20220 特集2-2 解説(藤井 薫).pwd

進化する人事情報システム
実務解説②
2
解説●
人事情報システムの活用をめぐる
最新動向と具体例
藤井 薫 (ふじい かおる)
㈱サイエンティアコンサルティング 代表取締役社長
㈱サイエンティア 取締役HCMソリューション事業部長
1982年、 上智大学卒。 電機メーカーの人事部・経営企画部を経て、 1990年に㈱日本総合研究所に入社。
以降20年間、 人材マネジメント分野のコンサルティングに従事。 さまざまな業種業界において100超
のプロジェクトを指導。
労政時報
等への寄稿も多数。 2010年から現職。
率化のためのシステムではなく、 評価、 配置、 育
はじめに
成などにおける 「人事のアナログ判断を支援する
システム」 といってよいだろう。
今日、 給与計算一つ取り上げてみても、 人事部
TMSの登場によって、 人事情報システムの世
の業務はITシステムなしでは成り立たない。 一
界も景色が変わってきている。 本稿では、 新たな
方で、 採用、 異動配置、 昇進昇格、 評価、 人材育
潮流であるTMSを中心に、 人事部の目線、 エン
成など、 いわゆる 「人事」 は 「アナログ」 判断に
ドユーザの目線で昨今の人事情報システム事情を
大きく依存する。
解説する。
しばしば混同されがちであるが、 「定例」 業務
と 「定型」 業務は同じではない。 例えば、 新卒採
用にせよ人事考課にせよ、 毎年周期的に発生する
定例業務ではあるが、 必ずしもマニュアルどおり
に処理できる定型業務ではない。 人事部の業務の
多くは、 定例ではあるが定型とは言い難く、 今も
一般にアナログへの依存度が高い。
これからも人事の業務がすべてITでデジタル
処理できるようになることはあり得ないだろうし、
1
人事情報システムの
カテゴリーと特徴
■人事情報システムのカテゴリーマップ
一口に人事情報システムといっても、 さまざま
なパッケージソフトが存在しており、 それぞれの
パッケージがカバーしている機能範囲は同じでは
ない。
そうなるべきでもないと思うが、 ITの目覚まし
実際には、 人事に関する業務を網羅的にカバー
い進化に伴い、 人事のコア領域においても徐々に
するパッケージはないに等しく、 給与管理を中心
ITが支援できる範囲が広がってきている。
としたもの、 就業管理を中心としたもの
昨今、 タレントマネジメントシステム (以下、
「TMS」 と略) が注目されている。 TMSとは、
とい
うように、 幾つかのカテゴリーに分かれている。
「人事に関する業務」 という表現をしたが、 こ
タレントすなわち人材のキャリアやスキルを見え
こが今どきの人事情報システムを考えるポイント
る化し、 人材育成、 人材活用につなげていくため
になる。 人事に関する業務は人事部だけが行うも
のシステムである。 給与計算などの定型業務の効
のではない。 もちろん、 人事部のための業務とい
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特集2
「人事情報システム」カテゴリーマップ
図表1
フ
ロ
ン
ト
シ
ス
テ
ム
就業管理
システム
従業員
制度運用系TMS
人事給与システム
TMS
人事部門
主
管
業
務
シ
ス
テ
ム
ERP・HRモジュール
管理職
経営層
分析系人事システム
活用者
給
会
機能
与
基本情報
計
人事給与システム
うわけでもなく、 各部門のマネジャーや経営層、
評 価 ・
目標管理
人材育成・
活
用
コミュニケー
ションSNS
タレントマネジメントシステム (TMS)
%といってよいだろう。
そして、 一人ひとりの従業員がそれぞれの立場で、
また、 給与システムには人事情報の管理機能が
それぞれのニーズに応じて人事に関する業務を
実装されており、 従業員の基本情報、 履歴情報が
行っている。
管理できる。 給与システムは給与計算機能と何ら
そこで、 ここでは縦軸に利用者 (ユーザ)、 横
かの人事基本情報管理機能がセットになっている
軸にシステムが提供する機能の範囲を示して、 多
ため、 「人事給与システム」 (以下、 「人給システ
種にわたる今日の人事情報システムを分類し、
ム」 と略) と呼ばれる。 一般に人事情報システム
「カテゴリーマップ」 として整理した[図表1]。
といったときには、 ほぼこの人給システム、 ない
以下、 それぞれのカテゴリーの特徴を見ていこ
し、 人給システムの人事管理機能部分のことを指
う。 なお、 以下の見出し等で [カテゴリー○] と
しているといってよい。 従業員の基本情報管理と
表記している部分は、 そのシステムのマップ上の
給与計算は、 あらゆる企業で行われている定型業
位置を示している。
務であり、 最もITを活用しやすい分野である。
人給システムの普及度が極めて高いことから、
■給与計算と基本情報管理(人給システム)
一応はたいていの企業において基本情報+αの人
[カテゴリーマップ]
事情報管理ができている、 ということになる。 た
典型的な人事部のシステム活用状況は、 会社の
規模や業種業態等による違いはあるものの、 おお
むね次のように整理できる。
94
だ、 人給システムで管理できる人事情報の範囲と
