14.レンズの焦点距離 実験の概要 透明な目盛板に水銀ランプの光を入射し,レンズを通った光がスクリ ーン上で焦点があって目盛板がはっきり見えるようにレンズホルダーと スクリーンの位置を調節する.これらのスクリーンとレンズホルダーの 座標 x を測定し,凸レンズと凹レンズの焦点距離を以下の式より算出す 装置の全景 る. 1 1 1 = + f a b 式(1) x1:透明メモリ板の座標 [m] x2:凸レンズの左側の座標[m] t 2 t b = x4 − x2 − 2 a = x3 − x1 − 式(2) 式(3) x3:凸レンズの右側の座標[m] x4:スクリーンの座標 [m] f :凸レンズの焦点距離 [m] t :凸レンズの厚み [m] x1':凹レンズの左側の座標 [m] 1 1 1 = − f ' a ' b' 式(4) x2':凸レンズの像が表示される スクリーンの座標 t' ⎞ ⎛ a ' = x 2 '−⎜ x1 '+ ⎟ 2⎠ ⎝ t' ⎞ ⎛ b' = x3 '−⎜ x1 '+ ⎟ 2⎠ ⎝ [m] x3':凹レンズの像が表示される 式(5) 式(6) スクリーンの座標 [m] f ' :凹レンズの焦点距離 [m] t ' :凹レンズの厚み [m] 実験装置 水銀ランプ 凸レンズ 光学ベンチ 凹レンズ 透明目盛版 マイクロメータ 指示棒 レンズホルダー スクリーン 実験方法 実験 1 凸レンズの焦点距離 (1)水銀ランプのスイッチを“接”に してから,ランプの点灯ボタンをしばら く押し続けている.するとランプのフィ ラメントが赤熱し始めるので,それを確 認してからボタンから手を離す.ランプ が完全に点灯するまで 5 分ほどかかる. (新型では LED になって、コンセント 入れるだけでよい.) (2) 右図のように光学台のレールの左 端に透明目盛板を置く.なお目盛板は図 のように光学ベンチの一番左側の位置 に寄せて置く事. (3) レンズホルダーの左側に凸レンズ を装着する.なおレンズを装着するネジ は逆ネジになっている.したがって時計 回りにまわすとネジが通常とは逆に緩 み,反時計回りに回すとネジが締まるの で注意すること.またレンズは斜めにな らないようセットする. レンズが斜めにならないように注意 (4) レンズホルダー下部の白線を,光学 指示棒は右端 台の 17.0[cm]の座標に合わせる.なお以 後この位置は固定し,後の操作でレンズ ホルダーの位置がずれた場合はこの座 標に戻すこと. また指示棒を光学ベン チの右端にセットする. (5) マイクロメータを用いて凸レンズ の中心付近の厚みを 3 回測定する.なお マイクロメータの測定部分でレンズを 挟み込む際は,測定部分がガラスに軽く 触れた時点で値を測定する.マイクロメ ータのネジを閉めすぎると,レンズとマ イ ク ロ メ ータ を 破 損 する の で 注 意す る!マイクロメータの使用方法は,補足 説明を参照のこと. 緩む レンズホルダーは 17.0[cm] 締まる (6) スクリーンを左右に移動させて,透 明目盛板の目盛がスクリーンでピント が合って,はっきりと見える位置にスク リーンをセットする. (7) 指示棒を透明目盛板とレンズホル ダーの間にセットする.なおセットの 際,指示棒がレンズホルダーに触れてレ ン ズ ホ ル ダー の 位 置 がず れ た 場 合は 16.8cm の座標に再度設定する. (8) 指示棒をゆっくり透明目盛板に近 付け,指示棒の先端が透明目盛板にギリ ギリ触れたときの指示棒の座標を x1 と して 0.1mm の精度で読み取る.なお指 示棒を動かす作業は,透明目盛板に傷を 付けないように慎重に行うこと. (9) 指示棒をゆっくりレンズホルダー に近付け,指示棒の先端がレンズホルダ ーの凸レンズにギリギリ触れたときの 指示棒の座標を x2 として 0.1mm の精度 で読み取る.なお指示棒は,レンズにぎ りぎり触れる位置にセットして,指示棒 でレンズの固定金具に負荷がかかって レンズが傾かないように注意する. (10) 指示棒をレンズホルダーとスクリ ーンの間に置き,レンズの右側の座標 x3 を 0.1mm の精度で読み取る.なお指 示棒は,(9)と同様にレンズにぎりぎり触 れる位置にセットして,指示棒でレンズ の固定金具に負荷がかかってレンズが 傾かないように注意する. (11) 指示棒を移動させスクリーンの左 側の座標 x4 を 0.1mm 読み取る. スクリーン (12) 上記結果を表に結果を記入する. また今まで測定した x1, x2, x3, , x4, t から凸レンズの焦点距離を式(1)~(3) を用いて求める.なお測定は 4 名編成の班は、1 名 2 回以上、3 名編成の班は 1 名 3 回以上測定し、合計 10 回測定 すること. 実験方法 実験2 凹レンズの焦点距離 (1) マイクロメータを用いて凹レンズ の中心付近の厚みを 3 回測定する.