山椿/花水木 - 第二東京弁護士会

Yamatsubaki
山 椿
11
私 は、1976年4月、第 二 東
こさずにやってこられました。
とに、判例タイムズで最判昭
京弁護士会に弁護士登録をし
最近は、お金にまつわる弁護
和50年4月11日の判決を見つ
ましたので、現在弁護士生活
士の不祥事が多発しています
け、上記許可協力請求権の消
も40年 目 に 入 り ま し た。 今
ので、この先生の箴言は、今
滅時効期間は10年であること
般、
「山椿」の執筆を依頼され
でも全く色褪せることはない
が判明しましたので、その旨
ましたときは、あまり乗り気
と思います。
先生に報告し、上記の本は斜
ではありませんでしたが、約
め読みで済ますことができま
40年間の弁護士生活を振り返
した。
ってみるチャンスを与えられ
この先生から言われた、10
たものと思い直してお引受け
年間1つのテーマを追いかける
することにした次第です。
ことについては、結局、成就で
私が弁護士生活をここまで
きませんでしたが、弁護士登録
何とかやってこれたことにつき
直後のころ、同期の弁護士に誘
ましては、司法修習生の時代に
われて、医療問題弁護団の結
実務修習地でお世話になったお
成に参加し、医療事件につい
二人の弁護士の先生の影響が大
ては若干なりと継続的に事件
きかったように思います。
を担当してきましたので、少
一人目の先生は、実務修習
しは近づけたかもしれません。
地の弁護士会長やNHKの経営
若柳 善朗(28期)
私は、偶然にも、司法研修所
委員もされた先生ですが、手
●Yoshiro Wakayanagi
の民事弁護教官をさせていた
弁当で再審事件の赤堀事件を
だきましたので、司法修習生
担当されていたりして、基本
二人目の先生は、実務修習
に対しては、前期または後期
的人権の擁護と社会正義の実
で配属された先生で、折に触
の最後の授業の際に上記お二
現にも尽くされた立派な先生
れて、
「どんな法律問題でもよ
人の先生のお話をさせていた
でした。この先生は、我々実
いから、好きなテーマを見つ
だきました。
務修習中の司法修習生に対す
け て10年 間 地 道 に コ ツ コ ツ
後者の先生のお話はあまり
る講義の中で、
「弁護士の収入
と勉強したり、実務を行えば、
インパクトがなかったようで
は浮き沈みがあり安定してい
その道のプロになれる。10年
す が、前 者 の 先 生 の お 話 は、
るとは言えない。少し収入が
間の辛抱が大事だ」と言われ
何人かの司法修習生の頭の片
増えたからといって生活程度
ました。この先生には、農地
隅に残っていたらしく、クラ
を上げてはいけない。一度上
法第3条の許可協力請求権の消
ス会などでお会いすると、今
げた生活程度を下げるのは大
滅時効を問題にしている事件
もよく覚えていますと言われ
変である」とのお話をされて、
があるので、成富信夫著『権
ることがあります。
弁護士生活の指針を示してく
利の自壊による失効の原則』
私の弁護士生活にとって、
ださいました。私は、この先
という本を読んで研究してほ
上記お二人の先生からのご助
生のお言葉をなるべく守るよ
しいと言い渡されました。こ
言はとてもありがたく、今も
うにして今まで生活してきま
れは大変なことになったと思
時に応じて思い出し、我が身
したので、何とか不祥事も起
案していましたら、幸いなこ
を振り返っています。
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山椿 花水木
Hanamizuki
花水木
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に一生懸命に頑張ってきまし
おいて有名な先生でない限
た。そうこうするうちに、間
り、十分な収入を得ることは
もなく弁護士になってから最
困難と思われます。そして、
花水木を執筆する機会をい
初の3年間が終わろうとして
何より、多方面に好奇心を抱
ただきましたので、これを機
います。つまり、次のステッ
く私の性格からして、1つの
会に現在の自分、および将来
プが近付いてきているという
分野に特化する方法では仕事
の自分のあるべき姿を見つめ
ことです。
に対する満足感を得られない
直そうと考え、筆をとりまし
もちろん4年目以降も引き
のではないかと思われます。
た。
続き頑張る必要はあります
したがって、ここでいう「専
私は、2012年12月に弁護
が、4年目以降は、単に目前
門分野」は「重点分野」と呼
士登録して以来、所属弁護士
の仕事を一生懸命頑張るだけ
ぶ方が適切でしょう。
約20名の法律事務所におい
では足りず、自分の弁護士と
重点分野をどのような基準
て勤務弁護士として様々な経
してのあるべき姿をより一層
で選ぶかについてですが、世
験を積ませていただいていま
考えながら職務に取り組む
間の動向(=分野別需要の多
す。扱う案件の種類は、一般
必要があるものと考えていま
寡)、従前の自分の経験、自
的な民事訴訟を中心に多岐
す。具体的には、自分の専門
分の興味関心の3つが決め手
にわたります。依頼者も、個
分野を意識的に確立する必要
になると思われます。これら
人、法人問わず様々な境遇の
があると考えています。特に
は時とともに移ろうものです
方 が い ら っ し ゃ い ま す。 ま
業界外の方と話をすると、ま
から、それに応じて重点分野
た、 行 政 事 件 に か か わ る 機
ず「 ど の よ う な 分 野 が 専 門
も変化していくことでしょ
会も多く、弁護士会において
か」という質問をされること
う。
は、今年4月より法教育の普
が多く、自分の専門分野につ
以上、私が日々漠然と考え
及・推進に関する委員会の副
いて自信をもってアピールで
てきた将来に向けての指針を
委員長を務めさせていただ
きれば、(潜在的)顧客に対
簡単にではありますが文章に
き、大変充実した日々を送っ
する訴求力が高くなるであろ
まとめてみました。以上はあ
ています。
うと日々感じています。
くまでも指針であり、今後具
ところで、よく耳にする言
ただ、専門分野といっても、
体的に何をするべきかについ
葉に、(細かい文言について
私のイメージするところは、
ては将来にわたってじっくり
はやや不正確かもしれず、年
ある1つの分野に特化すると
考えていきます。
数についても異論があるよ
いうものではありません。幅
うですが)
「弁護士は最初の
広い分野で業務を行いつつ、
3年間が大事である。最初の
自分の得意分野として(潜在
3年間の頑張りでその後の弁
的)顧客にアピールできる分
護士としての有様が決まる
野を3つほど確立するという
から、最初の3年間はがむし
イメージです。1つの分野に
ゃらに頑張るように」という
特化するという方法論もあり
ものがあります。この言葉を
得るかと思いますが、このよ
肝に銘じ、これまで自分なり
うな方法では余程その分野に
尾渡 雄一朗(新65期)
●Yuichiro Owatari
当会開催の2014年
「第3回がんばろう東北!復興応援ツアー」
での一枚
(写真左が筆者)
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