ここ - 市民オンブズパーソン栃木

COPT通信70
市民オンブズパーソン栃木 2015 年 2 月 10 日発行
Citizen
OnbudzPersons
号 Tochigi
オンブズパーソン訴訟の今
市民オンブズパーソン栃木の機関誌である COPT 通信は 70 号を迎えました。今号では、
現在パー
ソン栃木が手がけている訴訟の現状をお知らせします。
思川の支川南摩川の上流部に南摩ダムを建設し
て、洪水調節を行なうと共に、思川支川の黒川、
大芦川を導水管で結び、水融通を図る事業であ
る。目的は、①洪水調節、②既得取水の安定化
と流水の正常な機能の維持、及び③新規取水の
開発である。思川開発事業の核となる南摩ダム
は、堤高86.5m、総貯水容量5100万㎥の
ロックフィルダムで、総貯水容量の配分は、洪水
調節容量500万 ㎥、新規利水容量1810万
㎥、不特定利水容量1690万 ㎥、渇水対策容
量1000万 ㎥、堆砂容量100万 ㎥ とされて
いる。
現計画の事業費用は約1850億円で、これに
水特事業費約143億円、基金事業費(金額は
未定)が加わる。栃木県の負担額は、思川開発
事業が治水分約130億円、水道分は、2009
年3月の事業実施計画の変更で、栃木県の新規
利水配分量が0.821 ㎥ /秒から0.403 ㎥
/秒に半減したことで、64億円に半減した。
思川開発事業に対しては、民主党政権時代に
開始されたダム事業の検証作業が行われている
が、後述のとおり、栃木県が検証主体から水道用
水供給事業の認可等利水参画する必要性を示す
資料の提出を求められているにもかかわらず、
提出できないままでいる。検証作業中であるた
め、付け替え道路等の整備は進んでいるものの、
本体着工は未定である。
3ダム訴訟~最終ラウンドへ
大 木 一 俊
1 提訴から11年目に入った3ダム訴訟
思川開発事業の治水及び利水負担金、湯西川
ダム事業の治水負担金及び八ッ場ダム事業の治
水負担金の支出差止等を求めて提訴した3ダム
訴訟も、2014年11月で11年目に入った。
この3ダム訴訟は、群馬、埼玉、東京、千葉、
茨城の住民らが八ッ場ダム事業に対する負担金
の支出差止等を求めて一斉提起した八ッ場ダム
住民訴訟に呼応して提訴したものである。3ダ
ム訴訟は、湯西川ダム及び思川開発事業の負担
金の支出差止等も求めている一方で、八ッ場ダ
ムについては、栃木県に利水負担金はないため
治水負担金の差止だけを求めている点で八ッ場
ダム住民訴訟とは違っている。
これら1都5県のダム訴訟は、2011年3
月24日の3ダム訴訟の敗訴判決をもって、す
べてが戦いの場を控訴審(東京高裁)に移して
いたが、2013年3月29日の東京訴訟の控
訴棄却判決を皮切りに、2014年10月7日
の埼玉訴訟の控訴棄却判決をもってすべてが敗
訴判決となり、現在は、最終ラウンド(最高裁)
に移っている。
⑵ 湯西川ダム事業
湯西川ダムは、国(国土交通省)を事業主体
として、利根川水系湯西川に建設される治水及
び利水を目的とする多目的ダムである。思川開
発事業と同様に、首都圏における水需要の増大を
背景に、1969(昭和44)年度に構想された
2 各ダム事業の概要
⑴ 思川開発事業
思川開発事業は、独立行政法人水資源機構を
事業主体とし、利根川総合開発の一環として、
1
ものであるが、1973(昭和48)年改定の利
根川水系の工事実施基本計画では、鬼怒川水系
の治水ダム計画には入っておらず、1980(昭
和55)年に策定された利根川水系工事実施基
本計画で、湯西川ダムが新たに治水ダムとして
追加され、計画が本格化するに至った。
堤高119m、総貯水容量7500万0000
㎥、有効貯水容量7200万0000 ㎥、湛水
面積198haの重力式コンクリートダムであ
る。事業費は、約1840億円である。
検証作業の対象とはなっていなかったことか
ら建設が進められ、2012年3月に完成して
しまった。
に基づいてなされた行為である時は、先行行為
が著しく合理性を欠き、そのためこれに予算執
行の適正確保の見地から看過しがたい瑕疵があ
る場合を除き、職員等は先行行為を尊重し、そ
の内容に応じた財務会計上の措置を取るべき義
務があり、これを拒むことは許されないものと
解するのが相当」との一日校長事件最高裁判決
(1992年12月15日第3小法廷判決)の
判例理論を当てはめる。
イ 利水負担金について
次いで、利水負担金については、各都県は、ダ
ム使用権の設定申請の取り下げ(湯西川ダム事
業、
八ッ場ダム事業)あるいは事業からの撤退(思
川開発事業)によって、負担金の支出を免れる
ことができるので、違法な支出になるか否かは、
ダム使用権の設定申請の取り下げあるいは事業
からの撤退をしないことが違法となるか否かに
帰着するとする。
そして、ダム使用権の設定申請を取り下げる
か否かあるいは事業から撤退するか否かは裁量
