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共生
キヤノンの企業理念は、『共生』です。
私たちは、この理念のもと、
文化、習慣、言語、民族などの違いを問わず、
すべての人類が末永く共に生き、共に働き、
幸せに暮らしていける社会を目指します。
しかし、経済、資源、環境など…
現在、地球上には共生を阻むさまざまな問題があります。
キヤノンは、共生に根ざした企業活動を通じて、
これらを解消するため、積極的に取り組んでいきます。
真のグローバル企業には、顧客、地域社会に対してはもちろん、
国や地域、地球や自然に対してもよい関係をつくり、
社会的な責任を全うすることが求められます。
キヤノンは、
「世界の繁栄と人類の幸福のために貢献していくこと」を目指し、
共生の実現に向けて努力を続けます。
目次
■ 企業理念「共生」 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
1
■ ごあいさつ
2
.................................................
■ キヤノンが目指すビジョン
........................
4
■ Advanced Canon
...................................
6
■ 数字で見るキヤノン
..................................
20
............................................
22
■ 事業のご紹介
■ 事業のご紹介・ホーム
...............................
■ 事業のご紹介・オフィス
............................
■ 事業のご紹介・プロフェッショナル
26
..........
28
.................
30
....................................
32
■ 事業のご紹介・インダストリー
■ 未来を支える活動
24
■ 最先端のものづくり
.................................
■ グローバルマーケティング/サービス
■ 豊かな社会を目指す取り組み
36
....
38
.................
42
ホースシューベンド(アメリカ/アリゾナ州)
EOS 5D Mark Ⅲ、EF11-24mm F4L USM
ごあいさつ
2 THE CANON STORY 2015/2016
成長軌道へ回帰するとともに、
さらなる飛躍に向けて、
強固な礎を築き上げてまいります。
今期の世界経済は、しばらく厳しい状況が続く国や地域がある一方、先進国では米国
が、新興国ではインドやASEAN諸国が堅調に推移すると予想され、全体で見れば、
徐々に安定成長に向かっていくものと推測されます。キヤノンはこの波をしっかり
とらえ、再び成長軌道へ回帰するとともに、今年最終年を迎えた「グローバル優良企業
グループ構想フェーズⅣ(2011年~2015年)」を締めくくるべく、さまざまな施策に
取り組んでまいります。
まずは、革新的な製品・サービスの投入によって現行事業の再強化に注力します。
そして、ネットワークカメラやMRシステム、3Dマシンビジョンシステムをはじめ、
ナノインプリント技術による次世代半導体露光装置や医療関連事業など、B to B分野
を中心に新規事業の着実な育成と拡大を図るとともに、未来を切り拓く技術の深耕
を進めていきます。また、欧州での商業印刷とネットワークカメラ、米州での医療
機器を第一歩に、世界三極体制の確立も推進していきます。一方、マーケティング
活動では、多様化する販売チャネルへの対応やグローバルサービスの展開、新興国
の販売網の拡充など、販売力の強化に取り組みます。生産活動においては、自動化
や内製化を強力に推進し、国内回帰を図るとともに、欧米では自動機を活用した消耗
品の消費地生産を進め、世界最適生産体制を整備していきます。この他、厳格な品質
管理、環境配慮、情報セキュリティーの強化、人材育成やCSR(企業の社会的責任)
などについても、注力してまいります。
フェーズⅣの4年間を振り返ると、東日本大震災や超円高、欧州の財政危機など予期
せぬ事態が発生し、経営環境は絶えず変化してきました。しかし、キヤノンはこの
変化を大きなチャンスととらえ、時代の変化に先んじて自らをスピーディーに変革
することによって「健全なる事業拡大」を実現し、確実な成長軌道への回帰を目指して
きました。今期は全社一丸となって業績向上に取り組み、フェーズⅣを完結すると
ともに、将来のさらなる発展に向けて強固な礎を築き上げてまいります。
キヤノン株式会社
代 表取 締役会長 兼社長 CEO
THE CANON STORY 2015/2016 3
キヤノンが目指すビジョン
グローバル優良企業
グループ構想
フェーズⅣ
2011-2015年
世界で親しまれ、尊敬される、真のエクセレント
カンパニーを目指し、 キヤノンは1996年
から中長期経営計画「グローバル優良企業
グループ構想」
を推進してきました。フェーズⅠ、
Ⅱ、Ⅲを着実に実行し、2011年からフェーズⅣ
をスタート。6つの主要戦略を掲げ、本年度での
目標達成に向けて、さまざまな取り組みに挑戦
しています。
フェーズ Ⅳへと至る
キヤノンの 歩 み
1
全主力事業の圧倒的世界No.1の実現と
関連・周辺事業の拡大
イノベーションによる魅力的な製品を投入し、ソリューション
とサービスで収益を拡大することで、圧倒的世界No.1の実現
を目指します。一方、ネットワークカメラやリテイルフォト
など、関連・周辺分野を徹底的に強化・拡大します。
ビジョンを
達 成 するため の
企業精神
人間尊重
キヤノンの
企業DNA
技術優先
進取の気性
フェーズⅠ 1996 -2000年
「全体最適」
と
「利益優先」
への意識改革を図り、
キャッシュフロー経営を徹底。事業の選択
と集中、生産革新や開発革新など、数々の
経営革新を行いました。
4
世界販売力の
徹底強化
先進国をはじめ、アジア、南米、アフリカといった新興国など、
フェーズⅡ 2001-2005年
「全主力事業世界No.1」
を掲げて、時代の潮流
となった製品のデジタル化を一気に推進し、
競争力強化に努めながら、全世界のグループ
会社の体質改善を進めました。
フェーズⅢ 2006-2010年
現行事業の強化、新規事業拡大など、新たな
成長への戦略を進める一方で、変化に即応
するリアルタイムマネジメントの実現に
向け、サプライチェーンマネジメントの徹底
やIT革新を実行しました。
4 THE CANON STORY 2015/2016
市場の動向を的確にとらえ、販売体制を整えていきます。先進
国市場ではソリューション事業を強化、一方で、新興国市場に
おいては販売拠点を拡充していきます。
2
グローバル多角化による新たな
事業の獲得と世界三極体制の確立
新しい事業領域として「メディカル」と「産業機器」を徹底強化。
3
世界をリードする
世界最適生産体制の確立
物流・調達・労働力、さらにリスクなどを総合的に判断し、品質
