第12号(27年1月号) 広報埼玉成年後見支援センター 大きく変わる介護保険制度 ― 介護給付抑制と自己負担増 理事 薛(せつ) 広報埼玉成年後見支援センター 平成27年1月20日 平成27年 副代表理事・ 梅澤利彦 静也 今号は前回の続きで法人部での動き について述べます。現在、受任のマ ニュアル作りは、スケジュール表に従って精力的に進め られております。業務マニュアルのポイントは、次の4 つのブロックに分けられます。 ①先ず受任管理体制では 業務の手順書作りがメインで す。これは法人後見受任業務の具体的な事務処理手順に ついて規定するものです。街中の書店では総論的な解説 書は多くみられますが、実際の具体的な手順を解説した 手順書は見当たりません。業務の手順は、個人で受けた 場合でも法人で受けた場合でも、そして法定でも、任意 でも、その流れは大きな変わりありません。しかし、法 人受任の場合は、誰が見ても分かるようにしいておかね ばならないところがポイントです。フローにしても、様 式についても、いわゆる文字で残しておくことです。 ②財産管理の体制では、お預かりした大切な財産を事故 なく出納することが業務の根幹ですから、特に預貯金管 理の出納帳のソフトによる管理が必須です。物理的には 貸金庫等の確保も重要です。 ③電算管理の体制では、将来受任件数が増えて行けば、 データーを電算で管理していくことが必要になってまい ります。多量な各種帳票類の出力、受任件数の拡大に伴 う効率的な処理能力のアップが避けられません。併せて、 被後見人の個人データーの保護対策も必須です。 ④報酬管理の体制では、法人を運営していく費用につい てです。財政基盤の確立に向けての具体案、安定した運 営を図るためにも、将来を見据えた法人の運営と担当会 員の収益のバランスを図る報酬の配分の割合を決めてい く必要があります。 以上のように、決めておかねばならないことが目白押し です。現在、①の手順書が確定しております。残された テーマについて精力的に部会を開いて、決めるべきこと を決めていきたいと考えております。 編集後記 12月の研修会は、当会の監事でもある税理士の坂田さんより、平成2 7年1月より施行される相続税の改正を中心にお話し頂きました。時 宜を得た研修で大いに参考となりました。 ポイントとなる変更は、基礎控除の4割引下げと最高税率の引上げ (50%→55%)です。 これ以外にも小規模宅地等の特例の見直しや未成年者・障害者の税 額控除の引上げ、さらに、贈与税の税率構造の変更や相続時精算課 税制度の変更と多岐に亘る改正が行われます。 ただ、実際に相続税の課税対象となる所帯は、全国平均の4.2%が 約1.5倍になるものと予想されています(但し東京国税庁管内では7 %が約2倍へ)。改正によっても課税所帯はそう多くはないとの印 象もありますが、この機会に課税対象外の皆様にも相続について考 えて頂く好機でもあるとの認識をもって頂きたいと思います。当会 は成年後見を中心とする活動を行っていますが、併せて相続・遺言 の普及・啓蒙にも注力した活動が求められていると思います。まだ 多くの地域で多くの人々が我々の研修や講演をお待ち頂いているも のと考え、大いに活動していきたいものです。 (小 嶋 秀 典) 活かされてこそ資産! 空テナント おまかせください!! TEL 第12号(27年1月号) 受任マニュアルの進捗状況 2000年、21世紀の超高齢社会の到来を見据えて創設された介護保 険制度も丸15年を経過し、急速な高齢者の増加と若年層の減少を目 の前にして、効果的・効率的なケアシステムの構築が急務となって います。 急速な高齢者の増加と若年層の減少 要介護率が高くなる75歳以上の人口は2025年までの10年間大都市部 を中心に急速に増加し、2025~2060年にかけて2200万人台で推移す ると見込まれています。また、介護保険料を負担する40歳以上人口 は、2025年の7700万人台から減少に転じ、2060年には6000万人程度 になると推計されています。(*)その結果、介護費の総額は2014 年度には10兆円に膨らみ、2025年度には21兆円に増える見通しとなっ ています。 介護保険サービス費用の抑制(介護報酬抑制) そこで厚労省は、3年に一度の介護報酬改定が行われる2015年度は、 介護人材不足対策のための介護職員の賃上げに充てる費用(処遇改 善加算)の増額を除き、介護保険サービスの費用を極力抑制する方 針をとっています。抑制の対象は、特別養護老人ホーム(特養)や デイサービス等であり、厚労省の調査による事業者の利益率が特養8. 