判断であるから、違法となるのは、その判断が
合理的な裁量の範囲を逸脱、又は濫用した場合
に限るとする。具体的には、
「①その判断の基礎
とされた重要な事実に誤認があることなどによ
り重要な事実の基礎を各くことになる場合、又
は、②事実に対する評価が明らかに合理性を欠く
こと、判断の過程において考慮すべき事情を考
慮しないことなどにより、その内容が社会通念
に照らして著しく妥当性を欠くものと認められ
る場合に限り、裁量権の範囲を逸脱又は濫用し
たものとして違法となる」、との小田急訴訟最高
裁判決(2006年11月2日第1小法廷判決)
のが示した基準によるべきとする。
その上で、ダム使用権の設定申請を取り下げ
るか否かは、給水義務を全うするため、長期的
な給水区域内の水需要及び供給能力を合理的に
予測した上で、水道事業の適正かつ効率的な運
営の観点から慎重に判断されるべきものである
ことから、各都県の判断に、裁量の逸脱はなく、
財務会計上の違法性はないとした。
⑶ 八ッ場ダム事業
八ッ場ダムは、利根川水系吾妻川に計画されて
いる利根川の洪水調節と首都圏の水道用水・工
業用水の開発を目的とした多目的ダムである。
堤高131m、総貯水容量1億0750万㎥で、
事業費は4600億円とされるが、水源地域整備
事業などの関連事業も含めると、6000億円
近くになる(但し、ダム本体以外の事業費が9
割以上を占める)。八ッ場ダム事業についても、
検証作業が行われたため、本体工事は中止され
ていたが、付替鉄道、付替国道、付替県道など
の関連工事が延々と行われてきた。
そして、国土交通省は、2011年12月22
日、検証の結果「継続が妥当」であったとして、
八ッ場ダム事業に関する対応方針を決定、公表
し、八ッ場ダム事業の「継続」が決定された。
2015年1月21日に本体工事(基礎掘削)
が着工されてしまった。
3 3ダム訴訟の裁判上の争点
⑴ 裁判所の判断枠組み
ア 一日校長事件の最高裁判決が前提
1都5県のダム訴訟において、一審、控訴審
を通じて裁判所が示した違法性の判断枠組み及
びその具体的適用は、おおよそ次の様なもので
ある。
まずは、利水負担金及び治水負担金も、国土
交通大臣の納付通知という先行行為に従って支
出されるものであることから、
「このように財務
会計上の行為が、独立の権限を有する他の権限
ウ 治水負担金について
また、治水負担金については、納付通知の前
提となった河川整備基本方針、河川整備計画、
ダム建設に関する基本計画又は都県が河川管理
2
施設から利益を受けるとの国土交通大臣の判断
のいずれかが著しく合理性を欠き、そのため予
算執行の適正の見地から看過し得ない瑕疵の存
する場合でない限り、同通知を尊重してその内
容に応じた財務会計上の措置をとるべき義務が
あり、これを拒むことは許されないとした上で、
河川整備基本方針等に不合理な点はなく予算執
行適正確保の見地から看過し得ない瑕疵がある
とは認められないとした。
⑵ 思川開発事業の利水負担金について
ア 思川開発事業の利水上の問題点
( ア ) 水の貯まらないダムであること
国交省による南摩ダムの1955~1985
年までの運用計算において、30年のうち12
年は最低貯水量(1000万 ㎥ )になる期間が
あるとされている。1985年以降についても、
嶋津暉之氏が、国交省から開示された流量データ
や流量年表の流量データを基にシミュレーショ
ン(但し、最低貯水量は0とする)を行ったと
ころ、1984~88年の5年間と93~98
年の6年間は、毎年、毎年連続して貯水量が0
となる期間が生じることになった。この外にも、
90年、99年2001年にも貯水量が0また
は0に近づく期間があり、1984~2002
年までの19年間のうち14年は貯水が底をつ
く事態が生ずることが判明したのである。
このように、南摩ダムは水の貯まらないダム
であり、思川開発事業の利水計画は極めて杜撰
なものある。
( イ ) 栃木県には水道計画がないこと
① 検討の場での指摘
栃木県は、栃木市、下野市、壬生町及び野木
町の2市2町が必要とする分として0.403㎥
/秒を取得するとしているが、これらの市町は、
現在の保有水源で十分賄えることから、思川開
発事業に参加する必要はない。そのような事情
もあって、栃木県にはこれらの市町に給水する
ための水道計画もなければ、水道用水供給事業
についての認可も受けていない。1審でも、そ
の点を問題にしたが、判決では一顧だにされな
かった。それが、思川開発事業の検証作業のた
めに設けられた「思川開発事業の関係地方公共団
体からなる検討の場(第3回幹事会)
」
(2012
年6月29日実施)において、栃木県は、検討
3
主体から、水道事業の認可を受けていない点に
ついて、次のような指摘を受けることになった。
「我々検討主体は利水参画者に対し、ダム事業
