生活困窮者自立支援に地域はどう取組むのか 特集①

特集①
平成
年度岩手県福祉コミュニティーづくり推進セミナー
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講 師
日本福祉大学副学長・社会
福祉学部教授
NPO法人コミュニティライ
フサポートセンター ( CLC )
理事
(ひらの たかゆき)
氏
平野 隆之
地域福祉を専門とし
厚 生 労 働 省、 全 国 社
会福祉協議会や国土
交通省などの各種委員
会の委員を務めるなか
で、地域福祉の役割の
広がりを考えてきまし
た。また東日本大震災
に関連して、
『震災被
災地における要援護者
への個別・地域支援の
実践的研究』をまとめ、
地域福祉コーディネー
ターやマネジャーの役
割を提起しています。
活保護部門が協力して、相談に来ら
け、地域の人材確保、就労継続︵定
れた方々の実態を分析した結果、自
着 ︶、 障 が い 者 の 雇 用 を3 本 柱 と し
」 施行を前に開催した本
平成 年4月の 新「たな生活困窮者自立支援制度 の
立相談支援のモデル事業の対象とな
ました。東近江市の特性を活かした
セミナー︵平成 年 月 日、会場 ホ: テルニューカリーナ。主催は岩手県・岩
る生活困窮者は約300名に上ると
就労支援の例としては、森林・里山
手県社協︶には、自治体職員、市町村社協職員、民生委員児童委員ら福祉関係
推計されました。
整備等の地域のニーズに対応した
者約160人が参加。日本福祉大学副学長・社会福祉学部教授の平野隆之氏の
大変な作業でしたが、これによっ
薪
基調講演と、モデル事業に取組む花巻市社協職員ら3氏の実践発表を通して、
「 プ ロ ジ ェ ク ト︵ 林 業 と 障 が い 者
て 行 政 と の 連 携 が 強 化 さ れ ま し た。
雇用の連携︶ が
制度への理解を深めました。
」 あげられます。
こうした作業を経て、生活保護の相
滋賀の経験を岩手と結びつける
検討すべき課題と5つのステップ
談の初回の面接時に自立相談支援員
ステップ①の制度の共通理解です
モデル事業に参加した経験から皆
が、国では︿ 生「活困窮者 と
が同席する形でモデル事業を開始し
さんの参考にしていただきたいこと
」 は 現「
に経済的に困窮し、最低限度の生活
ました。
は、東近江市の地域生活支援計画の
を維持することができなくなるおそ
大切なまちづくりの視点
方向性、すなわち、
れのある者 ﹀」と定義していますが、
困窮を脱するには、その人の持つ
①制度の意図に反しない範囲で 地「
私たちは地域福祉の視点から、経済
力を引き上げる相談機能︵入口︶ば
域福祉 と
」 して運用すること。
的困窮だけでなく、複合的な問題を
かりでなく、その人の働く場を発見
②自立相談支援は既存の相談機関を
抱えたり、孤立している人々が生活
活用して後方相談支援体制︵※相
し、開発し、確保する 出口 があ
「
」
困窮に陥ることを予防し、困窮の連
談支援の支援︶を構築すること。
るかどうかが最も重要です。そのた
鎖を断ち切る取組みを目指すことで
め、先行している就労の場づくりの
③予防的支援を促進すること。
意思統一しました。
④公・民の担い手を育成し、事業の
事業をリストアップするなどしまし
た。この制度は福祉だけで取組んで
継続性を確保するために 人
「材と
また、ステップ②の自立相談支援
のあり方については、まず、既存の
は長続きしません。社協はこれまで、
事業 」を育成すること。
様々な相談機関や窓口が対応し、そ
こうした 出口 の発見や創出に関
⑤狭義の福祉を超えて、中間的就労
「
」
こで支援しきれないケース、相談機
しては不慣れでしたが、狭義の福祉
等の場を開拓する 地
「 域づくり 」
関が困っているケースを最後に後方
を超えた中間的就労支援の場づくり
を進めること。
で受け止めて、支援する形が一番良
は、仕事づくり・地域づくり・人材
⑥自 立 支 援 は 自 己 実 現 へ の 支 援 で、
いと考え、東近江市ではそのように
育成につながるものです。
その過程は協働作業であり、相互
モデル事業を実践しています。
に自己実現を進めること。
東近江市では、モデル事業を進め
