2015/8/30 古典的脳性麻痺の三病型 最近の脳性麻痺像 Classic PVL-diplegia • 下肢(股・膝・足)に分離運動の制 限がある。このうち、膝の分離伸 展の制限が見出しやすい。 聖隷三方原病院 小児神経科 聖隷おおぞら療育センター • 下肢荷重時、股屈曲内転・膝屈曲 になりやすい(crouching)。ただし、 少数例に反張膝はあり。 横地健治 • 上肢は前腕回外に制限がある。 • 知的障害はないか軽度であり、視 覚認知に制限がある。 (2015.8.29. 名古屋) • 親しみやすい性格であり、自閉性 とは対極にある。 Athetosis Hemiplegia • • • • 成熟児HIE 視床(VL核)・被殻病変 知的機能は比較的良好 上下肢と口腔の異常運動 ▪ ▪ ▪ ▪ 成熟児核黄疸 淡蒼球病変 知的機能は比較的良好 上下肢と口腔の異常運動 周生期中大脳動脈梗塞 側脳室周囲静脈梗塞 • 知的機能は良好 • 歩行可能 • 上肢機能が問題となる *鏡像運動 • 患側肢の骨成長抑制 近年激減 近年激減 「柿に猫」 菱田春草 「黒き猫」 菱田春草 修正3y1m 左単麻痺に近い 痙性両麻痺 • 31w, 1500g • 31w, 1500g • 1y6m 始歩 • 1y6m 始歩 • MRIなし 左下肢が悪い 下肢共同運動 • 股伸展・内転・内旋 • 膝伸展 • 足底屈 左下肢 • 股屈曲・外転・外旋 • 膝屈曲 • 足背屈 •膝屈曲のまま股屈曲し固定 (股屈曲分離) •股屈曲固定し、膝伸展 膝分離伸展 Leg lift 下肢に著明な左右差あり • 左足底屈目立ち、股膝も屈曲優位 • 右にも股膝の伸展の制限あり( ) 右下肢 修正3ヵ月 痙性の筋トーヌスはない Yokochi K, et al: Leg movements in the supine position of infants with spastic diplegia. Dev Med Child Neurol 1991;33:903-7. • 1983年(昭和58年)生 Leg liftの欠如→痙性両麻痺 修正3y2m 割座(W-sitting) • 股内旋 • 足背屈 • 30w 1415g, 双胎1子 (屈曲共同運動) うさぎ跳び(bunny hopping) • 定頚 3m(修正),寝返り 6m, 肘這い 1y4m,座位 2y6m, うさぎ跳び 2y10m, つたい歩き 3y3m (5歳まで) • 股分離荷重障害 立位時足底屈 修正0y8m • 知的障害 軽度、 親しみやすい 下肢共同運動 (synergic kicking) 伸展位が優勢 1 2015/8/30 36w 39w Active sleep の gross movements 運動プログラムの欠如により PVLのupper motor neuron syndromeを診断する term preterm~writhing general movements (Prechtlの分類) 6m 1y0m 伸張反射の亢進 (痙性の筋トーヌス) Leg liftがあれば痙性両麻痺にならない Leg lift Yokochi K, et al: Behavioral state distribution throughout 24-h video recordings in preterm infants at term with good prognosis. Early Hum Dev 1989;19:183-90. 2ヵ月 正常成熟児 Leg lift の新生児期・乳児早期の変遷 Leg lift の正常出現率 100% 80% •肩が床にべたっと着く(頚運動で も動かず) •肩・肘、股・膝・足の分離運動の 存在 •全身ぴくっと動く運動、関節のtoand-fro分離運動の存在 fidgety movements *infantile chorea 60% 40% 20% 0% 早産 38週 予定日 1ヵ月 2ヵ月 満期 満期 満期 早産 2ヵ月 3ヵ月 満期 • 原始的神経機構による leg lift は、受胎後40週あたりで出なくなる • 3ヵ月あたりで、成熟した神経機能によるleg lift に置き換わる • 早産児ではleg liftの再出現は早い 満期産児より早熟か Kouwaki M, et al: Spontaneous movements in the supine position of healthy term infants and preterm infants with or without periventricular leukomalacia. Brain Dev. 2013 ;35:340-8. 