平成 22~24 年度厚生労働科学研究費補助金 (成育疾患克服等次世代

平 成 22~24年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)総合研究報告書
分担研究課題
産科医療機関との連携向上に関する研究
研究分担者
平原史樹(横浜市立大学大学院医学研究科生殖生育病態医学教授)
研究要旨
2011年3月には厚生労働省から積極的導入の検討を促す通達があり 、 各地方自治体で本格的
導入の準備がなされているが、 その中にあって産科医療機関での調査の結果、 夕ンデム・マス
ス ク リ 一 ニング検査に対しての知識が十分に浸透されているとはいいがたい状況であった。 さ
らに本研究では産婦人科医師 へ の夕ンデム・ マススクリ一ニングの認知に向けての啓発活動の
効果と各医療機関において実際に母子に説明、 検査を実施する役割を担つている職種の実態等
を 調 査 す る と と も に 、 24年度にはその実施状況の調査を行い検討した。 その結果、 夕ンデム・
マ ス ス ク リ 一 ニングの各都道府県での実施状況は相当数の実施状況が確認されたものの、 いま
だ行政側の方向性の定まらない点もみられ、 今後の課題 と し て 産 婦 人 科 医 、 小児科医、 検査機
関、 行政等との間での密接な協力が必要な点が示された。 また職域での認知率向上の推進のみ
ならず、看護協会・助産師会などにも働きかけすべての職域、領域で普及していくことも、重
要と考えられた。
見 出 し 語 ; 産 科 医 療 機 関 、 タ ン デ ム ・ マススクリ一ニング検査 、 認 知 浸 透 、 実 施 率
ング事業は 2001 年より国から地方自治体 へ と 事
研究協力者
平原史樹(横浜市立大学大学院医学研究科生殖
生育病態医学(産婦人科学)教授)
山口瑞穂(横浜市立大学大学院医学研究科生殖
生育病態医学(産婦人科学))
住吉好雄(横浜市立大学客員教授、 日本産婦人
科医会顧問)
高橋恒男(横浜市立大学附属市民総合医療セン
タ
一 総合周産期母子医療セン夕一教授)
業が移管され各自治体の施策にゆだねた形とな
った。その中でさらに多くの疾患を対象としたタ
ンデム・ マススクリ一 ニング検査法が普及しつつ
あったが20l1年3月には厚生労働省から積極的
導入の検討を促す通達があり、 各地方自治体で本
格的導入の準備がなされている。
一方、既に30年以上経過した中で、既定の事
業としての維持は行政側に多くの軸足が移管さ
奥田美加(横浜市立大学附属市民総合医療セン
れ 、 事業運営そのものも産科医療機関側が課題打
ター総合周産期母子医療センタ一准教授)
開を求めて東奔西走して行動する局面は激減し
(横浜市立大学附属市民総合医療セン
て い る 。 このような背景のもとタンデムマススク
一
,来1
一 池信行
タ一小児科部長・准教授)
浜之上はるか、尾堀佐知子
(横浜市立大学大学院医学研究科生殖生育
病態医学(産婦人科学))
山上祐次((財団法人)神奈川県予防医学協会)
リ ー ニングシステムの意義の理解、 啓発、 普及に
ついての産科医療側では多くの課題が存在して
いる。
本研究では産科医療機関との連携向上に関し
てその課題を明確化し、 推進 へ向 け て の 課 題 と そ
の解決 へ の 提 言 す る こ と を 目 的 に 産 科 医 師 の タ
A.研究目的
1977年より開始された新生児 マ ス ス ク リ 一 二
ンデム・ マススクリ 一ニングに関する情報の浸透
度と課題の理解度を検討し。 またその実施状況を
検討した。
口頭での説明を行つていない施設も2割あること
合わせ検討した。
がわかった。 採血については助産師が施行してい
る施設が5割にのぼっていた。
B . 研究方法
産科医師を対象に下記の関する項目を調査し
②県内総合病院8施設の動務医に行つたアンケ ー
た 。 対象産科医師群として①神奈川県医会の研究
ト結果
会に出席した各階層の医師 (病院勤務、 診療所開
業、 分 娩 取 り 扱 い 有 り 、 無しを含む) ②神奈川県
全県導入前は認知率47% 、 導 入 後 は 6 8 % に と
内の総合病院計 8 病 院 の 動 務 医 、 と し 夕 ン デ ム ・
ど ま っ た 。 知識を得た時期として 「今年になって
マ ス ス ク リ 一ニング実施前後でそれそれ下記の
か ら = 導 入 が 決 ま っ て か ら 」 の時期と答えた医師
アンケ
が1/3存在した。認知のきっかけとして「職場で
ー
ト形式で調査を行つた。
実施時期は2010年12月 2011年12月である。
同僚から知識を得た」 と答えた医師が最多であっ
一
た。実際の検査施行現場では産婦人科医が説明を
