「 「シャイ イ(恥ず ずかしが がりや) な?褐 褐藻の精 精子」

徳田先
先生の部屋
第7回
第7回
「
「シャイ
イ(恥ず
ずかしが
がりや)な?褐
褐藻の精
精子」
徳田 廣
プロフィール
略歴:
大学農学部教
教授を定年退官
官後、1990 年
年から 1994 年まで
年
JANUS
S に顧問とし て在籍
東京大
専門:
海洋の
の油汚染、海
海洋生態学、藻
藻類学
著書:
・ 海藻資源養殖学
学(緑書房)
・ 海藻検索図鑑(北隆館)
・ 図鑑海藻の生態
態と藻礁(緑
緑書房)
動物界では
動
、体外に特殊
殊な化学物質
質を分泌して
て、同
外 国 産 の シ オ ミ ド ロ の 一 種 (Ectoca
arpus
種の他個体に 特有な行動や発育分化を起こさせ
せる現
sil
iliculosus )や
やコンブの一
一種(Lamina
aria digitata
ta )の
。こうした現
現象を起こす
す物質は、フ ェロ
象が見られる。
精子は、卵が発
発したフェロ
ロモンを感知
知した後にど
どのよ
れている 1)。
モン(pheromoone)と呼ばれ
に達するかを
を、ビデオで
で観察した記
記録が
うな軌跡で卵に
ミツバチや アリなどの社会性昆虫におけるフ ェロ
ある。
特に進んでお
おり、フェロモンが社会
会性昆
モンの研究は特
依ると、褐藻
藻の精子は恥
恥ずかしがりやな
その映像に依
の認知・交信
信・コロニーの
の維持定位・ 行動
虫の個体相互の
雌
受けたからと
といって直情
情的に
のだろうか、雌の誘いを受
れてい
等に大きな役 割を果たしていることが解明され
はなく、シオ
オミドロでは
は、大きならせん
卵に迫ることは
。
る。
時間をかけて卵との距離
離を縮
状の軌跡を描きながら時
フェロモン は極めて微量で臭覚刺激として受 容さ
卵の上に達す
すると、卵を
を見定めるか
かのよ
小してゆき、卵
れ、生理活性を
を発現する。フェロモン
ンの種類には
は、性
3 卵と受精す
囲を数回旋回
回してから 3)
するの
うに、卵の周囲
性周期同調フ
フェロモン、警報フェロモ
警
モン、
フェロモン、性
ブの精子は、シオミドロ
ロほど鮮明な
な軌跡
である。コンブ
標フェロモン
ン、集合フェ
ェロモンなど
どがある。
道標
小
ん状の軌跡を
を描きながら卵に
ではないが、小さならせん
ある。
近づく 4)のであ
植物界に目を
植
を転じると、
、海藻でも上
上述のような
な現象
が報
報告されてい
いる。褐藻類
類の雌雄異株
株の種類にお
おいて
では、フェロモンを分
分泌しない海
海藻では、配
配偶子
は、雌性配偶子
子(卵)が雄性
性配偶子(精子
子)を誘引す
するた
amete)の運動
動性や受精に
に至る過程は
は、どのようにな
(ga
ンを分泌する
る。この種の
のフェロモン
ンは、
めにフェロモン
っているのだろうか。
あるいは性誘
誘引物質と呼
呼ばれ、すで
でにシ
性フェロモンあ
バマタ
オミドロ目(Ecctocarpales))など 14 目 40 種(ヒバ
いて、10 種類
類の性フェロ モン
種 Fucus spp.など)につい
2)が知られてい
が
いる。
1
仕組みをもつ
つ種類
配偶子どうしを出会い 易くする仕
がある 5)。
緑藻のアオノ
ノリ類(Ente
eromorpha spp.)
s
たとえば、緑
U
spp.)は雌
雌雄異株であ
あるが、配偶
偶子は
やアオサ類(Ulva
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徳田先生の部屋
第7回
鞭毛(flagellum)を持って運動性を有している。そして
参考文献
細胞内に光を感じる眼点(stigma)を持っているので
1)八杉龍一、小関治男、古谷雅樹、日高敏隆(1996)岩波 生物
学辞典、第4版、岩波書店、2027pp
2)北川勲、伏谷伸宏 編(1989)海洋生物のケミカルシグナル、
講談社、204pp
3)Allen, N. S. and S. H. Brawley(1984)Observation of
exocytosis in Fucus vesiculosus gametes using
video-enhanced light microscopy: a video report. Cell
Motility, 4(1), 25-27.
4)Geller, A. and D. G. Mueller(1981)Analysis of the flagellar
beat pattern of male Ectocarpus siliculosus
gamates(Phaeophyta)in relation to chemotactic
stimulation by female cells. Journal of Experimental
Biology, 92, 53-66
5)広瀬幸弘(1959)藻類学総説、内田老鶴圃、593pp
光が来る明るい方向に移動する。波の静かな時には、
雌雄の藻体から放出された配偶子が雲のように群が
って海面に浮き上がり、そこで受精して形成された接
合子(zygote)では、光に対する反応が逆転して暗い方
すなわち海底に向かい、海底の基物に付着して発芽し、
生育していくのである。
紅藻では、雄性配偶子は小さな球形の細胞で、精虫
(spermatozoid)と呼ばれ、鞭毛などの運動する仕組み
を持たず、海水の動きに身をまかせている。雌性配偶
子は造果器(carpogonium)と呼ばれ、精虫を受け止め
易いように、受精毛(trichogyne)という突起を体表か
ら突き出している。
2007 年 09 月
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