当院における貯血式自己血の保存中に発生するマクロアグリゲートの現状

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当院における貯血式自己血の保存中に発生するマクロアグリゲートの現状
◎金子 あゆみ 1)、荒嶋 知世子 1)、栗林 浩子 1)、福岡 清二 1)、片平 英一 1)、津田 祥子 1)
昭和大学 横浜市北部病院 1)
【はじめに】当院では全血または MAP 採血による貯血式
類別では、全血が 7.4%(106/1425 バッグ)、MAP は 1.9%
自己血輸血を実施している。2008 年 4 月より全血採血に
(11/566 バッグ)で、全血保存は MAP に比べて約 4 倍の
CPDA-1 バッグの使用を開始し貯血期間を MAP 採血と同等
発生率であった。全血保存で凝集が認められた 106 バッグ
としたが、一方でマクロアグリゲート(macroaggregates:
の平均保存期間は 15 日間で、最長が 34 日、最短が 5 日で
大凝集塊)による輸血回路の詰まりが多く発生するように
あった。保存期間では、1 週目 1.3%(4/312 バッグ)、2 週
なった。そこで今回我々は、自己血貯血における凝集塊の
目 4.6%(31/681 バッグ)、3 週目 6.4%(35/551 バッグ)、
発生状況について検討したので報告する。
4 週目 9.4%(31/329 バッグ)、5 週目 13.6%(16/118 バッ
【対象および方法】対象は 2012 年 4 月から 2015 年 3 月ま
グ)で保存期間が長いほど凝集塊の発生頻度は高かった。
での 3 年間に自己血輸血を実施した 1062 名、1991 バッグ
診療科別では患者数の多い整形外科が 7.7%(79/1032 バッ
を対象に、バッグの種別、保管期間、疾患別による凝集の
グ)と多く、疾患別では前置・低置胎盤が 14.3%(14/98 バ
発生率等を検討した。方法は、手術前日に目視で凝集を確
ッグ)で多かった。
認できたもの、凝集が疑わしいものに対して、手術当日に
【考察】凝集の発生率は MAP 採血が低く、全血採血で高
無菌的に輸血セットを通して分離バッグへ血液を移す過程
かった。保存期間では 2 週目以降から凝集発生率は高くな
で凝集の有無を確認した。使用したバッグは全血用バッグ、
る傾向であった。これらのことから全血採血で 2 週間以上
MAP 用バッグおよび分離用バッグはテルモ社製(400ml、
保存する血液は凝集の有無をよく観察し、術前に凝集塊を
200ml)、輸血セットは JMS 社製を使用した。
除去した自己血を供給することが手術中の輸血の遅滞解消
【結果】凝集の発生率は、患者総数の 6.9%(73/1062 名)、
になると考えられた。凝集の有無を確認するポイントや文
バッグ数の 5.9%(117/1991 バッグ)であった。バッグの種
献的参考を加え報告する。連絡先 045-949-7370