コンクリート標準示方書 - 北海道環境科学研究センター

土木学会「コンクリート標準示方書」
木学会 ンクリ
標準示方書」
における塩害の取り扱い
第2回 塩害等による構造物・環境影響に関するシンポジウム
2015年1月28日
北海道大学 大学院工学研究院
横田
弘
1
コンクリートの塩害進行のプロセス
コンクリートに塩分
が浸入し始める
錆汁
鉄筋が腐食し,
錆を作り始める
ひび割れ
錆が膨張し,コン
クリートにひび割
クリ
トにひび割
れを生じる
さらに錆が増え
ると,かぶりを
押し出す.
剥離・剥落・鉄筋破断
コンクリートの塩害進行のプロセス
2
塩害への対応
基本的な考え方
 設計だけ,維持管理だけ,で対応するには限
界がある
そこで,
 設計段階,施工段階,維持管理段階での配
設計段階 施工段階 維持管理段階での配
慮
 計画-設計-施工-維持の連係で性能確保
計画 設計 施工 維持の連係で性能確保
3
コンクリート標準示方書とは
4
 1931年に「鉄筋コンクリート標準示方書」として刊行
93 年に 鉄筋 ンクリ ト標準示方書」として刊行
 コンクリートの配合設計に関する技術,およびコンクリートを
用いた構造物の設計 施工 維持管理等に関する諸技術を
用いた構造物の設計,施工,維持管理等に関する諸技術を
取りまとめたもの.
 各種機関等が
各種機関等が,コンクリート構造物に関する実務に用いら
コンクリ ト構造物に関する実務に用いら
れる技術基準を発行する際に,技術的な標準として参照さ
れるもの.
れるもの
 国内外のコンクリートに関する最新の技術を反映したもの.
(約5年ごとに小改訂 10年ごとに大幅な見直し)
(約5年ごとに小改訂,10年ごとに大幅な見直し)
 限界状態設計法(1986年)をベースにした「性能照査型」示
方書(2002年).
5
最近のコンクリート標準示方書改訂の経緯
設計編
1996.3
構造性能照査編
2002.3
施工編
1996.3
996 3
設計編
2008.3
設計編
2013.3
施工編
2008.3
008 3
施工編
2013.3
維持管理編
2008.3
維持管理編
2013.8
2002 3
2002.3
ダムコン
クリート編
2008 3
2008.3
ダムコン
クリート編
2013.8
規準編
2002.3
規準編
2007.5
規準編
2010.11
舗装編
2002.3
舗装標準示方書
(舗装工学委)
耐震性能照査編
2002 12
2002.12
耐震設計編
1996.7
施工編(耐久性照査型)
基本原則編
2013.3
施工編
2002.3
00 3
2001.3
維持管 編
維持管理編
2001.1
ダム編
1996 3
1996.3
規準編
1996.3
舗装編
1996.3
ダムコンクリート編
規準編
1999.11
6
設計で考えられる対応
Serviceability criteria
G
General layout, dimensions, and selection of materials
ll
t di
i
d l ti
f t i l
Full probabilistic method
Probabilistic models
‐ resistance
‐ loads/exposure
‐ geometry
Limit states
Partial factor method
Design values
Design
values
‐ characteristic values
‐ partial factors
Design equations
Limit states
Limit states
Deemed‐to‐satisfy
method
Exposure classes, limit states and other
design provisions
Avoidance of deterioration method
deterioration method
Exposure classes, limit states and other
design provisions
Execution specification
p
Maintenance plan
Condition assessment plan
E ec tion of str ct re
Execution of structure
Inspection of structure
Maintenance
Condition assessment during operational service life