る中で商工労政部門を巻き込んで
などです。
就
「 労 支 援 プ ロ ジ ェ ク ト 会 議 」を 設 ステップ③の生活保護担当との連
携としては、 年度に福祉部門と生
生活困窮者自立支援に
地域はどう取組むのか
[ 基調講演 ] の概要 モデル事業に参加した経験をもとに
新たな生活困窮者自立支援制度が
構想された平成 年度から 年度ま
での3年間、滋賀県東近江市︵※人
口は約 万人︶の地域生活支援計画
策定を重視したモデル事業に携わり
ました︵※事業は大学が受託︶。
国は制度の施行に向けて検討すべ
き課題として①法の趣旨の理解②庁
内体制の構築③実施方法の検討︵※
直営で行うのか、外部委託で行うの
か︶④関係機関との連携体制の確保
⑤協議の場の設定、の5つを示して
います。東近江市のモデル事業を進
めるに当たっては、5つのステップ
︵※①制度の共通理解を図る作業②
自立相談支援のあり方の判断③生活
保護担当との連携の模索④先行する
任意事業の発見・評価⑤計画策定で
の方向の共有と新たな巻き込み︶で
取組みました。
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2
[ 実践発表 ] 岩手県内の生活困窮者自立支援の実践を知る
氏
④地域福祉推進創造計画〈平成26年度から35
年度〉(分室に日常生活自立支援事業と法人後
生活困窮者自立支援で
地域福祉を進める
︵開会の挨拶から︶
り、制度的サービスの狭間にある課題は
沢山あります。
生活困窮者自立支援で地域福祉を進め
るためには①地域のさまざまな分野が連
携したニーズキャッチの視点②ニーズに
向きあい必要なサービスを創出して対応
する課題解決力の視点③実際のニーズと
地域の資源をしっかりつなぐコーディ
ネート機能の視点④時間をかけて体制づ
くりや支援者の組織化を行う継続性・将
来性の視点、が重要と考えています。
域課題に目を向け地域コミュニティセンターと協
力して解決しようとする事業に対し助成を行う)
チによる包括的な支援、社会資源の
開拓と創出、支え支えられながら生
活していくことができる環境づくり︶
まで、進めたいとと考えています。
強化し、必要としている人及び地域に活かす)
高舘 美保子
③地域づくり事業「地域協働セーフティネット
事業」(介護保険事業所等の地域還元として、地
として設立し、2007年に法人認
証されたNPO法人です。障がいを
NPO法人いわてパノラマ福祉館理事長
私たちの支援についての考え方
②ボランティアセンター(市民の持てる力を把握・
生活困窮者自立支援制度の実施に向け
千田 充
就労準備と
就労訓練事業の取組み
岩手県保健福祉部地域福
祉課 統括課長
当福祉館は2004年に任意団体
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(地域の課題の発見、個別相談支援、社会資源
のネットワーク化、新たな仕組みづくり等の活
動を行う)
氏
宮寺 良光 氏
①地域福祉コーディネーターを10地区に配置
晴山 順子
岩手県立大学社会福祉学部
福祉経営学科福祉教育シス
テム群 講師
【地域づくり】
生活困窮者自立支援に向けて
高舘 美保子 氏
花巻市社協の今後の動き
花巻市社会福祉協議会地域福祉課
NPO法人いわてパノラマ
福祉館 理事長
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晴山 順子 氏
見をプラスし、支援を強化する)
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∼花巻市社協の取組み∼
花巻市社会福祉協議会
事務局次長
て準備を進めています。制度は単なる貧
相談者の就労決定は 件
終結したり、他機関への紹介で終結
困 対 策 で は な く、 地 域 づ く り 」の 視 点
「
する方もおり、数字に表れない相談
社協だからこそ取組むべき事業と
で取組むことで
考 え、 花
支援もあります。本人の主体性を重
「 巻市生活困窮者自立促進
効果が上がると
視するため、同意がなければ支援が
支 援 モ デ ル 事 業 ︵」 以 下、 モ デ ル 事
考 え て い ま す。