参画、継続の意思があるか、開発量として何ト
ン必要か、また、必要に応じ利水参画者におい
て水需要の点検、確認を行うよう要請する。そ
の上で検討主体において、例えば上水であれば
人口動態の推計など、必要量の算出が妥当に行
われているかどうかを確認するというふうに示
されておりまして、これを我々としては予断な
くやっていく上では、やはり思川開発の部分に
ついて追加して、その部分に関する資料という
のをいただきたいなと考えているところでござ
います。
」
② 県の悪あがき~「栃木県南地域における
水道水源確保に関する検討報告書」の作成
ところが、栃木県は、水道用水供給事業の認可
に代わる利水参画の必要性を示す資料として、
2013年3月、2市2町の地下水依存率を、
現在の92.6%から18年後の2030年度に
40%まで下げるとの基本方針をまとめた「栃木
県南地域における水道水源確保に関する検討報
告書」を作成し、これを検証主体である関東地
方整備局に提出した。地下水依存率を少なくし、
表流水への依存度を高めることによって、利水
参画の必要性を生み出そうとの悪あがきである。
③ 浮き彫りになった2市2町が受水する必
要性がないこと
控訴審では、この検討報告書の内容の妥当性を
中心に、2013年7月17日の午後一杯を使っ
て、県の責任者と嶋津暉之氏の証人尋問が行わ
れた。
県の責任者に対する反対尋問及び嶋津証言に
よって、ⅰ上記検討報告書の資料の扱い方は恣
意的であること、ⅱ地下水は汚染対策及び渇水
対策の観点から言っても表流水より安全である
こと、ⅲ県南地域の地盤沈下は沈静化しており、
しかも原因は水道用水ではなく農業用水の取水
であること、ⅳ水道用水供給事業の認可を得る
ことは困難で、仮に得ることができたとしても、
その実現には多額の費用がかかること、ⅴ今後
の水需要の減少によって、2市2町が「高くて」
「まずい」表流水を受水することはあり得ない
こと等が、浮き彫りとなった。
イ 思川開発事業からの撤退も政策的には考え得るとした高裁判決
2万2000㎥」は著しく過大であること
利根川水系河川整備基本方針の基本高水ピー
ク流量「八斗島地点毎秒2万2000 ㎥ 」は、
著 し く 過 大 で、 こ れ を カ ス リ ー ン 台 風 時 の 実
績流量(1万5000 ㎥ が妥当)や森林の保水
力を考慮した流出モデルによって算出した毎秒
1万6663 ㎥ 程度のものにすれば、既設ダム
(6ダムで毎秒1000 ㎥ 程度の洪水調節が可
能となっている)と現在の河道条件で十分対応
が可能である。したがって、この利根川水系河
川整備基本方針を前提とした治水計画に基づく
八ッ場ダム建設計画もこれまた不合理であり、
八ッ場ダムは治水上計画上不要なものとなる。
( イ ) 治水負担割合の算定方法の問題点
栃木県に賦課された八ッ場ダム治水負担割合
の算定方法には、次のような問題点がある。
①他の1都4県とは異なり利根川本川から5
㎞も離れて位置する栃木県は、そもそも八ッ場ダ
ムによって治水上の利益を受けることはなく、
ましてや他の都府県が一般的に受ける利益を超
える特別の利益があるものとは言えないこと、
②ダム完成以前と以後の被害の程度を比較しな
ければ、当該ダムにより「著しく利益を受ける」
か否かを判断できないにもかかわらずその比較
をしていないという「方法論」における重大な
瑕疵があること、③ダム完成以前の被害把握でも
現実にはあり得ない被害を想定していること、
④検証作業でも栃木県は八ッ場ダムによる治水
効果はないとされていること、⑤計画洪水が襲
来した場合に相当する利根川浸水想定区域図(甲
B63)に従って負担することを認めるとして
も、その受益の程度は当初決定の10分の1程
度であるから、1.44%という負担割合は「受
益の限度」に収まらない過大請求であること。
以上のとおり、栃木県が八ッ場ダムによって
河川法63条1項にいう「著しく利益を受ける
場合」に該当することなどあり得ず、その負担
割合1.44%も、受益の限度を超えたものであ
るから、八ッ場ダムに係る国土交通大臣の治水
負担金納付通知は違法であり、栃木県にはこれ
に応じて財務会計上の措置を採る義務はないも
のと言わなければならない。
私たちは、最終準備書面において、①栃木県
が水道供給事業者として思川開発事業に参画す
る必要性、すなわち、地下水から表流水への転
換の必要性はないこと、②水道用水供給事業の実
現可能性はないこと、及び③水道用水供給事業
の効率的な運営はできないことの証拠を示し、
栃木県が思川開発事業から撤回しないことは、
裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとして違
法である旨主張した。
しかし、高裁判決は、「参画判断の際に基礎と
した事情に一部変更が生じていることや、水道用
