「臥牛が丘」の名で親しまれる角田城址に、角田高校の西校舎が新築完成し、1月中旬に 今野校長先生と舟山事務長さんにご案内いただき見学した。私は昭和44年卒、角田高校 第21回生である。今回の母校訪問は青春を謳歌した一時期を振り返るのに十分な時間を 与えてくれた。 桜並木の長い坂道を登り詰め校門を入ると、左手に檜と樅の大木が並んでいる。40年前 と変わらず葉はよく茂り、門番のように相変わらず校舎の前にどっかと居座っていた。「門 番たちは相変わらずいばっているね」と言うと、 「100年以上もの古木で幹の数か所に穴 があいているよ。門番の役割もそろそろ終わりかな」と角田高校同窓生で、間もなく定年 退職を迎える舟山さんが答えた。 私が入学した昭和41年は角田高校創立70周年の年で、鉄筋コンクリートの新校舎が建 築されて初めての入学生だった。そのこともあって、当時に戻ったかのようなうきうきし た気分で新校舎の玄関をくぐった。 1階から順に教室を見ながら3階までゆっくりと階段を進んだ。南側に普通教室、北側に 特別教室等が配置されている。教室の内装はぬくもりのある木質仕上げで、いい香りがす る。 旧校舎と違って北側にもガラス窓が多く景観がいい。枝もたわわな大木のしだれ桜が数十 本も並び、台山公園のロケットタワーも目前に迫って眺められる。南側には校歌に「南湖」 とうたわれた大沼の田園が広がり、西に校内マラソン大会最大の難所だった斗蔵山が見渡 せる。4月になって桜が満開になった時の雰囲気はどうなるのだろうかと想像してため息 をもらしていると、 「どうですかこのすばらしいロケーションは」と今野校長先生。私は「角 田高校生にだけ与えられた特権ですね。入学しないと損ですよ」と答えた。 この美しくのどかな光景が勉学にどう影響するのだろうか。 「美しい風景の中で人は豊かに 成長する」という言葉を聞いたことがあるが、後輩諸君にはその特権を生かし、勉学にい そしみ豊かな人間に育ってほしい。檜と樅と桜の木は明治30年の開学当初から幾多の学 生を励まし続けてきた応援団だ。質実剛健の校風を伝えてきた老練な門番たちの仕事はま だまだ続く。
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