利用者の範囲は限られている。
一般に、 人給システムには従業員規模によるす
まず、 給与計算はシステム化されている。 アウ
み分けがあり、 例えば、 従業員数100人・1000人・
トソーシングを活用している会社も多い。 給与シ
1万人の企業で同じパッケージを使うことはほと
ステムは人事部にとって必需品であり、 アウト
んどない。 数多くの人給パッケージが販売されて
ソーシングの活用等も含めると、 普及度はほぼ100
おり、 大企業向けのものほど管理できる人事情報
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進化する人事情報システム
実務解説②
の範囲が広くなるが、 いずれにせよ人給システム
用途は、 給与計算を中心とした定型業務の効率化
で扱う情報の範囲は、 いわゆる属性情報や履歴情
に限られているということになる。
報の範囲にとどまる。
人事分野では、 人給システム、 就業管理システ
また、 人給システムの直接の利用者は基本的に
ムのほかにも内定者管理、 目標管理、 360度評価、
人事部門である。 すなわち、 人給システムは善く
eラーニング、 アセスメント等々、 さまざまなシ
も悪くも、 人事部が人事部に必要なデータを取り
ステム、 ITツールが存在する。 これら人材マネ
扱うためのシステムということができる。
ジメント系のツールは、 特定機能に絞り込まれた
ものが多い。
■就業管理(就業管理システム)
[カテゴリーマップ]
人給システムの次に普及度が高いのは、 「就業
管理システム」 だろう。
就業状況に関する情報は給与計算を行う上で不
たいていの人事部は、 人給システム、 就業管理
システムでの業務効率化に加え、 他のシステムと
連携していないスタンドアローンの単機能ツール
を使ったり、 ExcelやAccessを駆使して、 業務を
こなしている。
可欠であるとともに、 日々の事務作業が発生する。
その結果、 人事情報は人給システム上であった
それらは定型業務ではあるものの、 業種業態等に
り、 その他の単機能ツール上であったり、 あるい
よっては相当に煩雑な管理が要求され、 効率化
は紙であったり、 幾つかの場所にバラバラに格納
ニーズも高い。 このため、 就業管理システムも人
されることになる。 そのため、 多くの場合、 それ
給システムと同じく、 ほぼ必需品といってよい。
らを関連付けて検索したり、 特定の従業員の情報
また、 就業管理は、 タイムカードやICカード
をまとめて取り出したりといった人材情報の一元
等のデバイスとの組み合わせを必要とする場合も
化、 いわゆる 「人材の見える化」 が難しい状態に
多いため、 人給システムとは明らかに別のカテゴ
なっている。
リーを形成している。 最近では、 単に時間管理を
行うだけではなく、 携帯電話やスマートフォンの
GPS機能 (位置情報) と組み合わせて、 外出先で
の打刻機能を備えたものなどもある。
■効率化と実効性向上
タレントマネジメントシステム (TMS) の定
義、 機能要件は、 まだ人給システムや就業管理シ
就業管理システムも人給システムも、 「給与計
ステムほど明確に定まっていないが、 TMSを人
算に直結する」 こと、 「効率化」 を目的にしてい
給システムと比較してみると、 両者の性格の違い
ることが共通点である。
がよく分かる。 TMSは、 ある面、 伝統的な人給
一方で、 両者は利用者の範囲が異なる。 人給シ
ステムは人事部が利用するものだが、 就業管理シ
ステムは全従業員が使用 (入力) する。
また、 人給システムはある程度広範な人事業務
システムとは真逆のシステムだ。
人給システムに限らず、 システム化の基本的な
目的は 「効率化」 であるが、 TMSの導入目的は
必ずしも効率化という単語ではしっくりこない。
に対応するが、 就業管理システムは特定機能だけ
効率化というより、 むしろ 「実効性向上」 という
に特化したシステムということもできる。
べきかもしれない。 効率化は分母を小さくする
(コスト削減する) ことに焦点を当てるが、 実効
■人事部のシステム活用状況
人事部のシステム活用状況といった場合、 人給
性向上は分子を大きくする (成果の絶対値を大き
くする) ことに重点を置く。
システムと就業管理システムだけという会社も少
例えば人事考課であれば、 もちろんシステムを
なくないようだ。 つまり、 本格的なシステム活用
活用することによって、 人事考課業務にかかる時
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特集2
間やコストを削減するという側面も重要だが、 そ
自己申告等を組み合わせようとすると、 お手上げ
れ以上に人事考課の精度を上げる、 すなわち、 人
に近くなる。 このため、 人材の見える化といった
事考課の精度向上を通じて従業員の納得感やモチ
場合、 まずはこうした属性情報、 履歴情報に基づ
ベーションを向上させ、 ひいては業績の向上につ
く見える化が出発点であり、 現状では、 このレベ
なげることを最大の目的としている。 効率化の場
ルのニーズが多くの割合を占めている。
合、 業務処理コストを最低限に近づければ完了す