38wの自発運動 PVL 修正2ヵ月 PVL •肩・肘、股・膝・足の分離運動の欠如 •全身ぴくっと動く運動、関節のto-and-fro分離運動 (fidgety movements)の欠如 •肩ぶん回し、手を床に打ちつける運動の存在 •下肢伸展し、極度の足の内がえし運動の存在 32w 2127g 32w 2127g 2 2015/8/30 PVLの leg lift 出現率 PVL 対照 対照 PVL 100% Leg lift の出現率 80% 60% 40% 20% Leg lift の正常出現率 100% 0% 早産 38週 PV L 38週 早産 2ヵ月 PV L 2ヵ月 80% 60% 40% 20% PVLでは 修正2ヵ月で leg lift を失う 0% 早産 38週 予定日 1ヵ月 2ヵ月 満期 満期 満期 早産 2ヵ月 3ヵ月 満期 修正2ヵ月早 産PVL児 修正2ヵ月早産 知的障害児 ○ × × × ○ ATNR 頚伸展 驚愕反応 頚の分離回旋 体幹屈曲 体幹側屈 体幹回旋 側臥位保持 指吸い 回旋優位の肩運動 上肢の下後方への投げ出し 肩の分離外転 肩外転位保持 肩外転の振戦 腕の前方正中への動き 肩の分離内旋 肘の分離屈曲 肘屈曲の振戦 手拳優位 股の分離内転 股内転位保持 股内転の振戦 膝の分離伸展 (leg lift) 足の分離運動 下肢キック時の足の強度底屈と内がえし 修正2ヵ月の早産児 背臥位自発運動 ○ ○ ○ ○ ○ × × × × × × × × × × × ○ × × × × × ○ 回旋優位の肩運動 上肢の下後方への投げ出し 下肢キック時の足の強 度底屈と内がえし 肩外転位保持 側臥位保持 分離運動 未熟運動 股内転位保持 病的運動 Kouwaki M, et al: Spontaneous movements in the supine position of healthy term infants and preterm infants with or without periventricular leukomalacia. Brain Dev. 2013 ;35:340-8. Kouwaki M, et al: Spontaneous movements in the supine position of preterm infants with intellectual disability. Brain Dev 2014;36:572-7. 満 期 Developmental change of central motor system 2m 成熟大脳性運動機構(基底核・視床・成熟小脳) 原始 原始 脊髄性 → 脳幹小脳性 運動機構 運動機構 原始脳幹小脳性運動機構 満期で髄鞘化 • 小脳片葉(旧小脳) • 上小脳脚(歯状核→赤核) • 中心被蓋路(赤核→下オリーブ核) 中心被蓋路 central tegmental tract Guillain-Mollaret三角 →口蓋ミオクローヌス これだけの症候しかとらないのか? Benedict症候群 *歯状核の髄鞘化は未完 対側の振戦様不随意運動 皮質脊髄路に機能を 譲り消退するもの 赤核(red nucleus) 大脳性運動機構を補佐 するものに変容する Leg lift + - + General movements Preterm Writhing Fidgety PTR + Palmar grasp + + + + ー (Cahill-Rowley K, 2014) Rubrospinal tract の存在 PVLの症候 2m 成熟大脳性運動機構(基底核・視床・成熟小脳) Pretermに 大脳病変の発生 成熟大脳障害 原始 脳幹小脳性 運動機構 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 大脳性運動機構を補佐するものに変容 Leg lift 無症候 の出現なし 伸張反射の亢進 (痙性) • 原始脳幹小脳性運動機構から成熟大脳性運動機構への置換の進展とともに、成熟大脳性運 動機構の巣症状が出現し始める • 病変部以外では成熟大脳性運動機構への置換は完成し、後天性大脳病変と同等の巣症状を 呈する 赤核の種の違い (Hicks TP, 2012) Total asphyxia例の 中脳T2像 胎生期脊髄障害の症候 症例:6ヵ月、男児 主訴:発達遅延、低汗 妊娠分娩歴: 在胎30週頃より、胎位は頚後屈、上肢伸展、骨盤位。