7%、デイサービス10.6%と高いことがその理由とされています。 また、2015年4月より特別養護老人ホームの入所対象が要介護3 以上とされ、2016年4月からはデイサービスのうち小規模型通所介 護が、新たに創設され市町村が管理指導する定員18人以下の地域 密着型通所介護に移行することになっています。 利用者自己負担の引上げ、低所得者には負担増を避け補助方針 2015年8月より、創設以来利用者負担1割で運営されてきた介護 保険に、単身で年金収入280万円以上の所得を有する方のみ利用者 負担2割(2人以上は年金収入+その他の合計所得金額<346万 円の場合は1割負担となる)が導入されます。 また、同じく2015年8月より、高額サービス費や特養の補足給付 の見直しが行われます。さらに、特養の多床室の部屋代15,000円程 度が全額自己負担となります。 このように、2015年は介護保険の本格的給付抑制、自己負担増の 始まりの年になりそうです。 *人口の将来推計は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将 来推計人口」(2012年1月推計) 空アパート 平成27年1月20日 049-291-5530 4 1月20日 第12号 広報 埼玉成年後見 支援センター 編集発行 NPO法人埼玉成年 後見支援センター 代表理事 藤原欽彌 〒338-0003 さいたま市 中央区本町東2-18-1 メゾン・ラ・テール101 TEL:048-711-3701 FAX:048-711-3710 ホームページ http://www.ssc-npo.jp の中にも知られるようになりました。日本の人口は、現 在四人に一人が高齢者ですが、今後さらに高齢者は増加 して行きます。 我々は、一般市民が容易に成年後見を利用して、安心・ 安全な生活を送ることができる地域社会を作ることを目 指しています。 皆様のご支援、ご協力の程宜しくお願い致します。 法人後見事業の推進について 代表理事 藤原 欽彌 明けましておめでとうございます。輝かしい新年を迎 え、皆様のご健勝とご多幸をお祈り致します。 いよいよ法人後見の受任基盤が、法人部長以下沢山の 会員の努力で整って来ました。本部も相談室へ移転し、 本部事務所として運営しています。 法人後見には、個人後見と違って、次のようなメリッ トとデメリットが有ります。 メリットは、①若年者等長期継続可能性案件に対応し易 い。②組織化された集団メンバーにより、多様な専門性 を発揮できる。③担当者の交代が可能である。④支援業 務が膨大や広域分散の場合業務分担が可能である。⑤支 援困難ケースに組織として対応可能である。一方、デメ リットは、①後見人が頻繁に交代したり、業務を分担し たりすると、被後見人との信頼関係が築き難くなる。② 組織で支援を行うことにより、逆に責任体制が曖昧にな りかねない。③組織で行うことにより、後見のための判 断や決定に時間がかかり、迅速性を損なう恐れがある。 ④法人も破産・解散することがある。 このようなメリット、デメリットをよく噛み締め、長所 を伸長し、短所を克服して行くことを事業推進時に常に 留意して行かねばならないことでしょう。 法人後見事業は、独立独歩のNPO法人にとって、 創設から安定軌道に乗せる迄には四つの課題を克服しな ければいけないと思っています。 ①後見業務を担える要員の育成と確保 ②後見業務を適正円滑に行うための運営体制の整備 ③法人運営のための安定的資金の確保 ④行政・企業・団体等関係機関との連携 このうち、①②については目途が立ちましたが、特に ③については今後のこととなります。 法人後見事業に取組むからには、本事業で収益を確保し、 財政の安定基盤を構築しなければなりません。 このためには、広報活動を統一して組織的に行い、相談 案件を本部及び支部窓口に呼び込むことが重要です。関 係機関からの連絡、一般顧客からの相談等を本部・支部 の窓口で対応し、案件を会員に配分して行きます。関係 機関との連携を進めて行けばこの体制は作れます。そし て、会員全員が「一人1受任以上」を達成できれば取り あえずの安定基盤に乗ることができます。この「一人1 受任以上」を如何に短期間で解決できるかが当面の最重 要課題です。 