水供給事業としての今後の見通し等に鑑みて、
被控訴人(栃木県)が思川開発事業から撤退す
るとの判断をすることも、政策的には選択肢の
一つとして十分考え得るところではある」とま
で言及しながら、裁量権の範囲を逸脱又は濫用
した違法なものとまでは言えないとして、私た
ちの請求を棄却した。
この東京高裁判決については、2014年2月
10日付け東京新聞が「南摩ダム高裁も疑問符」
「住民訴訟で『撤退も選択肢』
」との大きな見出
しを付けた記事を掲載している。
⑶ 八ッ場ダムの治水負担金について
ア 治水負担金の根拠
栃木県は、現在でも、思川開発事業及び八ッ
場ダム事業について、治水負担金を支出してい
る。法令上の根拠は、前者は独立行政法人水資
源機構法21条3項、後者は河川法63条であ
る。そして、その要件は、前者は「特定施設の
新設又は改築で治水関係用途に係るものにより
利益を受ける都道府県」
(独立行政法人水資源機
構法施行令22条1項)に該るか否か、後者は「著
しく利益を受ける場合」に「その受益の限度」
か否か(河川法63条)である。
そこで、私たちは、この要件に該当しない治
水負担金の納付通知は違法であり、栃木県知事
は違法を理由にその支出を拒むことができると
解すべきであり、そうである以上、治水負担金
の支出が違法か否かは、栃木県が、
「利益を受け
る都府県に該当するか否か」、「著しく利益を受
ける場合か否か」及び「その受益の限度か否か」
によって判断されるべきであると主張した。
紙数の関係上、以下では八ッ場ダム事業の治
水負担金の問題点について述べる。
ウ 一日校長事件最高裁判決によって控訴を棄却
ところが、東京高裁は、治水負担金の要件で
ある「著しく利益を受ける場合か否か」及び「そ
の受益の限度か否か」を直接判断することなく、
一日校長事件最高裁判決を無批判に当てはめ、
「河川整備基本方針に定められた基本高水流量
イ 八ッ場ダム治水負担金の問題点
( ア ) 基 本 高 水 ピ ー ク 流 量「 八 斗 島 地 点 毎 秒
4
及び治水効果 ( 中略 ) について、いずれも著し
く合理性を欠き、そのためこれらに予算執行の
適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があると
はいえない」と判示して控訴を棄却した。
4 最終ラウンド(最高裁)での主張・立証活動
3ダム訴訟については、2014年2月7日に
上告及び上告受理申立てを行い、同年5月12
日に上告理由書及び上告受理申立て理由書を提
出して、次のような主張をしている。
利水負担金については、判断枠組みとして、
小田急訴訟の最高裁判例によって行政裁量の司
法統制が行われるべきであるが、控訴審判決に
は事実誤認によってその適用を誤っている点が
多々ある上、水道法の目的たる「低廉な水」供
給の観点も考慮に入れて判断すれば、水余りの
状況下、思川開発事業への参画し続けることは
不要であり、事業から撤退しないまま、利水負
担の支出を続けることは、裁量権を逸脱又は濫
用したものとして違法であるというものである。
また、治水負担金については、判断枠組みと
して、一日校長事件の最高裁判例を適用するの
は誤りであり、治水負担金の法定要件(河川法
63条1項の場合は「著しく利益を受ける」か
否か、受益と負担が見合ったものか)の存在を
きちんと判断すべきであるとするものである。
一日校長事件の最高裁判例を本件に適用する
ことについては、法律時報2014年6月号の
小特集で人見剛早大教授、田村達久早大教授、
野呂充阪大教授が疑問を呈されており、東京訴
訟では、同教授らの論稿をもとにした補充書を
既に提出している。3ダム訴訟でも、近々同様
の補充書を提出する予定である。
3ダム訴訟は、2連敗したが、これは行司の
不手際によるものであり、まともな行司の下で
の戦いであれば勝算は十分ある。最高裁には、
私たちの主張を真摯に受け止め、適正な証拠に
基づきに、判例に従った正しい判断を望む次第
である。
5
エコシティ宇都宮補助金訴訟について
小 西 誠
1 はじめに
現在、エコシティ宇都宮に対して交付された補助金が問題となっている訴訟が二件あり、い
ずれも宇都宮地方裁判所第2民事部に係属しています。一つは、栃木県が宇都宮市に対して提起
した訴訟で、栃木県が宇都宮市に対して、補助金相当額1億9659万円の返還を求める訴訟です。
もう一つは、パーソン栃木が知事に対して提起した訴訟で、知事に対して、県が国に返還した国
庫補助金相当額1億9659万円の損害賠償を支払うよう求める住民訴訟です。
2 エコシティ宇都宮補助金問題の経緯
まず、このような二つの訴訟の対象になっているエコシティ宇都宮の補助金問題について説明
します。
2005年(平成17年)、国はバイオマスの利活用の推進事業を実施しました。同年、宇都宮