出生前には胎動も低下してい た。 在胎36週5日、子宮口7cm開大後、臍帯下垂あり産院にて緊急帝王切開。3091gで 出生。 Apgar score 4/7。陥没呼吸を認め、生後30分で気管内挿管後、聖隷浜松病院NICU 入院。人工呼吸管理施行された。 出生時より胸郭低形成、側彎、前彎、第12肋骨欠損を認めた。 初診時現症: 下肢自発運動はごくわずかにあるのみ。PTR減弱、ATR減弱。 2歳時所見 下肢自発運動認めず。 PTR減弱、ATR減弱。Babinski徴候陽性。足間代クローヌス 右>左。 3 2015/8/30 腰髄部は正 6m 1y8m C7-Th1 椎体部で断裂 弱い筋 • 手屈曲 C6~Th1 • 肘伸展 C6~C8 • 指MP伸展 C7~C8 C8-Th2 髄節障害 7y Fetal spinal injury Healthy Mature motor system Primitive motor system - + Spinal stretch-reflex circuit × 生後2か月で消失 • 39w 2645g • 新生児期肺出血 • 痙性四肢麻痺 • 最重度精神遅滞 • 追視なし - × × + × Spinal stretch-reflex circuit 重度周生期脳障害児で生後2ヵ月までみられる追視 Mature motor system Primitive motor system Corticospinal tract Rubrospinal tract 2ヵ月の節目 Spinal stretch-reflex circuit Spinal stretch-reflex circuit DTR消失 胎生期脊髄障害の下肢腱反射消失機序(仮説) 成熟脳の視覚経路 背側系 (頭頂葉) • Posterior parietal complex • 空間立体覚や視運動覚の処理 • 行動のための知覚 (perception for action) Paroxysmal ocular downward deviation (Yokochi) はPVL児で修正2ヵ月では出現する 2ヵ月の節目 “where” または“who” 腹側系 (側頭葉) • Inferior temporal complex • 物の形・色・質などの形態覚の処理 • 認識のための知覚 (perception for recognition) “what”または“how” Paroxysmal ocular downward deviation (Yokochi) 眼瞼下垂を伴う眼球下転が突発的におこる 早産PVL児、満期産CP児にみられ、乳幼児期に自然消退することが多い 中枢性視覚障害を伴う delayed visual maturation~大脳盲 網膜視蓋系 reticulotectal system (non-striate pathway) • 発生的に古く、“where”のシステム • 生後数ヵ月の視覚行動をコントロール • 外側膝状体系 geniculostriate systemに切り替わったら、 一般には旧システムは機能しなくなる Atkinson J. The Developing Visual Brain.2000 PVLのpuvinar病変 三角部近傍白質病変の二次的変化か Pulvinarと上丘(SC)は機能的連絡あり 32w 2127g 4 2015/8/30 Hydrancephaly児は2ヵ月で飲めなくなった 2ヵ月の節目 早産失調 水頭症(シャント後) 原始脳幹小脳性失調 (原始型失調) 原始的脳幹小脳神経機能は異常がない 「不熟の天才」 「菊慈童」 • 