また、 TMSは 「グローバル」 というキーワー
ひも
るが、 実効性向上の可能性に上限はない。
ドに紐付けて語られる場合も多いが、 これもたい
また、 給与システムの場合、 給与計算にかかる
ていの場合、 属性情報、 履歴情報による見える化
コストを削減する (効率化) 以上の付加価値を生
ニーズとみてよいだろう。 これまで日本の本社人
み出そうとすると、 どうすればよいのだろうか。
事部による管理の枠外であったり、 国ごとに別々
大企業向けのシステムは給与計算だけではなく、
に管理されたりしていた現地採用プロパー人材の
福利厚生等の付帯的な業務処理機能も充実してお
属性情報、 履歴情報を一元化し、 本社管轄の社員
り、 それら広範な定型業務処理を効率化できる。
と同じベースで把握できるようにしようというも
人手がかかる部分も含めてBPO (ビジネス・プ
のだ。
ロセス・アウトソーシング) という選択肢もある
はんちゅう
が、 いずれにせよ効率化の範 疇だ。
新たな付加価値を生み出すという意味では、 定
■分析系人事システム
[カテゴリーマップ]
型業務の処理効率化の次のステップは、 [図表1]
給与計算機能を持たず人事管理機能に特化し、
のカテゴリーマップの横軸を左側に向かって進ん
広範な属性情報、 履歴情報を組み合わせて人材の
でいく。
見える化機能を強化したものを、 ここでは便宜的
すなわち、 「給与=人件費」 との観点から会計
に 「分析系人事システム」 と名付けた。
情報等と連動させ、 各種の分析情報やシミュレー
人給システムの給与管理部分で実効性向上を追
ション機能を提供し、 経営判断をサポートするこ
求しようとするとERPに近寄っていくわけだが、
とで価値を生み出す方向に進んでいく。 給与シス
人事管理部分で実効性を向上させようとすると、
テムの発展型はERP (Enterprise Resource Plan-
どうなるだろうか。
ning:統合型基幹業務システム) の一機能として
の位置付けに近くなる[カテゴリーマップ]。
人事管理システムの領域は長らく基本情報を中
心とした属性情報、 履歴情報管理の範疇にとど
まってきた。 台帳情報から始まり、 取り扱う履歴
■人材の見える化
TMSを導入する主目的の一つが 「人材の見え
る化」 である。 この 「人材の見える化」 ニーズは、
大別して2とおりのパターンがある。
一つは従業員の基本情報+αの属性情報、 履歴
情報をベースにした見える化だ。
前述のとおり、 たいていの人事部では人材情報
が社内のあちらこちらに散在しており、 例えば、
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情報の範囲は広がってきているものの、 それらの
情報をストックしておくだけで活用されていると
は言い難かったのではないだろうか。
分析系人事システムの成り立ちは、 これまでの
人給システム上で、 給与計算の付帯的機能として
実装されていた人事管理機能に、 発令や組織管理
といった人事部固有業務に対応する機能が加わっ
たものという見方ができる。
異動歴、 職種歴、 評価歴、 保有資格、 教育受講歴
分析系人事システムは、 人事部に加え、 経営幹
等を組み合わせて人材検索するだけで相応の手間
部や現場のマネジャーを主な利用者として想定し
がかかることも珍しくない。 さらに、 職務経歴や
ている。 このカテゴリーのシステムは、 人事属性
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進化する人事情報システム
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情報、 履歴情報を一元管理し、 経営層やマネジャー
要な情報であることは確かだが、 例えば、 学歴、
へ分析データや検索機能、 シミュレーション機能
所属歴、 職種歴、 評価歴、 教育受講歴等を組み合
を提供することに重点を置いている。
わせて検索や統計処理ができるようになったとし
人事部だけではなく、 経営層やマネジャーも属
性情報、 履歴情報を活用できるようにするという
意味で、 分析系人事システムは、 人給システムの
人事管理機能とは一線を画するといってよい。
一方で、 属性情報、 履歴情報を対象にするとい
て、 果たしてそれで人材が見える化されたといえ
るだろうか?
それらはあくまで基本データであり、 文脈を
持った情報ではない。
例えば、 たまたま同じ学歴、 所属歴、 職種歴、
う意味ではオーソドックスな人事管理システムの
評価歴、 教育受講歴等を持つ同期生2人がいたと
延長線上にあるともいえる。
しよう。 その2人の属性情報、 履歴情報は同じか
もしれないが、 当然のことながら2人の職務能力
■情報共有
属性情報、 履歴情報の一元化と共有は、 人材の
は決して同じではない。 さらに厄介なことに、 同
一人物であっても、 その時々の環境等によって、
見える化の第1ステップである。 人材情報を一元
発揮される能力やパフォーマンスは大きく変化す
化するという点もさることながら、 共有するとい
ることがある。 それが人材というものであり、 本
うところも重要なポイントである。
