~非認知的スキル~

平成 27 年 9 月
事務所便り 第 89 号
~非認知的スキル~
非認知的スキルとは、人間がもつ能力のうち、認知的スキル以外の領域に属する能力
である。シカゴ大学の経済学者 ジェームズ・ヘックマンが名付けた。彼の研究によれば、
非認知的スキルの高低が我々の人生の成功に大きな影響を及ぼしている。
認知的スキルとは、文章の読解力や計算力、抽象的な概念に対する理解力等の能力を
指す。認知的スキルの高いことは、学校の成績が優秀でいわゆる頭が良いことであり、
科学的指標としては IQ の高さで表現される。いままで長い間、認知的スキルこそが成
功のための必要条件であると信じられてきた。一生懸命勉強し一流大学を卒業してこそ
成功への切符を手にすることができるのだと。
一方、非認知的スキルとは、協調性、外向性、情緒安定性、未知の物事に対する開放
性、勤勉性等である。他の心理学者の表現を借りれば、感謝の気持ち、楽観主義、好奇
心、物事をやり抜く力や粘り強さ、自制心等となる。これら非認知的スキルが年収や社
会的地位と強い正の相関関係にある訳である。
この事実は、ヘックマン教授の研究結果に触れるまでもなく、我々は薄々直観として
感じていたことかもしれない。一流大学を卒業した認知的スキルが高いと考えられる人
物が実際の業務では使えなかったり、お客さんに好感をもたれなかったりすることはよ
くある話である。逆に、エリートコースとはまったく無縁の人物が愚直に頑張ったこと
によって、目覚ましい成長を遂げた事実を目の当たりにしたことも一度や二度ではない
はずだ。我々の直観が科学的に証明された訳である。
巷の書店において、「自分を変える」などと銘打った自己啓発本がうずたかく積まれ
ているのを目にすることがある。そのような類の本が売れるからだろうが、それらの本
の中身は、例えば成功を信じることの重要性や良好な人間関係を築くための要点などが
書かれている。詰まる所、非認知的スキルを獲得するための方法が記述されているので
ある。実社会においては、非認知的スキルを獲得することこそ重要なのであり、認知的
スキルの有無は殆ど意味をなさず、知に働けば角が立つことを人々は無意識のうちに了
解しているのである。
ところで、実は非認知的スキルと学歴の間にも正の相関が認められている。非認知的
スキルが高い、取り分け高い勤勉性をもった人物は学校でもまじめに勉強し、譬え IQ
が他の同級生より劣っていたとしても粘り強く人一倍勉強するためである。『試験に出
る英単語』一冊まるごと覚えるまで、やり抜く力を備えているのである。このような努
力家こそが、厳密な意味で、成功するための必要条件かもしれない。
最後に、私の周囲を見渡して、自信に満ち溢れて仕事をしておられる方、会社が飛躍
的に成長している社長、お客さんから信頼され確固とした地位を築いておられる税理士
さん達、一部の例外を除き彼らの殆どは、認知的スキルの象徴とされる学歴とは無縁で
あることを付け加えておく。
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