イノベーションセンターを日本だけでなく、欧米へと拡充し、
とコストを求めて最も合理的な生産拠点の配置を推進。また
世界三極体制を整備し、日・欧・米それぞれで地域特性に
生産性向上のために、材料研究や生産技術の内製化、自動機に
合わせた事業を着実に展開していきます。
よる生産の無人化を追求します。
キヤノンの企業DNA
三自の精神
キヤノンが70余年の歴史を刻み、発展できた背景には、脈々と受け継がれる
キヤノンの行動指針の原点。それが、創業期から受け継がれる
「自発・自治・
キヤノンの企業DN A「人間尊重」
「技術優先」
「進取の気性」があります。
自覚」の「三自の精神」です。企業DNAを伝承しながら、真のグローバル
ベンチャー企業として始まった進取の気性と、技術による差別化を目指す
エクセレントカンパニーを目指すキヤノンにとって、今も最も重要な指針と
姿勢は、深く浸透し、常にキヤノンは社会に新しい提案をしてきました。
それを支えてきたのが実力主義や健康第一主義などの人間尊重の姿勢です。
今後100年、200年と発展し続けるために、キヤノンはこの企業DNAを次の
世代にしっかりと継承していきます。
5
環境先進企業としての
基盤の確立
なっています。
[自発]何事にも自ら進んで積極的に行う。
[自治]自分自身を管理する。
[自覚]自分が置かれている立場・役割・状況をよく認識する。
6
真のエクセレントカンパニーにふさわしい
企業文化の継承と人材の育成
省エネルギー・省資源関連の技術開発を駆使し、設計、生産
「三自の精神」をもとに、
「進取の気性」を発揮し、常に変革へ
からリサイクルまで製品ライフサイクルのすべてを通じた環境
挑戦し続けているキヤノン。こうした企業文化を醸成・継承
負荷低減に取り組んでいます。豊かな生活と地球環境の両立を
していくとともに、国際的な研修プログラムなどを活用し、
果たす環境先進企業を目指します。
グローバルな人材の育成に注力しています。
THE CANON STORY 2015/2016 5
Advanced Canon
新規事業 MRシステム
キヤノンが 実現する、
仮 想と現 実のシームレスな
世界。
現実映像と仮想映像を、シームレスにリアルタイム
に 融 合 さ せ る。キヤノン の MR( Mixed Reality )
システム
「MREAL」が、新たな映像体験を生み出し
ます。現実の映像の中に3D CGを違和感なく合成し、
ビデオシースルー方式のヘッドマウントディスプレイ
(HMD)
、ハンドヘルドディスプレイ(HHD)を装着
することで、肉眼で見るのと変わらない、臨場感
あふれる仮想世界を体験できます。独自に開発した
マーカーと、ディスプレイに搭載された各種センサー
により、利用者の位置と姿勢情報を瞬時に計測し、正確
に位置合わせを行うことで、対象に近づく、離れる、
角度を変えるなど、あらゆる視点の動きにも自在に
対応。さらに特殊な形状を持つ自由曲面プリズムの
採用で、HMDとHHDの小型・軽量化も実現しました。
これらの映像革新は、設計・製造やデザインの現場に
おいて、実寸大スケールでのシミュレーションや各種
評価作業を可能にし、今や自動車業界や建築・建設と
いったさまざまな分野で活躍しています。キヤノンは
これからも、誰も見たことのない映像世界を創造して
いきます。
MREAL HM-A1/HH-A1
6 THE CANON STORY 2015/2016
THE CANON STORY 2015/2016 7
Advanced Canon
新規事業 3Dマシンビジョンシステム
瞬 時にとらえ、認 識する。
最 先 端のロボットの眼 。
細やかで、正確で、素早い作業を、ロボットの手で
実現したい。そんな、ものづくりの現場のニーズに
応えるため、独自のデジタルイメージング技術の粋を
集めて開発されたのが、3Dマシンビジョンシステム
「RV1100」です。それはいわば、産業用ロボットの
眼を司る部分。最先端の画像認識技術、情報処理技術、
そして光学技術により、生産ラインのパレットにバラ
積みされた部品を三次元で認識。ピッキングに必要な
情報を、約2.5秒でロボットアームを制御するコント
ローラーに送信します。また、形状が複雑なものから
特徴が少ないものまで、さまざまな部品を高精度で
認識でき、部品供給工程の自動化・高速化を加速し、
生産性の向上と生産コストの削減を両立します。その
技術は、自動車メーカーや部品メーカー、電機メーカー
など、多くの自動化を推進する企業から、高い評価と
注目を得ています。今後は、小型部品・大型部品への
対応といった、あらゆる業種のニーズをかなえるため、
先進のテクノロジーに磨きをかけ、新たなソリュー
ションづくりに邁進していきます。
認識用パターンを投影
RV1100
認識した部品をピッキングし、次の工程へ供給
8 THE CANON STORY 2015/2016
高精度な三次元認識
THE CANON STORY 2015/2016 9
Advanced Canon
世界三極体制 商業印刷
プリンティング分 野No.1を目指して。
技 術力、研 究 力、販 売力を高める
パートナーシップ。
10 THE CANON STORY 2015/2016
コンシューマからオフィス、商業・産業印刷まで、世界中のお客様のあらゆるニーズに、先進のプリンティング技術で応えていく
ため、キヤノンはオランダのオセ社をグループに迎え入れました。高速・連帳プリンターや業務用大判プリンターなどの優れた
ノウハウを持つオセ社と、オフィス向け複合機や大判インクジェットプリンターなどに強みを持つキヤノンが結束することで、
確かな技術力の補完関係を構築。より広く、厚みのあるプリンティングソリューションの提供が可能になりました。また、キヤノン
同様に技術志向の強いオセ社と共同で製品開発を進めることで、グローバルな研究開発力の強化が飛躍的に進展。そして、欧米を
中心に広がるオセ社と、キヤノンのネットワークの融合は、販売力の強化と細やかなサービス・サポート体制を生み出し、プリン
ティングの分野に新たな価値を提供しています。日・欧・米の三極を軸に、グローバル多角化を進めていく。そのパートナーシップ
は、キヤノンが目指す世界三極体制の確立への礎となっています。
小冊子から新聞まで幅広い印刷物に柔軟に対応
業務用高速・連帳プリンター
Océ ColorStream 3700 Z
THE CANON STORY 2015/2016 11
Advanced Canon
世界三極体制 バイオメディカル
米国から、世界へ。
キヤノンが広げる、
未来を支えるテクノロジー。
もし、未来の病気が、前もって分かるとしたら。DNA
から、先天性疾患や将来かかりやすい病気の有無、薬
の副作用まで解析する遺伝子検査。キヤノンは、医療
先進国である米国、メリーランド州にあるキヤノン
U.S.ライフサイエンス社にて、CMOSセンサーや
インクジェットプリンターの技術を応用した遺伝子
検査装置と試薬カートリッジの研究開発を進めてきま
した。その一日も早い実現と、米国で生産・販売まで
も一貫して行うため、2015年3月、キヤノンバイオ
メディカル社を設立。大学や先端研究所と連携し、
成長著しいバイオメディカル事業に積極的に参入して