当に重要な情報は従業員本人に聞いてみなければ
扱うものが人事情報なので、 「誰に、 何を、 ど
の範囲で開示するか」 をきめ細かく管理、 制御す
る必要がある。
特に日本の場合、 複雑な多階層組織、 兼務やプ
ロジェクト、 頻繁な期中異動等も珍しいことでは
分からないものが多い。 さらに、 その情報は適切
な頻度でアップデートし続ける必要がある。
その観点からすれば、 実は人事部は人材に関し
て、 さほど大した情報を持っていないという見方
もできる。
ない。 その時々で、 適切な相手に適切な範囲の情
人事の要諦は、 詰まるところ 「個別把握」 であ
報を開示することは、 実はそれほど簡単なことで
る。 そして、 人材情報の把握は、 やはり組織規模
はない。
や接触頻度に制約される部分がある。
人材の見える化、 すなわち、 情報共有を行うと
いうことは、 人事部だけが使うシステムから、 現
「人材情報の質」[図表2]をご覧いただきたい。
人材情報の把握レベルは三つに大別できる。
場のマネジャーや従業員が使うシステムになると
組織規模が小さく、 接触頻度を高く保つことが
いうことであり、 人材の見える化をどの程度まで
できる場合は 「目」 で見て、 人材情報を把握する
実現できるかは、 情報参照の権限管理をどの程度
ことができる。 今どのような仕事をどのように
きめ細やかに行えるかということと密接に関連す
行っているか、 直接確かめることができる。
る。
組織規模がある程度大きくなると、 接触頻度も
すなわち、 [図表1]のカテゴリーマップの縦軸、
限られてくる。 常に目で見て把握することは困難
「活用者」 の範囲に応じてシステムのコンセプト
になるが、 例えば、 特定の○○さんという従業員
や要件が大きく異なることになる。
について、 顔と名前、 その他の基本情報に加え、
何らかのその 「人となり」 は分かっている (つも
■個別把握
さて、 人材の見える化の二つ目のアプローチで
ある。
属性情報、 履歴情報は個別把握の基本になる重
り?!) という状態になる。
だが、 それはある面、 人材情報について最もバ
イアス (歪み) がかかりやすい状態でもある。 も
しかすると、 ○○さんについて思い浮かべること
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特集2
ができる情報は、 相当古いものであるかもしれな
い。 人となり以上に、 キャリア情報やスキル情報
は変化しやすい。
把握に近づけようとするものである。
TMSは、 カバー範囲の広さとコメント情報と
いう二つの特徴を通じて、 従来の人事情報システ
組織規模がさらに大きくなると、 従業員個々人
との直接的な接触機会はほとんどなく、 「データ」
ムよりも具体的かつ効果的に 「人材の見える化」
を実現しようとするものといってよいだろう。
でしか知り得ない状態になる。 大組織でいかに従業
員個々人との接触機会を設けていくかは、 システ
ムの話以上に本質的な人材マネジメントの課題で
あるが、 その話はまた別の機会に譲ることにする。
■TMSの主要機能
㈱矢野経済研究所のレポート
の実態と展望 ∼未来を創るタレントマネジメン
ト市場∼
では、 「タレントマネジメントシステ
■タレントマネジメントシステム(TMS)
ムの主な機能」 として八つの機能を挙げている
[カテゴリーマップ]
[図表3]。
TMSは 「データ」 で人材を把握しようとする
人給システムの人事管理部分や分析系人事シス
ものであることは確かだが、 属性情報、 履歴情報
テムとの差異として、 まず目に付くのが機能面か
にとどまらず、
ら見たカバー範囲の違いだ。
文脈" を持った情報を含めて、
人材マネジメント系の情報領域を広くカバーする。
TMSも人事情報システムのカテゴリーの一つ
例えば、 キャリア情報であれば単に所属歴、 異
である以上、 ベースとなる人材情報管理機能は共
動歴だけではなく、 転職のときの職務経歴書のよ
通するが、 その他の機能についてはTMSの特徴
うに、 その部門に在籍していたときに具体的にど
がよく表れている。 それらの機能の一つひとつは、
のような仕事を行っていたかというコメント情報を
単機能ツール等でも見受けられるものであるが、
含めて取り扱う。 また、 目標管理であれば達成度
それらを一つのパッケージで網羅的にカバーしよ
AとかBとかといった評語だけではなく、 そのと
うとしている点もTMSの特徴である。 いわゆる、
きの具体的目標や実績値、 達成状況に関する従業
人材情報の一元化、 人材の見える化を志向してい
員本人や評価者のコメント情報を含めて取り扱う。
るということである。
つまり、 人事や経営層が 「データ」 でしか個人
また、 人事部、 経営層や現場のマネジャーに加
を把握し得ない組織規模であっても、 文脈を持っ
え、 従業員も主な利用者として想定している点も
たコメント情報も含めて取り扱うことで、 その
TMSの特徴である。
データを多少なりとも 「人」 や 「目」 による人材
図表2
98
2013 HRM市場
労政時報
TMSは分析系人事システムとは異なり、 文脈
人材情報の質
「目」 で
見える
「人」
(のイメージ)
は分かる
「データ」 で把握
するしかない!?
