組合は貸出金の増強を図るとともに、適正水準の
利鞘を確保し、安定した収益を確保することが喫緊の課題である。貸出金の増
強には、既存取引先の掘り起こしと創業支援、新規分野等に対する新規融資の
推進が必要であるが、そのためには、渉外体制の強化が不可欠である。他金融
機関との競合が激化する中で、信用組合の強みを生かした渉外担当者等の訪問
活動を通じて、取引先の情報を収集しニーズを把握する営業活動をしていくた
めの態勢の整備と人材育成が求められている。
併せて、貸出しが伸び悩む中で、渉外活動で収集する情報を活用した保険・
証券窓販の推進などにより役務収益の確保やリスク管理に留意しつつ余資の
効率的な運用に努めることも重要であることから、本会ではこうした取り組み
を支援するため、種々の関連情報の提供や先進的事例の紹介を積極的に行うこ
ととする。
(2)人材の育成
信用組合は、経営基盤の強化・収益性の向上・健全性の確保等経営諸課題への
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的確な対応や多様化する顧客ニーズへの対応、さらには、高度化・複雑化する金
融制度・金融商品等への対応が求められている。これら課題を克服し、他金融機
関との競争に勝ち抜くためには、優れた人材を擁して初めて成し遂げられるもの
であり、職員の教育訓練を計画的・継続的・効率的に実施することが重要である。
本会が平成26年度に取りまとめた「信用組合業界の研修事業の中央と地方の
役割分担の基本的考え方」に基づき、信用組合が単独で実施する教育訓練と全国
信用組合研修所や地区協会等の教育訓練の連携強化、研修手法・体系の見直しな
どにより、環境の変化に対応した信用組合業界全体の人材育成や能力のレベルア
ップに取り組んでいく。
また、信用組合の金融実務面に力点をおいた研修会や説明会を適宜・迅速に開
催し、全信組連や地区協会等と連携、相互補完に努めるものとする。
(3)業務支援の強化
信用組合の「FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)
」、「OECDの
金融口座情報に関する自動的情報交換制度(共通報告基準)」及び「中小会計要
領」等に係る説明会等を適時に開催することとする。
また、企画委員会と業務委員会の下部組織のそれぞれの専門部会において、信
用組合の意見を伺いつつ、情報の共有を行い、信用組合の基本的問題や業務上の
課題について検討を行い、解決に向けた支援を強化することとする。
(4)でんさいネットの推進
「でんさいネット」
(25年2月サービス開始)は、中小企業・小規模事業者の
手形・振込に代わる新たな決済手段になることから、信用組合においても積極的
にその活用促進を図る必要がある。
本会では、中小企業・小規模事業者にでんさいネットのメリットや利用方法な
どを理解していただくためのツール、実績を上げている信用組合の取り組み事例
などを「でんさいネット活用促進会議」で検討し還元する。
また、でんさいネット業務を円滑かつ的確に推進できるよう全信組連と連携し
て、信用組合を積極的に支援する。
(5)コンサルティング機能等の支援
中小企業・小規模事業者の経営改善等のコンサルティングは、信用組合の本来
の役割として取り組むべき責務であり、外部機関との連携や専門家の活用を図り
つつ、人材育成や情報提供などサポート体制を整備していく必要がある。
また、小規模事業者には特有の問題・課題があり、そのコンサルティングにお
いても固有のノウハウが求められていることから、信用組合としての独自のノウ
ハウを研究・蓄積していく必要がある。
本会としても、信用組合が行う経営に関する相談業務や経営改善計画の策定等
の支援を行うこととし、特に公的制度の活用の手引きを作成するなど、経営革新
等支援機関に認定された信用組合の支援に取り組むこととする。
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(6)しんくみアドバイザー制度の創設及び分野別コンサルティングの実施
① 信用組合の経営効率の向上、諸課題解決に寄与することを目的として、信用
組合の業務等について優れた実績・ノウハウを有している信用組合の役職員や
元役職員及び本会が選定した外部のコンサルタント等を本会が「しんくみアド