ISO 16204: 2012 Durability – Service life design of concrete structures
塩害を抑制・防止するためには
•
•
•
•
•
•
低W/Cコンクリート
混和材 混和剤
混和材・混和剤
かぶりの確保
高性能コンクリート(UFC)
表面保護 塗覆装
表面保護・塗覆装
非腐食鉄筋
• エポキシ樹脂塗装鉄筋
ポキシ樹脂塗装鉄筋
• ステンレス鉄筋
• 電気防食
など
7
8
塩害に対する照査
塩
塩害の程
程度
 塩害の進行
腐食ひび割れ
Icorr
腐食速度:評価が難しい
1
tlim
時間
腐食開始時期:比較的容易に評価でき,安全側
 照査
tlim> tL
腐食開始時期(tlim)が設計耐用年数(tl )よ
りも長いことを確認する
塩化物イオンによる鋼材腐食の照査
 コンクリート表面のひび割れ幅が
コンクリ ト表面のひび割れ幅が,鋼材腐食に対する
鋼材腐食に対する
ひび割れ幅の限界値以下であること.
→ 仕様規定であるが,これだけで照査しない.
仕様規定であるが これだけで照査しない
 鋼材位置における塩化物イオン濃度が
鋼材位置における塩化物イオン濃度が,設計耐用期
設計耐用期
間中に鋼材腐食発生限界濃度に達しないこと.
→ 部分安全係数法を採用している.
部分安全係数法を採用している
9
10
鋼材腐食に対するひび割れ幅の照査
 コンクリート表面におけるひび割れ幅が,鋼材の腐食
に対するひび割れ幅の限界値以下であることを確認
する.
 鋼材腐食に対するひび割れ幅の限界値は,鉄筋コン
鋼材腐食に対するひび割れ幅の限界値は 鉄筋コン
クリートの場合,0.005c(cはかぶり)としてよい.ただし,
0 5mmを上限とする
0.5mmを上限とする.
 鉄筋コンクリート部材は,永続作用による鋼材応力度
が
が,下表に示す鋼材応力度の制限値を満足すること
表
す鋼材応力度 制限値を満足する と
により,ひび割れ幅の検討を満足するとしてよい.
常時乾燥環境
(雨水の影響を受け
ない桁下面など)
140 N/mm2
乾湿繰返し環境
(桁上部,海岸や川の水面に
近く湿度が高い環境など)
常時湿潤環境
(土中部材など)
120
100
塩化物イオンによる鋼材腐食の照査
11
 塩化物イオンの侵入に伴う鋼材腐食に対する照査は
塩化物イオンの侵入に伴う鋼材腐食に対する照査は,
鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値Cdの鋼
材腐食発生限界濃度Climに対する比に構造物係数i
を乗じた値が,1.0以下であることを確かめることによ
り行うことを原則とする
り行うことを原則とする.
Cd
i
 1.0
Clim
i
Clim
Cd
:構造物係数(1.0~1.1としてよい)
構造物係数(1 0 1 1としてよい)
:鋼材腐食発生限界濃度
:鋼材位置における塩化物イオン濃度の設計値
塩化物イオンによる鋼材腐食の照査
12
Clim:鋼材腐食発生限界濃度(kg/m3).類似の構造物の
実測結果や試験結果を参考に定めてよい.それら
によらない場合,算定式により定めてよい.
凍結融解作用を受ける場合には,これらの値よりも
小さな値とするのがよい.
小さな値とするのがよい
 不動態被膜の破壊時点を腐食発生開始と定義
 腐食発生塩化物イオン濃度ClimをW/C,セメントの種
類で変化
 Climの単位をコンクリート1 m3中の塩素の質量で表
記(コンクリート総量表記
記(コンクリ
ト総量表記 kg/m3)
鋼材腐食発生限界塩化物イオン濃度
13
 普通ポルトランドセメント
Clim= -3.0(W/C) + 3.4
 高炉セメントB種相当,フライアッシュセメントB種相当
Clim = -2.6(W/C) + 3.1
 低熱ポルトランドセメント,早強ポルトランドセメント
低熱ポルトランドセメント 早強ポルトランドセメント
Clim = -2.2(W/C) + 2.6
 シリカフューム
カ
Clim = 1.20
適用範囲:0 30  W/C  0.55
適用範囲:0.30
0 55
コンクリート中の塩化物イオン濃度の表記
 イオン濃度表記
細孔溶液中の塩化物イオン濃度[Cl‐]
mol/L
 セメント従量表記
全塩素質量 セメ ト質量に対する比率
全塩素質量のセメント質量に対する比率
mass % of cement
 コンクリート総量表記
単位体積のコンクリートに対する全塩素の質量
kg/m3
14
15
コンクリート中の塩化物イオンの移動
コンクリート中の塩化物イオンの移動は複雑現象
コンクリ
ト中の塩化物イオンの移動は複雑現象
2 
  2 ca
ca
D  c


