加賀橋立伝建地区の公開拠点施設整備と回遊性の向上

地域課題研究ゼミナール支援事業
ランドスケープデザインによる、加賀橋立伝建地区の公開拠点施設整備と回遊性の向上
所属高等教育機関名・ゼミナール名
金沢美術工芸大学:鍔 隆弘 教授、介田彩香、石田みなみ、松尾郁美、仲津裕哉、吉田鈴、端宥輔
金沢工業大学:谷 明彦 教授、宮里宜雅、太田裕也、相原江美、今井諒、小林吉博、松園文雄、倉田
一平、松岡翔太
石川工業高等専門学校:道地 慶子 教授、田村奈巳、寺内鈴音、河野誠、北山勝哉、廣瀧あかり、明
庭久留美
活動の成果報告
北前船船主の伝統的建物が歴史的景観を見せる地区において、回遊性を充実させ来訪者にとっての魅
力を高めるよう、土蔵や屋敷跡地などの公開拠点施設と地区内の散策路の整備を中心に活動を進めた。
除草や植栽から土木的な造成など多様なスケールの整備や計画の策定を、3つの高等教育機関の研究室
がランドスケープデザインの視点に基づき、それぞれの専門分野を活かしながら地元の街並保存団体と
共に進めてきている。将来にわたって続けなければならない景観整備活動における地区住民の活動の、
自立の一助となったものと考える。
①地域活動の概要
4 年前から進めている木村家の庭の整備については、一昨年に植えた植物の成長を見守り、うまく育
たなかったものの代替案を検討した。また蔵を清掃し所蔵品を整理した。次の段階として、器や古書な
ど展示できるものは展示することを予定している。比較的広い西出家跡地については草を刈り、エディ
ブルガーデンの計画に基づき、園路と畑を整備、料理に使えるハーブ系の植物を 100 株植えた。眺望の
みちは、現状として飛び石が抜け、石階段が傾いていたので、現地に残っている石材を活用し、それぞ
れ笏谷石を新たに配置、傾きを補修、また景観的に重要なポイントに植樹を行った。
②地域活動の具体的な内容
3/17
場所:四高記念館
23 名
シャレット
・次年度に向けた活動の話し合い ・ロゴマークの修正箇所紹介
5/24
場所:加賀橋立地区
24 名
調査活動
・新メンバーを迎え、地区内の観察、確認のためのまち歩きを行った。
6/3
場所:四高記念館 28 名
シャレット
・年間活動計画の確認 ・木村家における蔵の活用方針 ・西出家跡地整備方針の検討
6/21
場所:東谷地区
19 名
調査活動
・加賀橋立地区で活用できる材料の検討
7/5
場所:金沢工業大学 22 名
打ち合わせ
・西出家除草の仕方や区画分けの方法についての検討
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7/12
場所:加賀橋立地区
20 名
整備活動
・西出家跡地の除草作業、防草シート設置 ・木村家の蔵の清掃・眺望のみちの景観調査
8/27 場所:金沢美術工芸大学 20 名
シャレット
・前期活動状況の振り返り・西出家跡地の今後の整備内容と作業について検討
9/15
場所:加賀橋立地区
24 名
整備活動、調査活動
・西出家跡地の除草作業、土壌耕作、畝作り、苗植え
・木村家蔵の備品鑑定、清掃、ライト設置場所調査 ・眺望のみちの敷石整備
10/19
場所:加賀橋立地区
28 名
整備活動
・西出家跡地の除草作業、畝の作成、園路の作成 ・木村家の蔵、清掃、所蔵品鑑定・仕分け
・眺望のみちの植樹、飛石設置
11/1
場所:加賀橋立地区
18 名
防災広場計画策定に関する説明会
・地区会館にて加賀市役所の方から防災防火広場設計計画の説明を受ける
・3 研究室混合で 2 チームを作りコンペ形式で実施に向けた案を練る。
11/15
場所:加賀橋立地区
23 名
西出家跡地整備
・西出家跡地にて畝作りを行う。
11/25
場所:金沢工業大学
20 名
打合せ
・防災広場案コンペのためのコンセプトの異なる 2 チームを編成。
1/27
場所:金沢学生のまち市民交流ホール
20 名
・加賀市の担当の方を交え、西出家跡地防災広場計画の案の中間発表。
・良い点、要望等のご指摘を頂く。
活動写真
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③地域活動の成果
土壌耕作や畝の作成、蔵の清掃、敷石の抜けたところに新たに笏谷石を配置するなど、高齢の方の
割合が約 30%を占める地域で、住民の方の力だけでは難しかった仕事を進めることができた。これに
より、景観も魅力的になり、具体的に作業が進んでいくことで住民の方の意識向上にもつながったも
のと考える。
西出家跡地については、加賀市役所により来年度に防災広場として設計されることになった。5 年
