■部会 Report 風車検査スキーム検討委員会の活動紹介 風車検査スキーム検討委員会 1.はじめに 本年 6 月 24 日に改正電気事業法が公布され、 風力発電設備に定期安全管理検査制度が導入 されることとなった。2 年 6 ヶ月以内に施行さ れる予定である。 日本風力発電協会(JWPA)では定期的な検 査が義務付けられることを踏まえ、2014 年 11 月から JWPA 内に風車検査スキーム検討委員 会及びワーキンググループを設置して、「風車 検査スキーム(定期安全管理検査制度の試行 版) 」の検討を進めてきた。本年 7 月に風車検 査スキームを策定したところである。 風車検査スキームは、法の施行に先立ち、 JWPA が自主的に検査を試行するために策定 したものである。法に基づく定期安全管理検査 制度へのスムーズな移行をはかっていくため、 本年 10 月から風車検査スキームを実際に運用 し、課題を抽出して改善していく予定である。 JWPA の定期的な検査に対する自主的な取 り組みの結果は、今後国が整備する定期安全管 理検査の法体系に反映されていくものと想定 される。 本稿では、風車検査スキーム及び今後のスケ ジュールの概要について紹介する。 2.風車事故発生の状況 2013 年以降、風車事故が増加した。経済産 業省、新エネルギー発電設備事故対応・構造強 度ワーキンググループ(事故対応 WG)に報告 された事故の件数は、2013 年 3 月から 2014 年 7 月までで 19 件となっている。 内訳は、ハブ・ナセル落下 3 件、火災 2 件、 ブレード飛散等 11 件、支持物不具合 1 件、そ の他 2 件である。 3.保安確保に向けた制度見直しの経緯 2014 年 10 月の第5回事故対応 WG および 2014 年 11 月の第 7 回電力安全小委員会におい て、定期的なメンテナンスを適切に実施するこ とによって、事故を未然に防止できた事例も多 いことが報告された。そして、同電力安全小委 員会において、風車の定期安全管理検査を法的 委員長 松島 聡 に義務付けることが示され、本年、電気事業法 第 55 条(定期安全管理検査)が改正された(図 1)。 設置者の取組み 計 画 段 階 工 事 段 階 運 用 段 階 国の関与 工事計画の届出 ↑ | | 技 術 基 準 適 合 維 持 義 務 | ↓ ↑ | 保 安 規 程 に 基 づ く 自 主 保 安 ↓ | | | ↓ 保安規程の作成・届出・遵守 主任技術者の選任・届出 | | | | | ↓ 使用前自主検査 ↑ | | | | 立 入 検 査 等 | | | | ↓ 使用前安全管理審査 評定 ↓ 使用開始(巡視・点検・運転・運用) | | | | | | ↓ 定期事業者検査 定期安全管理審査 評定 事故報告 既往の規程 凡例 追加が想定される規程 図 1 風力発電設備の安全規制体系(今後) 4.風車検査スキーム(定期安全管理検査制度 の試行版) 定期安全管理検査制度は、設置者の実施した 定期事業者検査の結果を、審査機関が法定審査 6 項目について審査する制度である。風力発電 設備については、審査機関は第 8 回電力安全小 委員会において、登録安全管理審査機関とする 方向性が示されている。 風車検査スキームの構成を図 2 に示す。 JWPA では、定期的な検査及び審査を自主的に 実施するために、定期事業者検査のための定期 点検指針(試行版)、定期安全管理審査のため の手引き(試行版)等を策定した。 電気事業法 第55条 実施者 政省令 規 解釈・内規 程 民間規格等 定期事業者検査 定期安全管理審査 評定 設置者 登録安全管理審査機関* 国* 省令94条 (改定を想定) 定期事業者検査 の方法の解釈等 (試行版) 風力発電設備の 定期点検指針 (試行版) 政令9条 省令94条 他 (改定を想定) 使用前・定期安全管理 審査実施要領(内規) (試行版)** 定期安全管理 審査の手引き (試行版) 省令94条 - * 2015年10月からの試行ではJWPAにて実施予定(審査員の登録、 委員会で評定) **経産省の内規(20120909商局第67号)に追記して試行版とする予定 2015年10月からの試行では試行版にて運用の予定 図 2 風車検査スキームの構成 表 1 検査の対象部位 5.