常時 10 人以上の労働者を使用している使用者には就業規則の作成義務があります。 この常 時 10 人以上使用しているかどうかの判断は企業単位ではなく、事業場単位で判断されます。 営業所、店舗、工場等、複数の事業場をかかえる企業で、全事業場に共通の就業規則を適用 している場合も少なくありませんが、このような場合であっても、就業規則の作成義務が事業場単 位であることから、原則としては事業場ごとに過半数組合または過半数代表者に意見聴取を行い、 各事業場の所轄の労働基準監督署長にそれぞれ届け出なければなりません。 しかし、通達(昭 39.1.24 基収 9243)では、就業規則を本社で作成し全事業場に共通に適用す る場合で、各事業場の労働者の過半数が、ある大きな組合の組合員であるといった場合には、本 社において当該労働組合の本部に意見聴取を行えばよく、各事業場にそれぞれ対応する各労働 組合(地方本部または支部等)の意見聴取は行わなくても差し支えないとしています。 但し、全社では当該労働組合が過半数を組織している場合でも、ある事業場では過半数を組 織できていない場合には、このような取り扱いはできず、そのような場合は当該事業場の労働者 の過半数が加入している労働組合(それがないときは、当該事業場の労働者の過半数を代表す る者)の意見を聴取しなければなりません。 しかし、これは労働組合のある大きな会社での話しで、中小企業には馴染みませんでした。 その後平成 15 年 2 月の通達(平 15.2.15 基発 0215001)によって、複数の事業場を有する企業等 が、当該企業等の複数の事業場において同一の内容の就業規則を適用する場合には、本社の 所轄の労基署長に一括して就業規則を届け出ることがようやく可能になりました。 これにより、事業所の所轄労基署が複数ある場合でも届出先は1箇所ということになり、効率化 が図られました。 以下にその要件をまとめてみましたので、複数の事業所をお持ちの企業様はご参考になさってみ て下さい。 <本社一括届け出の要件> ①本社を含む事業場数に対応した必要部数の就業規則を提出すること ②本社で作成された就業規則と各事業場の就業規則が同一内容であること ③労働組合などの意見を聴取した書面の正本を各事業場の就業規則に添付すること (特定社会保険労務士 永妻 剛英)
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