市は、エコシティ宇都宮を事業実施主体とする事業計画を策定して、国から栃木県へ、栃木県か
ら宇都宮市へ、と順次交付された補助金をエコシティ宇都宮に交付しました。このような補助金は、
2006年(平成18年)9月までに2回にわたって約2億6000万円が交付されました。こ
の間、エコシティ宇都宮は、国等の承認を得て、融資を受けるため事業用不動産に担保権(抵当権)
を設定しました。
エコシティ宇都宮は、2006(平成18)年8月に稼働を開始しましたが、2008(平成
20)年10月に機械の故障等により操業を停止しました。そして、再稼働の見通しが立たない
まま2009(平成21)年12月には担保に供した事業用不動産の競売申立てがなされて競売
が実行されました。
競売が実行されることとなったので、栃木県は、補助金適正化法22条の財産処分の承認申
請という手続きを行い、2011(平成23)年5月、国から栃木県に対して、補助金相当額の
納付を条件とする財産処分の承認がなされました。同様の手続きは、栃木県と宇都宮市、宇都宮
市とエコシティ宇都宮との間でも行われています。
栃木県は、国から財産処分の承認の条件に基づき国庫補助金相当額である1億9659万円
の返還を命じられたため、2012(平成24年)年1月、国に同額を納付しました。しかし、
エコシティ宇都宮は、すでに破産状態ですので、宇都宮市に対して補助金相当額を納付すること
は不可能な状態であり、宇都宮市からも栃木県に対して補助金相当額の納付がない状況でした。
栃木県は、宇都宮市に補助金相当額の納付を求めましたが、宇都宮市は補助金相当額の納付
を拒否しました。
3 県と市の訴訟
栃木県は、2012(平成24)年7月、宇都宮市に対して補助金相当額の返還を求める訴訟
を提起しました。宇都宮市は、法的根拠が明らかでないと主張しており、他方、栃木県は、栃木
県補助金等交付規則第24条に規定する財産処分の承認に付された条件、あるいは合意に基づき、
6
宇都宮市は栃木県に対して補助金相当額の返還義務を負う旨の主張をしています。
この訴訟では、当時の栃木県の農村振興課長及び当時の関東農政局の担当者の証人尋問が行わ
れました。この訴訟の口頭弁論はすでに終結し、平成27年3月4日に判決が言い渡されます。
4 パーソン訴訟
パーソン栃木においては、2012(平成24)年10月、栃木県が国に支出した国庫補助金
相当額は違法不当であるとして監査請求を行いましが、この監査請求は棄却され、2013(平
成25)年1月24日、知事に対し、1億9659万円の損害賠償を求める住民訴訟を提起しま
した。
パーソン訴訟で主に主張している点は概要次のとおりです。
すなわち、上記のとおり、国は、担保権実行により、事業用不動産が競売されることとなったため、
補助金等適正化法第22条の財産処分の承認に際して、国庫補助金相当額を納付するという条件
(負担)を付けてこれを承認しました。しかし、法22条は「補助事業者等は,補助事業等により
取得し,又は効用の増加した政令で定める財産を,各省各庁の長の承認を受けないで,補助金等
の交付の目的に反して使用し,譲渡し,交換し,貸し付け,又は担保に供してはならない。
」と規
定しており、担保権実行による売却はいずれにも当たりません。実質的にも法22条の承認は、
「財
産の処分の制限」に関する規定を設け,補助金等により形成された財産の処分について一定の規
制を行い,補助金等の交付の目的を完全に達成しようとすることがその趣旨ですから、いざ担保
権が実行されてしまうと補助事業者の意思にかかわらず手続きは進められ財産(不動産)は売却
されてしまいますので、このような場面では事業者に対しては何ら規制としての機能は働かない
のです。この承認自体が無意味なものであることは明らかです。
栃木県は、このような形式的な財産処分の承認という手続きを用いて、国庫補助金相当額を国
に返納したのです。このような法的手続きは、重大な違法があり無効なものです。パーソン栃木は、
このような違法無効な手続きに基づく支出を阻止しなかった知事に損害賠償責任を追及していま
す。
このパーソン訴訟も栃木県と宇都宮市の訴訟と同様、現在も訴訟係属中です。栃木県と宇都宮
市の訴訟の判決を待って、本件でも判決が下されることになると思われますが、このような違法
な公金支出について、正義にかなった判決がなされることを期待しています。
7
政務調査費訴訟の今
められておらず、各議員が政務調査費だとして
報告するものをただ集計して枠の中におさめて
いるとしか言えない状況です。しかも議員から
の報告内容についても、たとえば領収書の添付
が必要とされない自家用車のガソリン代につい
て調査内容も目的地も調査相手もわからない報
告が当たり前にされている等不十分と言わざる
を得ず、政務調査費の支出は使途基準であるマ
ニュアルに従っているとは到底いうことができ
ません。
パーソン栃木では、2008 年度分を皮切りに