25w3d,422g H26.12 浜名湖セミナー発表症例 • 声門下狭窄のため気管切開 • 発達歴(修正年齢):定頚 0y9m, 寝返り 0y8m, 肘這い 1y2m, つかまり立ち 1y11m, 四つ這い 2y0m, つたい歩き 2y1m • 中等度知的障害 菱田春草 修正1y0m • 小脳虫部萎縮 • びまん性白質萎縮 (脳室拡大) 股屈曲外転過剰 膝分離運動良好 1y4m バタバタとした力の入った速い 繰り返し運動 股外転外旋屈曲位・膝屈曲位での 足持ちは、失調性運動障害の徴候 修正1y8m 股過外転の座位 修正2y8m 膝は多様 股内転伸展荷重制限 体幹側屈を伴う 手で床を打ち付ける肩運動あり 過剰な足の内がえし 過剰な股外転 の支え立位 肩を支点とした回旋はいはい 4歳健常児 股過外転・膝伸展 横座り(一側下肢) 腰掛け動作不能 一側膝屈曲位で、足荷重し股膝 伸展することができない 5 2015/8/30 超早産失調のはいはい 股過剰屈曲で、後方に転倒しそうになりながら、 足を投げ出す 24w,532g c3y11m 25w,715g C2y11m 股外転屈曲過度 修正2y8m 動作時の揺れ dystonic tremor様 四つ這いと高這いの股伸展の違い 高這いの方が、股伸展荷重負荷が少ない 原始脳幹小脳性失調(原始型失調) 超早産児の失調型運動障害 -原始脳幹小脳性失調(原始型失調)- Pretermに 脳幹小脳病変の発生 (大脳病変はないか軽症) 股伸展荷重障害が本体であろう。 ・精神運動発達遅滞 *Prader-Willi症候群、Down症候群 ・小脳低形成 ・早産 早産失調の症候 背臥位で、股外転外旋膝屈曲位の足持ちは特徴的である。 2m 成熟大脳性運動機構 (基底核・視床・成熟小脳) 原始 脳幹小脳性 運動機構 座位は股外転位が過剰であり、膝の肢位は多様である。過剰な足内 がえし位をとりうる。 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 大脳性運動機構を補佐するものに変容 腹臥位移動では股荷重に制限がある 股伸展障害 無動~股伸展障害 • 四つ這いでは、股外転屈曲優位である。 • 肩荷重にも制限があり、過剰な手の打ちつけあり。 ↑ 未完 • まず、原始的脳幹小脳運動機構障害の症候が出現する。 • 原始的脳幹小脳運動機構から成熟大脳性運動機構への置換は、たいていは、ほぼ完遂される。ただし、原始脳幹 小脳性運動機構障害が重症ならば、大脳性運動機構の成熟は完遂されない。 支え立位では、股伸展内転位の制限があり、股外転屈曲位となる。 • 原始脳幹小脳運動機構障害の症候を成熟大脳性運動機構が補完しきれず、その運動症候が残る。 • つまり、原始脳幹小脳運動機構障害が成熟大脳性運動機構を補佐するものへの変容は未完となる。 • 知的障害の合併は、後に発現する大脳性知的機構の障害だけでなく、原始的脳幹小脳運動機構障害をきたす病変 が関与しているかもしれない。 無症候の小脳出血 MR描出病変の意義 原始脳幹 原始小脳 × ×? +MRI不描出病変? 原始脳幹小脳性失調 (原始型失調) 成熟小脳 × 成熟大脳 大脳白質低形成 虫部低形成 (MRI描出) 極小症候~無症候(運動) 22d 1y4m • • • • 39w 3410g 右小脳出血 水頭症(停止性) 座位 7m, 肘這い 6m, よつ ばい 9m, つかまり立ち 7m, つたい歩き 8m, 歩行 11m • 言語理解・発語は良好 (1y4m現在で) • minor lt hemiplegia ? →左 が利き手? 原始脳幹 Morita T et al. Low-grade intraventricular hemorrhage disrupts cerebellar white matter in preterm infants: evidence from diffusion tensor imaging. Neuroradiology. 2015;57:507-14. 早産IVH例では上小脳脚のFAが低値 7d 正常 原始小脳 成熟小脳 × 小脳半球萎縮 (MRI描出) 無症候(運動) 原始脳幹小脳性運動機構は無傷 成熟大脳性運動機構に属する小脳病変は完全に機能は代償される 可塑性 6 2015/8/30 開脚すり足歩行→歩行障害なし 37w,2795g,胎内感染(CMV?)