届かないこともありますが、今後と
業と表記︶を受託し、オール社協で
地域の福祉課題
も生活福祉資金の貸付対象者や生活
生活困窮者の早期発見・支援、家計
︵困りごと︶は
の見直し、債務・滞納解消計画、稼
保護廃止世帯については、継続して
多様化してお
働年齢層の就労支援などに取組んで
見守りたいと思っています。
きました。これまでの相談は、相談
市と連携してワンフロア化を実現
就 労 支 援では障がいの疑いのある
者 人、述べ相談件数は1,075 花 巻 市 役 所 新 館 1 階 に 社
方 を行 政や医 療につないだり、また
「 協分
件、支援決定者は9人です。
室 ︵」※中央地区包括支援センター・
バスの乗り 降りが分からない方に乗
ふれあい相談室・生活福祉資 金等 貸
り方を教えたり、引きこもりで昼夜
生 活 困 窮 者の相 談 経 路 は市 役 所、
民生委員児童委員、地域包括支援セ
付 事 業、モデル事 業を担当︶が新設
逆転している方には夜勤の仕 事を勧
され、合わせて 人の職 員がワンス
ンターなどの順ですが、本会の場合は
めたり、コミュニケーションの苦手な
トップで相談に応じる態勢が整いまし
民生委員児童委員からの情報提供が
方には農業を勧めたりしました。経
他と比べて多いと思われます。情報共
た。相談者のモニタリングやアセスメ
済 的に困 窮している方には賃 金の日
ントが十分であれば、場所は重要では
払い、
週払いも考慮してもらいました。
有については月1回の民生委員定例会
ないとはいうものの、車を利用できな
議に出席させていただき、職員とは週
就労支援を進める上では▽短時間
い高 齢 者や障がい者の方 も 多 くいま
1回ケース検討会を開いています。
就労を引き受けてくれる事業所の開
す。また、相 談 者の抱 える問題は複
拓▽経営者のみならず一緒に働く従業
相 談 者 の 就 労 決 定 は 件 で す が、
雑 多 様化しています。市役所 各課の
この数が多いか少ないかはわかりま
員の理解▽就 労継 続のための就職後
担当者同席で相談に対応することで、
せん。就労先は障がい者福祉関係の
のアフターフォローが必要と感じてい
ワンフロアでそれぞれの制度や担当職
事業所、清掃、コンビニ、製造業な
ます。目標としては① 生活困窮者の
員の意見等を聞くことができ、次のス
どで、相談者の多くが 代男性です。
自立と尊厳の確保②生活困窮者支援
支援調整会議の開催前に就労により
テップへの展開が早まりました。
を通じた地域づくり︵チームアプロー
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[ 基調講演 ] の概要 モデル事業に参加した経験をもとに
︵※地域別内訳は、盛岡地域が189
県内の学習支援の実践からみえてきた
社、花巻地域が 社、北上地域が
支援の意義と課題
社、久慈地域が 社、二戸地域が 社︶
岩手県立大学社会福祉学部講師
を 開 拓 し て い ま す。 企 業 訪 問 で は
宮寺 良光 氏
貧困の連鎖を防止するために
私「たち企業は何をすればいいのです
ちは、学習支援事業になかなか参加
か との声が必ず 返ってきます。企
生活困窮者自立支援制度には、子
できなかったり、参加しても中途で
」
業との連携はその時から始まります。
どもたちへ学習援助を行う 学習支
止めてしまうケースもみられていま
「
す。就学支援相談員と連携を密にし
援事業 」が盛り込まれています。
就労準備支援事業の常設型訓練
は、﹁ 盛 岡 型 デ ュ ア ル シ ス テ ム ﹂ と
県内では平成 年度に岩手県立大
ながら、心身疾患の発見なども視野
名づけて行っています。同システム
学が盛岡広域振興局による学習支援
に入れ、適切な支援体制を構築する
モデル事業を受託し、滝沢市の生活
は地域の人材を訓練施設と企業が共
ことが必要です。さらに児童・生徒
保護受給世帯の中学生と矢巾町の準
に育てていく独自の訓練カリキュラ
と接するだけでは家庭内や学校での
ムです。
要保護世帯の中学生を対象に学習支
問題を把握することは困難なだけ
援を行いました。
に、就学支援相談員や家庭・学校と
職場定着支援については、就職が
決まり、本人と企業の希望があれば 年度は子どものエンパワメント