なお マイクロメータの測定部分でレンズを 挟み込む際は,測定部分がガラスに軽く 触れた時点で値を測定する.マイクロメ ータのネジを閉めすぎると,レンズとマ イ ク ロ メ ータ を 破 損 する の で 注 意す る!マイクロメータの使用方法は,補足 説明を参照のこと. (2) 実験1と同様に凸レンズをレンズ 開 ホルダーの左側にセットするのに加え, レンズホルダーの右側に凹レンズをセ ットする.なお凸レンズの装着ネジは逆 閉 ネジなので注意すること! (3) レンズホルダー下部の白線を,光学 指示棒は右端 台の 17.0[cm]の座標に合わせる.なお以 後この位置は固定し,後の操作でレンズ ホルダーの位置がずれた場合はこの座 標に戻すこと. また指示棒を光学ベン レンズホルダーは 17.0cm] チの右端にセットする. (4) スクリーンを左右に移動させて, 透明目盛板の目盛がスクリーンでピン トが合って,はっきりと見える 101~ 125[cm]前後の座標位置にスクリーン をセットする. スクリーンは 101~125[cm] (5) 指示棒をレンズホルダーとスクリ ーンの間にセットする.この状態で指示 棒をゆっくりとスクリーンに近づけ,指 示棒の右端の先端がスクリーンに触れ た際の指示棒の座標を x3’として記録す る. 支持棒は 95~125[cm] (6) レ ン ズ ホ ル ダ ー の 位 置 を 16.8 [cm]の位置に保ちつつ,留め金具を時計 開 回りに回転させ, 凸レンズを取り外す. 17.0[cm] (7)指示棒をレンズホルダーの左側にセ ットし,ゆっくりと右側に動かして指示 棒の先端が凹レンズにぎりぎり触れる 位置の指示棒の座標を x1'として読み取 る. なお指示棒は,レンズにぎりぎり触 れる位置にセットして,指示棒でレンズ の固定金具に負荷がかかってレンズが 傾かないように注意する. (8) 上記結果を表に結果を記入する. さ らに実験 1 で測定した x4 の測定値の平 均値を x2'として,今まで測定した x1', x2', x3', t'と式(4)~(6)を用いて凹レンズの焦 点距離 f 'を求める.なお測定は、4 名編成 の班は 1 名 2 回以上、3 名編成の班は 1 名 3 回以上測定し、合計 10 回測定する こと. データ整理に使用する公式 1 1 1 = + f a b t 2 t b = x4 − x2 − 2 a = x3 − x1 − x1:透明メモリ板の座標 式(1) [m] x2:凸レンズの左側の座標[m] x3:凸レンズの右側の座標[m] 式(2) x4:スクリーンの座標 [m] f :凸レンズの焦点距離 [m] t :凸レンズの厚み [m] 式(3) x1':凹レンズの左側の座標 [m] x2' :凸レンズの像が表示されるスクリーンの 1 1 1 = − f ' a ' b' t' ⎞ ⎛ a ' = x 2 '−⎜ x1 '+ ⎟ 2⎠ ⎝ t' ⎞ ⎛ b' = x3 '−⎜ x1 '+ ⎟ 2⎠ ⎝ 式(4) 座標 (x4 の平均値) [m] x3':凹レンズの像が表示される スクリーンの座標 式(5) [m] f ' :凹レンズの焦点距離 [m] t ' :凹レンズの厚み [m] 式(6) 実験誤差 実験値の文献値からの誤差.通常は数%程度の値を取る. 実験誤差= 実験値 − 文献値 × 100 [%] 文献値 式(7) 凸レンズの焦点距離の文献値:7.13×10-2 [m] 凸レンズの厚さ t の文献値:7.42×10-3 [m] 凹レンズの焦点距離の文献値:1.497×10-1 [m] 凹レンズの厚さ t'の文献値:1.85×10-3 [m] 凸(凹)レンズの相対誤差 ⎡ Δx Δx3 Δx 2 Δx 4 Δf Δt ⎤ =⎢ 1 + + + + ⎥ × 100 [%] f x2 x3 x4 t ⎦ ⎣ x1 式(8) Δf ' ⎡ Δx1 ' Δx 2 ' Δx 3 ' Δt ' ⎤ =⎢ + + + ⎥ × 100 f' x2 ' x3 ' t' ⎦ ⎣ x1 ' 式(9) [%] Δx1,Δx2,Δx3,Δx4,Δx1',Δx2',Δx3':光学台の最小読み取り値 0.1[mm] Δt, Δt’:凸レンズの厚さの最小読み取り値 0.001[mm] x1 , x2, x3, x4, x1', x2', x3', t ,t':測定値 補足説明 1 マイクロメータの読み方 マイクロメータは主尺と副尺からなり, 最 少 目 盛 り が 0.01mm で さ ら に 目 測 で 0.001mm の精度まで測定が可能である.し たがってノギスの 20 倍の測定精度を持つ ラチェット 測定が可能である.測定方法を以下に示す. (1)マイクロメータを時計回りにゆっく 図のゼロ点補正は-0.003mm.したがって測定値に りまわし,回らなくなったらラチェットを 0.003mm を足した値が真の測定値となる 2,3 回カチカチ音を立てて回す.