様式 3 学 位 論 文 要 旨 研究題目 (注:欧文の場合は、括弧書きで和文も記入すること) 1)題 名 The Hippo pathway transcriptional co-activator, YAP, confers resistance to cisplatin in human oral squamous cell carcinoma (ヒト口腔扁平上皮癌における Hippo シグナル経路の転写活性化補助因子である YAP がもたらすシスプラチン耐性能) 兵庫医科大学大学院医学研究科 医科学専攻 器官・代謝制御系 口腔科学 (指導教授 岸本裕充) 氏 名 吉川 恭平 シスプラチンは頭頸部扁平上皮癌の有効な治療薬として広く用いられている抗癌剤で あるが、しばしば耐性獲得が問題となる。これまでにも耐性機序に関する研究は多く存 在するが、いずれも耐性の克服には至っていないのが現状であり、新たな耐性メカニズ ムの発見ならびに研究が望まれている。YAP は、一般的に器官の大きさや細胞増殖を制御 する Hippo pathway の転写活性化補助因子として知られているが、近年では、YAP が癌細 胞の上皮間葉移行(EMT)やリンパ節転移に関連し、また、タキサン系抗癌剤に対する耐 性獲得にも関与するとの報告されている。しかし、口腔扁平上皮癌におけるシスプラチ ン耐性と YAP の関連に関する報告はない。本研究では YAP の発現とシスプラチン耐性と の関連について解析し、YAP が口腔扁平上皮癌シスプラチン無効症例の化学療法における 新たなターゲットとなりうるかを検討することを目的とする。 本研究では、 まず 3 種類の異なる口腔扁平上皮癌由来培養細胞株(SCCKN,HSC-3,OSC-19) を用いてシスプラチン耐性細胞を樹立した。シスプラチンに対する IC50 を算出したとこ ろ各耐性細胞は約 5~7 倍の耐性度を示した。それらの中で、耐性細胞で細胞形態の膨化 を認め、Hippo pathway の関与が示唆された OSC-19 について解析をすすめた。 まずウエスタンブロット法にて、親株と耐性細胞株における YAP を含めた Hippo pathway 関連タンパク質発現を比較検討したところ、YAP の発現には変化を認めない一方 で、耐性細胞株で YAP のリン酸化が著明に低下していた。YAP は核内への移行により薬剤 耐性に関与する可能性が報告されているため、免疫細胞染色にて YAP の局在性を比較検 討したところ、耐性細胞株で核内に YAP が高発現していることが確認された。 次に耐性細胞に対して YAP の siRNA 処理を行い、ウエスタンブロット法と免疫細胞染 色にて YAP がノックダウンされたことを確認後、シスプラチン感受性を検討したところ、 有意にシスプラチン感受性が増加した。また、細胞増殖能についても検討した結果、有 意に増殖能が低下していた。以上の結果より、YAP が中心を担う Hippo pathway は口腔扁 平上皮癌のシスプラチン耐性獲得に関与する新たなメカニズムの一つである可能性が示 唆された。
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