小規模
人 員 規 模
大規模
リッチ
人材情報の質
プア
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進化する人事情報システム
実務解説②
を持ったコメント情報を、 マネジャーからだけで
いても、 必ずしも人材マネジメント系システムの
なく従業員からも収集する。 つまり、 TMSは全
主要機能、 必須機能とは言い難い面がある。
従業員がそれぞれの立場でそれぞれのニーズに応
今、 日本で販売されているTMSの多くは、 米
じて使うシステムであり、 この特性によって、
国製である。 一方、 人材マネジメントの在り方は、
TMSは人事情報システムという範疇を超えて、
やはり法律や雇用慣行による影響を受ける。
実にさまざまなことができるようになる。
ご承知のとおり、 米国では採用はもとより、 評
例えば、 目標管理であれば、 評価用途に使うだ
価、 報酬設定から解雇に至るまで直属のマネジャー
けではなく、 本来の業績マネジメント用途にも活
に大きな権限がある。 一方、 日本でそれらを行う
用できるようになる。 全社目標や部門目標を個人
には必ず部門間調整が必要になる。 内部統制上、
にカスケード (段階的に展開) する、 アクション
他部門兼務は好ましくないが、 日本では、 ごく一
しん ちょく
プランの進 捗 状況をマネジャーと部下で適宜共
般的に兼務が見受けられるため、 レポートライン
有するなどといったことが可能になる。 また、 学
も複雑になりやすい。
習管理では、 単なる教育履歴管理にとどまらずシ
また、 日本では、 いわゆる正社員は社内育成、
ステムを通じて学習そのもの、 いわゆるeラーニ
社内配転、 社内昇進が基本であるが、 米国では経
ングを行うことができるようになる。
営幹部層を除けば、 職種転換を伴う会社主導の
目標管理や学習管理は、 マネジャーと従業員、
ローテーションや人材育成はまれであり、 社外労
あるいは人事部と従業員との情報のやり取りだが、
働市場への放出と採用が大きな役割を果たす。 そ
これが従業員同士となると、 もはや人事情報シス
のような日米における人材マネジメントの在り方
テムというよりはコミュニケーションツールであ
の違いを反映して、 米国製TMSには、 例えば給
り、 社内ソーシャルネットワークサービス (SNS)
与水準と退職率でシミュレーションを行う退職リ
的な活用も考えられる。
スク管理や、 採用機能にfacebookやLinkedInを
組み合わせるものなど、 日本では見慣れない機能
■制度運用系TMS
も搭載されていて興味深い。
[カテゴリーマップ]
もちろん、 日米に共通する機能も多い。 例えば、
TMSの守備範囲は広く、 その定義はいまだ定
「サクセッションプラン (後継者計画)」 という呼
まっていない。 [図表3]に示した八つの機能につ
び方とそれが必要とされる背景、 運用方法には多
少の違和感があるかもしれないが、 日本でもそれ
タレントマネジメントシステムの主な機能
図表3
機
能
名
本調査における定義
人材情報管理
個人プロファイルの照会、 比較など
採用・調達管理
応募者、 選考プロセス管理、 異動案の作
成支援など
ぞれのポストについてキャリアやスキル等の条件
から次の候補者を想定しておくことは必要だ。 こ
れもTMSによる人材情報の一元化、 人材の見え
る化が大きく役に立つ。
それでは他方、 日本のTMSに特に必要とされ
る機能は何かあるのだろうか?
人材育成
幹部候補の管理、 育成支援
目標管理
目標、 業績の管理、 人事考課など
要員管理
人材ポートフォリオや人件費の管理など
であり、 さまざまな機能が備わっている。 それゆ
報酬管理
昇格・報酬のシミュレーションなど
え、 経営幹部および幹部候補者やマネジャー層を
学習管理
キャリア開発の管理、 eラーニングなど
主な管理対象とするシステムという見方もある。
SNS
従業員間の交流など
しかし、 多くの日本企業では、 可能性としては今
資料出所:「2013 HRM市場の実態と展望」 ㈱矢野経済研究所
TMSは 「人材」 をマネジメントするシステム
年入社した新入社員も中長期にわたる社内育成を
労政時報
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特集2
通じて将来的には経営幹部に登用され得るため、
日本におけるTMSの管理対象は文字どおり全社
員を視野に入れる必要がある場合が多い。
■パッケージとカスタマイズ
本稿では、 情報システムのパッケージ製品を前
提として説明してきた。 取りあえず 「人事考課表
また、 一般に、 日本の人事制度は米国のものに
に考課結果を入力するだけ」 など、 最低限の部分
比べて複雑で精緻であるとともに、 企業内労働組
的な機能だけに絞り込んでシステム化する場合を
合の有無を問わず、 人事には最大限の社内的な公
除けば、 パッケージを利用せずゼロベースからス
平公正が強く要請される。 兼務等を含む組織体制
クラッチ開発を行う必要性は少ない。
が常態化している中で、 人事諸制度の運用を通じ
そもそも、 人事考課も単に考課結果を入力する
て人材マネジメントの実効性を高めることが求め
だけではシステム化の効果は極めて限定的であり、
られている。
考課調整の支援機能などが実装されて、 初めてそ
日本企業のニーズに合ったTMSということで、
の威力を発揮する。 特に、 人材情報の一元化、 人
このカテゴリーを 「制度運用系TMS」 と名付けた。
材の見える化がテーマであれば、 単機能に絞り込
その意味では、 米国製TMSは 「採用系TMS」
んだツールではあまり意味がなく、 明らかにパッ
と呼んでもよいかもしれない。
ケージの活用が合理的である。 今日のパッケージ
TMSの多様な機能を、 自社の制度・マネジメ
は、 人材マネジメントの多様なニーズに対応して
