PDFを見る - 富山県農林水産総合技術センター

平成27年3月号
発行 富山県農林水産総合技術センター
畜産研究所
〒939939-2622 富山市婦中町千里前山1
TEL 076076-469469-5921 FAX 076076-469469-5945
http://www.pref.toyama.jp/branches/1661/chikusan/
技 術 情 報
母豚の生産性向上技術への取り組み
~簡易測定器を利用した発情確認技術について~
1.はじめに
当研究所では現在、
「系統豚を利用した生産性向
上技術の検討」
(平成 26~28 年度)と題して、新
しく造成した大ヨークシャー種系統豚「タテヤマ
ヨークⅡ」を元に、交雑利用による雑種強勢効果
の検証と母豚の分娩回転率向上に向けた繁殖管理
技術の効率化に取り組んでいるところです。この
中で、母豚の深部膣内粘液の電気抵抗値を測定し、
その数値によって発情の状態を確認する調査を行
っています。今回はこの技術に関してこれまで得
られた結果の概要について紹介します。
2.母豚の分娩回転率の向上に向けて
養豚経営において収益を上げるためには、母豚
の空胎期間をできるだけ短期化し、分娩回転率を
向上させることが重要ですが、これには、離乳後
の発情再帰における交配適期の見極めが大きなポ
イントとなります。通常、離乳母豚の発情再帰確
認では、陰部の腫脹状態や粘液漏出の有無を目視
により毎日確認するとともに、腰部を押さえ背圧
反応を見ることで、雄豚に対する許容行動(スタ
ンディング)の有無を確認することにより交配適
期を見極めます。しかしこの時、陰部の観察から
発情状態にあることは確認できるものの、雄豚に
対する許容行動が弱いもしくは許容しないまま経
過する発情微弱な場合は、交配適期が見極められ
ずに発情期間が終わってしまい、次回の性周期ま
で非生産状態(空胎)となってしまいます。
一方、豚の深部膣内粘液の電気抵抗値と血漿中
の性ホルモン濃度の相関が高いことを利用し、簡
易に発情状態を確認できる電気抵抗測定器が近年
開発されています。これを利用することで、発情
微弱な母豚でも数値で交配適期を見極めることが
できるため、人工授精による対応や、次回性周期
に向けて性ホルモン剤処理を施すことで、非生産
状態を回避することが出来ます。
本課題では、当所で繋養している大ヨークシャ
ー種を始め、ランドレース種、デュロック種の母
豚について、離乳後の発情確認を目視による判断
と併せて、簡易測定器(ブリードテスタ PIT-1(チ
ヨダエレクトリック(株) 写真:下左))により測定
し、発情状態と測定値の関連性について比較調査
しました。
3.発情状態を数値で簡易に判断
調査はこれまでに、母豚 39 頭について離乳後毎
朝定時に行いました。目視による陰部観察と雄豚
との対面による許容状態を記録するとともに、測
定器による深部膣内粘液電気抵抗値(以下、VER
値)を測定しました。測定器はセンサー部分と母
豚の陰部をアルコール綿でよく清拭して、センサ
ーを陰部に深く挿入し測定します。作業的には、
エサを一掴み給与することで簡単に測定すること
ができ、人が近づいたり触れたりするだけで逃げ
るような母豚の場合は、ストールに収容してエサ
を与えることでほぼ支障なく測定することができ
ました(写真:下右)
。
この結果、陰部観察で発情状態と判断し、さら
に背圧反応や雄豚との接触により許容行動(初回)
を示した母豚は、39 頭中 36 頭が離乳後 3~7 日目
に集中しており、最も多く確認されたのは離乳後
5 日目(39 頭中 14 頭)でした(図 1)
。
一方、測定した VER 値の平均値の推移を見てみ
ると、離乳当日(0 日目)の 300 から経日ととも
に徐々に低下し、離乳後 4 日目には 217 と最低値
を示し、翌 5 日目からは上昇に転じ、8 日目辺り
に 340 程度まで上昇した後はほぼ横這いに推移す
る結果となりました(図 1)。VER 値の変動推移
は黄体ホルモンの動きと似ており、VER 値が最低
値を示した翌日から 2 日後が交配適期の目安とな
ります。このことは、本調査で平均 VER 値が最低
値となった翌日(離乳後 5 日目)に、初回許容行
動を示した母豚が最も多く確認できたことからも
推察できました。
4.おわりに
本調査で得られた結果から、離乳母豚の発情確
認作業において陰部の状態や行動の観察に加え、
深部膣内粘液電気抵抗測定器を併せて利用するこ
とで、交配適期をより的確に見極めることができ
ると考えられました。今後は、今回の調査をさら
に進めるとともに、妊娠診断技術についても種々
の測定器を利用した調査を行い、分娩回転率の向
上を目指した技術の確立に総体的に取り組む予定
です。その結果が出ましたら、また皆様にご報告
したいと思います。
(養豚課
前坪副主幹研究員)
450
400
VER値
350
300
250
200
150
100
0
7
14
・・・各個体の測定値
21
離乳後経過日数
・・・平均値
28
35
・・・初回雄豚許容(ST+)が確認できた日
図 1.離乳母豚における VER 値の経日推移
供給候補初妊牛のお知らせ 牛No.
211
213
名号
分娩時
血統
分娩予定日 月齢
交配♂
価格(円)※
(生年月日 3/1時月齢)
ドリームヒル B フローレット ドーベルマン
ボルトン
H27.5.22 24.8
黒毛和種
456,644
×ドーベルマン
(H25.4.29生 22.0ヶ月)
ドリームヒル エビデールB サード スーパー
ボルトン
H27.6.5
24.8
黒毛和種
456,644
×スーパー
(H25.5.12生 21.6ヶ月)
※H26 年度の価格になります。次年度価格は 4 月に決定します。
当研究所で生産しましたホルスタイン純粋種初妊牛の供給候補牛です。
牛群更新される際に、是非ご利用ください。
希望される方は、4月 15 日頃までに酪農肉牛課・沖村までご連絡下さい。
希望者多数の場合は抽選となりますのでご了承願います。
(供給予定は4月下旬を予定しています)