非線形ポリア壺の相転移と情報カスケード@東京電機大学

第53回鳩山サイエンスフォーラム
2015.05.28
東京電機大学理工学部
非線形ポリア壺の相転移と情報カスケード実験
ヒトの間の“強磁性”相互作用と相転移
守 真太郎 北里大学理学部物理学科
専門:統計物理(確率モデル、経済物理)
略歴:1996年東大理学系研究科物理学卒(和達研究室)
現在 北里大学理学部物理学科講師
全48ページ
Q.他人の評価を信じる?
Big Data 2014
主観的評価は独立ではない。
簡単に他人の主観的評価に影響される
Q.他人の評価を信じる?
主観的評価は独立ではない。
簡単に他人の主観的評価に影響される
Why ?
他人の情報のコピー=社会的学習(social learning)
独自の情報収集=個人的学習(individual learning)
社会的学習 VS 個人的学習
他人の情報のコピー=社会的学習
低コスト、中から高精度
文化・学習・社会的規範・流行
独自の情報収集=個人的学習
高コスト、高精度
研究・開発
社会的学習:CP的には非常に合理的
目の前のキノコが毒キノコかどうかは食べずに先達にきいたほうがいい
社会的学習:CP的には合理的
集団での選択の観点からは好ましくない
IEM Prospectus: PRES12_WTA
2012 US Presidential Election Winner-Takes-All Market
正解?
集団知
複数の選択肢から選ぶ場合、
多数派の選択肢が正解。
コンドルセの定理
marquis de Condorcet(1743-1794)
集団知(多数決=民主主義)が正しいための条件
=正解がある&正しい情報&独立性&多人数
Voter Model
Random
集団知(多数決=民主主義)が正しいための条件
=正解がある&正しい情報&独立性&多人数
民主主義(多数決)は正解を選ぶ手段ではなく、
集団のコンセンサスをとる手段
正解統
社会的学習=他者情報のコピー=スピンを揃える=強磁性相互作用
相転移?
情報カスケード実験
EXP-I
EXP-II
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情報カスケードとは
(1)2拓のような、離散的な選択
(2)一人ひとりが順番に回答
(3)各自の持つ情報は非公開
(4)過去の他人の選択を参照
過去の他人の選択の多数派と自己
情報が一致しないとき選択する傾向
=情報カスケード、合理的ハーディング
真
偽
自己情報(秘密):
選択(公開):
1
2
3
4
5
6
a
a
b
b
b
b
A
A
A
A
A
A
ここから情報カスケードスタート
情報カスケード実験I (2010)
14:漫画「ワンピース」に登場する、バギー海賊団船長「道化
のバギー」の懸賞金はいくら?(2010年9月1日現在)
A.1300万ベリー
B.1500万ベリー
2010年北里大での実験(被験者数62=31+31名、問題数100)
ノーヒントで回答
One by One
1
2
3
4
A
1
2
13名
・・・・・・
B
3
4
18名
31
カンニングして回答
One by One
1
2
A
1
4
2
30名
3
4
・・・・・・
B
3
1名
31
誤答者数
正答率 1/31
正答率 18/31
正答者数
情報カスケード実験I(2012)
94:ロダンの「考える人」が肘をついている場所はどこ?
A. 右脚
B. 左脚
2012年北大での実験(被験者数124名、問題数120)
正解:B:左脚
ノーヒント
正答率
カンニング
グループA
グループB
問題21:カンボジアにある世界遺産アンコールワットは、元々、どの宗教の寺院遺跡?
A:ヒンドゥ―教
B:ゾロアスター教
問題29:「旅に病んで夢は枯野を駆け巡る」 この句を詠んだ俳人は誰?
A:松尾芭蕉
B:小林一茶
カンニングでの正答率
ノーヒントでの正答率
実験
T:列長
グループ数
問題数
実験1@北里(2010)
31
2
100
実験2@北大(2011)
平均50.8
2
120
実験3@北大(2012)
平均60
2
120
実験4@グー(2013)
1
約200
10
実験5@北里(2013)
平均83.2
1
120
ノーヒントでの回答
カンニングして回答
ヒトの間の強磁性相互作用
応答関数:他人の選択の影響
正解
不正解
t人までの正答率
t人までの正答率z(t)=zの時の、t+1番目の被験者の正答率
ヒトの間の強磁性相互作用
情報カスケード実験I
ミクロとマクロの間の数理
非線形(一般化)ポリヤ壺
このマクロな変化は相転移である。
情報カスケード転移
Phase transition to two-peaks phase in an information cascade voting experiment,
S.Mori, M. Hisakado and T. Takahashi, Phys.Rev.E86(2012).
情報カスケード実験II
A
自分の引いた玉の色
T
# of Sequences
63(51)
200+200+200 (q=2/3,5/9,7/9)
B
EXP-II: Urn
情報カスケード実験II
ここまでのまとめ:ヒトの間の強磁性相互作用
t人までの正答率z(t)=zの時の、t+1番目の被験者の正答率
情報カスケード実験I
情報カスケード実験II
EXP-II: Urn
ポリア Pólya 壺
ポーヤ・ジェルジ(ハンガリー語: Pólya György、
ジョージ・ポリアなどとも表記される、1887年12月
13日 - 1985年9月7日)はハンガリーの数学者
(Wikipedia)
ここから11ページほど理論の話
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(線形)Pólya壺:感染現象のもっとも単純なモデル
1/3 (1/4)
1/2
1/3 (1/2)
1/2
1/3 (1/4)
G.Pólya, Sur quelques points de la th´eorie des probabilit´es, Ann. Inst. Henri Poincar´e,1,117(1931)
線形Pólya壺の性質
:最初の赤球、青玉の数
β分布
がどこに収束するかはランダム !