毎年度分について情報公開で提出された資料を
取り寄せ、検討し、監査請求をし、訴訟を提起
しています。訴訟の提起は 2010 年から毎年 1
件で 2014 年まで 5 件となっています。区別す
るために提訴の年を基準として「政調費 2010
訴訟」などと呼んでいます。2010 訴訟の対象
は 2008 年度分の政調費ということになります。
会派から政務調査費の収支報告書が提出される
のが年度終わりから 30 日以内なので、それか
ら情報公開、監査請求、提訴となるとさらに翌
年になってしまうからです。
政務調査費に対する訴訟は全国各地で起こさ
れているのですが、その場合、対象をしぼるか
違法だと思われるものすべてを対象とするのか
は悩ましいところです。違法だと思われるにも
かかわらず訴訟の対象から除くときは、違法を
容認することになってしまいますし、かといっ
て違法だと思われるものすべてを対象とすると
きは、膨大な事務量となり、訴訟の担当者の負
担が増大し訴訟の進行も遅れてしまうからです。
議論の結果、パーソン栃木ではこれまで敢え
て項目をしぼることなく提訴するという方針で
きています。そのため時間もかかりまだ一審
判決に至ったものはありませんが、ようやく
2010 訴訟が 2015 年 1 月 21 日終結となり、判
決を待つ状態です(ただし判決日未定)
。
今後は政務活動費に改められたことでどう
なっていくのか検討していく必要がありますが、
まずは最初の判決が待たれるところです。
若 狭 昌 稔
「政務調査費」は、地方議会の「議員の調査研
究」に資するため必要な経費の一部として議会
の会派ないし議員に対し支払われるもので、地
方自治法に規定があります。2012 年に晴天の霹
靂のごとく「議員の調査研究その他の活動」に
資するため、すなわち「政務活動費」と改めら
れたのは記憶に新しいところです。ただしまだ
「政務活動費」と改められた後のものは訴訟の対
象とはなっていませんので、ここでは政務活動
費改正前の政務調査費について述べます。
地方自治法上、条例によって政務調査費を会派
又は議員に交付すること、交付の対象、額、交
付の方法、収支報告書を議長に提出する方法等
の定めをすることになっています。栃木県では、
「栃木県政務調査費の交付に関する条例」により、
①会派に対し交付すること、②月額は 30 万円
×月初日における会派の所属議員数であること、
③毎四半期の最初の月の 20 日までに当該四半期
に属する月分の政務調査費を会派の代表者が請
求し、請求があったときは知事は速やかに交付
すること、④会派は、政務調査費を議長が別に
定める基準に従い使用しなければならないこと、
⑤会派の代表者は、その年度の末尾の翌日から
起算して 30 日以内に収支報告書を提出しなけれ
ばならないこと、⑥議長が別途定める基準によっ
て使用しなければならないこと、⑦残余がある
ときは返還しなければならないこと等が規定さ
れています。
使途基準については、条例の施行規程で支出
項目が定められているほか、2008 年 3 月に県議
会で「栃木県政務調査費マニュアル」が策定さ
れています。そこでは詳細な使徒基準が規定さ
れるとともに支出が認められるために必要な手
続も定められています。マニュアルによれば、会
派は「調査研究実施計画」により会派の調査研
究活動を会派に所属する議員が分担して行う場
合に限り、個々の議員が実施する調査権研究活
動費へも政務調査費を充当することができるも
のとされ、年度途中において新たな調査研究を
必要とする課題が生じたときは随時計画の変更
を行うものとされています。しかし各会派にお
いてそのような具体的な調査研究実施計画は定
8
TBS テレビ【Nスタ】
<特集!>追求!税金ムダ遣い・政務活動費で東京出張120回
パーソン栃木事務局長 秋元照夫
前回 2014 年 10 月 9 日の放送では、みんなのクラブの増渕県議の自筆領収書と自民党の花塚
県議のガソリン代等の旅費とを取り上げました。
今回は 12 月 19 日(金)午後 18 時 44 分から 59 分の 15 分間に渡って放送されました。
ご覧になれなかった方のために、放送した内容を忠実に再現してみました。
※※※※※
今年全国の地方議会で問題となった政務活動費。
兵庫県の城崎温泉に実体のない出張を繰り返ししたと問題視された野々村竜太郎元兵庫県議は、
報告書の通り現地に赴いて政務調査ないし政務活動を行ってまいりました。と、その後、警察
の事情聴取に対し出張にはほとんど行っていなかったことを認めた。
栃木県議会でもおかしな出張を繰り返す議員がいた。議員歴 11 期目を迎えたとちぎ県議会議
員板橋一好議員だ。
これは板橋議員が2009年からの4年間で新幹線に東京へ出張した際の領収書だ。
その数120回、板橋議員はいったいどこへ何のために出張していたのか?