います。そして、世界三極体制を具現化するキヤノン
グループ初のワールドワイドの事業本社として、米国
内にとどまらず、欧州、世界へと事業展開していきます。
また、マサチューセッツ州ボストンでは、ハーバード
大学医学部の関連医療機関であるマサチューセッツ
総合病院、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院との連携
により、従来の診断技術では見えないものを見えるよう
にする体内診断技術の開発や臨床価値の実証といった、
先進的な臨床応用研究にも着手。光学技術や画像処理
技術をはじめとしたキヤノンの技術の結集と、先端
研究病院との協業により、人の健やかな未来を支える
将来医療の研究を進めていきます。
キヤノンU.S.ライフサイエンス社で開発が進む遺伝子検査装置
12 THE CANON STORY 2015/2016
THE CANON STORY 2015/2016 13
Advanced Canon
次世代技術 ナノインプリント
より微細に、より正確に。
露光技術の限界を超えた、
次世代技術。
家電、自動車、スマートフォンなど、多くの製品に
搭載されている半導体チップ。その進化は、私たちの
生活をより豊かに、便利に変えてきました。半導体
チップは、光を使って回路パターンを焼き付ける露光
技術などを用いて作られ、この回路パターンの微細化
により、進化を遂げてきました。露光する際の光
を短波長化することで、1990年代前半には350nm
(ナノメートル)
*、2005年には39nmまでの線幅を
達成。しかし、その後は伸び悩み、光の短波長化に
よる微細化は技術的限界に達したと言われています。
そこでキヤノンは、次世代技術であるナノインプリント
に着目。2004年から研究を続け、ついに10nm台と
いう極めて細い線幅を実現しました。線幅が細くなる
ほどパターンの形成が難しくなり、装置も複雑かつ
大型化するという従来の課題に対し、ナノインプリント
は回路パターンを刻み込んだ型をスタンプのように
押し当てるシンプルな方式で、微細なパターンもきれい
に再現。また、製造プロセスが短縮できるため、大幅
なコストダウンも期待できます。現在、世界初のナノ
インプリント技術による半導体チップの量産化を目指
して、米国のキヤノンナノテクノロジーズ社や半導体
チップメーカーなどと共同で、次世代半導体製造装置
の開発を推進。本年度中の製品化を目指しています。
テクノロジーの限界を超え、キヤノンは常に新たな
挑戦を続けています。
*mmの100万分の1
製品化を目指して開発が進む、ナノインプリント半導体製造装置
14 THE CANON STORY 2015/2016
THE CANON STORY 2015/2016 15
Advanced Canon
将来事業 医用イメージング
見えないものを、可視化する。
医療の未来も見えてくる。
光超音波トモグラフィ
(PAT)による計測シーン
PATで3Dイメージングした手の血管網
16 THE CANON STORY 2015/2016
人の体を傷つけることなく、正確に、安全に、病気を発見する。医療の現場が長年求めている診断装置を、キヤノンは先進の
イメージング技術によって、かなえようとしています。物体に光を照射すると超音波を出すという現象に着目した、光超音波
トモグラフィ
(Photoacoustic Tomography:PAT)。レーザー光を身体に照射すると、血管中のヘモグロビンが光を吸収して
熱膨張を起こします。その際に発生する微弱な超音波を検出し、三次元映像に再構成することで、血管を3Dで可視化することを
可能にしました。これにより、がんや血管内のプラークなど、三大疾病の診断を無被ばく、非侵襲で行うことができるようになり、
新しい医療モダリティとして期待されています。キヤノンはこの技術をマンモグラフィに応用。2010年から京都大学と共同で臨床
研究を行い、病気の診断に対する有効性やシステムの安全性・信頼性、ユーザビリティーなどの実証を進めています。キヤノンは、
見えないものを見えるようにするイメージング技術で、人にやさしい、未来の医療をかなえていきます。
THE CANON STORY 2015/2016 17
Advanced Canon
技術による貢献 超大型望遠鏡TMT
宇宙の謎を解き明かせ。
世界とキヤノンが力を合わせる、
天文プロジェクト。
人類がまだ見たことのない、宇宙の生まれた姿を解き
明かす。2022年の観測開始を目指し、ハワイ島マウナ
ケア山で建設中のTMT (Thirty Meter Telescope)。
日本、アメリカ、カナダ、中国、インドの5カ国が力
を合わせて開発を進めている、口径30mの超大型望遠
鏡です。世界最大級のすばる望遠鏡と比べて、集光力
は約13倍、解像力は約4倍。そんな、かつてない天文
プロジェクトを実現させるため、日本は主鏡を構成する
492枚(交換用を含めると574枚)の分割鏡のうち約
3割の加工を担当しています。分割鏡の製作には、東京
ドームのフィールド1面分の面積を研削したとしても、
たった0.3mmの凹凸すら許さない高精度な加工技術
が必要です。創業以来、研鑽を重ねてきた、研削・研磨
技術、非球面加工技術、計測技術。キヤノンは、それら
すべてを注ぎ込み、すでに28枚の非球面研削加工を
完了し、引き続き、後工程である非球面研磨加工を
始めています。長年にわたり、キヤノンが磨き上げて
きた技術の結晶は、彼方の星や銀河を見据え、地球外
生命の痕跡すら探れるかもしれません。
技術の粋を注いだ分割鏡の研削作業
キヤノンが製作した分割鏡の試作品
18 THE CANON STORY 2015/2016
TMTの完成予想図(提供:国立天文台/協力:三菱電機)
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数字で見るキヤノン
売上高(2014年)
3 7,273
グローバルランキング(2014年)
兆
FORTUNE Global 500
〈 売 上 高 〉世界
For tune
2014年
7月21日付
〈 純 利 益 〉世界
292
211
位(前年236位)
純利益(2014年)
2,548
位(前年165位)
2013年度の売上高、純利益、総資産など5つの項目を評価
※FORTUNE Global 50 0は、Time Inc.の米国での登録商標です。
FT Global 500
FT.com
2014年
6月27日付
〈時価総額〉世界
243
億円
億円
キヤノンヨーロッパ
位(前年 158位)
(テクノロジーハードウェア・イクイップメント部門11位)
2014年3月31日の時価総額(1株当たりの価格と発行済み株式数を掛けた数値)
ランキング
米国特許登録件数(2014年上位10社)
順位
総合
権利者
日本企業
件数
1
IBM
7,534
2
SAMSUNG ELECTRONICS
4,952
3
1
キヤノン
4,055
4
2
ソニー
3,224
5
6
3
MICROSOFT
2,829
東芝
2,608
7
QUALCOMM
2,590
8
GOOGLE
2,566
9
10
4
LG ELECTRONICS