なぜ、こうなるのか?
過去の影響が永遠に続くから
Wikipedia
の影響が甚大!
ドミノ効果
Pólya壺とドミノ効果
C(t):最初の玉の色と後の玉の色との相関
線形Pólya壺の性質
Wikipedia
ドミノ効果の強さ
最初が間違ったときの影響の強さ
最初が青のとき、後の玉が青の
確率は最初が赤のときより
1/3大きい
線形Pólya壺
がどこに収束するかはランダム !
情報カスケード実験I
非線形Pólya壺
が非線形
?
?
非線形Pólya壺:不動点と安定状態
B. Hill, D. Lane and W. Sudderth, A strong law for some generalized urn processes, Ann.Prob.,8,214(1980).
新技術、商品の採用などでのロックイン現象のモデル
ロックインとは、技術、製品の選択において、すでに多くが採用していることによるスケールメリットが
大きく、現在の市場占有率が次の採用するかどうかに強く影響し、結果としてある技術・製品が
市場を独占する現象
W. B. Arthur, Competing Technologies, Increasing Returns, and Lock-In by Histrical Events ,Econ. Jour.,99, 116(1989).
非線形Pólya壺:q(z)が対角線と接するとき
Touchpoint
R.Pemantle, When are touchpoints limits for generalized P´olya urns?, Proc. Amer. Math.Soc.,113,235(1991).
安定
安定
touchpoint
不安定
非線形Pólya壺
安定状態がz+のみ
安定状態がz+、z-の2個
?
C(t)の極限値cは、
X(1)=1,0で出発してz+ or z-に収束する
確率の差とq(z+),q(z-)の差の積
q(z)=zの解が一個しかないならc=0
安定解が2個以上で、X(1)の記憶が永遠
に続くならc>0
非線形Pólya壺:C(t)の振る舞い
Touchpoint があると?
安定
安定
非線形Pólya壺:イジング的q(z)
h=0:連続転移
h>0:不連続転移
Correlation function for generalized Polya urns: Finite-size scaling analysis
S.Mori and M.Hisakado, arXiv:1501.00764
非線形Pólya壺:Z2対称の場合のC(t)とスケーリング
普遍関数
は x=0の近傍でなめらか
Correlation function for generalized Polya urns: Finite-size scaling analysis
S.Mori and M.Hisakado, arXiv:1501.00764
ここまでのまとめ:情報カスケード実験と非線形Pólya壺
情報カスケード実験I
情報カスケード実験II
EXP-II: Urn
相転移の検証=秩序変数cの評価
ラスト4ページ
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情報カスケード実験I
c,lの評価方法
相関時間
緩和時間
情報カスケード実験I
情報カスケード実験I
情報カスケード実験II
c,lの評価方法
情報カスケード実験II
情報カスケード実験II
まとめ
ポリア Pólya 壺のミクロ・マクロ・実験
強磁性相互作用:ミクロ
情報カスケード転移:マクロ
Wikipedia
社会的学習の有効性を考えると、
今後、情報技術の発展により、
一層相互作用は強くなる。
ミクローマクロの理解をもとに、より
正確な情報集約の手法を開発して
いくことが重要
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関連文献情報
実験
Phase transition to two-peaks phase in an information cascade voting experiment
S.Mori, M. Hisakado and T. Takahashi, Phys.Rev.E86(2012)026109-026118.
Collective adoption of Max-Min strategy in an information cascade voting experiment
S.Mori, M. Hisakado and T. Takahashi, J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 084004-084013
Correlation function of generalized Polya urns: Experimental Study
M.Hino, M.Hisakado,T. Takahashi and S.Mori, in preparation
理論解析
Digital Herders and Phase transition in a Voting model
M. Hisakado and S.Mori, J.Phys.A44(2011)275204.
Finite-size scaling analysis of binary stochastic processes and universality classes of information cascade phase transition
S.Mori and M. Hisakado, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 054001 (2015)
Correlation function for generalized Polya urns: Finite-size scaling analysis
S.Mori and M.Hisakado, arXiv:1501.00764
相転移の分類 ?
相転移:マクロな性質の変化
臨界点
液相
蒸気圧曲線(液相ー気相が共存)
固相
三重点
気相
S
強磁性体の相図
N
N
臨界点
S
S 強磁性相
N
N
常磁性相
S
磁化が正負の状態が共存
S
N
非線形Pólya壺の相図
鉄=水=ヒト?
相転移の分類について
秩序変数と臨界指数β
液相
T=Tcで微分不連続
気相
液相
上
上
S
N
S
N
下
気相
下
H.Stanley Introduction to Phase Transitions and Critical Phenomena, Oxford(1971)
鉄=ハイゼンベルグUC
非線形Pólya壺:厳密に解ける場合
鉄=ハイゼンベルグ
水=イジング
非線形ポリヤ壺=平均場イジング(β一致)
ただし、非線形ポリヤは非平衡相転移
また、q(z)の詳細に依存
実験設定の補足
・・・・・・
t-(r-1)
t-1
t
t+1
r subjects
EXP
{r}
1
{0,1,2,3,5,7,9,ALL}
2
{0,1,5,11,21,ALL,Odds}
3
{0,ALL,Odds}
4
{0,ALL} and {0,Odds}
5
{0,ALL} and {0,Odds}
理想的には、被験者は各問題に対して
一回のみ回答がベスト
61
c=0
c>0
62
c=0
c>0
63