バイザー」として登録・公表する制度(人材のネットワーク)を創設し、希望
する信用組合に原則短期間派遣する。
② 信用組合の業務の課題をはじめ経営上の諸課題の解決を支援し、個々の信用
組合の持続的成長と健全性の維持・確保を目的として、「分野別コンサルティ
ング業務」を立ち上げ、希望する信用組合を対象に、外部のコンサルタント及
び①の制度を活用して、個別分野を中心としたコンサルティングを実施する。
渉外体制や人事制度等の再構築を希望する信用組合に対し、事業の強化策や
業績向上策の助言・協力を行うとともに、全信組連との連携を強化し、利用の
促進を図ることとする。
3.健全経営の確保
信用組合は、我が国金融システムの一翼を担うものとして、資産の健全化はもと
より収益力の強化、自己資本の充実、内部管理態勢の強化等により、引き続き経営
の健全性を確保し維持していく必要がある。
また、信用組合が地域社会の負託に応え信頼を得ていくためには、役職員一人ひ
とりが倫理意識の高揚を図り、ガバナンスを強化するとともに法令遵守に徹してい
かなければならない。
(1)ガバナンスの強化
実効性のあるガバナンスを構築する上で、信用組合の経営方針、業務執行態勢
や内部統制のあり方を決定する理事会はもとより、内部監査、外部監査、監事監
査のそれぞれの機能発揮が重要である。
具体的には、総代会や総代の制度を組合員の意思がより反映できるようにする
ほか、理事会においては、理事相互や監事による牽制機能を強化するための制度
を充実し、協同組織性を高めるために組合員、利用者を含めた地域に対して情報
開示を拡充することが重要である。
さらに、信用組合は顧客の機微情報を多数有していることから、信頼を揺るが
しかねない個人情報漏洩等の不祥事を未然に防止するため、実効性のある内部管
理態勢を構築する必要がある。
本会では、「総代会制度の開示項目等に関する業界申し合せ」等を見直すとと
もに、引き続き、ガバナンス関連情報の収集や情報提供により、その強化の支援
を行うこととする。
(2)法令等順守態勢、利用者保護態勢等の整備・充実
法令等順守態勢、顧客保護等管理態勢等に関する情報提供等、態勢整備を支援
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するとともに、信用組合の苦情・相談処理態勢の充実や金融ADR制度の拡充な
どにより、利便性向上に向けた支援を行うこととする。
(3)適切なリスク管理の実施
信用組合は、地域経済の低迷や過当な金利競争から、預貸率、貸出金利が共に
低下し、役務収益や余資運用によって収益を補完していく傾向にある。こうした
中、リスクの大宗を占める与信リスクについては、的確な自己査定等を通じて適
切にリスクを管理していく必要があり、また、余資の運用に伴う市場リスク(金
利リスク、流動性リスク等)についても、十分に留意する必要がある。さらには
近年のインターネット・バンキングの不正利用などの新たなサイバーリスクが高
まりつつある。
経営陣は、自組合のリスクの全体像について適切に把握し、管理していくこと
が重要である。
本会では、このような統合的リスク管理態勢の充実による適切なリスク管理が
行われるよう、全信組連と連携し、リスク管理手法等の説明会の実施や情報提供
を行い、支援を行っていくこととする。
(4)ディスクロージャーの充実
信用組合は、各種経営情報や地域貢献に関する情報開示を積極的に行い、経営
内容等が組合員や利用者から十分に理解され、支持されるよう努めていくことが
重要である。
本会では、信用組合のより透明性の高い組織運営やガバナンスの一層の充実を
図るといった観点から、「総代会制度の開示項目等に関する業界申し合せ」及び
「信用組合における半期決算及び半期開示に関する業界申し合せ」等を見直し、
信用組合のディスクロージャーの充実に向けた取り組みを積極的に支援するこ
ととする。
(5)反社会的勢力との関係遮断に向けた取り組み
反社会的勢力を社会から排除していくことは、社会の秩序や安全を確保する上
で極めて重要な課題である。公共性を有し、経済的に重要な機能を営む金融機関
には、反社会的勢力を金融取引から排除していくことが求められており、信用組
合においても、自組合や全銀協から提供されるデータ等をもとに反社会的勢力と
の取引を排除していくことが重要である。