「成年後見」が法律施行から15年が経ち、やっと世 第98回目を迎えた月例一般研修会風景 「相続税・贈与税の改正について」 講師 当法人監事 税理士 坂田 哲章 会員 新会員募集説明会のご案内 日時:平成27年2月4日(水) 午後 2時から4時 場所:下落合コミュ二ティセンター 4階第2,3集会室 さいたま市中央区下落合1712番地 電話:048-834-0670 京浜東北線「与野駅」西口から徒歩2分 成年後見に関心と情熱のお持ちの方をお待ちしておりま す。 当センターは成年後見事業を中心として、遺言・相続・ 福祉・介護・権利擁護等の分野から地域福祉を担い、高 齢者等の生活総合支援サービスを目指して、平成19年 に設立しました。常設の相談所もオープンしました。こ れからも勢力の充実を図り、活動の拡大を図ってまいり ます。さらなる会員の入会を歓迎し、その説明会を実施 いたします。 1 第12号(27年1月号) 広報埼玉成年後見支援センター 平成27年1月20日 第12号(27年1月号) 広報埼玉成年後見支援センター 平成27年1月20日 シリーズ連載 信託の将来性 「活発な活動の年へ」 理事 正木 副代表理事 賢一 小嶋 高齢者が知っておきたい 勘どころ (第3回相続相談) 秀典 理事 皆さん、新しい年に大きな期待を膨らませ、ご健勝に てお迎えのことと、お慶び申し上げます。今年もSSC共々 頑張ります。よろしくお願い申し上げます。 さて、昨年を振り返ってみますと、私個人の事業活動 としては例年並みでしたが、SSC東入間支部としては、 かなり前進した年であったと思っています。 私は新しい年が明けると、例年、管内(富士見市、ふじ み野市、三芳町)自治体と関係機関及びJAや関係企業 に挨拶回りに出かけます。昨年は特に私が住む富士見市 で、社会福祉協議会内に「成年後見センターふじみ」が 開設されたことに伴い、社会福祉協議会との関係構築に 力を注ごうと張り切ってみました。年度当初に、SSC 東入間支部がお手伝いできる事柄等を「提案書」として、 社会福祉協議会に提出したところ、早速ありがたい返事 があり、1年を通して、支部会員一同でお手伝いをさせ ていただきました。その一例は、社協の出前講座のお手 伝いとして成年後見講座の講演5回、市民後見人フォロー アップセミナーの講師1回、年末には、成年後見に特化 した富士見市社会福祉協議会専門相談員の委嘱(SSC 会員9人)などがありました。その他任意後見契約移行 型受任の準備も進めています。いずれも会員一同の努力 の積み重ねであり、この信用と実績を本年に引き継ぎ、 さらに一層のパワーアップを図らなければ次はありませ ん。そのためには本年が大事です。それぞれの会員が自 己研鑽を重ねつつ、足らざるを補い合いながら、一層の 社会貢献活動と共に各種事業の活発な活動展開が求めら れます。 埼玉県は超高齢社会が急速に迫ってくる県です。当然 のことながら成年後見・遺言・相続等の相談や依頼の需 要は限りなく増えてくると予測されます。それらの事柄 に対処するためには、今まさに正しくわかりやすい知識 の提供サービスが必要不可欠で、その第一線を担うSS Cが、積極的な実践活動を展開すべきであると考えます。 私は今年も、東入間支部会員一同が積極的に実践活動で きるよう、環境の確保と整備に務めてまいります。皆さ ん一緒に頑張りましょう。以上、今年もよろしくお願い します。 あなたも『賛助会員』になりませんか 当法人は認知症高齢者等の人権と生活を守る活動をしています。 認知症高齢者は4人に1人、地域・家族そしてあなたの問題です。 賛助会員は、当法人の趣旨に賛同し、ご支援頂ける寄付会員です。 会費は、年3千円です(但し、何口でも結構です)。 ※賛助会員には、広報誌(年2回)の無料送付、当法人主催講習会の 割引受講、無料面接相談(1回1時間)等の特典がございます。 埼玉成年後見支援センター 本部・相談室 〒338-0003 : 埼京線与野本町駅東口徒歩1分 さいたま市中央区本町東2-18-1 メゾン・ラ・テール101 TEL:048-711-3701 ホームページ 2 紘一 平成25年12月17日に、遺言作成の相談を受けま した。本人は、胆管癌の末期で、医師の判断で余命は、 12月末と宣告されているとのことで、すでに黄疸症状 が出ており何時急変するか分からない状況ですが、在宅 で過ごして居られます。公正証書遺言を作りたいとのこ とで、所沢公証役場に、予定を問い合わせたところ24 日にできるとのことであった。急遽遺言書(案)をつく り、18日に本人に確認して了承して頂きましたが、6 日後の作成日に意識の混濁が生じないか不安でしたので、 念のため、自筆遺言書も作成し万が一に備えました。 幸いに、24日に公証役場に行くことができ希望通り公 正証書遺言を作成することができ本人は思い残すことは ないと言っておりました。