定期事業者検査(試行版)の概要 定期事業者検査(試行版)は、設置者が、公 衆の安全に関わる事故(タワー倒壊等の支持物 不具合、ロータ過回転、ハブ・ナセル落下、ブ レード飛散等、火災)を防止するために、定期 的に事業者検査を行い、その結果を記録し、保 存するものである(図 3)。定期事業者検査(試 行版)における検査の対象部位を表 1 に示す。 事故防止 の区分 過回転防止 ロータ 飛散防止 設置者 外注先 動力伝達装置、ブレーキ装置 ナセル架構、ナセルカバー ナセル外部付属品、電気設備 倒壊防止 タワー ボルトナット、継手、胴 倒壊防止 基礎 基礎コンクリート、地盤 登録安全管理審査機関*** ← ・点検結果の確認 ← 法定審査6項目 ・現場立会(抜取) 非常用 非常用予備発電機 電源装置 (停電時ヨー機能維持) 飛散防止 検査の組織、検査の方法 工程管理、協力事業者の管理 検査記録の管理、 検査に係る教育訓練 ピッチ制御装置、ハブカバー 落下防止 飛散防止 ナセル 火災防止 定期安全管理審査(試行版) 検査責任者** 主任技術者 ブレード表面・内部、レセプター ブレードルート部 翼端ブレーキ装置 飛散防止 ブレード 定期事業者検査(試行版) 検査項目* の点検 主な検査の部位 設置者 手順 JWPA *公衆安全確保に関わる項目 **検査責任者と主任技術者は兼務 することができる 図3 ***2015年10月からの試行では JWPAが実施の予定 安全管理審査 申請 定期事業者検査(試行版)の概要 6.定期安全管理審査(試行版)の概要 定期安全管理審査(試行版)の実施にあたっ ては、審査機関の役割を JWPA が担うこととし、 審査結果の評定を風車検査スキーム検討委員 会が担うこととして運用する(図 4)。 見積依頼書 ← → 申請書 表2 項 目 分担 実地審査計画 受領 文書審査 | ↓ JWPA 委員会 定期事業者検査 (試行版) 受領 評定 審査料支払 支払 ← - 審査結果通知書 - → | ↓ ←→ 請求書 策定 7月 8月 9月 10月 11月 委員会から 評定結果通知 受領 2-3 風車検査スキーム改善 JWPA 委員会 設置者 審査機関 | ↓ 評定 ← ---------- - 評定結果通知書 ←- 受領 審査員が実施する事項 図 4 定期安全管理審査(試行版)の手続き 2016年度 12月 1月 2月 3月 上期 2017年度 下期 規程制定 ▼10月(想定) 自主検査 ▼開始 会員周知 | ↓ JWPA 受領 | ↓ 設置者 定期安全管理審査 2-2 (試行版) 3.定期安全管理検査制度施行 | ↓ JWPAから 審査結果通知 風車検査 スキーム ▼公表 2.風車検査スキーム実施 2-1 実地審査 風車検査スキーム実施のスケジュール 会員 ▼周知 JWPAスケジュール 1.風車検査スキーム策定・周知 ← - 実地審査計画書 | ↓ 文書審査 電事法改正 ▼6/24 法制化スケジュール 受領 | | | | ↓ 2015年度 6月 見積書 定期事業者 検査実施 実地審査 7.風車検査スキーム実施のスケジュール 定期安全管理検査制度へのスムーズな移行 をはかっていくためには、風車検査スキームを 実際に運用し、課題を抽出して改善していく必 要がある。このため本年 10 月から、定期事業 者検査(試行版)を開始し、メーカー別に 14 の発電所*において、定期安全管理審査(試行 版)を実施する予定である(自主検査、表 2)。 [* 14 メーカーの風車設備容量は国内全体の 99%] -→ 風車検査スキーム 検討委員会 | ↓ | ↓ 定期安全管理検査の規程へ反映 上期 定期安全管理検査 ▼4月 施行(想定)
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