宿泊型自然体験(お泊り保育)の意義と具体的実践について

宿泊型自然体験(お泊り保育)の意義と具体的実践について
○鬼頭弘子(和光保育園)
田尻由美子(精華女子短期大学)
1.はじめに
社会の発展とともに、現代の子どもたちを取り巻く
環境は急速に変化し、インターネットで世界中の人々
とやり取りができ、何でも簡単に物が手に入る便利な
世の中となった。心情や意欲、そして人との関わりは
一生を通して大切にしてほしいと思うが、それらが芽
生え、育まれていく学童期、青年期そして大人となる
過程で、
幼児期に体験したものが心の糧となっていく。
目先の評価や結果にとらわれるのではなく、私たちが
子どもたちに本当に伝えていかなければならないもの
が何なのかをしっかり考える時期に来ている。親の子
育て力や時間が不足しており、自然体験や生活体験が
個々の家庭の努力だけでは十分ではない現状では、保
育所・幼稚園の役割は大きいと思われる。
今回は、子どもが大自然とふれあい、保護者と離れ
て自立した生活を送ることで、自然への関心を高める
とともに成長を大きく促すことができる、宿泊型の自
然体験について、その意義と課題を検討した。
2.方法
4・5 歳児を対象に、2012 年 7 月下旬に福岡県築上
郡の公営キャンプ場(牧の原キャンプ場)のログハウ
スを利用して、野外お泊り保育を実施した。日常の保
育とのつながりは、表 1 のように年間を通して実施し
ており、今回の主な活動内容は表 2 のとおりである。
3.結果及び考察
すいように設けられているが、
自然の姿は日々変化し、
近年の異常気象や降雨による水かさの変化、川底の変
形、害虫発生などの影響を受ける一面もある。実施す
るにあたって、教材や食事の準備、保護者との連携、
安全の確保などわずらわしい事も多く、不安材料も挙
げればきりがないが、その意義と子どもの笑顔を励み
に実施し続けている。この様なさまざまな困難に、保
育者が立ち向かって取り組む姿こそが子どもたちに伝
わるメッセージになると思われる。
4.今後の課題
自然の中には全てのものに生命力があり、一歩外に
踏み出して見ると、土、風、光、など私たちの五感に
投げかけてくるものがたくさんあり、子どもが気付い
たものが目立たない石や黒く小さな虫であっても発見
した喜びは大きい。保護者の理解は得やすいが、いか
に親も巻き込んだ活動にしていくかが課題である。ま
た、子どもの安全確保や保育者の労働時間、人件費な
どの課題も大きい。自然体験や生活体験の教育的効果
を実証することは難しいが、親の感想の中にある「実
感」こそが、それを実証するものであろう。予算や安
全の問題があるものの保護者の理解と協力を得て、年
間を通して、日常的な自然との触れ合いとともに、宿
泊型の体験活動を継続的に実施することが大切で、そ
のための工夫が今後の課題である。
表2 野外お泊り保育のおもな活動内容
キャンプ場は比較的、幼児にも遊びや
7月26日(木)
子どもの活動
時間
10:50 ○キャンプ場 掃除
表1
年間を通した自然体験を
含む園外活動(主なもの)
4月
5月
求菩提登山(5 歳児)
お茶摘み(年長)磯遊び
いちご摘み(2・3・4・5 歳児)
→バンガローを掃除する
由布院「山荘四季」の施設で
山遊び(4.5 歳児)
7月
川遊び(3歳児)お泊り保育
(4.5 歳児)
子どもの活動
時間
6:00 ○起床
12:30 ○昼食(そうめん流し)
・カレー作り
→年長児がクッキング
・川遊び
絵本「おっきょちゃんとかっぱ」
という物語を取り入れ、かっぱの
川生活のイメージをふくらませ
た。
●活動 ・宝探し →
・スイカ割り
○おやつ
6月
7月27日(金)
→布団の片付けをする。
6:25 ○ラジオ体操
○朝の散歩
8:50 ○キャンプ場掃除
○川遊び
19:00 ○キャンプファイヤー
21:00 ○就寝
12:00 ○保育園到着
→洗顔、歯磨き、着替えをする。
→昨日とは違ったゆったりした
時間を過ごす。
17:30 ○夕食(カレーライス →食器の準備・片付けをする。
○散歩(夜の散歩)
→洗顔、歯磨きをする。