2,122
パナソニック
2,095
※キヤノンは10年連続で日本企業で第1位 ※米国の特許専門調査会社IFI CLAIMSパテントサービスの速報値による。
※IBMは、International Business Machines Corporationの略称です。
事業分野
主要拠点
研 究 開 発・ソフトウエア
ビジネスユニット別売上高の構成(%)
製造
販売
その他
オフィス
55.8%
欧州
売上高
イメージング
システム
36.0%
産業機器
その他
10.7%
1 905
兆
億円
従業員数
22,356
人
※事業分野売上高には、ユニット間消去-2.5%があるため、総計100%になっておりません。
20 THE CANON STORY 2015/2016
従業員数(2014年)
29.3%
191,889
27.8%
欧州
11.7% 9.4%
人
米州
欧州 米州
261
23.5%
日本
42.9%
連結子会社数(2014年)
日本
アジア・
オセアニア
19.4%
36.0%
アジア・
オセアニア
社
キヤノン中国
キヤノンUSA
キヤノン本社
キヤノン
マーケティングジャパン
キヤノンオーストラリア
アジア・オセアニア
日本
米州
売 上高
売上高
売上高
8,760
7,243
億円
1 365
兆
億円
従業員数
従業員数
従業員数
82,303
人
億円
69,201
人
18,029
人
THE CANON STORY 2015/2016 21
事業のご紹介
暮らしに寄り添い、ビジネスをサポートし、プロフェッショナルの期待に応え、産業・社会の発展を支える。
キヤノンは独自のイメージング技術をコアに、幅広く事業を展開しています。
ホーム
P. 24
毎日の暮らしの中で、
デジタル
イメージングがコミュニケーションを
豊かに広げています。
コンパクトデジタルカメラ
イメージスキャナー
デジタル一眼レフカメラ
デジタルビデオカメラ
ミラーレスカメラ
インクジェットプリンター
コンパクトフォトプリンター
コネクトステーション
ファクス
電卓
大判インクジェットプリンター
交換レンズ
ネットワークカメラ
業務用デジタルビデオカメラ
プロ用デジタル一眼レフカメラ
デジタルシネマカメラ
放送機器
プロフェッショナル
P. 28
MRシステム
業務用ディスプレイ
眼科機器
常に革新的なイメージング技術を提供し、
プロフェッショナルの信頼に
応えていきます。
22 THE CANON STORY 2015/2016
プロ用インクジェットプリンター
デジタルラジオグラフィ
3Dマシンビジョン
システム
オフィス
P. 26
高画質・高精細・高速を追求したデジタル
イメージングがさまざまなソリューション
オフィス向け
複合機
レーザー複合機
ビジネスインクジェットプリンター
レーザー
プリンター
クラウド型
ドキュメント
サービス
ドキュメントスキャナー
ソリューション
ソフト
トナー
カートリッジ
マルチメディアプロジェクター
産業用カメラ
を提案しています。
ダイボンダー
業務用高速・連帳プリンター
真空成膜装置
デジタルプロダクション
プリンティングシステム
ハンディターミナル
有機EL
ディスプレイ
製造装置
業務用フォトプリンター
半導体露光装置
インダストリー
P. 30
多様なニーズをかなえる
多彩なテクノロジーで、産業・社会の
コンポーネント
FPD(フラットパネルディスプレイ)露光装置
カラーラベル/
カラーカードプリンター
発展を力強く支えています。
THE CANON STORY 2015/2016 23
事業のご紹介
暮らしを支える。
ホーム
大切な一瞬をきれいに写し、きれいに残す。
レンズ交換式デジタルカメラをはじめ、
コンパクトデジタルカメラに、デジタル
ビデオカメラ、プリンターなど。キヤノン
は人に寄り添うイメージング技術で、毎日
の暮らしを豊かに彩ります。
コンパクトデジタルカメラ
楽しさ広がる、
先進機能。
大型センサーと大口径レンズを搭載した高性能モデルも
登場し、写真の楽しみがより広がったコンパクトデジタル
カメラ。高倍率ズームや高感度性能に高度な手ブレ補正、
一度に6枚の写真が撮れる
「クリエイティブショット」
、静止
画と動画を同時に記録する「プラスムービーオート」など、
多くの先進機能が搭載されています。キヤノンはこれから
もコンパクトデジタルカメラの可能性を追求していきます。
デジタルビデオカメラ
自由に楽しむ姿を、
自由なスタイルで。
手のひらサイズで、Wi-Fiにも対応したデジタルビデオ
カメラ「iVIS mini X」。超広角レンズと大口径ステレオ
マイクにより、ワイドなアングルと臨場感ある高音質を
実現しました。置き撮りや自分撮りも思いのまま。歌や
ダンス、趣味を楽しむ姿も、自由なスタイルで撮影でき
ます。家でも、外でも、どんな場所でも。キヤノンが提案
する新しい映像表現の形です。
24 THE CANON STORY 2015/2016
レンズ交換式デジタルカメラ
世界一を目指す光学技術を、
より身近に。
創立以来、世界一のカメラを目指してきたキヤノン。その
実現に欠かせないのが、目にあたる「レンズ」
、網膜に
あたる「センサー」、頭脳にあたる「映像エンジン」です。
キヤノンはこれらすべてを自社開発。長年培ったイメー
ジング技術で、写真の歴史を切り拓いてきました。その
一瞬を、もっと自由に、もっと美しく。磨き上げたテク
ノロジーの粋は、製品の一つひとつに宿り、写真表現の
さらなる飛躍を目指していきます。先進の写真体験を、より
身近に。キヤノンは多くの方々に、撮る喜びを届けます。
コネクトステーション
写真や動画を、
もっと手軽に楽しむ。
デジタルカメラやビデオカメラで撮影した写真や動画を、
NFCやWi-Fiを使って手軽に保存できるだけでなく、テレビ
と接続して大画面で観賞できる、コネクトステーション。
PCを使わずに、クラウドを使った共有やプリント出力も
簡単にできる、新コンセプトの製品です。手軽に、快適に、
高画質に。写真や動画を観賞・共有する楽しみを広げます。
インクジェットプリンター
スマートフォンで、
プリントをスマートに。
鮮やかな写真とくっきり読みやすい文字を出力できる、
キヤノンのインクジェットプリンター。クラウドとの連携
を強化し、PCを使わず、NFCに対応するスマホをかざす
だけで印刷できる「PIXUSタッチ」など、出力がますます
スマートになりました。そのうえ、感覚的に操作できる
タッチパネル、省エネに貢献するECO設定などの機能も
充実しています。
THE CANON STORY 2015/2016 25
事業のご紹介
ビジネスを支える。
オフィス
キヤノンは先進のイメージング技術で、快適で、
効率的なオフィス環境をサポートしていきます。
多様なビジネスニーズに応えるオフィス向け
複合機をはじめ、各種プリンターに、トナー
カートリッジ、ソリューションソフトやクラウド
型ドキュメントサービスなども充実。キヤノン
グローバルサービスでは、グローバルで画一した
高品質なサービスを提供しています。
レーザープリンター・複合機
生産性も、
操作性も、
使う環境にも配慮する。
印刷速度がアップし、さらに生産性が
