関東食糧株式会社 - ぶぎん地域経済研究所

訪
探
業
企
関東食糧株式会社
提案力・商品力・対応力に自信あり
常に「おいしさの、その先」を考え、
お客様との共栄を目指す
■
■ 窮地にも、儲けに走らず誠実に
外食産業の発展と共に歩んだ黎明期
関東食糧株式会社の創業者である臼田満前
社長は、中山道・桶川宿にある老舗製麺所に
生まれた。臼田氏がまだ学生の頃、実家の製品
を卸す浦和食品市場店の担当をまかされたの
が、食品物流業との関わりの始まりとなった。
1970年代に入るとすぐ、大阪万博をきっ
かけに海外文化に親しむようになった日本で
は、ケンタッキーやマクドナルド、すかい
らーく等の出店が相次ぎ、一大外食ブームが
巻き起こる。
浦和市場での取引を通じ、食品業界のダイ
ナミックな動きを肌で感じていた臼田氏は、
企業
概要
関東食糧株式会社
http://www.kanto-syokuryo.co.jp/
代表取締役:臼田真一朗
創
立:1967年12月
大手チェーン以外にも急増しているレストラ
ンへの食材卸ビジネスに乗り出した。既に他
県からの参入業者はあったが、どこも値段が
高いという印象だったため、よいものを適正
価格で取り扱えば、後発でも商機はあると見
資 本 金:2,400万円
込んだのだ。
従 業 員:195名 車両台数:80台
「ところがその後すぐオイルショックが起
事業内容:業務用食品(和・洋・中)
、冷凍食品酒類、
米穀、厨房機器の販売 他
本
社:埼玉県桶川市大字川田谷
2459- 1
電話番号:048-786-9111
取 引 店:桶川支店
こりました。まだ小さな会社でしたから、商
品自体は用意できても、配送対応がしきれ
ず、大量に在庫を抱えておくスペースもな
い。そこで父は、商品を引き取りに来てくだ
さる方に1日分ずつの卸売をすることにした
そうです。
適正価格での取引きを貫いたおかげで、オ
代表取締役社長 臼田真一朗
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イルショックが落ち着く頃には、以前の1.5
倍以上の売上げ・顧客数になっていたといい
ますから、まさに誠実さがピンチをチャンス
戻ってきたのは2000年のことだ。東京理科
に か え て く れ た ん で す ね 」 と 語 る の は、
大学を卒業後、大手調味料メーカーに勤めて
2013年に二代目の代表取締役に就任した臼
いた理系の後継者の目には、好調な業績とは
田真一朗社長だ。
裏腹に、改善すべき点がいくつも見つかった
■
■「求める商品を、求める価格で、
求める時に、求める所へ」で県No.1へ
という。
「入社後、まず着手したのは受発注と商品
管理システムの抜本的な改善です。それまで
同社はこの成功を元手に、浦和に続いて大
は夜のうちにファックスで届いた発注書を、
宮市場にも進出。さらに1976年には外商部
朝出社したオペレーターがデータ入力して出
を設立し、埼玉全県にターゲットを拡大した。
力、その伝票を見ながら倉庫担当者が商品を
ダイレクトメールで注文を集め、外商部が
集め、トラックに積み込む…という昔ながら
スピーディに配送するというビジネススタイ
のやり方が続けられていました。ともすると
ルは、県内の市場から遠く、目新しい商品が
午前中いっぱいこの処理に追われ、お客様の
手に入りにくかった秩父エリアなどでは大歓
元に出発できるのはお昼過ぎ。注文が多い時
迎を受けたという。「中には、本当にこんな
や、道が混雑していれば当然勤務時間も長く
ところまで届けてくれるのか。どんな物好き
なりますし、疲れてやめていく社員も少なく
なんだと、会社の素性を確かめに本社まで来
ありませんでした。
たお客様もいたそうです」(臼田社長)。
また、売れ筋商品や在庫をチェックするに
また、早くから冷凍食品の可能性に目を向
も、紙ベースのデータ管理には限界がある。
けていた同社は、70年代後半から本社内に
これはパソコン好きな自分がやるべきだろ
冷凍・冷蔵設備を導入する。さらに80年代
う!と発奮して、一からシステム開発を行い
には米穀取扱い許可、酒類販売の認可も取得
ました。だいぶ時間がかかりましたが、この
するなど、業務の幅を広げていった。
システムのおかげで注文が入ると同時にデー
お客様の信頼を獲得した同社は好調に業績
タベースに反映され、倉庫に届くようになり
を伸ばし、1990年代には県No.1の業務用
ました。よく動いている商品や在庫量なども
食品卸会社へと成長していく。
簡単に把握できるようになり、業務の効率化
に大きく貢献できたと思っています」と満足
げな臼田社長。その後も新たな冷凍倉庫の設
立や、コールセンターの開設など、様々な取
組みを成功させてきた。
提案力
外商部を立ち上げた頃の旧本社。このトラックが埼玉全県
を駆け回った。
■
■ 現場改善に挑んだ
二代目の挑戦は楽あり苦あり
そんな同社に、現社長である真一朗氏が
商品力
対応力
付加価値の高い
[提案力]
[商品力]
[対応力]
を表す同社のロゴ。
ぶぎんレポート No.190 2015 年 7 月号
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その一方で、失敗に終わったチャレンジも
さっているのだから、もっとよい提案ができ
ある。「それまでは物流担当者が営業窓口を
るようにならなければ」という点だ。 兼任していたのですが、業務を専門化した方
「現在当社が取り扱っている商品は、約
が効率的だろうと、営業は営業、物流は物流
56,000アイテム。その中でも、お客様が求
と担当を分けたんです。でも、これが大間違
める条件というものがあります。高品質でそ
いでした。
の分価格も張るもの、味と価格のバランスが
お客様としては、毎日のように商品を届け
いいものなど、あのお客様なら次にどんな商
に来て、顔を合わせている物流担当者こそ自
品を欲しがるだろう、というのを、営業マン
社の状況をよく理解してくれていると感じて
は誰よりも知っているはずなんです。
おり、相談なども気軽にしてくださっていま
しかも当社では仕入れを開始するにあたっ
した。しかし月に数度、短時間だけ訪問して
て社員自らが試食して、美味しさや安全性を
くるだけの営業マンには、なかなか心を開い
確かめたものだけを扱っていますし、最新の
てくれなくて……」と、臼田社長は苦笑い。
開発情報などもメーカーから届く。いわば、
結局この区分は、すぐに撤回されることに
最新の製品情報や外食業界のトレンドが集ま
なった。
■
■ お客様を繁盛させる
「提案力」に磨きをかけて
しかし、そんな失敗の中でも、臼田社長は
次の課題を発掘していた。「せっかくお客様
が物流担当者=当社の営業と認識してくだ
コラム
「バイヤー通信」
には各部門の専
門家のオススメ
情報が満載!