目に入った学生と住民によるこの共同活動による成果が認められたものと理解できる。整備の後は、
現在の廃屋を中心とした広がりから、利用しやすい公共緑地としての機能を有する空間になり、住民
の関わり具合が高くなることが予想される。周囲の道路沿いや庭園を中心とした整備活動の必要性も、
より強く認識されることが期待できる。
④来年度の地域活動計画
庭園整備と並行して、植物につけるネームタグのデザインも行っている。北前船をモチーフにして
制作しており、将来的には庭園だけでなくまち全体の植物につけて、昨年度に制作した「まちあるき
マップ」と供に橋立の新たな魅力発見のきっかけになればと考えている。現在、耐久性があり、かつ
学生が加工できる素材を使用したもののデザインを検討中である。
整備をすることで街を散策する際の楽しみのひとつとなる。これからの展望としては引き続き、西
出家、木村家、眺望のみちの整備を中心に行っていく。
また、2/28 日に住民の方を交え、西出家防災広場の提案の発表をコンペ形式で行うことを予定してお
り、以降実施設計に移っていく予定であるため、地元の方と観光の方の両方が集える広場が新たな魅
力の一つとして生まれる予定である。
⑤学生の感想
1度や2度の作業の成果は少しずつで、人数が集まらないと出来る作業に限りがあること、現地まで
距離があること、冬場は現地で作業ができないこともあり、作業をしに行ける回数に限りがありまし
た。ですが、着実に積み重ね、目に見えてわかるほどの成果をあげていくことができました。地道に
作業を積み重ねてきたことで、認知もされるようになり、本年度は防災計画のお話があり、学生も設
計案に携わらせて頂けることになりました。西出家跡地のガーデンに作業に行けない期間、住民の方
が草を苅って下さっていて、今までにない住民の方の意識の高まりを見ることができ、地域の方と一
緒に整備を進めていけることに喜びを感じ、地域に貢献することができたことを大変嬉しく思います。
⑥地域活動に対する地域からの評価
住民の方にアンケート調査を行い、以下の結果が得られた。
Q1.三研究室協働で橋立地区のまちづくりに取り組んでいますがどう評価しますか。
三研究室協働のまちづくりを行っている評価として、
「大変良い」が 38%、「良い」が 29%、「普通」が 9%、
「やや悪い」
、「悪い」が 0%、「知らない」24%という
結果になった。
住民の意見として以下の内容が挙げられている。
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【住民の意見】
「大変良いと思うが加賀市と地元の協力をお願いした
らどうか?」
「地域の発展に繋がり、大変良い」
「若い方達の意見や考えを元にまちづくりが出来て嬉
しい」
Q2.西出家・木村家の庭園整備活動を継続的に行っていま
すがどう評価しますか。
図 5-4 三研究室活動態勢の評価
三研究室で継続して木村家・西出家庭園の整備活動
の評価として、「大変良い」が 28%、「良い」が 24%、
「普通」が 19%、
「やや悪い」が 0%、
「悪い」が 5%、
「知
らない」24%という結果になった。
住民の意見として以下の内容が挙げられている。
【住民の意見】
「観光開発に繋がり、地域の振興になる。」
「木村家については良いと思います、西出家については
学生の方は頑張っていますが、整備資金が不足している
図 5-5 西出家・木村家整備の評価
と思います。資金調達を考えたらどうでしょうか?」
「せ
っかく草刈りや竹伐りをしても綺麗にならない。」
Q3.新しく橋立の魅力として眺望の道や忠谷家庭園を活用するために活動行って参りましたがどう評
価しますか?
三研究室で新しく取組んでいる活動の評価として、
「大変良い」が 28%、
「良い」が 29%、
「普通」が 24%、
「やや悪い」、「悪い」が 0%、「知らない」19%という
結果になった。
住民の意見として以下の内容が挙げられている。
【住民の意見】
「一緒に住民とやってみてはどうか?」
「調査結果など住民の皆様にも報告をお願いします。」
図 5-6 新しい提案の評価
活動のことを知らないとの結果が得られたことは、今後において、更に周知できるよう広報していく
必要があると感じた。
本年度は西出家のガーデンの土壌耕作を行い、ハーブ系の植物を 100 株植え、住民の方がお世話をし
やすい環境の土台を作るところまでは出来たので、これからは住民の方にも一緒にお世話をして頂き、
地域のコミュニティの場につながっていけばと思う。
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