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干葉県 医師会雑誌
に04年 から関わって来ました。 この会議での
対応困難事例の半数が独居高齢者でした。 こ
の状況に「何 とか うまい方法 はないか」 と考
え、「 1人 暮 らしあんしん電話」 (以 下「あん
しん電話」
)を 開発・実践 してきました。
磯第 2ロ ロ回 艤
「あんしん電話」のシステムは、以下の通
「 1人 暮らしあんじん電話」
が松戸市で公認さ ました
りです。
診療所 に設置 したパ ソコンに発信者 (診 療
所側)の 音声 を録音 しておきます。パ ソコン
は対象者 (患 者さん)と 毎週 1回 予め約束 し
た 日時に自動的に電話 をか けます。対象者
プッシュホ ン式電話で、
「問題なし」の場合 は
松戸市医師会
どうたれ
しん じ
堂垂 伸 治 先 生
(「 松戸市医師会報」2015年 7月 号より
転載)
「 *→
1」
「体調不良」の場合 は「 *→
を、
2」
を、
「 要連絡 」の場合 は「 *→ 3」 を押 します。
<は じめに>
(「
1人 暮 らし高齢者は、2011年
に全 国です でに500万 人
(以 下、西暦)
(世 帯)で 、35年
応 答 な し」や「話 中」 の時 は、翌 日の 同時
刻 に再度 自動的 に電話 され ます )
対象者 か らの応 答結果 はパ ソ コン画面 に一
覧 で 表 示 され、診 療 所 側 は、朝 ・夕 の 2回
に
は 5倍 の762万 人に増え全世帯の約 2割 に達
す ると言われています。 これは くしくも認知
1。
チ ェ ック します。「応答結果 一覧」はエ クセル
症の人数 と同数で、今後 さらに大 きな社会問
題 とな ります。
仕様 です ので、 ひ と 日で全 回答 を知 ることが
で きます。安否確認 をす る側 の “
手 間が省 け"、
人口48万 人の松戸市では高齢化率 は23。 9%
(15年 3月 末)で す。その うち「 1人 暮 らし
対象者 もプ ッシュホ ン式電話 のボ タ ンでの返
気兼 ねせ ず "回 答 で きる シス テ ム
答 なので、“
高齢者」が約 2万 人で、「認知症 の人」 も約
2万 人、
「 1人 暮 らしで認知症 の高齢者」が約
です。 (携 帯電話 も対 象可能 です )
2000人 と推定されてい ます。現在松戸市 の小
と操 作 用 の ノ ー ト・パ ソ コ ンで構 成 され、
学生総数 は約24万 人ですので、 これ らの人
数の多 さがわかって頂けると思います。
ISDN回 線 を使用 して い ます ので、 い わゆ る
そして松戸市での「孤独死」はこの間毎年
150人 以上に達 してい ます (図 1)。
ス テ ム では、 電話 の対象者 には受信 した際の
システ ム は、 ソフ トが入 ったパ ソ コ ン本体
ウイ ルス感染 の リス ク もあ りませ ん。 この シ
金融負担 はゼ ロです。発信す る診療所側 では
ISDN回 線料 と電話代 で100人 相手 で も月 1万
<「 1人 暮 らしあんしん電話」 とは>
円以 内 で 済 み ます。 (別 途連絡 す る際 の 電話
私 は常盤平地区高齢者支援連絡会専門部会
年
(西 暦 )
孤独 死
(人 )
料金 は発 生 します )
05
06
07
08
09
10
72
101
111
110
155
118
図
1
135
12
13
14
169
189
179
膵
千葉県医師会雑誌
この種 の機器 として他 に「緊急通報装置」
があ ります。 しか し、 これには多大 な税金が
<松 戸市 での進展 ―地域住 民 自身の活動 と医
投 じられてお り費用対効果が悪 く、かつ「非
師会員 の協働 >
課税世帯」だけが対象です。一般住居に導入
す るには月額数千円かかる とい うものです。
09年 末 か ら新 聞各 紙 で 報 道 され、そ の 後
NHKや TBSテ レビ・ ラジオな どで放映 され、
<「 あん しん電話」 の成果 >
全 国 に も知 られ る よ うにな りま した。「あ ん
私 は、08年 3月 か ら「あん しん電話」 を、
しん電 話」 は現在全 国 (松 戸市以外 )で は約
「 当院通 院患者 さんで 1人 暮 らしの方」を対象
400人 で運用 されて い ます。
特 にNHKテ レビの 報 道 を ご覧 に な った 新
に実践 して来 ま した。本 システムは、09年 9
月 には「おたずね フォン」 として製品化 され、 松戸 の幸谷 町会 と新松戸東 町会 の住民 の方 々
14年 11月 以 降 は「 あ んです フォ ン」 として大
が、
「独居高齢者 を何 とか した い」の一念 で地
量生産可 能 となってい ます。
l
域 での活動 を開始 され ま した。 これ に新松戸
パ ソ コ ン画面 で「体調不 良」や「要連絡」
診療所 が応 えて くだ さ り、 12年 2月 か ら稼働
の人 にはその都度対象者 に当院事務員が別途