進化した、レーザープリンター。無線
世界のお客様の
ビジネスパートナーに。
キヤノングローバルサービス。
LANを使って、スマートフォン・タブ
レットからの印刷が可能になり、より
便 利 に な り ま し た。 立った と き で も
座っているときでも、操作がますます
快適に。高度な省エネ設計に加え、トナー
ワールドワイドに事業を展開するお客様の多様
なニーズに応えていく、キヤノングローバル
カートリッジのリサイクル活動で、環境
にも配慮しています。
サービス。世界220以上の国と地域にわたる販売
ネットワークを活かし、欧州、米州、アジア・
オセアニア、日本の4つのエリアにおいて、ワン
ビジネスインクジェットプリンター
ストップでオフィス機器の提供、メンテナンス、
ビジネスニーズに応える、
高性能プリンター。
そして、さまざまなマネージドサービスを実施
しています。キヤノンヨーロッパ、キヤノン
USA、キヤノンシンガポール、そして、キヤノン
マーケティングジャパンが、それぞれの地域の
統括拠点となり、キヤノングループがグローバル
に連携していくためのサポート体制を構築。どの
国や地域においても、お客様に信頼いただける
ビジネスパートナーとして、世界中のオフィス
に先進のドキュメントソリューションを届けて
いきます。
26 THE CANON STORY 2015/2016
キヤノンのビジネス向けインクジェット
プリンターは、高速、高画質、そして
高い経済性を備え、多くのオフィスで
活躍しています。また、新開発の顔料
インクにより、黒もカラーもはっきり
と、発色のよい文書印刷が可能に。これ
からもより快適で、より効率的なビジ
ネス環境の実現を目指していきます。
オフィス向け複合機
快適も、効率も、
この一台で思いのままに。
使いやすさ、ネットワーク環境との高い
親和性、そしてセキュリティー機能など
を兼ね備えた、キヤノンのオフィス向け
複合機。コピー、プリント、スキャン、
ファクスなど、あらゆる文書管理を一台
でこなし、スピーディーな情報共有・
活用を促進。オフィスワークの効率化
をサポートします。
マルチメディアプロジェクター
狭い場所でも、歪みなく、
高画質へ。
さまざまな場所でのプレゼンテーション
を サ ポート す る、 キ ヤ ノ ン の マ ル チ
メディアプロジェクター。狭い会議室
でも大画面・高輝度投写が可能な短焦点
モデルをはじめ、幅広いラインアップ
をそろえ、歪みのない、高画質な映像を
実現します。ビジネスシーンはもちろん、
近 年 注 目 を 集 め る プ ロ ジェク ション
マッピングなどの最新の映像表現にも
貢献しています。
大判インクジェットプリンター
現場のニーズをかなえる、
先進のプリント技術。
高画質で高速なプリントを実現する、
キヤノンの大 判インクジェットプリン
ター。CAD図面、ポスター、教材、掲示
物などさまざまな用途に対応した幅広い
ラ イ ン アップ に 加 え、 ポ ス ター作 成
ソフトウエアをはじめとしたソリュー
ションも充実。さらなる使いやすさの
向上を追求し、お客様のニーズに応じた
使い方を提案していきます。
THE CANON STORY 2015/2016 27
事業のご紹介
プロの仕事を支える。
プロフェッショナル
キヤノンのテクノロジーの粋が詰まった、
デジタル一眼レフカメラに交換レンズ群
をはじめ、デジタルシネマカメラ、業務
用ディスプレイ、放送機器など、革新的
な イ メージ ン グ 技 術 で、写 真 や 映 像 の
プロフェッショナルの期待に応えています。
また、眼科機器やデジタルラジオグラフィ
など、医療分野でもプロの現場を支え、
新たな価値を提供していきます。
デジタルシネマカメラ
動画の世界に革命を。
キヤノンの先進イメージング。
ハリウッドをはじめ、映像制作のプロフェッショナルから
高い信頼を得ている「CINEMA EOS SYSTEM」。圧倒的
な高画質・高感度と小型軽量を実現し、従来では困難
だった暗いシーンや狭い場所での撮影を可能に。また、
ラジコンヘリにも搭載できる機動性の高さで、映像制作
の現場に革新をもたらしています。
デジタルラジオグラフィ
医療現場のあらゆる状況に、
キヤノンのイメージングを。
近年、医療現場での導入が進んでいるデジタルX線撮影。
キヤノンは立位・臥位での撮影はもちろん、持ち運びできる
ポータブルタイプに、ワイヤレス、透視撮影を可能にする
動画対応機器まで、あらゆる状況の撮影に対応できる、
さまざまなタイプの機器を開発しています。
28 THE CANON STORY 2015/2016
レンズ交換式デジタルカメラ
最高の一瞬をとらえる、
キヤノンの最高技術。
過酷な環境で、二度とない一瞬のシャッターチャンスを
待ち続ける、プロフォトグラファーたち。その期待に応える
ため、キヤノンは長年培ってきたイメージング技術の粋
をプロ用デジタル一眼レフカメラに注ぎ込んでいます。
高画質、高感度、高速連写はもちろん、堅牢性・耐久性
も高次元で実現。キヤノンはこれからもプロの信頼に応え
続けていきます。
業務用ディスプレイ
かつてない映像クオリティーを、
プロの現場へ。
独自の映像エンジンをはじめ、RGB LEDバックライト
システム、IPS液晶パネルを採用した、キヤノンの業務
用ディスプレイ。忠実な色再現・高解像度・高コントラスト
を実現し、4Kのさらにその先へと高画質な次世代映像
フォーマットへの対応が加速化している、映像制作現場
の高度なニーズに対応していきます。
眼科機器
高い精度で、
負担は少なく。
人を想う眼科機器。
眼科診断の精度向上に、キヤノンは長年培ったイメージ
ング技術で貢献しています。高画質と小型化を両立し、
患者さんの負荷が少ない撮影が可能な眼底カメラ、失明
の原因にもなる網膜疾患を三次元で検査する光干渉断層計
(OCT)など、眼科機器のラインアップを強化していき
ます。
THE CANON STORY 2015/2016 29
事業のご紹介
産業・社会を支える。
インダストリー
キヤノンは、光学技術や画像処理技術を
応用し、高性能で高品質な産業機器など
を 提 供 し て い ま す。業 務 用 に 特 化 し た
プリント機器から、半導体露光装置、次
世代のナノインプリント。そして、ネット
ワークカメラやMRシステム、3Dマシン
ビジョンシステムといった新しい事業分野
にも注力。産業や社会が求めるニーズに
的確に応え、支えていくことで、事業領域
の拡大を推進していきます。
半導体露光装置
より微細に、
精密に、
半導体を支える技術。
コンピューターやスマートフォンなど、さまざまなデジ
タル機器を支えている半導体チップを作り出す、半導体
露光装置。ナノメートル単位の精密な装置制御が求め
られる世界で、キヤノンは高い解像力、生産性、信頼性を
保ちながら、さらなる微細化を目指し、次世代技術「ナノ
インプリント」の開発を進めています。
30 THE CANON STORY 2015/2016
デジタルプロダクション
プリンティングシステム
求めるプリント、思いのままに。
必要なときに必要なだけ印刷できる、キヤノンのデジタル
プロダクションプリンティングシステム。さまざまな種類
の用紙やサイズなどの多様なバリエーションや、少ない
部数にも対応し、商業印刷や企業内印刷の分野で活躍して
います。ライトプロダクション市場向けからオセ製品も
加わった充実のラインアップで、色彩の再現性はもちろん、
高品質印刷と高い生産性を実現しています。
業務用フォトプリンター
ネットワークカメラ
高画質と高生産性を追求した、
新規事業への挑戦。
動きをとらえ、解析する、
テクノロジーの眼。
印刷業界や付加価値の高い写真商材の制作を
街やオフィス、公共機関など、さまざまな場所で活躍するキヤノンのネット
行う、リテイルフォト業界向けにキヤノンが
ワークカメラ。光学技術と映像処理技術、ネットワーク配信技術を融合させ、
投入した業務用フォトプリンター
「DreamLabo
高画質・高機能・高性能を実現。広域での屋外監視が可能な360°旋回型や
5000」
。長年培ってきたインクジェット技術を
0ルクスの暗闇でも撮影可能な赤外照明を搭載した製品など、ラインアップを
さらに発展させ、業務用にふさわしい高画質と
拡充しています。また、人や物の動きを解析し、マーケティングに活用する
高生産性を実現。新たな業界のニーズに応えて
など、新たな価値を提供しています。
いきます。
THE CANON STORY 2015/2016 31
未来を支える活動
研究
超高解像度1.2億画素CMOSセンサー
創立以来、
「技術優先」を企業DNAとして、
うち任意の領域を切り出すことができ、
常にイノベーションを続けてきたキヤノン。
長期的な視点に立ち、将来へ向けた新たな
は、下図のようにセンサー画面全体の
トリミングや電子ズームなどを行っても
高精細で鮮明な画像を得ることが可能
です。
技術の芽を発掘する「プリコンペティティブ
領域」をはじめ、人の健やかな未来を支える
「メディカル」や「産業機器」という新分野
にも活かされています。未知の研究分野
を切り拓き、強い技術で社会に新たな価値
を提供する。キヤノンの研究・開発は、いつ
も未来を見据えて進んでいます。
1.2億画素CMOSセンサーで撮影した動画
テラヘルツイメージング
製品の非破壊検査から、医薬品の品質検査、血液検査や
がん細胞の病理診断まで、さまざまな分野で応用が期待
されている、テラヘルツ波。電波と光の両方の特性を兼ね
備え、金属や水は透過しづらいのに、紙やプラスチック
などは透過しやすいという、特別な性質を持っています。
キヤノンは、世界最高レベルのテラヘルツ波の発振器を
開発。可視化処理のさらなる高速化・高精細化を目指して
います。
補償光学走査型レーザー検眼鏡
(AO-SLO)
視細胞の一つひとつから、眼底血管の血流まで観察できる
「補償光学走査型レーザー検眼鏡」
(AO-SLO)
。眼底は人体
の中で唯一、血管の状態を直接見ることができるため、
目の病気だけでなく、さまざまな病の早期発見に役立つ
ことが期待されています。キヤノンは国内外の大学・医療
系研究機関と装置の共同研究を進め、医療への貢献を
目指しています。
32 THE CANON STORY 2015/2016
CMOSセンサー
デジタル一眼レフカメラなどに搭載されているキーパーツ
の一つ、CMOSセンサー。キヤノンは独自技術を活かし、
自社で開発・生産を行っています。 高画質、高感度、
そして低ノイズを実現し、新しい映像表現を可能にして
います。さらに、超高解像度化や超高感度化の開発を
進めることで、天体・自然観測や 医療研究などでの活用
や、航空、監視・防犯機器などへの応用を検討しています。
約1/60の領域をフルHD動画として切り出した例
二次元検出型質量顕微鏡
細胞や病変組織を光学顕微鏡で観察し、がんの有無など
を見分け、治療法を決定する病理診断。キヤノンは、この
病理診断の高度化を目指し、独自の高解像・高感度質量
顕微鏡の開発に取り組んでいます。先進の光学技術を応用
することで細胞レベルの解像度を実現。生体組織内の物質
の二次元的な分布をさらに高精細に可視化するため、研究
開発を進めています。
超小型ファイバー内視鏡
キ ヤ ノ ン は 米 国 ボ ス ト ン の ヘ ル ス ケ ア オ プ ティク ス
リサーチラボラトリーにおいて、ハーバード大学医学部
の関連医療機関と、生体医学に関する光イメージングや
医用ロボットなどの共同研究をしています。従来の内視
鏡では見えなかった、関節内部などをイメージングする
超小型ファイバー内視鏡などの開発・実用化を目指し、
技術開発を進めています。
超小型ファイバー
内視鏡のプロトタイプ
THE CANON STORY 2015/2016 33
未来を支える活動
質感取得・出力技術
質感とは、光沢感や凹凸感など、材質について人が感じ
取る視覚的、触覚的な要素です。モニターや印刷物で
質感を再現するには、色の情報に加え、物体表面の光の
反射特性などの質感情報を取得することが不可欠です。
キヤノンは、質感情報を高精度に取得する技術と、紙や
色材の特性に応じて質感情報を制御し、出力する技術の
研究を進めています。今後は、写真のみならず、インテリア
素材などにも適用先を広げていきます。
知的ロボットの要素技術
キヤノンは、光学・撮像・画像技術を応用した三次元
計測・認識技術とICT技術を融合した先端技術を探求して
います。例えば、現実世界を視覚・認識するマシンビジョン
技術に、自ら学習し行動を決定するICT技術を融合する
ことで、知的ロボットの実用化を可能にしていきます。
さらに「安全・安心」
「健康・医療」の分野など、事業領域
の拡大も図ります。
鉛フリー圧電材料
電子機器や自動車などに使われている、圧電体。電気的
なエネルギーを機械的エネルギーに変換する材料ですが、
現在、環境に有害な鉛を主成分としたものが主流です。
キヤノンは、これまで進めてきたハンダの鉛フリー化や
レンズ(ガラス)の鉛フリー化に続き、製品に搭載される
圧電体の鉛フリー化を目指し、材料開発に取り組んで
います。
34 THE CANON STORY 2015/2016
開 発・デザイン
キヤノンでは、長年のノウハウを活かす柔軟な体制づくりや、最新技術の導入など、さまざまな取り組みを進めて
います。わくわくするデザインの考案、高度な技術を駆使した設計、使用シーンを再現して行う評価。ユーザー目線
で、革新的な製品開発を目指しています。
プロダクトデザイン
誰にとっても便利で使いやすく、洗練されたデザイン
を。キヤノンのデザイン部門では、使われる環境と
ユーザーを想定しながら、日々アイデアを形にして
います。製品の理想的な姿や機能を検討し、新しい
価値を提案していく。それがデザインの役割である
と、キヤノンは考えています。
製品設計
製品の開発時に発生する問題を予測するシミュレー
ション技術など、設計に不可欠な情報技術。キヤノン
は最新のスーパーコンピューターを導入し、今まで
できなかった高精度で大規模な計算を可能にしました。
それにより、開発期間やコストの削減、製品の質の
向上までを実現。将来的には製品開発時に起こる
すべての重要問題をコンピューターで可視化し、即座
に適切な改善策を導くため、改良を進めていきます。
製品ユーザビリティーの評価
キヤノンでは、最新技術を駆使した設計とともに、
ユーザー視点に立った製品評価を実施しています。