ント施策とどのように融合させ、 活用を図ってい
多機能化が進んでおり、 テンプレート等も充実し
くか。 実際の導入企業に見る活用の具体例・ポイ
てきている。 パッケージで対応できない部分につ
ントを[図表4]に整理したので、 参考としてご覧
いては自社用にカスタマイズするという選択肢も
いただきたい。
ある。
ただし、 当然のことながら、 カスタマイズをす
2
システム導入・活用に向けた
アドバイス
各社の置かれている状況によって、 必要とされ
ればするほど費用がかさむことになるため、 自社
に必要な機能をしっかりと見極めて、 自社のニー
ズに対して適合度が高いパッケージを選択するこ
とが重要だ。 また、 場合によっては、 パッケージ
る機能やシステムの選び方もさまざまだろうが、
に適合しない部分は、 自社の業務の在り方を見直
以下ではTMSを中心に、 基本的なシステム選び
してみることも必要だろう。
のポイントを挙げておく。
図表4
100
労政時報
TMSを中心とした人事情報システム活用の具体例
社
名
(業種・単体従業員数)
T M S 活 用 の 内 容
東 急 建 設
(建設・2403人)
キャリア開発計画 (CDP) のモデルプランや必要なスキルを社内に開示しており、 従業員
自身によるCDP立案やスキルチェックなど、 自律的なキャリア形成をサポートしている
東 洋 鋼 鈑
(鉄鋼・1186人)
人事制度の抜本改革を契機に目標管理や人事考課をWEB化し、 新制度の早期定着、 制度趣
旨に沿った運用に効果を上げている
日 立 金 属
(鉄鋼・4675人)
職務経歴や目標管理のWEB化とともに、 数多くの社内外研修の受講管理やキャリアデザイ
ンなど人材育成についても統合的に運用を行っている
ブラザー工業
(電気機器・3819人)
全社ベースでの人材情報管理に加え、 目標管理、 人事考課をWEB化し、 上司・部下間で共
有することで人材育成に活用している。 また、 キャリア開発計画、 資格・学習歴等も共有す
ることで、 従業員の自律的なキャリア開発を支援している
ミ ク シ ィ
(サービス・412人)
全社ベースでの適材適所の配置や人材育成促進の土台として、 詳細な評価情報、 キャリア情
報を上司・部下間で共有している
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進化する人事情報システム
実務解説②
■オンプレミスとクラウド
■「人材の見える化」ニーズ
パッケージ製品の導入にはオンプレミス
人材の見える化を目的としてシステム導入する
(on-premises) とクラウド (cloud) の2とおり
場合、 先に例示したカテゴリーからどれを選ぶべ
の方法がある。
きか。 その検討を行う際には、 次の2点を明確に
オンプレミスとは、 自社でパッケージを購入す
しておいたほうがよい。
る方法であり、 サーバも自社に設置し管理する必
第1に、 見える化の対象となる情報は属性情報、
要がある。 通常、 パッケージの購入費用 (ライセ
履歴情報の範囲で足りるのか。 それとも、 実際の
ンス料)、 初期導入費用、 年間保守料が必要である。
働きぶりや目標達成のプロセス、 成果など、 文脈
これに対して、 クラウドとは、 パッケージを購
を持った詳細なコメント情報を必要とするのか。
入するのではなく、 必要な機能をインターネット
第2に、 人材情報を誰に対して見える化できれ
経由で利用して、 期間に応じたサービス利用料を
ばよいのか。 経営層か、 現場のマネジャーか、 一
支払う方式である。 こうした形態から、 「サービス
般従業員も含むのか。
型ソフトウェア (SaaS=Software as a Service)」
とも呼ばれている。
見える化の対象がコメント情報を含む場合、 ま
た、 現場のマネジャーに対して情報を開示したい
この方式では、 ①運用に必要なサーバを自社で
場合は、 TMSの導入を検討したほうがよい。 必
購入して設置する必要もないので、 設備投資や維
然的に、 従業員がそれぞれの立場で活用できるシ
持管理費用を抑えることができる、 ②サービス利
ステムが必要になる。
用料方式であるためコストが平準化される、 ③ID
逆に言うと、 属性情報、 履歴情報を経営層に提
数連動の課金体系であることが多いため、 導入規
供すればよいのであれば、 従来型のシステムでも
模やコストを抑えてスモールスタートしやすい
ある程度可能ということになるだろう。
などのメリットがある。 中堅・中小企業に
とっては、 クラウドの登場によってシステムを導
入しやすい状況になってきたといえる。
■コメント情報の収集
コメント情報も含めて人材の見える化を行おう
オンプレミスとクラウドの両方式で提供してい
とする場合、 従業員から直接、 コメント情報を収
るパッケージもあれば、 どちらか一方の方式での
集する必要があるわけだが、 それには大別して二
み提供されているものもある。 一般に、 クラウド
つのアプローチがある。
は、 利用者に合わせてパッケージを改修するカス
一つは、 SNSのようなコミュニケーションツー
タマイズは不可としているビジネスモデルが多い
ルを使って従業員の自由な情報発信を促進し、 そ
が、 中にはクラウドであってもカスタマイズ対応
の共有、 検索を通じてコメント情報を収集しよう
を行うパッケージもある。
とするものである。 外資系のTMSはこうしたア
オンプレミスを選ぶか、 クラウドを選ぶかは情
報システム部門の判断になることが多いようだ。
プローチをとるものが多い。
もう一つは、 人事諸制度の運用を通じてコメン
自社の情報システム政策としてオンプレミスしか
ト情報を収集しようとするものである。 目標管理、
採用しない、 また逆に、 自社でサーバを持ちたく
面談、 人事考課、 自己申告、 キャリア開発計画、