本会としても反社データの充実の支援に取り組んでいくこととする。
4.諸規制、制度改正、中小企業政策等への対応
(1)郵政民営化問題への対応
26年12月に公表された日本郵政グループの株式の上場計画によれば、日本
郵政㈱と子会社の金融二社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)が27年度半ば以
降を目途に同時上場することを目指す方針が示されたが、完全民営化までの具体
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的なスケジュールは依然として示されていない。信用組合業界としては、ゆうち
ょ銀行の完全民営化にかかる具体的な計画が示され、その実行が担保されない限
り、新規業務への参入や預入限度額の引き上げの検討は到底容認できるものでは
ないとの主張を堅持し、今後の動向を注視しつつ、他の金融業界団体と連携しな
がら適切に対応していくこととする。
(2)税制改正に関する要望活動
27年度の税制改正では、一般事業会社の法人税率の引き下げが行われたが、
信用組合等に適用されている法人税の軽減税率は、現状維持のままとされたこと
から、一般事業会社との税率の格差が縮小することとなった。引き続き信用組合
業界の重点事項として、法人税率の引き下げを要望するとともに、信用組合に関
する租税特別措置についても引き続き存置等を要望していくこととする。
(3)マイナンバー制度、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインへの対
応
社会保障・税番号(マイナンバー)制度は、27年10月より個人及び法人番
号が国から通知され、28年1月から国や地方公共団体などにおいて、社会保障・
税・災害対策の分野で利用が開始される。信用組合は今後、利用が開始される分
野において、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン等に則り、利用
目的の特定、番号の取得、番号の提供を受ける際の本人確認、番号の保管、廃棄
等にかかる内部規定の見直しにかかる態勢整備等を行うことになることから、円
滑な対応に向けて同制度に係る説明会の実施、各種情報提供に努めることとする。
(4)小規模事業者等に関する各種公的支援制度の活用促進
中小企業・小規模事業者等に関する各種公的支援制度(ものづくり補助金、創
業・第二創業促進補助金、各種税制措置等)に係る情報収集・整理・提供に積極
的に対応し、信用組合の取り組みを支援する。また、各種公的支援制度の創設・
改善に関する要望活動に努めていくこととする。
また、政府系金融機関とは、協調を前提に連携を推進し制度の活用を支援する
とともに、公的金融を逸脱した事例の情報収集や実態の把握に努めることとする。
(5)東日本大震災被災信用組合等への支援
東日本大震災の発生以降、業界を挙げて被災者の再生支援や二重債務問題への
対応等、被災地域の支援活動に取り組んできた。今後、防災集団移転促進事業が
進捗する等、被災者が本格的に事業や生活の再建を図っていくことが予想される
ことから、東日本大震災事業者再生支援機構、各県の産業復興機構、個人版私的
整理ガイドライン等の各種支援策の活用を通じた被災地域の復興支援並びに福
島第一原発事故被災信用組合への支援に引き続き努めていくこととする。
5.総合力の発揮
信用組合が取り組むべき課題は山積しており、それらを克服していくためには、
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個々の信用組合の自主的かつ積極的な取り組みが望まれる。更に、他の信用組合と
の協調によるネットワーク化を推進し、業界全体として総合力を発揮することによ
り、大きな効果が期待されるところである。
(1)信用組合業界のネットワークの強化
大震災時等の情報通信セーフティネットを兼ねた信用組合業界内のグループ
ウェアの構築や相続預金等が信用組合から他業界へ流出するのを防止する方策
として、相続人が居住する地域の信用組合に紹介する制度等ネットワークの構築
を検討するとともに、信用組合相互、地区協会及び中央団体等の連携を図り「信
用組合相互のネットワーク」を拡大・強化していく。
(2)しんくみネットの推進