チラシで、ネットで、展示会で
食との出会いを手厚くプロデュース
関東食糧株式会社では現在、定期刊行チラシ“バイヤー通信”、
会員向けサイト、そして年1回の大規模展示会で、最新の食の
情報をお客様に提供している。
ニューフード
ショーには多く
の取引先メー
カ ー が 協 力 し、
試食やプレゼン
を行う。
中でも2002年からさいたまスーパーアリーナで開催している
「ニューフードフェア」は、一社提供の食品関係イベントとして
は最大級の展示会。同社が扱う商品の中から選りすぐりのアイ
テムを紹介し、その美味しさや魅力、戦略的な活用法などを紹
介している。
昨年は220社・6,000アイテムが出展し、食品メーカーおよび
外食関連企業の人々にとって、次なるトレンドを探り付加価値
をアピールするヒントを掴む、重要なイベントとして認識され
ている。
手渡しのチラシ、いつでもアクセスできるネット、そしてト
レンドを体感できる展示会。ありとあらゆる手法で外食産業の
発展を支援する同社への信頼は厚い。
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同社ホームページには、
オススメ品の紹介や食
に関する耳より情報が
満載!
彩の国企業探訪
る、一大情報集積地となっている。我々の持
は、珍しいヨーロッパ野菜の生産に取り組ん
つこうした情報は、新たなヒットメニューを
でいる若者がたくさんいます。さいたまヨー
開発したいお客様にとって、とても有益なも
ロッパ野菜研究会の方々です。まだ生産量が
のですから、ぜひ積極的に提供していきたい
少なく流通が少ない=すなわち高付加価値で
と思いました」。
すから、こうした目新しい食材を活用した美
その思いを込め、2010年にはコーポレー
味しいメニューを開発すれば、お店の繁盛に
トマークを変更。赤い3本の線は「提案力」
もつながるでしょう。
「商品力」
「対応力」を示している。
そこで、当社が生産者と個店をつなぐお手
さ ら に 臼 田 社 長 は、2013年 の 社 長 就 任
伝いをしよう、という取組みを進めた結果、
早々、社内に食に関わるエキスパートを集め
昨年は約1,000件のお引き合いがありまし
た“戦略仕入バイヤー”という新たなポジショ
た。お客様の繁盛=当社の繁盛=生産者・
ンを設けた。
メーカーの繁盛の心意気で、これからもどん
この部署では毎月、肉・魚・野菜などの食
どんPRに努めたいと思っています」と意気
材別に“バイヤー通信”という、次のシーズ
込む臼田社長。
ン戦略に活かせそうな提案を盛り込んだチラ
命を養う“食”の文化を支える企業人とし
シを制作する。担当者はそれをお客様の元に
て、積極果敢なその取組みから、今後も目が
届けてどんな反応があったかを確認し、好反
離せない。
応ならばバイヤーと共に伺ってさらに深い提
案を行う。
多忙な物流業務の中でも質の高い提案がで
き、次のアクションにつながる営業体制が、
コラム
創業50周年を前に、働き甲斐と
前向きさのある社風改革も進行中!
これで整った。
2020年に創業50周年を迎える同社では、社内改革に
■
■ 次なる目標はヨーロッパ野菜を使った
地域の農業と個店の活性化
かつてはハードな業務によって離職率も高かったが、業
かくして着々と足場を固め、企業価値を高
しているのだ。
めてきた同社にとって、次なる目標はなんだ
ろうか。
「いま力を入れているのは、地元の農業と
個店活性化のお手伝いですね。実は埼玉県に
も前向きに取り組んでいる。
務改善によって定着率も大幅にアップ。社員が誇りとや
りがいをもって働ける会社へとステップアップしようと
社内で目を引くのは、掲示板を埋め尽くすありがとう
カード。仕事を助けてくれた、相談に乗ってくれたなど、
感謝したい社員に対してメッセージを添えて張りだして
いるのだ。相手の喜びを自分の喜びと感じ、仲間との絆
を大切にする社風が生まれてほしいという願いが、無数
のカードから伝わってくるようだ。
付加価値の高いヨーロッパ野菜の栽培・普及に意気込む
さいたまヨーロッパ野菜研究会の皆さん。
掲示板いっぱいに「ありが
とう」の言葉が響きあう。
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