遺言者がほぼ同じ内容の遺言 を2つの方式で、作成することは始めてのことでした。 さて、遺言には特別な方式の遺言を除いて自筆証書遺言、 公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。現在、 利用されているのは、公正証書遺言と自筆証書遺言です。 残された家族、相続人が財産の相続をめぐって争うのを 避けるには公正証書遺言がよいとでしょう。その理由は、 検認の必要がない、紛失の危険がない。変造のおそれが ない等です。 遺言書作成の必要性が高いのは 1法定相続人が一人もいない場合 2内縁の配偶者がいる場合 3既に死亡した子の配偶者に世話してもらっている場合 4夫婦に子どもがなく、唯一の財産が現在居住する不動 産だけの場合 5法定相続人のうち行方不明者がいる場合 6先妻との間に子どもがいて後妻がいる場合 7離婚状態にある別居中の配偶者がいる場合 以上のように法定相続では問題がある場合、遺産分割協 議で問題が発生する可能性がある場合は、遺言書の作成 の必要性が高いといえます。 相続紛糾を避けようと考えて遺言書を作成するわけです が、遺言書が残されていたために余計は法律紛糾が生じ るというのはでは本末転倒です。自筆証書遺言、公正証 書遺言を作成する際には、事前に、専門家に形式的要件 を満たしているかを相談することをお勧めします。 相続紛糾の責任は、親にあり兄弟の不仲になる原因の第 一が相続問題からです。年をとれば気弱になると同時に、 わがままになるのが自然のながれです。そうすると、た とえば長男一家と同居していても、たまに長女が来ると 「おまえだけが頼りだ」と言い、長女が帰ると長男に 「長女は財産目当てで来ているだけだ。お前だけが頼り だ」と言ってしまいがちです。これは、兄弟争いを、け しかけているようなものです。その場しのぎで子供達に 対して、いい加減な言動をしないで頂きたい。 遺言書を書いたことは明らかに、遺言書の内容は、秘 密に子供達に、遺言書の内容を生前に明らかにすると、 不満の持った子どもが、遺言書の作り直しを頼んでくる ことが必ず起こります。 子どもからみて、100%完璧に平等で、公平な遺言書 は作成困難です。 親の元気な時に考えて作成した遺言書が結果として子 供達も納得する相続になると考えます。 平成19年に信託法の改正があり、約7年が経過しまし た。信託と言えば信託銀行の貸付信託等がイメージされ るだけでした。それもそのはず、大正12年に施行された 旧信託法は、当時横行していた悪質信託会社を規制する 目的のものでした。新信託法は84年の歳月を経て制定さ れたのです。この新法によって、多様な信託の利用が可 能となりました。故四宮教授の言葉を借りれば、「信託 の目的が不法や不能でない限り、信託の事例は無数にあ る。」という状況となったのです。ただ、施行後7年と いうこともあり、その研究や判例の蓄積が不十分な状況 にあり、今後も実務を通じての深化が望まれるところで す。 それでは、今回の信託法の改正によって何が変わった のでしょうか。それは大きく言えば、いわゆる「民事信 託」と言われるものの利用が可能となったことです。旧 の信託法と信託業法によって規制されていた、いわゆる 「商事信託」以外に一般国民の生活支援や福祉の増進に も利用できる信託になったということです。特に民事信 託の中でも「福祉型信託」(家族型信託を中心とする) が我々の業務にとっても重要な位置を占める様になって いくものと考えられます。遺言や相続に絡んだ信託の活 用が、今後大いに期待されることとなるでしょう。 具体的には、親族間の財産承継や高齢者・障害者の生 活支援に、いわゆる福祉型信託の利用により、より適切 な対応が可能となります。平成24年2月には、家裁によ る「後見制度支援信託」の運用が開始されたことは記憶 に新しいところです。後見業務に於いても信託の知識が 不可欠となろうとしています。我々としても後見業務を 含めて多様な利用が可能となった信託に対する認識を新 たにし、その習得と活用を図る活動に取組むが求められ ていると言えます。昨年度は2度の信託の研修が行われ ましたが、本年は実務に直結した研修が実施され、無限 の将来性を秘めた信託への理解と実践が進展することを 期待しております。 NPO法人 原 FAX:048-711-3710 http://www.ssc-npo.jp 3
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