  D    
  Dea  2  ca 2   w w a  ca  w  w    f a ca 1,...,  , cb 1,...,  
 x
  w x x
t
x   w  x  

x


濃度差による拡散
化学反応
水の移動
水の移動に伴う濃縮
電位差による移動
C
 2C
 Da 2
t
x
(Fickの拡散第二法則)
塩害を支配する主要因
 塩化物イオンの供給量
(周辺の環境)
‐> C0 :表面塩化物イオン濃度
 コンクリート中の塩化物イオ
ンの移動のし易さ
(コンクリートの品質)
‐> D
> Dap :見掛けの拡散係数
 鋼材の位置
‐> c :かぶり
かぶり
塩化物イオン
Cl‐
鋼材
Cl‐
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塩化物イオン濃度の算定
cl:鋼材位置における塩化
物イオン濃度の設計値
Cdのばらつきを考慮し
た安全係数 1 3
た安全係数=1.3

C d   cl C0  1  erff


Ci:初期塩化物イオン濃度
=0.30 kg/m3
 0.1c
d

2 D t
d


 C
i


C0:コンクリート表面における塩化物イオ
クリ
表面
物
ン濃度(kg/m3)
18
塩化物イオン濃度の算定
Dk:コンクリ
:コンクリートの塩化物イオンに対す
トの塩化物イオンに対す
る拡散係数の特性値(cm2/年)