行き先を調べてみると、厚生労働省や国土交通省、経済産業省に農林水産省そして警察庁、出
張先の半分以上が中央省庁、まさに霞ヶ関巡りだ。
ところが、記載されている訪問先の部署に問い合わせてみると
警察庁 生活安全局次長という役職はありません。
どういうことなのか、N スタは板橋議員に直撃した。
板橋議員にお聞きするしかないのですが、
板橋議員 あなた方に説明する責任はない。
板橋議員が提出した資料によると、情報収集や意見交換のためとある。
栃木県を離れ精力的に政務活動を行っていたようにも見える。
ところが、
N スタが提出された資料の相手先に問い合わせてみると、「当時、自分は厚労省障害福祉課長
だったが、板橋議員は知らない」「環境省、自然環境局に次長という肩書きはそもそも存在しま
せん。
」
さらに、警察庁でも「警察庁に生活安全局次長という役職はありません。
」
意見交換を行った事実を確認できない出張が続出したのだ。
政務調査費の問題に詳しい清水勉弁護士は、
「警察行政治安維持対策について話に聞くなら、栃木県警の方と治安維持について検討すべき
ことでしょうし」
9
実は、板橋議員が霞ヶ関の次によく訪れていた都内の出張先がある、
「とある大学病院」だ。
提出資料には、周産期医療や老人保険医療制度のため意見交換とあるが、面会したとされる
医師に確認すると、
「栃木県の議員で板橋さんという方は覚えていますが、病気の治療で通っていました。ただ、
周産期医療や老人保険医療制度について意見交換したことは一度もありません。
」
板橋議員が何度もこの病院を訪れていた理由は、
病気の治療が目的だった可能性が浮上した。
“霞ヶ関巡り”繰り返された“病院訪問”数多くの疑問が残る東京出張について、N スタは板
橋議員を直撃した。
N スタ 厚生労働省へ行かれていますが、その目的は?
板橋議員 市民病院が当初(予算)100 億で申請したが、民主党政権で25億になったの
で、何かいい予算が取れないかと行ったと思いますが‥‥
あくまでも、“出張”だったと主張した。そして
N スタ 霞ヶ関界隈に結構行っていますが…
板橋議員 答える必要はありません。個別の取材は受けないようになっていますので、こ
の点に関しての取材を受けるということは遠慮したいと思っています。
ナレーション 取材を切り上げようとする板橋議員、だが N スタは追求を続けた。
次に、意見交換した警察庁生活安全局に次長という肩書の担当者はいないことを問い質す
と、
板橋議員 知りません。
N スタ 何をしに行ったのですか?
板橋議員 あなた方は疑問に残っても結構です。
N スタ 今度は、大学病院先の訪問先の担当医師が「意見交換はしていない」と話して
いることを伝えると、
板橋議員 それについても答える必要ありません。
N スタ 税金を使って新幹線代を旅費として出していますが
板橋議員 あなたの税金を使っているわけではないですからね
N スタ おかしいと思いませんか
板橋議員 思いません。
ナレーション
実は、板橋議員は市民団体からも都内の大学病院への視察は、個人的な診察目的の可能
性があると提訴されている。
ナレーション 板橋議員は最後にこのように言った。
私は取材として受け止めていませんから、TBC さんだと思ってお会いしたので、
あなた方の取材として了解して受けているわけではありませんから。勝手に押しか けて来て勝手に取材をして放送されるのは大変迷惑です。 10
ナレーション 今回私たちは、取材の前に TBS の名刺を渡しカメラ取材であることを伝えていた。
しかし、板橋議員は TBS を“TBC だと勘違い”したと謎の主張を展開したのだ。
さらに、会派の会計責任者に事実関係を確認してほしいと述べたが、
会派の会計責任者は「個
別案件には答えられない」とした。
ナレーション 他にも不可解な領収書を提出していた栃木県の議員がいた。
こちらタクシーの領収書、料金は1790円、提出資料には、放射性廃棄物について話し
合うための移動で会合場所は、宇都宮市内とあった。
この領収書を提出したのは4期目の民主党・無所属クラブの佐藤栄議員だ。
だが、この領収書にはおかしな点が、
宇都宮市内で意見交換したはずが、領収書を発行したのは東京都内のタクシー会社
どういうことなのか?