しま した。
適宜電話連 絡 して い ます。診療所 の事務員 レ
ベ ル で殆 ど対応可能 で、 医師や看護師が関わ
そ の後、 主 に在宅ケア委員会 の先 生 方 を中
心 に (図
2)の ご と く、市 内 の10町 会 ・ 自治
る必 要がある こ とは稀 です。 この シス テ ム は、 会 で 約400人 を対象 に稼働 して い ます。それ
安否確認 の みな らず、病状等 の悪化 をい ち早
ぞれ の地域 のボ ラ ンテ ィアや民 生 児童委員 ・
く把握 で きますので、 い わ ゆる「孤独死」 の
相談協力員 。自治会長等 と連携 し、主 に 1人
予 防に もな ります。
暮 らしの方 の見守 りを行 って い ます。
通 院中の 1人 暮 らしの人
どうたれ内科診療所
70A
新松戸東 0幸 谷 町会
新松戸診療所
60A
常 盤 平 団地
どうたれ内科診療所
65A
12.9∼
南部市営住宅
どうたれ内科診療所
20A
13.1∼
梨香 台団地
梨香 台診療所
40A
13.2∼
牧 の 原 団地
どうたれ内科診療所
25A
島村 トー タル ケアク リニ ック
50A
六実 ・六 高台
松寿 園
50A
09。
9∼
12.2∼
綺
12。
13。
9∼
3∼
13.10-
き
対象人数 (約 )
︿バ
町
パ ソ コン設置場所
づ ︿バ
な町
み南
・台
地録
団胡
野
菊
野
地域 (対 象 )
開始 時期
14。
5∼
日暮 地 区
阿部 ク リニ ック
現在準備 中
15。
3∼
小金原地 区
い らは ら診療所
現在準備 中
図2
魃
千葉県医師会雑誌
松戸市 では13年 か ら「松戸市医師会」 とし
て後援 して頂 きましたので さ らに拍車がかか
りま した。紙上 をお借 りし医師会執行部 の先
生 方 に深 く感謝 申 し上 げ ます。
<松 戸市 が予算化 >
これ らの活動 を通 して、実 は地域 には「地
域 の事 を何 とか した い」 とい う方 がた くさん
い ることがわか りま した。私 たちは行政 と接
す る とよ く「縦割 り」 だ と感 じ批判 をす る こ
とが あ ります。 しか し、 私 た ち も医療 や介
「縦
護・福社 の専 門職 と地域住民 の 間でや は り
割 り」 になって い るので はない か と感 じま し
た。
医師会 の後援 、地域住民やNPO団 体 の活動
「 あ ん しん電話」は今 回15
な どの積 み重 ねで、
年 3月 に松戸市議会 で承認 され松戸市が予算
化 しました。「あん しん電話 Jは 行政公認 の事
業 とな り、市民 へ の拡大 もよ り可能 にな りま
した。
<今 後の課題 とお願 い>
このシステムは
(図
3)の ような トライア
ングルで成 り立ってい ます。今後 この 3者 の
構成のそれぞれの拡大が必要です。つ ま り、
①参加す る医療機関が増えること、実績を積
み上げて地域包括支援 センターや介護保険施
設 に拡大す ること、② ボランティアや住民組
織が増えること、③独居高齢者や災害弱者の
参加が増えること、が必要です。
また、既存 の設置個所 でカバー し得 ない
「市内に多数散在す る 1人 暮 らしの方」を対象
「中央管理センター」のような中核 も作 り、
に、
市内全域 の広範なカバー も行 うべ きかと考え
てお ります。
現在、地域住民側 では自主的に「松戸あん
しん電話協議会」が作 られ活発に討論 し、宣
伝や講演会を行い参加者 の増加 と他の地域ヘ
の拡大 を目指 してお ります。
これらの進展はなかなか難 しい ところ もあ
ります。会員皆様のご理解 ご協力のほど、 ど
うぞよろしくお願い申 し上げます。
<「 あんしん電話」の普遍性 と今後の展望
>
私 は、今後の超高齢化社会では「社会保障
費が有限な時代」 と認識すべ きだと考 えてい
1人 暮 らしあんしん電話」の詳細 に関 し
ては、HP:ど うたれ内科診療所 >1人 暮 らし
ます。他方、ますます 1人 暮 らしの方が増大
し、 これはアジア各国で も大問題 になると予
あんしん電話 httpノ /wwwodoutareecom/
anshin/を ご覧 ください)
(「
「費用対効果」
測 しています。そ うした時代 で
が極 めて大 きい「あんしん電話」は有効な機
器になると確信 してい ます。
独居や災害弱者
な どの高齢者
市内を碁盤の 目のようにとらえ、その中心
に「あんしん電話」を張 り巡 らす。その中心
になるのは、医療機関・地域包括支援 セ ン
ター・介護保険関連施設等 々です。「あんしん
電話」をきっかけに、地域社会での関係づ く
りが活性化 され、さらに地域住民 と専門職が
「地域包括ケア」体制 を補
自然 に交流を重ね、
完・充実させると期待 してい ます。
ボランテイア
(よ り元気な
高齢者 )
医療機器や
地域包括支援
センター等
少子・超高齢化社会では、
「高齢者が高齢者を支えるシステム」が必要
図 3「 あん しん電話」 の地域社 会 での活用