例えば、カメラ用交換レンズの光学性能評価では、
数多くの実写などを行い、設計の意図通りの画質が
実現されているかを検証。信頼性評価では、高温・
低温での環境試験をはじめ、衝撃試験や耐久試験を
実施し、ユーザビリティーの向上を追求しています。
THE CANON STORY 2015/2016 35
最先端のものづくり
生産
キヤノンは、世界最適生産体制の確立と自社生産体制を進めています。セル生産を進化させた「マンマシンセル」
、
部品や装置を自社開発・生産する「内製化」
、スーパーマシンビジョン技術による「自動化」など、徹底的にムダを省き、
高品質な製品づくりに挑戦し続けています。
世界最適生産
キヤノンは、国や地域ごとのコスト、税制、物流、
調達、労働力などを総合的に判断し、最も合理的
な拠点で生産を行う、
「世界最適生産」を展開して
います。国内では自動化を推進し、米・欧州では
消耗品を中心に消費地生産を加速。また、新興国
では、新たに設立した拠点での生産も本格化し、
生産体制の強化を進めています。
高性能EFレンズを生産する宇都宮工場
主な生産拠点
技能五輪全国大会で技能を競う研修生
ものづくり人材育成
世界の生産拠点で活躍する未来のリーダー育成
のため、キヤノンでは、グローバル人材研修を
実施しています。製品加工の技術・知識の学習
から実践的なトレーニング、独自のマネジメント
などを習得し、研修生が高度な技術知識をもって
生産現場をまとめ、リーダーシップを発揮できる
よう尽力しています。また、日本国内では技能五輪
全国大会に参加し、技能レベルの向上にも積極的
に取り組んでいます。
36 THE CANON STORY 2015/2016
品質
お客様の安全・安心・満足を実現し続けていくこと、それが「Canon Quality」。製品の開発から調達、生産、販売、
そしてサービス・サポートに至るまで、キヤノンブランドがお客様に信頼いただけるよう、ノークレーム・ノートラブル
を基本理念として品質至上主義を徹底していきます。
放射電波の測定(電波暗室)
製品ライフ
サイクルに
おける品質保証
製品開発
生産
サポート
性能やデザイン、使いやすさはもち
国内外の生産現場では、従業員の品質
製品を長期にわたり安心してご利用
ろん、人体への影響にも配慮。独自基準
への意識を高める教育活動のほか、
いただけるよう、保証や修理などアフ
をクリアした部品で、安心して使って
生産の安定と品質向上を目指した活動
ターサービスネットワークを拡充して
いただける製品を開発しています。
を展開しています。
います。
物流
キヤノンは次世代ロジスティクス
システムを運用し、素早く、安全
に、そして低コストな物流をグロー
バルに展開しています。各地の情報
をシステムで一元管理することで、
サプライチェーンマネジメントを
効率化。また、グローバルでエコ
物流を推進し、CO2排出量の削減
を目指しています。
THE CANON STORY 2015/2016 37
グローバルマーケティング/サービス
キヤノンヨーロッパ
Europe
欧州
欧州、中東、アフリカ地域(EMEA)
を統括するキヤノンヨーロッパ。
2015年は、新たな技術、サービス、ソリューションを提供し、お客
様のニーズにお応えしていきます。2014年には、マイルストーン
システムズ社をグループ会社化し、今後、市場の拡大が予想される
ネットワークビジュアルソリューション事業を強化。さらにEMEA
地域において、3DプリンターやMRシステムをはじめとする新規
事業にも参入します。また、クラウドベースの画像管理サービス
「irista」のような新たなサービスによって、お客様とさらに身近な
関係を築き、イメージング製品を通して、ホームやビジネスシーン
をサポートするデジタルサービスの開発を進めます。さらに、新興
市場の開拓も強化。カタール国内での販売活動をより強固にする
ため、昨年、Canon Office Imaging Solutions(Doha)を開設
しました。ガーナをはじめとするアフリカ諸国や東欧、ユーラシア
地域で、カスタマーサポートやマーケティング活動も強化・拡大
していきます。
マイルストーンシステムズ社
38 THE CANON STORY 2015/2016
欧州主要各国で展開する
オンラインストレージサービス
「irista」
中東ドバイで開催したセミナー
キヤノンUSA
Americas
米州
プロフォトグラファーから支持されるプロ用デジタル一眼レフカメラと交換レンズ
北米および中南米地域を統括するキヤノンUSA。
「Canon See
Impossible」という新スローガンを掲げ、変化する市場の動きを
とらえながら、新たなビジネスを創出する挑戦を続けています。
現行ビジネスでは、さらなる顧客対応の充実を図るべく、米国
中部にプロユーザー向けのサービスサポートセンター、西海岸に
Canon Experience Centerを開設したほか、米州で開催される
大型スポーツイベントにおいてプロフォトグラファー向けのカメラ
やレンズ、テレビ局向け放送用レンズのサービスで報道現場を
サポート。さらにCINEMA EOS SYSTEMがハリウッドのみならず、
テレビ、ドキュメンタリーなどプロの映像制作の業界で幅広く
映像制作の現場で活躍するCINEMA EOS SYSTEM
支持され、着実にマーケットシェア拡大を図っています。また
マーケティング、販売にとどまらず、遺伝子検査装置事業では、
研究から開発、生産を含むすべての機能を持つ事業会社を米州に
置くなど、三極体制の一翼を担う地域本社の機能を整え、米国発
の市場拡大に拍車をかけていきます。
Photo: Steve Tobenkin
カリフォルニア州コスタメサ市に開設したCanon Experience Center
THE CANON STORY 2015/2016 39
グローバルマーケティング/サービス
キヤノン中国
Asia &
Oceania
アジア・オセアニア
ATPP開始記者発表会
キヤノン中国をはじめとする、キヤノンアジアマーケティング
グループは、市場の競争が激化する中、さらなる成長を実現する
ため、緻密な市場対応や新興国・地域の開拓によるビジネスの
拡大に取り組んでいます。2014年には、増加する海外旅行者への
付加価値の提供を目指して、Canon Asia Traveler Protection
Program
(ATPP)
を開始しました。中国大陸でキヤノンの正規品
カメラ・レンズなどを購入したユーザーが海外旅行した際、
アジア
11カ国・地域の対象地域であれば、無料修理が受けられるという
サービスです。今後は適用範囲を拡充し、より利便性を向上して
いきます。また、写真文化の啓蒙とユーザーの拡大を目的に、
ユニークなフォトコンテスト
「キヤノンフォトマラソン」
をアジア
全域で実施し、2014年には2万人以上が参加しました。さらに、
各地のカメラショーにも積極的に出展。イメージングNo.1企業
としての総合力をアピールするとともに、ブランドイメージの
向上を図っています。一方、オセアニア地域では、コンシューマ
向け製品に加え、ソリューションビジネスの強化・拡大に努めて
います。