の連携が大切になります。
いわてが同事業を受託し、岩手町な
最長6か月の定着支援を行っていま
支援者側の大学生も含めて、学習
ど5町を対象に実施しています。な
す。また、訓練生が中心となって運
支援会場への交通手段の確保や児
営する 仮想企業内起業 も行って
お、県立大学は滝沢市から学習支援
童・生徒本人が近隣での開催を好ま
「
」
モデル事業を受託し、生活困窮に陥
います。この中で訓練生は、仕事の
しく思っていないことなども課題と
流れ、仕組み、同僚との関わりを知
る可能性のある世帯にも対象を広げ
されています。
り、自主性や責任感を育んでいます。
て実施しています。
親世代の生活困窮が子どもへ及ば
その作業内容は外注製品や企画製品 生活困窮 家庭の子どもたちは、自
ないようにするため、子どもは社会
の製造、農作業や販売です。
尊感情の低さ、他者との関係を形成す
が育てるという意識を共有し、教育
ることが困難、同居する親など親族に
と福祉を地域とつないでいくことが
よる影響が大きいことなどが指摘され
重要であると考えています。
ています。困窮のしわ寄せを防ぐため
にも学習支援の意義は大きく、継 続
的な支援によって▽自尊感情の回復・
発達▽感情表出や意思表示のしかたの
向上▽人間関係を形成する能力の向
上▽学習意欲の向上がさらなる自尊感
情を高めるなど、子どもの学力・意欲
の向上だけでなく、 子「どもの居場所 」
づくりの構築にもつながっています。
学習支援事業の課題
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しかし、生活困窮家庭の子どもた
<生活福祉>
就学支援
子ども
<児童福祉>
家庭支援
継続
22
26
10
10
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意識調査回答企業
計画 5段階リストアップ
職場見学
HW求人一覧から
依頼
現場実習
業種リストアップ
模擬面接
開拓
(毎週月曜日更新)
外注製品
職場実習受入事業所 245事業所
外注製品依頼事業所 事業所
(平成26年 月30日現在)
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企業に対する
調査 雇用意識調査
職場環境改善
第1号職場適応
援助者派遣
座学訓練見学 提案
持つ方々に対する就労支援を中心に
﹁就労移行支援事業﹂﹁就労継続支援
事 業 ﹂﹁ 社 会 参 加 推 進 事 業 ﹂ の3 つ
の事業に取組んでいます。
職業能力を高めるために▽体力健
康管理・日常生活管理
︵ライフスキル︶
▽対人技 能︵ソーシャルスキル︶▽
基本的労働習慣︵ビジネススキル1︶
▽職業 適性︵ビジネススキル2︶の
順で、各スキルを積み上げています。
就労準備支援のサイクルとしては
①相談︵面談︶②見立て︵アセスメ
ント︶
③計画
︵支援計画︶
④実施
︵訓練・
職場実習︶⑤評価・検証︵ケース会議︶
の5つのサイクルで行っています。
指導上の留意点としては▽目標のス
モールステップ化▽教材の具体化▽訓
練 速度の配慮▽訓練 内容の可視化▽
繰り返し▽フィードバックなどです。
指導のポイントは▽情緒的な優し
さよりクールな明瞭さ▽適度な言葉
かけ▽注意より指示▽訴えはひとつ
ひとつまじめに受け取ることです。
安全性の確保については▽日々の変
化を敏感に感じ取り、気を配ること
▽人目に付かない場所の危 険性に配
慮すること、などに留意しています。
大切な企業との連携
「 害者雇用の意識
企 業 開 拓 は、 障
調査回答企業︵121社︶ と
」 ニ「ー
ト雇用の意識調査回答企業︵102
社 ︶ 」の 中 か ら、 課 題 に 対 し て 意 識
の高い企業を5段階でリストアップ
して訪問しました。
平成 年度から平成 年度︵ 月
日時点︶までの5年間で、247社
31
企業との連携サイクル
助成金情報提供
研修会開催
会報誌発行(JAM便)
教育と福祉と地域をつなぐ
<学校>
スクールSW
<地域>
学習支援
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