の疑 原始脳幹 原始小脳 × × × 脳幹・小脳半球低形成(MRI描出) 定頸 7m, 寝返り 4m, 四つばい 1y5m, 座位 1y5m, 伝い歩き 1y11m,独歩 3y8m Classic PVL diplegia に合致しないPVL diplegia 成熟小脳 原始脳幹小脳性失調・大脳痙性両麻痺or原始失調性両麻痺 極軽症原始脳幹小脳性失調 無症候(運動) (原始型失調) 中等度精神遅滞 2y5m 14歳 c1y10m 症例3 c11m つかまり立ちでは、 股過屈曲・足底屈 が目立つ • 無動が目立つ(頚は動く) • 股外転外旋屈曲位・膝屈 曲位が主である c4y10m 在胎 出生体重 座位 つたい歩き 独歩 症例1 27週 1058g 3y5m 未 未 中等度知的障害 症例2 29週 1870g 未 未 未 最重度知的障害 症例3 31週 1802g 2y3m 未 未 臀部沈み込み割座 最重度知的障害 症例2 症例1 c3y9m H26.12 浜名湖セミナー 発表症例 症例3 Classic PVL diplegia に合致しない3例のまとめ -原始脳幹小脳性失調・大脳痙性両麻痺or原始失調性両麻痺PVLとしては中等度白質萎縮あり。MRIでは有意な小脳異常を認めない。 乳児期~1歳代では、体幹・下肢の寡動がみられる。 膝の分離伸展はみられない。 股過外転・膝屈曲座位 合蹠ポーズ座位 股運動は、屈曲外転優位(伸展内転制限)である。股伸展時は、股内転位 にはならず、内旋もおこらない。 c6y4m 股膝伸展時には、過剰な足底屈がみられる。 乳児期の上肢運動は肩回旋運動が主体である。 My hypothesis 弱い股伸展 ↓ 股伸展努力 のoverflow ↓ 強い足底屈 •股過屈曲座位で安定 (V字バランス) •股膝分離運動は良好 座位(介助)でも、過剰な股外転・膝屈曲(合蹠ポーズ座位)がみられる。 • 股屈曲が軽減 • 支え立位時の足底屈 軽減 原始脳幹小脳性失調・大脳痙性両麻痺or原始失調性両麻痺の症候 *足底屈型 原始小脳脳幹運動機構障害に軽度なupper motor neuron syndrome (不 適切なcocontractionと分離運動障害(膝))が合併したものと解す。 原始脳幹小脳性失調・大脳痙性両麻痺or原始失調性両麻痺 原始脳幹 2m Pretermに 大脳病変の発生 脳幹小脳病変の発生 成熟大脳障害 成熟大脳性運動機構 × 原始小脳 and/or 成熟小脳 × 成熟大脳 PVL MRI不描出病変 (基底核・視床・成熟小脳) 原始 脳幹小脳性 運動機構 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 大脳性運動機構を補佐するものに変容 無動~股伸展障害+分離運動障害 股伸展障害+分離運動障害 原始脳幹小脳性失調 (原始型失調) + 分離運動障害・足底屈 (不全型痙性) ↑ 未完 • まず、原始的脳幹小脳運動機構障害の症候が出現し、遅れて成熟大脳性運動障害が加わる。 • 原始的脳幹小脳運動機構から成熟大脳性運動機構への置換は、大脳病巣部を除いて、ほぼ完遂される。ただし、 原始脳幹小脳性運動機構障害が重症ならば、大脳性運動機構の成熟は完遂されない。 • 残存した原始的脳幹小脳運動機構障害の症候と成熟大脳性運動機構の巣症状が複合する。足底屈優位→尖足 は両者の協同であろう。 • 自閉症を伴う知的障害は、後に発現する大脳性知的機構の障害だけでなく、原始的脳幹小脳運動機構障害をきた す病変が関与しているかもしれない。 7 2015/8/30 足底屈優位型原始脳幹小脳失調大脳痙性両麻痺 or 足底屈型原始失調性両麻痺 足底屈優位型原始脳幹小脳失調大脳痙性両麻痺 or 足底屈型原始失調性両麻痺 21歳 H25.12浜名湖セミナーで「小脳性尖足歩行」として報告した症例 H25.12浜名湖セミナーで「小脳性尖足歩行」として報告した症例 • 33w,2206g,脳室内出血,出血後水頭症 (VPシャント) c2y8m • 27w,760g,Wilson-Mikity症候群 • 定頸 5m(修正) ,寝返り 11m,座位 2y2m,四つ 這い 2y3m, 伝い歩き 3y2m, 独歩 3y11m • 定頸 5m(修正),寝返り 4m,座位 1y3m,四 つ這い 1y5m, 伝い歩き 1y10m, 独歩 3y1m • 最重度知的障害+自閉症 背臥位で、股屈曲外転をとる(足を手で掴む) 腋窩支え時、股屈曲が優勢で、下肢荷重せず 腹臥位で、膝荷重わずか。