アジア全域で開催しているキヤノンフォトマラソン
40 THE CANON STORY 2015/2016
「中国国際撮影機材技術博覧会
(CHINA P&E)」など、各地の
カメラショーへ積極的に出展
キヤノンオーストラリア
キヤノンマーケティングジャパン
Japan
日本
MRシステムを活用した住宅設備シミュレーション
キヤノンマーケティングジャパングループは、国内を中心に
グループの総合力を活かしたマーケティング活動を展開して
います。2015年は、新規事業の創出や国内外の優れた企業との
連携により商社機能を強化し、サービス創造企業グループへの
変革を目指していきます。コンシューマ分野では、デジタルカメラ
やプリンターを中心に、幅広い製品群を活かしたお客様目線の
マーケティング施策を展開。製品の販売・サポートに加え、写真
教室やワークショップ、イベントなどで、お客様にデジタルフォト
の楽しさを伝え、写真文化の創造と市場の拡大を図っています。
ビジネス分野では、優れた製品とキヤノンマーケティングジャパン
3D医療画像解析システムによる医療ITソリューション
グループの持つさまざまなサービスを組み合わせた、付加価値の
高いITソリューション事業を展開し、例えば、製造や建設業界向け
には、MRシステムに3D CADソフトや3Dプリンターを組み合わせ、
生産性向上やプロセス革新につながる3Dソリューションを提供。
医療分野では、3D医療画像解析システムや自社グループが運営
するクラウド基盤を活用した医療画像ITソリューションを強化・
拡充しています。
アジア最大の総合カメラ映像ショー「CP+2015」に出展
THE CANON STORY 2015/2016 41
豊かな社会を目指す取り組み
製品開発
キヤノンの環 境 活動
豊かさと地球環境の両立する未来のため、
キヤノンは環境ビジョン
「ACTION for GREEN」のもと、
さまざまな取り組みを行っています。
高機能で使いやすい製品を作り出すと同時に、
「つくる」
「つかう」
「いかす」という
製品ライフサイクル全体を通じて、
あらゆる環境負荷の低減に尽力していきます。
製品のライフサイクルすべてにおける環境負荷を評価するLCA
(ライフサイクルアセスメント)評価を実施。常に環境を考えた
製品開発を行っています。
リサイクル
「ACTION for GREEN」とは?
人と地球の豊かな未来を実現するため、
「製品の高機能化」と「環境負荷の最小化」を
同時に達成することを目標とした、
キヤノンが掲げている環境への考え方です。
回 収したカートリッジを同じ品 質で何 度も
再生させる「トナーカートリッジリサイクル」
は、今年25周年を迎えました。オフィス向け
複合機を新品と同等の品質でよみがえらせる
「リマニュファクチュアリング」
も行っています。
42 THE CANON STORY 2015/2016
調 達
生 産
特定有害物質を含んだ部品を使用しないなど、環境負荷が少ない
材料や製品を優先して調達・購入する、グリーン調達を徹底して
います。
つくる
セル生産方式の採用により、生産時のムダを削減し、大幅な省
エネ・省資源を実現。水を循環使用し、水使用量を削減できる
「クローズド排水処理システム」も導入しています。
環境負荷
低減
いかす
つかう
物 流
製品ライフサイクル
使 用
航空機やトラック輸送を減らし、環境負荷の少ない、船舶や鉄道
輸送に切り替えるモーダルシフトを推進しています。
インクジェットプリンターの「ECO設定」では用紙使用量や待機
時電力を削減。
複合機には
「オンデマンド定着技術」
を、
プロジェク
ターには光学システム
「AISYS」
をそれぞれ搭載し、
徹底した省エネ
を実現しています。
THE CANON STORY 2015/2016 43
豊かな社会を目指す取り組み
キヤノンの 社 会貢 献 活動
キヤノンは、共生の理念のもと、よき企業市民として地球環境の保護、国際社会の発展、教育、社会福祉、
芸術・文化支援活動など、さまざまな社会貢献活動を展開しています。
世界中の人々が豊かに暮らせる社会を実現する。それが、グローバル企業としてのキヤノンの責任です。
綴プロジェクト 襖絵250年ぶりの里帰り
日本の貴重な文化財を美しい姿のまま、未来に残していく。綴プロジェクトは、
アメリカのミネアポリス美術館が所蔵。この度のプロジェクトにより、約250年
特定非営利活動法人京都文化協会とキヤノンによる文化財保護活動です。京都の
ぶりに里帰りを果たすことができました。田植えの春、水車で川の水をくむ夏、
伝統工芸とキヤノンのデジタル技術が結実し、文化財の高精細な複製品を制作。
稲刈りの秋、牛と田起こしする冬。日本の農作業の四季とそこに息づく人々の姿
それらを寄贈することで、多くの人々が優れた作品にふれる機会を広げる一方、
を描いたどこか懐かしい作品は、期間限定で公開され、鑑賞されています。
オリジナルは良好な環境で保存することができます。2014年4月には、
「四季耕作
キヤノンは長年培った先進技術により、過去から現在、そして未来へと、日本の
図襖」全16枚の複製品を制作し、旧嵯峨御所大本山大覚寺に寄贈しました。狩野
文化を伝えていくお手伝いをしていきます。
山楽によるこの襖絵は、かつて大覚寺の竹の間に飾られていたものですが、今は
44 THE CANON STORY 2015/2016
キヤノンイメージブリッジ
3E’s Project
キヤノン中国が中心となり、アジア各国・地域の小中学生をつなげていく活動
キヤノンインディアは、教育や医療施設が十分に整っていない村を対象に、教育
です。これまでに179校、約5,600人もの小中学生が参加し、写真に感想文を
施設の改善、ソーラーパネルの設置、眼底カメラでの検診など、Education/
添えた「交流カード」を通じて異文化交流を行っています。
Environment/Eye Careの3分野で支援を行っています。
©Red Cross
アメリカ国立公園の保護活動
ヨーロッパ赤十字パートナーシップ
キヤノンUSAは、イエローストーン国立公園やアカディア国立公園などで、
キヤノンヨーロッパは2006年、赤十字社とパートナーシップ契約を締結。
自然保護活動のサポートを続けています。野生動物の生態観察や映像ライブラ
ヨーロッパ16カ国で、救急処置の指導など青少年のための支援・教育プロジェクト
リーの構築などに、キヤノンの映像機器が活用されています。
に協力し、機器の寄付や人的支援などのさまざまな活動を行っています。
献血活動
未来につなぐふるさとプロジェクト
キヤノンは1965年から世界各地のグループ会社で献血活動に貢献してきました。
キヤノンマーケティングジャパンが始めた、未来に緑豊かなふるさとを残す
その活動が認められ、2014年に名古屋で開催された第50回献血運動推進全国
ための環境保全プロジェクト。活動はグループ会社に広がり、田植えや草刈り、
大会において、
「昭和天皇記念献血推進賞」を受賞しました。
茶摘みなど、地域ごとに特色のある活動を実施しています。
THE CANON STORY 2015/2016 45
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