ないという会社が存在する一方で、 オンプレミス
各種サーベイなど、 日本の人事制度には従業員と
であれクラウドであれ、 合理的なほうを選択する
マネジャー、 人事部が双方向でやり取りを行うも
という考え方の会社も増えているようである。
のが数多くある。 これらの制度の運用には手間が
かかるが、 日本製の制度運用系TMSは、 それら
をシステム化して運用を効率化するとともに、 シ
労政時報
第3854号/13.10.11
101
特集2
ステムを活用した人事制度運用を通じて、 定期
導入を検討するというのが一つのパターンである。
的・体系的に従業員全員の人材情報を収集し、 メ
もちろん人給システムの更新もTMS導入検討
ンテナンスしようとするものである。
の契機になり得るが、 貴社における次の人給シス
前者の 「SNSアプローチ」 と、 後者の人事制度
テム更新タイミングは何年後だろうか? 果たし
を通じた 「制度運用系アプローチ」 とでは、 得ら
て、 そのスピード感で人事部は経営の要請に応え
れる情報の種類・性質が異なる。
られるだろうか。
SNSアプローチは、 従業員同士の直接コミュニ
経営環境の変化に伴い、 戦略分野への人材シフ
ケーションによって、 知りたいことを知りたいとき
トを重要経営課題と位置付ける企業は多い。 人材
に従業員に投げ掛けるという形が中心になる。 社
の見える化は、 その課題を解決するためのインフ
内SNSではあるが、 一般的なSNSと同じく、 うま
ラである。 人材の見える化を経営課題と捉える企
く活用できれば大きなコミュニケーション効果が期
業は、 人給システムの更新タイミングによらず、
待できる一方で、 SNSに積極的に参加する従業員
TMSに特化したパッケージの導入を検討するこ
とそうでない従業員との温度差が生じやすいこと、
とが有力な選択肢である。
自由に発言・発信された内容だけに会社としての
公式な用途には活用しづらいことが課題であろう。
■スモールスタート
制度運用系アプローチは、 人事制度運用を通じ
従来、 人事情報システムは全社で一つしか必要
て得たコメント情報をデータベース化して活用す
がないものだったが、 TMSの領域では、 例えば、
るという形が中心になる。 こちらは、 人事制度運
大手メーカーの技術部門等において、 全社の人事
用に伴って得られる情報であるため、 従業員全員
情報システムとは別建てで技術部門専用のTMS
について定期的に情報収集できること、 公式の情
を導入し、 より詳細なスキル管理、 キャリア管理
報であることがメリットであり、 その裏返しとし
を行おうとする動きも出始めている。
て、 従業員同士の情報収集用途に使うには少々堅
苦しいことがデメリットだろう。
クラウドで提供されるTMSは、 技術部門等の特
定部門や特定職種において全社ベースでの要求水
社内SNSにせよ人事制度運用にせよ、 従業員全
準よりも高度な、 あるいは部門独自の視点に基づ
員がそれぞれの立場で使うTMSの場合、 誰に何
く 「人材の見える化」 を行いたいといったニーズに
をどの範囲まで開示するか、 というきめ細かなセ
応えやすい。 このように全社展開の前段階として
キュリティ管理が必須となる。 特に、 制度運用を
特定部門でスモールスタートする、 また、 先に触れ
中心に考える場合には、 兼務やプロジェクトが複
たように、 クラウドの登場によって、 そもそもの従
雑に絡み合った組織体制も珍しくないため、 それ
業員規模が小さい企業でも、 導入規模やコストを
らに対応し得るセキュリティ管理機能を持ったシ
抑えたシステム活用の選択肢が広がってきている。
ステムを選ぶ必要がある。
■必需品ではない!?システム
■TMSの検討タイミング
102
人給システム、 就業管理システムと異なり、
先に触れたように、 人給システムと就業管理シス
TMSは必需品と言い切れないカテゴリーのシス
テムの普及度は高い。 一般に、 5年サイクルでそれ
テムである。 前述のとおり、 一般的に、 システム
らのシステムの更新を検討する企業が多いようだ。
は効率化を導入目的とし、 コスト削減額によって
人給システムの人事管理機能はたいていの場合、 基
その導入効果を測定しようとする。 もちろんTMS
本情報+αの管理にとどまるため、 人給システムの
にもコスト削減の側面はあるが、 本質的な導入目
更新タイミングに合わせてTMSやTMS的機能の
的は実効性向上、 すなわち、 人材の価値の向上の
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進化する人事情報システム
実務解説②
支援である。 導入効果をコスト削減のようにシン
プルに金額で表現しにくいところが、 TMS導入
の社内的なハードルになる場合も多い。
TMSはようやく市場が形成され始めた段階で
ある。 属性情報、 履歴情報の範囲はともかくとし
て運用している場合がほとんどである。
コメント情報を扱うTMSの普及は、 まだまだ
これからという状況である。 まずは、 コメント情
報を含むキャリア情報と目標管理情報の価値を社
内的に十分周知することが重要である。
て、 コメント情報を収集し、 活用し得るデータと
して整備蓄積している企業はまだ少数にとどまっ
ている。
■TMS導入の前に
人給システムであれば、 台帳情報管理をするた
現状、 TMSは人材マネジメントに熱心な企業、
め、 あるいは給与計算をするためという明確な目
換言すると、 人材マネジメントの価値を確信する
的と用途がある。 就業管理システムも同様、 明確
企業が選択的に導入している状況といってもよい
な目的と用途がある。 給与計算や就業管理は目的
かもしれない。
と用途が直接的に結び付く。
まずは、 人事部門が経営層に人材マネジメント
の重要性を説くことができなくてはならない。
それでは、 TMSはどうだろうか?