体幹・股過伸展となり、下肢全体の空中保持あり • 最重度知的障害+折れ線型自閉症 7y •足底屈で前足荷重 歩行 •背屈制限あり(尖足) •股膝分離は軽度制 限あり •沈み込み座位 •足背屈前足荷重座位 •股膝伸展荷重は不十分 小脳障害(小脳半球>虫部) 大脳白質低形成(軽度) 橋低形成 c7m PVL 出血後水頭症なら小脳障害は必至か 足底屈優位型原始脳幹小脳失調大脳痙性両麻痺 or 足底屈型原始失調性両麻痺 1.足底屈が幼児期に進行する。そして、尖足となる。これにより、歩行は 悪化しない。 2.安静時も底屈位をとり、股膝屈曲しても変わらない。 3.股伸展荷重制限あり。足底屈は弱い股伸展を増強されるためのsynergy と解す。 4.股膝分離運動の制限は軽度である(背臥位、股外転内旋で足持ちあ り)。定型的痙性両麻痺のcrouching postureはとらない。 5.自閉・知的障害を伴う。 6.脳室内出血(水頭症となる)早産児に多い。脳形成異常例にもみられる。 7.小脳異常、大脳白質異常がみられることがあるが、必発ではない。 •足底屈で前足荷重歩行 •背屈制限あり(尖足) •股膝分離は軽度制限 ( MRI上脳幹小脳障害は認めず) 足底屈優位型原始脳幹小脳失調大脳痙性両麻痺 or 足底屈型原始失調型両麻痺 の症候 2m Pretermに 大脳病変の発生 脳幹小脳病変の発生 成熟大脳障害 成熟大脳性運動機構 (基底核・視床・成熟小脳) 原始 脳幹小脳性 運動機構 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 大脳性運動機構を補佐するものに変容 無動~股伸展障害+分離運動障害 ↑ 未完 股伸展障害+分離運動障害 • まず、原始的脳幹小脳運動機構障害の症候が出現し、遅れて成熟大脳性運動障害が加わる。 • 原始的脳幹小脳運動機構から成熟大脳性運動機構への置換は、大脳病巣部を除いて、ほぼ完遂される。ただし、原始脳幹小 脳性運動機構障害が重症ならば、大脳性運動機構の成熟は完遂されない。 • 残存した原始的脳幹小脳運動機構障害の症候と成熟大脳性運動機構の巣症状が複合する。足底屈優位→尖足は両者の協同 であろう。大脳性運動機構の成熟の不完遂度が強ければ、成熟大脳性運動機構の巣症状がみられないこともある。 • 自閉症を伴う知的障害は、後に発現する大脳性知的機構の障害だけでなく、原始的脳幹小脳運動機構障害をきたす病変が関 与しているかもしれない。 足底屈優位型原始脳幹小脳失調大脳痙性両麻痺 or 足底屈型原始失調性両麻痺 Down症候群のPVLは無症候 Down症候群に脳性麻痺はいない(浅田美江先生) Wilson-Mikity症候群 原始脳幹 原始小脳 × × 橋低形成(MRI) 成熟小脳 × 成熟大脳 白質低形成 原始脳幹 × 原始小脳 and/or × × 成熟大脳 PVL (左半球優位) 小脳萎縮(MRI) × 原始脳幹小脳性運動機構障害 → 大脳性運動機構の成熟 → 大脳性巣症状の出現 × 足底屈(不全型痙性+原始性失調) 成熟小脳 成熟小脳 × 原始脳幹小脳性失調(原始型失調) ほぼ無症候(ただし左利き様) 小脳半球萎縮(MRI) 原始脳幹小脳性失調(原始型失調) + 原始小脳 × 橋低形成(MRI) c2y6m IVH-水頭症 原始脳幹 • 胎生期 乳び胸, 胎児仮死で帝切, 31w5d, 2462g, Apgar 0/6 • 定頚 9m(修正), 寝返り 3m, 座位 1y7m, 肘這い2y1m, 四つ 這い 2y3m, つかまり立ち 2y3m, つたい歩き 2y8m (3y2mで 未歩行) 成熟大脳 PVL MRI不描出病変 原始脳幹小脳性失調(原始型失調) + 足底屈(不全型痙性+原始性失調) 8 2015/8/30 原始脳幹小脳性不随意運動・常同運動 27w 998g 5y 超早産小脳障害例に見られる身震い(不随意運動~常同運動?) 