「しんくみネット」は、人口減少等による地域産業の活力低下や企業間ネット
ワークの不足が指摘される中で、信用組合の組合員に対する経営支援や営業支援
を補完するものとして、全国の組合員をつなぐ新たなコミュニティの構築を目指
すものである。
27年度は、引き続き、地域ネットワーク加盟店の利用促進を目的としてポイ
ントカード制度を展開する。また、しんくみネットのメインサイトの一つである
「しんくみネット.com」における、利用者・事業者登録状況、及び、サイトの利
用状況の増強を目的として、平成28年度公開を目途に新システムを構築する。
(3)ビジネス交流事業の支援
取引先の販路拡大等の一助として、信用組合や地区協会がビジネス交流事業を
実施する際に、本会が他の信用組合や地区協会に参加を働きかけることによりこ
れを支援する。
27年度は、昨年に引き続き年金旅行等を実施する信用組合などに、他の信用
組合の取引先(組合員)であるホテル・旅館関係者を紹介する「信用組合年金旅
行等ビジネス交流会」を東西2か所で開催することとする。
また、地区協会等が主催するビジネスマッチング事業の費用の一部を本会が助
成する「地区協会が開催するビジネスマッチング支援制度」や企画運営専門業者
等が主催するビジネスマッチング事業に参加する場合、その費用の一部を本会が
助成する「ビジネスマッチング参加助成制度」を創設するなど、ビジネスマッチ
ングの支援に積極的に取り組むものとする。
(4)商工3団体等との連携強化
信用組合と商工3団体(中小企業団体中央会、商工会議所、商工会)との連携
については、19年度に策定した「信用組合と商工3団体との連携・協働事業(中
長期計画の考え方)
」に沿って引き続き推進していくものとする。
(5)協同組合間協同の取り組み
信用組合業界においては、協同組合の一員として協同組合間協同を今後も継続
していくとともに、信用組合の役割や存在価値、活動の実態等を積極的にアピー
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ルし、信用組合の存在をさらに多くの人々から理解してもらえるよう努力してい
くことが重要である。
本会では、
「2012国際協同組合年全国協議会」の後継組織である「国際協
同組合年記念協同組合全国協議会」に引き続き参加し、協同組合の発展に向けた
取り組みを継続することとする。
また、本会のポスト国際協同組合年の取り組みとして、
「信用組合に関する論
文集」の作成や「しんくみの集い」の実施などの事業を行うこととする。
なお、国際協同組合年の目的として協同組合の設立と発展の促進が掲げられて
おり、信用組合の新設についても研究を進めていくこととする。
6.その他
本会が信用組合の企画部門的な役割を果たしていくためには、業務の現場の視点
をもって、諸課題の解決を支援するための施策を立案・実行していくことが必要で
ある。
また、本会の業務のうち、コアの業務でない業務は外部への委託や業務処理の見
直し等により、コストの削減と省力化を図るものとする。
なお、本会の事業の実施にあたっては、全信組連、各地区協会、SKC等と役割
分担するとともに、連携・協力を推進する。
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Ⅳ.事業項目
以上の課題等を踏まえ、平成27年度の主な事業項目は、次のとおりとする。
1.経営基盤の強化
(1)経営理念の徹底
(2)信用組合ビジョンの策定
(3)PR活動等の実施
①しんくみの日週間の実施
②マスメディアによる広告
③ポスター等の作成
④PR 用冊子の作成
⑤第6回懸賞作文「小さな助け合いの物語賞」の実施
⑥本会ホームページのリニューアル
⑦しんくみ記者懇談会の全信組連との共同開催
(4)地域社会貢献等の推進
①小規模事業者の育成・振興
②産学提携による私立大学等との連携強化
(5)しんくみ研究会(学者グループ)による調査・研究
(6)しんくみ運動の検討
①今後のしんくみ運動に関する検討
②表彰制度の実施
2.経営力・組織力の強化
(1)収益力の強化
(2)人材の育成
①研修事業に関する地区協会等との連携強化・相互補完の推進(出前研修を含
む)
②人材育成・職務能力向上のための集合研修、通信教育および職務能力検定試
験等の実施
③研修会・説明会の地方開催
④教育訓練体系等の作成
