本瓦に漆喰・ナマコ壁が美しい倉敷 ∼岡山県倉敷市∼

街歩きその20
本瓦に漆喰・ナマコ壁が美しい倉敷 ∼岡山県倉敷市∼
日本色彩学会秋の全国大会の初実行委員会が会場となる倉敷で行わ
れることになった。お陰で、何十年ぶりかで倉敷を訪れる機会を得た。
倉敷は大原美術館に代表される美術の街、天領として栄えた当時の
面影を残す倉敷川沿いの白壁とナマコ壁の建物に代表される美観地区
(国の重要伝統的建造物群指定地区)、そしてアイビースクエアを構成
する倉敷紡績の産業遺産の街という顔を持つ。
阿智神社の石段から見下ろすと本瓦葺きの町屋が連なる。火災から
守るため、屋根には本瓦を葺き、壁は漆喰にナマコ壁を用いた蔵が立
ち並ぶ。機能性と意匠が融合した独特の景観を作っている。
世界的な照明デザイナー、石井幹子さんがプロデュースした(けば
けばしいライトアップとは一線を画した)景観照明が倉敷市と周辺住
民の協力で始まり定着するなど、古い町並みに新しい付加価値を加え
る取り組みもされ、夜はまた違った雰囲気を醸し出している。
観光客で賑わう倉敷川沿いから道一本外れた本町通り、東町通りに
は文字通り古き良き時代の佇まいがそのまま残る。「ひさやい」と呼
ばれる狭い路地には、荷車の轍(わだち)がつかないように 2 筋の石
畳が敷かれていたりする。そうした古い建物とファッションの街児島
に代表されるモダンな商品を陳列する店や飲食店が嫌みなく調和して
いるのもこの町の魅力かもしれない。ひさやいの奥に米蔵を利用して
作られた喫茶店「夢空間はしまや」、かりんとう屋「道満」・・・立ち寄
る先々で会話が弾む。こうした景観を育む人々の心根が伝わってくる。