22年度の屋久島高等学校のダイコン研究について

22年度の屋久島高等学校のダイコン研究について(報告)
屋久島高等学校 普通科 環境コース
真辺 亮太・ 山口 拓也 ・図師なつき
【研究1】環境ストレスによる赤大根の成長への影響について(真辺 亮太,山口 拓也)
□研究内容
赤いダイコンには,根部の内外全体が着色するもの,部分的に着色するもの,さらには葉柄までも
鮮やかな赤色に着色する品種がある。ダイコンの赤の色調はアントシアニン色素によるものであり,
アントシアニンの分布や蓄積の違いがこのような違いを生んでいると考えられている。本研究では,
品種間のアントシアニンの蓄積や分布の違いが,どのような要因で生まれているのかという点を疑問
に思い研究を行うことにした。今年度は入手することができた交配種 赤ダイコン「あかね」(清原育種
農場)を用いて,アントシアニンの分布調査(今回は発芽種子のみ)と,アントシアニンの分布に影
響を与えそうな条件下(生育培地に塩化ナトリウムを含む条件とスクロースを含む条件)での栽培を
おこなった。
□結果
①発芽種子におけるアントシアニンの分布
播種後 3 日の種子を用いて,「あかね」のアントシアニンの分布を調べると,子葉では表皮に多く蓄
積しており,下胚軸においては表皮組織と下胚軸の中央部(維管束組織)に多く蓄積していた。また,
根においては,中央部の維管束組織と根端分裂組織付近に多く蓄積していた。さらに,2週間後の発
芽種子の胚軸と根との境を観察すると,胚軸の表皮でのみアントシアニンが蓄積しており,根の表皮
では全くアントシアニンの蓄積が見られなかった。
②塩化ナトリウムとスクロースが発芽種子に与える影響
塩化ナトリウム入りの培地上に播種した種子は,塩化ナトリウム濃度が 100mmol/l までは正常に発
芽したが,300mmol/l を超えるとほとんど発芽しなかった。また,50mmol/l を超えると成長阻害がみ
られた。スクロース入りの培地上に播種した種子は,濃度が 150m mol/l まで正常に発芽したが,
350mmol/l を超えるとほとんど発芽しなかった。また,50m mol/l から成長阻害を受けることがわかっ
た。この結果から,成長を阻害する「塩」であっても成長を促進する「糖」であっても,高濃度になると
発芽や成長阻害を受けることが強く示唆された。
さらに,アントシアニンに関しては,スクロース濃度が高くなるほど下胚軸で多く蓄積されること
が確認でき,スクロース濃度とアントシアニンの蓄積量に関係があることが考えられた。
□現在進行中の研究と課題
①赤ダイコン「あかね」の成長個体のアントシアニンの分布
「あかね」の成長個体のどの部分にアントシアニンが分布しているか調べるために,露地にて育成
中である。育成には,害虫による食害などがあったが,現在はそれも克服できており,本葉が5枚程
度展開している状態である。
②赤ダイコンの固定種の育種とアントシアンニン分布の調査
「あかね」は交配種であるため,固定種の赤ダイコンを探し,種子の入手に取り組んでいる。
在,「あかね」の他に3種ほど検討中である。
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現
【研究2】屋久島産ハマダイコンの島内分布とその形質(図師 なつき)
□研究内容
ダイコンコンソーシアム参加の高校の中には,ハマダイコンを素材として取り上げ研究をすすめて
いるところがたくさんある。今回,各学校が育てているハマダイコンが屋久島で育つハマダイコンと
形質に違いがみられるのか疑問に思い研究に取り組むことにした。今年度は,ハマダイコンの島内分
布を調査し,さらに可能であれば種子の採取を行い,その種子を生育させ,形質を検証することにし
た。
□結果
①ハマダイコンの島内分布調査
屋久島の西部(田代海岸,
船行,春田浜)と南部(栗生)
の海岸でハマダイコンがある
ことを確認した。いずれも群
落をつくるまでにはなってお
らず,ある程度分散して分布
していた。また,北部,北西
部,西部も調査をしたが,こ
の地域には分布していなかっ
た。
田代海岸で発見したハマダ
イコン 10 個体,船行の海岸で
発見したもの 20 個体,春田浜
で発見した個体 15 個体,栗生
で発見した個体 3 個体にそれ
ぞれタグをつけ,現在,観察
している。開花時に,いくつかの形質についてその特徴を調査し,時期を見計らって,葉の採取と種
子の採取を行う予定である。
②安房(春田浜)産,栗生産ハマダイコンの育種
食害に遭うなどトラブルもあったが,現在,安房(春田浜)産を1個体,栗生産を14個体を栽培
している。現在花芽をつけており,まもなく開花する予定である。開花後,いくつかの形質の調査や
種子採取を行っていきたい。
□現在進行中の研究と課題
①形質の調査
安房産と栗生産のハマダイコンを観察していると,葉の形がわずかながら違うようである。開花時
に葉の形,色の違いなどを詳しく観察し,比較して見たい。また,葉以外にも花の形,色等のいくつ
かの要素をとり,違いを見比べたい。
②島の南部地区の分布調査
現在までに南部地区の調査ができていない。開花するまでの間に調査を行いたい。
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