(1)回答者の属性
行つている施設は1施設にとどまり、採血は助産
(経験年数、 勤務形態、 分娩取り扱いの有無)
師・看護師が行う施設と小児科医が行う施設が
(2)夕ンデム
・
マススクリ 一ニング検査
半々という結果になった。
検査内容に ついての認知 :
平成24年度に調査した時点では多くの都道府
県ですでに夕ンデム・ マススクリ一 ニングが実施
(3)上記で「知つている」と答えた場合
情報媒体の由来 :
さ れ て お り 、 また平成24年度内か平成25 年度に
実施 へ の準備を進めている自治体が多い一方で、
( 4 ) 採 血 量 の 増 減 ( 従 来 の 新 生 児 マススクリ ー
ニングに比して)について:
行政側の方向性が定まっていない県も見られた。
(5)パイロットスタディの現状と認識:
課題としてもこれらの意見が示された。
分娩取り扱い施設の医師に ついてはさらに、
(6) 妊産婦 へ の検査の説明、 児の採血は実際誰
D . 結論
本調査では夕ンデム・マススクリ 一ニングの導
が施行しているか:
入前後での産科医における新生児 マススク リ ー
また本研究ではタンデム・ マ ス ス ク リ 一 ニング
ニングに関する認識の概要の把握ができた。
の各都道府県での実施状況、 課題等を日本産婦人
全国各地での新生児 マススク リ 一ニングシス
科 医 会 と と も に 協 力 し て 調 査 し 、 各都道府県別に
テムは地方自治体 産科医団体 一 小児科医の協力
一
により完備した提供体制が長年にわたり安定化
C . 研究結果
し て き て お り 、 産婦人科医各個人の関心が低下し
①研究会にて行つたアンケ ー ト結果
て き て い る 。 しかしながら日本産婦人科医会では
全県導入前は認知率 51%であったが導入後は
そ の 基 幹 事 業 と し て “ 本 邦 に お け る マススクリ ー
79%まで認知率が向上された。 情報媒体としては
ニング事業の推進と運営” を明確に位置付けてい
学会関連の会報や学会参加時に知識を得ている
る 。 そ の た め 、 全 国 レベルでもその機関誌、情報
ことが多かった。全県導入前には県内でパイロ ツ
提供版でも反復して本研究代表者による夕ンデ
トス夕ディが行われていることに対する認知率
ム ・ マススクリ一 ニングに関する情報、本邦での
は 22%であったが、 全県導入後は 83%に向上し
現況等が伝達されている。 今回のアンケ ー ト結果
た 。 分娩を取り扱つている医師に施行の実際に つ
では、 これらの取り組みが認知率向上に寄与して
いてアンケ ー ト を 行 つ た と こ ろ 、 説明は産婦人科
いることは明らかになった。 また、総合病院では
医師と助産師がそれそれ 1/3 ずっ の割合を占め、
職場内での 「横のつながり」 によって知識が普及
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さ れ て い る こ と も 明 ら か に な り 、 これらの結果は
E . 研究発表
今後全国的にタンデム・マススクリ一ニング検査
論文発表
の知識を広めていく際に効率よくアナウンスを
1)尾堀佐知子,浜之上はるか,奥田美加,高橋
行うためのヒントになると思われる。
恒男 , 束 條 能 太 郎 , 明 石 敏 男 , 住 吉 好 雄 , 平 原 史
樹
ま た 、 実際の現場では産婦人科医はもちろんの
新生児タンデム・ マ ス ス ク リ 一 ニング検査法
こと母児に直接接している看護師・助産師の知識
の認知・浸透に関する調査.関東連合産婦人科学
普及が不可欠であり 、積極的な啓発活動や、職場
会誌
内での多職種間での情報共有などが知識普及の
2 ) 山 口 端 穂, 尾 堀 佐 知 子 , 浜 之 上 は る か , 奥 田
ためには有効であると考えられる。
美加,高橋恒男,安達昌功,菊池信行,曽根田瞬,
48:211 , 2011
-
実施状況の検討からは全国的には相当数の実
田 久 保 意 行 , 石 黒 寛 之 , 山 上 祐 次 , 束 條 龍 太 郎,
施状況が確認されたものの 、 いまだ行政側の方向
明石敏男,住吉好雄,千歳和哉,田中誠也,平原
性 の 定 ま ら な い 点 も み ら れ 、 また今後の課題とし
史樹:
て産婦人科医、小児科医、検査機関、行政等との
ススクリ一ニング検査法の認知・浸透状況に関す
間での密接な協力が必要な点が示された。
る調査.
産婦人科医における新生児タンデム・ マ
日本 マ ス ス ク リ 一 ニング学会誌22:
39 - 44. 2012
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