確かに、 人材の見える化や制度運用の実効性向
上などが典型的な目的になるわけだが、 より具体
■経営目線での人材情報
経営目線で人材を個別把握するための情報を考
えた場合、 キャリア情報と目標管理情報の優先順
位が高い。
的な使用イメージを描くことができるかどうかが
ポイントになる。
例えば、 人材の見える化を行いたい、 特にスキ
ルの管理を行いたい、 スキルズインベントリー
キャリア情報、 すなわち職務経歴だが、 転職の
(個人のスキル情報) を管理したい、 1年サイク
ときの職務経歴書を思い浮かべれば分かるとおり、
ルでスキルチェックを行いたい、 自己評価だけで
それぞれの従業員がこれまで具体的にどのような
はなく上司評価も加えた精度の高いものにした
仕事をどのように行ってきたかは最も価値ある情
い…ここまではそれでよい。
報である。 ゆえに、 職歴がある人材の採用面接で
ただ、 そのためにはツールもさることながら、
は、 これまでの具体的キャリアの確認に多くの時
自社の業種業態、 戦略に適合したスキルディク
間を費やすことになる。
ショナリー、 スキルセットが必要だ。
また、 すでに自社に在籍している従業員について
TMSを導入するということは、 システム任せ
は、 これまで具体的にどのような仕事をどのように
で業務を効率化するということではない。 システ
行ってきたか、 今どのような仕事をどのように行っ
ムをアナログ判断の支援ツールとして使いながら、
ているかという情報は、 目標管理に集約される。 も
人事部だけでなく、 経営層と現場のマネジャーの
ちろん、 業績評価としての目標管理の達成度がA
人材マネジメントのレベルを上げていくことであ
とかBとかという処遇反映用の評語のことではな
り、 従業員自身のキャリア開発や働き方の最適化
い。 目標管理の具体的なコメント情報が重要なの
を支援することである。
である。 さらに、 それをリアルタイムで共有できる
ツールがあれば、 目標管理を本来のパフォーマン
最後に参考まで、 冒頭の[図表1]に掲げたカテ
スマネジメントに活かすことができるようになる。
ゴリーマップ ∼ に合わせて、 代表的なパッ
ところが、 目標管理制度の運用の現状はという
ケージを幾つか挙げておく[図表5]。 商品・サー
と、 最もITツール活用が得意そうなIT業界の大
ビスの詳細については、 各提供会社のWEBサイ
手企業ですらExcelのシートをメールに貼り付け
トを参照していただきたい。
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労政時報
パッケージ例
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富士通マーケティング
東芝ソリューション
電通国際情報サービス
カシオヒューマンシステムズ
クレオマーケティング
NTTデータアイテックス
GLOVIA
Generalist
POSITIVE・STAFFBRAIN
ADPS
ZeeM
ePro_St@ff
ワークスアプリケーションズ
COMPANY HRシリーズ
日本オラクル
PeopleSoft
インフォテクノスコンサルティング
ROSIC
日本オラクル
シルクロードテクノロジー
サバ・ソフトウェア
Taleo, Fusion
WingSpan
Saba
サイエンティア
日立ソリューションズ
スマートカンパニー
リシテアCareer
●
制度運用系TMS
SAPジャパン
Success Factors
●
TMS
カシオヒューマンシステムズ
iTICE
●
分析系人事システム
SAPジャパン
SAP ERP HCM
●
ERP
アマノビジネスソリューションズ
CYBER XEED
●
就業管理システム
オービック
社
OBIC7
会
ワークスアプリケーションズ
供
COMPANY HRシリーズ
提
人事情報システムの代表的パッケージ
●
人事給与システム
図表5
R
L
http://lysithea.jp/
http://www.smartcompany.jp
http://jp.saba.com/
http://www.silkroad.com/jp/Products/WingSpan/Overview.html
http://www.oracle.com/us/products/applications/human-capital-management/overview/index.html
http://www.successfactors.jp/homepage/
http://www.rosic.jp/
http://www.casio-human-sys.co.jp/solution/itice-hero.html
http://www.oracle.com/us/products/applications/human-capital-management/overview/index.html
http://www.sap.com/japan/solutions/business-suite/erp/index.epx
http://www.worksap.co.jp/product_service/concept.html
http://www.i-abs.co.jp/
http://www.itecs.co.jp/products/epro.shtml
http://www.zeem.jp/service/personnel/
http://www.casio-human-sys.co.jp/solution/adps.html
http://www.isid.co.jp/positive/
http://www.toshiba-sol.co.jp/sol/gene/
http://www.fjm.fujitsu.com/solution/glovia_smart/
http://www.obic.co.jp/products.html
http://www.worksap.co.jp/product_service/concept.html
U
特集2