議員が都内でタクシーに乗車して宇都宮まで利用した場合およそ130キロ、この料金は
有りえない。
では、都内にある会社のタクシーが宇都宮市内で使用された可能性は?
タクシー会社 有りえないですよね。うちの車が栃木市内だけで走ることはないです。
東京の認可ですので、東京でしか営業できません。
ナレーション これは不適切な請求では? N スタは佐藤議員を直撃した。
N スタ これ都内のタクシー会社ですね?
佐籐議員 間違いです。これは不適正ですね。
N スタ なんでこれ間違ったのですか?
佐籐議員 これはちょっと作成上の事情ということにさせてください。
N スタ では、この時のタクシーは、何のために使ったのか?
佐籐議員 分かんないですね。覚えてないですね。
N スタ 税金が使われていますので、県民の信頼が損なわれるのでは?
佐籐議員 はい、はい まずいですね。
ミステイク(間違い)これは返還しています。はい。
ナレーション すでに手続きは終了していて問題はない。と主張した。
こうした不可解な政務活動費の使われ方を防ぐ方法はないのか!
さいたま市議会では厳しいチェックが行われている。
さいたま市議会では、会派に所属する議員には月々34万円(無所属議員20万円)が支
給されている。
7年前、一部の議員による不適切な支出が問題となり、議会事務局と公認会計士を中心に
11
厳しいマニュアルを作成した。たとえば、タクシーを利用する場合、災害や病気など特別な理
由がない限り認められない。仮に乗ったとしても、「人数で割り公共交通機関よりも安いことを
証明しなければならない」また、飲食を伴う会議や懇親会の参加費、事務所で客に出す茶菓子
代も認められない。そして、政務活動費を年度内に使い切るため大量購入するケースが各地で
後を絶たない切手については、買い置きは認めていない。
そのときに必要な枚数だけ買うことにしている。しかも、こうした厳格なルールの下で議
員が提出した領収書は2ヶ月おきに年6回チェックされる。
議会事務局と公認会計士が一枚一枚調査し支出内容が不明な場合、説明を求める。
さいたま市議 厳しいですけど学校の校則と一緒でこれはダメで、これはいいという判断が、各議員がぶれ
ないのでいいと思う。多少厳しいなと思います。
ナレーション
専門家は今政務活動費の定義そのものを見直すべきだと指摘する。
日大政治学 岩井奉信教授
隣の県では厳しく、こちらはいい加減では納得がいかないのではないか。そういった面では
キチンとした全国的な一律のルールが必要ではないか。何よりも議会の機能を高めるために使
う。本当に使われているのか、もう一回見直す、チェックし直すことが大事だろうと思う。 ナレーション 今年改めて大きく問題視された「政治と金」N スタは疑惑の不正を追及していく。
※※※※※
2014 年 12 月 1 日、TBS テレビ【Nスタ】の竹ノ内デイレクターが私の事務所に来て取材をさ
れて行きました。前回から 2 ヶ月の間も精力的に領収書の裏付け取材をされていたようです。
下野新聞の記者たちは、この放送を見たと思うのですが一向に動こうとしません。野々村元
議員の記事は報道するが、地元で起きていることは目をつぶっています。会社の意向なのか?
今回の報道で明らかになった板橋議員や佐藤議員の悪行に手を貸しているのと同じことではな
いでしょうか。
もう下野新聞に期待しませんが、宇都宮地裁の裁判官にこのテレビを見ていてくれることを
ただ願うばかりです。
編集後記
諸般の事情により発行が遅れたことをお詫びします。copt 通信も 70 号となり、より充実した内容・発行頻度となるよう
努力したいと思います。
(わ)
【訴訟情報】
政調費2010訴訟第一審 2015年1月21日終結 判決日未定
政調費2011訴訟第一審 2015年2月19日午前10時弁論、4月23日午前10時
政調費2012訴訟第一審 2015年4月16日午前10時弁論、6月18日午前10時
政調費2013訴訟第一審 2015年4月16日午前10時15分弁論、6月18日午前10時15分
政調費2014訴訟第一審 2015年3月11日午前10時進行協議
3ダム訴訟
上告・上告受理申立係属中
エコシティ訴訟第一審 2015年2月18日午前10時弁論 COPT通信 70号
2015年2月10日発行
発行 市民オンブズパーソン栃木
事務局 〒321-0139 栃木県宇都宮市若松原3-14-2 秋元照夫税理士事務所内
(TEL) 028-655-6611
(FAX) 028-655-4333
(URL) http://www.t-person.net/ (Email) [email protected]