⑤新入職員ガイドブックの作成
⑥渉外セールス話法冊子の作成
(3)業務推進の支援
①地域、業域、職域専門部会の開催
・渉外体制の手引き(参考例)の作成
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・預金事務取扱要領(参考例)の作成
・職域用ホームページデモ作製
②業務関連セミナー等の開催
・FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)OECD自動的情報交換
制度への対応説明会
・改正犯収法説明会
・インターネットバンキングセキュリティ強化説明会
・金融所得課税一体化説明会(証券業務関連)
・セカンドライフサポートセミナーの開催
③保険窓販業務及び証券業務に関する支援
・保険窓販信用組合統一(推奨)商品の普及促進
・コンプライアンス研修会の開催
・証券業務に係る各種研修会の開催等
④視覚障がい者対応の支援
⑤中小企業海外展開の支援
⑥メンタルヘルス支援メニューの提供
(4)でんさいネットの推進
○でんさいネット活用促進会議の開催
(5)コンサルティング機能等の支援
①中小企業・小規模事業者政策に係る各種公的支援制度への対応
②外部機関、外部専門家との提携・連携への対応
③TKC全国会等外部機関との連携によるコンサルティング機能の支援
(6)しんくみアドバイザー制度の創設
(7)分野別コンサルティングの実施
3.健全経営の確保
(1)ガバナンスの強化
(2)法令順守態勢、利用者保護体制等の整備・充実
○相談機能の強化
・相談事例集の作成(HP に掲載)
・監事の役割と責任の改訂
・金融 ADR の周知徹底
(3)適切なリスク管理の実施
(4)ディスクロージャーの充実
(5)反社会的勢力との関係遮断に向けた取り組み
○全銀協反社データベースの提供
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4.諸規制、制度改正、中小企業政策等への対応
(1)法令、監督指針、金融検査マニュアル等の改正への対応
(2)ゆうちょ銀行の新規業務参入等への対応
(3)休眠預金の活用等に関する検討への対応
(4)公的金融機関の民業圧迫問題への対応
(5)税制改正、規制緩和等に関する要望活動の推進
(6)民法(債権関係)改正への対応
(7)マイナンバー制度、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインへの
対応
(8)経営者保証に関するガイドラインへの適切な対応の促進
(9)小規模事業者等に関する各種公的支援制度に係る情報収集・提供
(10)東日本大震災被災信用組合等への支援
5.総合力の発揮
(1)信用組合間のネットワークの強化
①信用組合業界内グループウェアの構築の検討
②相続預金紹介等ネットワークの構築の検討
(2)しんくみネットの推進
①しんくみネット活用促進会議の開催
②しんくみネット業務推進会議の開催
③しんくみネットのシステムの見直し
(3)ビジネス交流事業の支援
①年金旅行等ビジネス交流会の開催(東京、大阪)
②地区協会等主催の商談会等の支援
③他団体が開催するビジネス交流会参加の支援
(4)商工3団体等との連携強化
(5)協同組合間協同の取組み
①国際協同組合年記念協同組合全国協議会への参加
②信用組合に関する論文集の作成
③しんくみの集いの開催
④信用組合の新設等に係る諸課題を含めた調査・研究
(6)機関誌「しんくみ」の発行
(7)全信組連との連携の強化
6.諸会議の開催
(1)しんくみ経営戦略会議の開催
(2)地区協会等との会議の開催
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① 信用組合協会長事務局責任者会議
② 地区協会等協議会
③ 地区協会等懇談会
(3)各種委員会等の開催
7.その他の事業
(1)第52回全国信用組合大会の開催
(2)災害時の義援金等の取扱いの見直し
(3)外部委託等業務の見直し
(4)各種相談業務への対応
(5)しんくみ相談所による苦情等への対応
(6)環境問題への対応
(7)本会職員の短期実務研修制度の実施
(8)しんくみ役職員保険制度の加入促進
以 上
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