先天性・周生期脳障害の寡動・脱力 Total asphyxia 吉永治美,他:早産児にみられる小脳障害に伴う特異な不随 意運動に関する検討.脳と発達 44(3): 239-243, 2012. 18d • 在胎23~27wの小脳障害例にみられる • 修正3~5mから出現 • 乳児期後期消失~6歳で残存 39w,2550g,生後16hに心肺停止で発見される Sugiura H, et al; Magnetic resonance imaging in neonates with total asphyxia. Brain Dev 2013;35:53-60. 原始脳幹小脳性無動と不随意運動 Total asphyxia型無動の症候 橋小脳低形成例に見られる無動(寡動)とmyoclonus *重症橋小脳低形成pontocerebellar hypoplasia Jinnou H, et al; Pontocerebellar hypoplasia type 3 with tetralogy of Fallot. Brain Dev. 2012;34:392-5. CASK mutation 3y 2m 成熟大脳障害 軽症大脳病変の発生 重症脳幹小脳病変の発生 成熟大脳性運動機構 (基底核・視床・成熟小脳) 原始 脳幹小脳性 運動機構 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 大脳性運動機構を補佐するものに変容 ↑ 高度障害 無動 • 原始的脳幹小脳運動機構障害の重篤な症候(無動)が出現す。 • その重篤な障害のため、原始的脳幹小脳運動機構から成熟大脳性運動機構への置換は、ほとんど行われない。 日齢 24 視床・被殻型低酸 素性虚血性脳障害 軽症 脳性麻痺 アテト-ゼ VL(a): Ventral lateral nucleus (anterior) 2y0m • VL(p): 股伸展荷重制限あり 頚伸展固定位あり • Ventral lateral nucleus (posterior) VPL: Ventral posterolateral nucleus 7歳 非対称座位 •肩水平内転制限(体幹 歩行時、腕振り 回旋の代償) なし •対側上肢の連合運動 (肩後方固定) •流涎 35週 胎盤早期剥離あり 緊急帝王切開で出生 2238g Apgar 0/1 脳低温療法施行 定頚 4M,寝返り 6M,座位 8M,ハイハイ 9M,伝い歩き 1Y2M,独歩 1Y4M 学業 中、発語 緩徐、手動作 軽度拙劣、運動 並、いじめ受ける 不随意開口 MRI病変部位 視床(VL核とVPL核・他)• 小脳型失調と後索型失調の合併 • 錐体外路性障害(dystonia) 被殻 • 錐体路性障害 大脳運動野 (内包後脚の髄鞘化欠如のMR所見から類推) 10歳 9 2015/8/30 成熟児HIEのBGT病変のみの症候 termに BGT病変の発生 2m 持続的筋収縮状態(いわゆる“筋緊張亢進”) 成熟大脳性運動機構 (基底核・視床・成熟小脳) 成熟大脳障害 37w,2737g,Asphyxia Persistent Generalized Muscle Contraction 発達期の粗大脳病変でおこる極型のmuscle overactivity 一次性dystoniaのstatus dystonicus (dystonic storm)に近似 Spasticityの関与はわずかであろう 原始 脳幹小脳性 運動機構 診断基準 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 以下の1)と2)を満たすものとする 大脳性運動機構を補佐するものに変容 1)覚醒時の大半、力が入ってつっぱった状態を続けている。ただし、その体位は問わない。 *多くは反り返った体位をとっているが、そうではない場合もある。 無症候 成熟児HIEのBGT病変(+大脳病変)と脳幹病変合併の症候 Pretermに 大脳病変の発生 脳幹小脳病変の発生 2m 成熟大脳障害 成熟大脳性運動機構 (基底核・視床・成熟小脳) 原始 脳幹小脳性 運動機構 以下のいずれかひとつがあることによって、1)をみたすとする。 a. CK(CPK)高値(300IU/L以上)が証明されている。 b. 