なおマイク ロメータは,力を入れて無理に回すといく らでも回転するので,回らなくなったら回 転は止める事. (2)マイクロメータの主尺の横線が示す 副尺の目盛りの読みを,0.001mm の単位で 通常は,測定物を挟んでいない状態での読みはゼロに 読み取る.物体が入っていない状態でのこ なるが,使い方が荒いとゼロ点がずれるので,あらかじ の読みがプラス側であったら,測定値から めこの値を読み取って記録しておく. この値を引いたものが測定の真値となるの で,この値を記録しておく.この作業をゼロ 点補正という. (3)マイクロメータを反時計回りに回し て,円柱状の測定面を広げ,測定物を測定部 の中に通す.測定物を通したら,今度はマイ クロメータを時計回りに回して,測定物を 挟み込み,最後は(1)と同様に操作を行う. (4)副尺の端が示す主尺の主目盛りの値 主尺主目盛り 主尺 5.5mm+副尺 が最初の測定値となる.図では 5~6 の間な 1mm 刻み 0.255mm=5.755mm ので“5”となる.次に主尺の副目盛りの読 みが 0.5mm の目盛りを超えている場合は, 副尺目盛り 読みに 0.5mm を加えるのでこの場合の主 1 回転 0.5mm. 尺の読みは 5.5mm となる.次に主尺の横線 最少目盛りは が示す副尺の読みを最少目盛り 0.01mm の 0.01mm.読み取 1/10 の 0.001mm まで目測で読み取る. りは 0.001mm. (5)測定値にゼロ点補正の値を加算もし 主尺副目盛り くは減算して,測定の真値を算出する. 0.5mm 刻み 14レンズ 実験結果1 t 凸レンズの厚さ mm (+ ‐) (t 平均値[mm]+ゼロ点補正 表1 t平均値 mm mm [mm])/2 → mm ×10-3 [m] t/2: 凸レンズの測定結果 回数 測定者 x1 x2 x3 -2 -2 -1 10 [m] 10 [m] 10 x4 [m] 10 -1 [m] a b f 実験誤差 相対誤差 -1 -1 –2 [%] [%] 10 [m] 10 [m] 10 [m] 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 t' 凹レンズの厚さ mm (t'平均値[mm]+ゼロ点補正 t'平均値 mm mm (+ ‐) [mm])/2 → mm t'/2: ×10 –4[m] 表 2 凹レンズの測定結果 回数 測定者 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 x1 ' x2 ' -2 -1 10 [m] 10 x3 ' [m] [m] b' a' -1 10 [m] [m] f' -1 10 [m] 実験誤差 相対誤差 [%] [%] 14 レンズ 実験結果 2 表 3 測定値の最小測定単位と有効数字(表 1 の 2 行目の測定値を例に) t x1 x2 x3 x4 t’ x1 ' x2 ' x3 ' 0.001mm 0.01cm 0.01cm 0.01cm 0.01cm 0.001mm 0.01cm 0.01cm 0.01cm 測定値(例) 最小測定単位 有効数字 よって実験により算出される有効数字は 桁 相対誤差の計算例 凸レンズ相対誤差 (表1の 2 行目の測定値を例に) Δx3 Δx 2 Δx 4 Δf ⎡ Δx1 Δt ⎤ =⎢ + + + + ⎥ × 100 [%] f x2 x3 x4 t ⎥⎦ ⎣⎢ x1 Δx1,Δx2,Δx3,Δx4:光学台の最小読み取り値 0.1[mm] x1 , x2, x3, x4, t:測定値 Δt:凸レンズの厚さの最小読み取り値 0.001[mm] Δx1 = x1 ∴ [%] Δx 2 = x2 ∴ [%] Δx3 = x3 ∴ [%] Δx 4 = x4 ∴ [%] Δt = t ∴ [%] Δf = f ∴ [%] 14 レンズ 実験結果3 凹レンズの相対誤差(表 2 の 2 行目の測定値を例に) Δx1',Δx2',Δx3':光学台の最小読み取り値 Δf ' ⎡ Δx1 ' Δx2 ' Δx3 ' Δt ' ⎤ =⎢ + + + ⎥ × 100 f ' ⎣ x1 ' x2 ' x3 ' t' ⎦ 0.1[mm] x1', x2', x3':測定値 Δt':レンズの厚さの最小読み取り値 Δx1' = x1' ∴ [%] Δx 2 ' = x2' ∴ [%] Δx3' = x3' ∴ [%] Δt' = t' ∴ Δf ' = f' ∴ 0.001[mm] [%] [%] 課題 (1) 相対誤差の全体値と各測定項目をそれぞれ求めよ.またどの項の誤差が最も大きく,測定の際に気をつけるべき事 を考察せよ. (2) 実験誤差を計算して相対誤差を比較し,誤差の原因について考察せよ. 考察 その他分かったこと,さらに調べた事があれば記せ.
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