C d   cl C0  1  erff


 w
Dd   c Dk     D0
l 
 0.1c
d

2 D t
d


 C
i


D0:コンクリート中の塩化物イ
オンの移動に及ぼすひび
割れの影響を表す定数
2/年
:ひび割れの存在が拡散 w =400cm


σ ppe 

se


 または
   csd


係数に及ぼす影響を表
係数
ぼす 響を表 l  E 


E
s
p




す係数=1.5
コンクリートの塩化物イオン拡散係数
19
 水セメント比と見掛けの拡散係数との関係式
 電気泳動法や浸せき法を用いた室内実験または自然
暴露実験
 実構造物調査
見掛けの拡散係数/関係式を用いる場合
普通ポルトランドセメント
log10 Dk  3.0(W / C )  1.8
低熱ポルトランドセメント
log10 Dk  3.5(W / C )  1.8
高炉
高炉セメントB種相当,シリカフューム混和
種相
log
g10 Dk  3.2(W / C )  2.4
フライアッシュセメントB種相当
log10 Dk  3.0(W / C )  1.9
適用範囲:0.30  W/C  0.55
20
見掛けの拡散係数/電気泳動法により求める場合
21
Dae = k1kk2D
De
Dae:電気泳動試験による実効拡散係数から換算した見
掛けの拡散係数(cm2/年)
De :電気泳動試験による実効拡散係数(cm2/年)
k1 :コンクリート表面におけるコンクリート側,陰極側溶
液側それぞれの塩化物イオン濃度のつり合いにか
かわる係数
k2 :セメント水和物中への塩化物イオンの固定化現象に
セメント水和物中への塩化物イオンの固定化現象に
かかわる係数
見掛けの拡散係数/電気泳動法により求める場合
普通ポルトランドセメント
k1k2=0.21exp{1.8 (W/C)}
低熱ポルトランドセメント
k1k2=0.15exp{3.1 (W/C)}
高炉
高炉セメントB種相当
種相
k1k2=0.14exp{1.6
p{ ((W/C)}
)}
フライアッシュセメントB種相当
k1k2=0.37exp{1.1
=0 37exp{1 1 (W/C)}
適用範囲:0.30  W/C  0.55
22
23
コンクリート表面塩化物イオン濃度
 塩害に対する照査で用いるコンクリート表面塩化物イ
オン濃度は,対象地域の飛来塩分量に応じて設定す
る.
 過去の類似の構造物の実績や実測データによらない
場合は次の表によってよい.
コンクリート表面塩化物イオン濃度 C0 (kg/m3)
飛沫帯
飛来塩分が 北海道,東北,
北海道 東北
北陸,沖縄
多い地域
飛来塩分が
少ない地域
上記以外
13.0
海岸からの距離(km)
汀線付近
0.1
0.25
0.5
1.0
9.0
4.5
3.0
2.0
1.5
4.5
2.5
2.0
1.5
1.0
24
コンクリート表面塩化物イオン濃度
飛来塩分捕集箱(土研式タンク法)やドライガーゼ法
飛来塩分捕集箱(土研式タンク法)やドライガ
ゼ法
(JIS Z 2382)などを用いて測定された信頼性の高い飛
来塩分デ タが利用可能な場合
来塩分データが利用可能な場合
C0  0.016  C  Cabb  1.7
2
ab
b
Cabb  30.0
C0 :コンクリート表面塩化物イオン濃度(kg/m
ンクリ ト表面塩化物イオン濃度(k / 3)
Cab:飛来塩分量(mdd)
かぶりの設計値(設計耐用年数50
かぶりの設計値(設計耐用年数
50年)
年)
コンクリート表面塩化物イオン濃度
25
かぶりの設計値(設計耐用年数100
かぶりの設計値(設計耐用年数
100年;ひび割れの影響)
年;ひび割れの影響)
w/l
w/l
w/l
w/l
26
27
構造物の性能と設計耐用期間
構造物の安全性
設計時に推定された性能
診断時に推定された性能ケース①
(対策の必要なし)
設計時設定
性能レベ
性能レベル
補修・補強時設
定性能レベル
補修等
要求性能
レベル
診断時に推定された
性能ケース②
補修後に推定
された性能
時間
予定供用期間
竣工時
竣
時
診断時
設計耐用期間
残存予定供用期間
ケ
ケース②での
②で
残存耐用期間
ケース②に対して補修等
を考慮した残存耐用期間
塩化物イオンによる鋼材腐食の照査
[維持管理編]
[維持管理編:本編]
[維持管理編:標準]
[維持管理編:劣化現象・機構別]
[維持管理編:付属資料]
28
29
塩化物イオンによる鋼材腐食の照査
構造物
構造物群
構造物群の
維持管理計画
構造物の
維持管理計画
必要に応じて
維持管理計画
の見直し
点
記 録
記 録
記 録
記 録
検
劣化機構の推定
診
記
断
予
測
録
参照
性能の評価
対策の要否判定
対策
不要
対策必要
対
策*
*) 対策として解体・撤去が選択された場合に
は,記録を行った後に終了する.
30
劣化機構の推定
設計時に想定した
劣化機構,環境作用
竣工時期
環境条件,使用条件
使用材料,施工管理・検
査の記録
点検結果(変状の特徴,
劣化指標)
劣化機構の推定
中性化
塩害
凍害
化学的侵食
アルカリシリカ反応
疲労
すりへり
複合劣化
参 照
劣化現象の確認
[維持管理編:劣化現象・機構別]
章(水掛かり)
2章(水掛かり)
3章(ひび割れ)
4章(鋼材腐食)
31
塩害に対する維持管理限界の例
点検結果の蓄積→予測結果の修正,予測精度の向上
構造物の性能
構造物の性能の変化(実際)
維持管理の初期で行った
劣化予測の精度の幅
維持管理期間中の点検
結果に基づき修正を行っ
た劣化予測の精度の幅
予測の修正と
精度の向上
平均的な予測値
供 期
供用期間
供用中の点検
維持管理の初期段階
, 定期点検)
(日常点検,定期点検)
(日常点検
(初期点検)
塩害に対する維持管理限界の例
32
水掛かりによる劣化への対応
33
塩害に対する維持管理限界の例
34
35
維持管理限界
要求性能
劣化の程
程度
時間
性能低下
性
性能低下
性
劣化の程度
度
塩害に対する維持管理限界の例
維持管理限界
時間
要求性能
要
塩害に対する調査項目の例
36
外観上のグレードと劣化の状態
鉄筋コンクリート
プレストレストコンクリート
37
塩害に対する補修の効果
38