介助者による特有な姿勢保持(頸部屈曲・股屈曲位など)や精神的緊張を鎮めるための働き かけにより、一時的に症状が緩和することがある。 c. 催眠作用のある頓用薬(トリクロリールなど) の昼間使用により、一時的に症状が緩和するこ とがある。 d. 以下の両者がある。 原始脳幹 原始小脳 × i) 多汗、筋活動が常時あることにより、やせがある。 × 成熟小脳 × 成熟大脳 × 視床 基底核 大脳 病変 ii) この状態のため、不眠がある。 皮質脊髄路に機能を譲り消退するもの 大脳性運動機構を補佐するものに変容 ↑ 未完 2)ほぼ常時、不機嫌な状態である。 *介助者が、抱いて、特有な姿勢保持をしたとき以外に、笑顔を見せることはないような状態である。 原始脳幹小脳性 運動障害 持続的筋収縮状態 胎児血流 境界域梗塞 Borderzone infarction 成熟児仮死が主原因 仮死のタイプは“partial asphyxia” その他、早産児慢性肺疾患、低血糖、心疾患(心手術を含む)も原因となる 病巣はMCA-PCA and/or MCA-ACA境界域梗塞と皮質下梗塞(subcortical leukomalacia)の合併 知能障害とある種の平衡機能障害(頭頂葉性失調)が主症候 • 38週,2550g,Asphyxia • 定頚4m, 寝返り8m, 肘這 い10m, 座位1y10m, 四 つ這い1y9m, つたい歩き 1y11m, 独歩 2y11m • 軽度知的障害 • 左大脳半球は右半球 に比し脆弱 • 左半球優位:言語 • 右半球優位: 注意 情動 空間認識 + • 不全型痙性 • 共収縮 • 不随意運動 × 境界域梗塞の主病変部は頭頂葉 →頭頂葉性失調 左半球病変優位が多い(例外あり) 0y11m 7y8m • 股内転・屈曲句曲、膝 屈曲固定位 • 手の速い打ち合わせ • 股外転・膝屈曲 • 前傾、円背 • 頸後屈 • 股外転(軽度)歩行 • 右遊脚が長い • 体幹伸展不十分 • 股屈曲 • 下肢速い蹴り • 四つ這い位 • ヒコーキ肢位 • 肩股ぶるぶる(速い狭い屈伸) • 小刻み足踏み 歩行 • 手の常同運動 • 前傾肩引け歩行 • 手の常同運動 10 2015/8/30 境界域梗塞の運動症候 過剰な足踏み運動が、下肢荷重時・非荷重時にみられる 頚後屈、肘を伸ばした肩後方への引け、体幹伸展位をとりやすい。腹臥位で、 この肢位で固まる(ヒコーキ肢位) 四つ這いせず,いざる(shuffle) 股伸展時、軽度屈曲優位である。ただし、後方荷重ではない 手もみが多い 肩外転位で手で引き上げると起立しやすい 歩行時、遊脚が過度に長引くことあり 足元をよく見る or 足元を見ない 軽度開脚歩行 深部知覚系障害 歩行時、腕の振りがない 周生期脳障害類型(脳性麻痺となる) (平成27年8月28日の横地の分類) 早産脳障害 • PVL (periventricular leukomalacia) 痙性両麻痺 *従来型↔新規型 • 早産小脳障害 原始脳幹小脳性失調(原始型失調) • 大脳白質・小脳合併障害 • 原始脳幹小脳失調・大脳痙性両麻痺(原始失調性両麻痺) • 足底屈優位型原始脳幹小脳性失調大脳性痙性両麻痺(足底屈型原始失調性両麻痺) 大脳半球病変 • 中大脳動脈梗塞 • 側脳室周囲障害 *静脈梗塞 • 脳発生障害 成熟児低酸素性虚血性障害 • • • • • 胎生期脳障害(運動障害をとる) • 精神運動発達遅滞型失調 (=原始脳幹小脳性失調) 精神運動発達遅滞 psychomotor (developmental) delay 低酸素性虚血性視床被殻障害 脳性麻痺のアテトーゼ • 足底屈優位型原始脳幹小脳性失調大脳性痙性両麻痺 (足底屈型原始失調性両麻痺) 境界域梗塞 Borderzone infarction • 橋小脳低形成型無動(=原始脳幹小脳性無動) 多嚢胞性脳軟化 Multi-cystic encephalomalcia 大脳・基底核視床複合障害 Total asphyxia型低酸素性虚血性脳症 原始脳幹小脳性無動 胎児・新生児・乳児神経症候学を創りましょう もっと知りたい方は、9月6日(日)の三方原脳性麻痺研修会においでください 11
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