2−(1) 第 2 次成年後見制度研究委員会の研究概要について 1 成年後見制度研究委員会の目的 平成 12 年度行われた委員会の報告を踏まえ、2 年間で現在の成年後見制度が抱 える主な3つの課題(テーマ)への具体的な対応方法を研究すること。 2 平成 21 年度の研究(主要部分抜粋。詳細は H22.3 月発行「研究委員会中間報告書」に記載) 第 1 テーマ 「社会福祉協議会が行う法人後見のあり方」 (1)市町村社協の法人後見対象者 紛争性が無く、身上監護と日常的金銭管理中心、他の後見人等候補者が居ない場 合で、次の①∼④のどれか1つに該当する方。 ①首長申立てをする方 ②原則として高額な財産が無い方 ③日常生活自立支援事業利用者の方で①∼②に当てはまる方 ④実施社協及び運営委員会が特に必要と認める方(親族との複数後見。単独受任が困難な場合等)。 (2)事業のイメージ 社協の日常生活自立支援事業と同様な運営手法(専門員と生活支援員の関係を準用)。 ・日常生活自立支援事業の「専門員(常勤職員 )」は契約締結審査会や契約まで行い、 「生活支援員(非常勤職員 )」の支援を監督。重要な支援は専門員が対応。 ・法人後見の「法人後見専門員 (常勤職員)」は運営委員会や受任調整まで行い「法人 後見支援員(非常勤職員 )」の支援を監督。重要な法律行為は法人後見支援員が対応。 (3)県社協の役割 市町村社協の法人後見実施を推進し、実施社協には多様なバックアップを行う。 ・法人後見実施マニュアルの作成(平成 23 年度予定)。 ・法人後見専門員や同支援員養成研修(基礎講習)、現任研修等の実施。 ・法人後見実施社協からの相談受付と助言 ・法人後見監督人への就任 ・千葉県成年後見連絡会の開催や、制度の啓発を目的とした講演会等の実施。 (4)法人後見実施市町村社協の役割 多様な方法でニーズを収集して法定後見を実施。任意後見は将来的に検討。 ・法人後見専門員の設置。法人後見支援員の養成研修(専門研修)の実施、養成。 ・インフォーマルサービスを含めた多様な地域資源との連携を図る等、地域に根ざ した活動を行ってきた社協ならでは後見支援を実施。 ・法律、医療、福祉や行政等で構成する「運営委員会」を開催。受任の適否や専門 的援助が必要なケースへの対応を協議。一般相談にもシンクタンク機能を持つ。 ・市町村成年後見連絡会の開催や、制度普及の勉強会、合同相談会等を実施。 第 2 テーマ 「市町村長による成年後見制度申立、成年後見制度利用支援事業の利用促進」 (1)行政の理解を深めること 地方自治法や老人福祉法を始めとする法律で、行政には住民の福祉の増進及び 高齢者や障害者の尊厳の保持を守る必要があることを根拠に、市町村長申立ての 活性化や成年後見制度の社会化の役割があることを理解してもらう必要がある。 (2)市町村長申立てマニュアルの作成 要綱整備や関係機関との連携等の課題に対応し、申し立てが進むようなマニュ アルの作成が必要(平成 23 年度作成を検討)。 (3)県の政策課題 高齢、障害、生保担当等、全てに共通した成年後見担当ポストを置くこと。 3 平成22年度の研究 第3テーマ 「千葉県の市民後見人養成のあり方について」 (1)市民後見人の必要性及び課題 現在、知的障害者は約 55 万人、精神障害者は約 300 万人、認知症高齢者は 200 万人を超え、超高齢社会の日本では 2015 年には国民の 4 人に 1 人が 65 歳以上になると言われている。 成年後見制度の利用は、制度が発足した平成 12 年からこれまで、約 17 万人の 利用に留まっており、人口の約 1%、約 120 万人のニーズがあるといわれる日本 では非常に利用率が低い。 そのようななか、成年後見人等は現在、親族が約 6 割、第 3 者が約4割近くを 占めており、制度発足時と比べ、年々第 3 者が占める割合が高くなってきている。 親族の高齢化や核家族化等で、親族では支えきれなくなっている状況があると想定 されるが、第 3 者後見人等を務める法律・福祉の専門職も十分に担保されている とはいえず、制度の利用率が低いにも関わらず人材不足が叫ばれている。 そのため、今後、適切に成年後見制度の利用を伸ばすためには、制度の啓発とと もに、制度の受け皿となる第 3 者後見人「市民後見人」の担い手の養成が急務で ある。 ・「専門職後見人」=専門知識によって紛争解決を行うことが可能。 ・ 「市民後見人」=近隣に住む社会貢献意識が高い市民で、きめ細かな対応が可能。 地域福祉の推進に寄与する。 ・専門職後見人と市民後見人は、被後見人等のために互いの利点を理解して、必要 に応じて協力することが重要。 (2)市民後見人の考え方 ・親族後見人は市民後見人に含まないが、研修等フォローアップが必要。 ・市民後見人には適切な養成研修と現任研修を行い監督機関やバックアップが必要。 ・社会的な信用を得て誇りを持ち、被後見人等の意思の尊重と倫理を記載した「行 動規範」が必要。 ・報酬付与の申立ては行って構わないが、報酬が期待できない人は受任しないこと にならないよう、養成する団体で倫理教育が必要。 (3)市民後見人の活動パターン ①「個人型」・・・市民後見人が個人で業務を行う。 困難性が無くボランティア市民活動の範囲内で可能な事案を受任。社協等の監督 やサポートが必要。 ②「法人型」・・・NPO 法人等の法人後見担当者として業務を行う。 NPO 法人内の専門職とペアで活動し、専門的判断はバックアップを受けられる。 安心して後見業務を行う事が出来る。 ③「社協関与型」・・社協の法人後見支援員として業務を行い、独立も可能。 初めは法人後見実施社協の法人後見支援員として非常勤職員として勤務し、経験 を積んだ後、適性があれば独立が可能になるが、社協が監督人に就任し、研修会 を含めて適宜バックアップを受ける。 ④「リレー型」・・・専門職後見人が問題解決した後に受任する。 法律紛争や虐待事案等の困難な問題が専門職によって解決され、軽微な財産や身 上監護で十分な状態になってから受任。ただし被後見人等の状態変化もあるため サポートは必要。 ⑤「専門職 複数後見型」・・専門職と複数で受任する。 専門知識が必要な財産管理や身上監護は専門職が担うが、専門知識を必要としな い業務は部分的に役割分担して市民が担う。お互いの業務軽減が図られる。 ⑥「親族 複数後見型」・・親族と複数で受任する。 親族が現在、あるいは将来に備えて市民後見人と複数後見を希望する場合に受任。 親族の安心が得られる。専門知識が必要になった場合は専門家にアウトソーシン グする。 (4)市民後見人の活動内容 施設入所者 在宅生活者 市民後見人 ○財産は高額でなく管理しやすいも ○軽度の認知症・知的障害者であって、 の。定期的な見守り、ケアチェック 財産は高額でなく日常の金銭管理が中 が中心の事例 心で、身上監護に困難性がない事例 なお、多額の財産や紛争性があっても社協が関与していたり、専門職からのサポートや専門職 へのアウトソーシングが可能であれば、市民後見人も受任が可能になると考えられる。 また、認知症や障害の程度に関わらず、身上監護に高い専門性が求められる事例は、福祉専門 職による対応が望ましいと考えられる。 (5)市民後見人養成カリキュラム ◎社協関与型 市民後見人の養成に関するフローチャート ※千葉県→千葉県社協へ事業委託 ※市町村→法人後見実施社協へ事業委託 法人後見実施市町村社協 ○基礎講習(法人後見支援員)参加希望者の募集 ○オリエンテーションの開催 ○書類選考・面接等 (合格者) 千葉県社協 ○基礎講習の実施(4日間程度) ○基礎講習修了証の交付、法人後見実施社協へ修了通知 法人後見実施市町村社協 ○専門研修(6日間程度。施設体験含む。) ○法人後見支援員人材バンクへ登録 ○現場実習(生活支援員活動等) ・・・・・・生活支援員(非常勤職員)として雇用。法人後見専門員の援助に同行 して適性を判断。経験を積む。 ※家裁から法人に推薦依頼が来た場合、運営委員会等で受任の可否を判断。 ○法人後見を受任 ○生活支援員から「法人後見支援員」へ雇用の切り替え ※ 独 立 ・ 監 督 ○法人後見専門員(常勤職員)と法人後見支援員(非常勤職員)の連携による後見業務の開始 千葉県社協 ○法人後見実施社協の監督人に就任 ○法人後見専門員や支援員に対し、現任研修等の実施 市民後見人(団体も想定) ○後見業務の実施 ◎社協関与型 市民後見人の養成カリキュラム 【基礎講習】※千葉県社協が実施(4日間) 日程 月 日 ○○:○○∼ タイトル ①成年後見制度の 基本理念と概要 内容 ○法定後見と任意後見 ○同意・取消権、代理権の内容と活用法 1日目 ○後見報酬 ○後見倫理 ○○:○○ 3時間 ○個人情報の保護 ○○:○○∼ ○○:○○ 2時間 月 日 ○○:○○∼ ②被後見人等への 支援の基本的な視 点 ○「自己決定の尊重と残存能力の活用」を基本におくことを学ぶ ③高齢者等に対す る理解 ○認知症について学ぶ ④知的障害者に対 する理解 ○知的障害について学ぶ ○支援に際しての基本的態度や留意点を学ぶ ⑤精神障害者に対 する理解 ○精神障害について学ぶ ⑥関係制度につい て ○日常生活自立支援事業 ○代理決定の重さについて考える ○権利擁護とは ○自己決定と保護の調和を基本視点として身につける ○支援に際しての基本的態度や留意点を学ぶ ○○:○○ 2日目 3 時間 ○○:○○∼ ○○:○○ 1 時間 ○○:○○∼ ○○:○○ ○支援に際しての基本的態度や留意点を学ぶ 1 時間 月 日 ○○:○○∼ 3日目 ○○:○○ 3時間 ○各市町村における法人後見支援員(市民後見人)や日常生活 支援事業の生活支援員の役割 ○成年後見制度利用支援事業 ○支援のための法律基礎知識(契約、遺言、相続等) ○○:○○∼ ○○:○○ 2時間 ⑦本人を支える福 祉サービスと社会 資源等 ○各相談機関の概要 ○虐待の現状と対応 ○後見人としての身上監護 ○消費生活相談の実態と対応(消費者被害の実態と取消権等) 月 日 ○○:○○∼ ⑧後見人からの実 践レポート 4日目 生活の改善状況、課題だと感じること) ○○:○○ 2時間 ○○:○○∼ ○○:○○ 3時間 計 20時間 ○実際の後見業務などについて話してもらう (後見人として行っている支援、後見事務について、本人の ○参加者の疑問や不安などに答える ⑨演習:色々な場 面を通じて成年後 見人としての対応 を考える ○演習により、これまでの受講内容を統合して理解する。 【専門研修】※法人後見実施社協が単独あるいは共同で実施(6日間) 日程 月 日 タイトル ○○:○○∼ ⑩自治体の福祉制 度等 5日目 ○○:○○ 5時間 内容 ○研修の概要と地域福祉の推進 ○市民後見人の倫理 ○介護保険制度 ○障害者自立支援制度の仕組みと内容、福祉サービスと社会資 源(知的障害者と精神障害者について) ○高齢者の包括支援事業について(地域包括支援センター等) ○生活保護制度について ○健康保険制度(後期高齢者医療保険等を含む)、年金制度等 について 6∼8日目 月 日 ∼ ⑪施設体験 月 日 ○認知症高齢者の特性と接し方 ○知的障害者の特性と接し方 ○精神障害者の特性と接し方 ○○:○○∼ ○○:○○ 9日目 5時間 ×3日間 月 日 ⑫後見業務の実際 ○財産管理の実務(就任時と終了時の手続き) ○後見業務における家裁への連携と報告(報告書の作成方法等) ○○:○○∼ ○身上監護の知識・実務(事実行為との違い、サービス確保等) ○演習:就任時の手続き、財産目録の作成 ○○:○○ 5時間 ○演習:演習身上監護を中心とした演習 月 日 ○○:○○∼ ⑬事前オリエンテ ーション ○演習、グループワークに入る前に ⑭事例検討 ○グループワーク(財産管理・身上監護) ⑮まとめ ○法人後見支援員人材バンクへの登録。生活支援員の登録活動。 ○法人後見専門員と法人後見支援員の業務内容 ○○:○○ 10 日 目 1時間 ○○:○○∼ ○○:○○ 3.5 時間 ○○:○○∼ ○○:○○ 0.5 時間 計 30時間 合 計 50時間 ↓ 現場実習(1年程度) ※生活支援員(非常勤職員)として雇用。法人後見専門員の援助に同行。 適性を判断。経験を積む。 《法人後見受任》 ↓ ●「法人後見支援員」として法人後見専門員と連携し、後見業務を開始 ↓ 後見実務(1年程度) ※法人後見支援員として実務経験。社協に適性を認められた方は独立へ。 ●「社協関与型 市民後見人」として社協が監督のうえ後見業務を開始 (6)市民後見人受任後の監督、バックアップ体制 【社協関与型 市民後見人】 (1)監督体制 監督人となる法人後見実施社協が、社協関与型市民後見人から定期的に書類(通 帳等預かり書・受領書、業務実施記録簿、通帳コピー、金銭出納帳コピー)による 報告を受け監督する。書類に不備な点や不明な点があればその都度、確認・指導を 行う。 (2)バックアップ体制 ①法人後見運営委員会等 必要に応じて、法律家、医師、学識経験者、保健福祉関係従事者及び行政関係者 等の専門家による「法人後見運営委員会等」から専門的かつ第三者的な立場から助 言を受ける。内容は、被後見人等への処遇方針の相談、被後見人等や利害関係人等 からの苦情申し立てに係る事項、類型の移行、辞任の適否等。 ②フォローアップ研修 研修会を開催し、後見人のスキルアップや交流を図る。 ③後見人活動への広報啓発 成年後見制度の利用促進を図るとともに、地域で後見人業務が円滑に遂行できるよ う、自治会や地区社協等を通じ、市民へ成年後見制度の広報啓発を行う。 【社協関与型以外の市民後見人】 大学や NPO 法人等で養成された市民後見人へのバックアップについては、上記 (2)②への参加及び③によって支援を行う。 なお、同じく①の法人後見運営委員会等の支援や、市民後見監督人の就任が可能 な社協については対応することが望ましい。
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