第4編 プリンタブルエレクトロニクス製造技術・装置 ●第4編●第12章● 研究開発用印刷機 RK Print Coat Instruments / 松尾産業 1. はじめに 近年、印刷技術を応用して電子部品を作るプリンタ ブルエレクトロニクスが注目されている。印刷のメリ ットとしては以下のようなことが考えられる。 ①従来のドライ、真空プロセスを必要とせず、ウェ ット、大気中でのプロセスでモノ作りができるため設 備費用削減ができる。 ②連続大量生産(ロールtoロール)を得意とする印刷 技術によって製造ができれば、バッチ生産と比較して 大幅なコストダウンが図れる。 2. 新業界の創出 印刷媒体の中心が硬質なガラスの他に、今まで性能 面で使用できなかった柔軟なフィルム材も伸びてくる と、従来にはなかった用途が生まれてくる。例えば、 フレキシブルディスプレイ・電子ペーパー・RFID・有 機半導体・色素増感型太陽電池などが挙げられる。 モノ作りにあたっては、顔料(ナノ金属インク、微 粒子金属粉など)、インク、樹脂、レジスト、紙、フィ ルム、包装、コンバータ、印刷、電気、自動車などの 業界が開発に関わってきている。そのため、ナノテク ノロジーや、新素材の技術開発を契機として、これか ら新たなネットワークが構築され、新たな業界が生ま れ、編成されていくことが予想される。 このような状況で、印刷を使った技術を研究するた めの需要も増加してきている。 3. 印刷試験機の役割 生産機と同じ方式で印刷サンプルを作って評価する ことは、欠くことのできない開発プロセスである。 3.1 目的 印刷試験機の目的を以下に示す。 ①インク設計、材料検討、印刷適正確認、膜厚・ラ イン幅の性能に与える影響の検証。 ②印刷工法の選定、生産機にかける前のスクリーニ ング。 ③機能性確認、品質確認、耐久性確認。 3.2 導入のメリット 印刷試験機導入のメリットを以下にまとめる。 ①印刷試験機で事前に工法を研究すれば、高価な生 産機(グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレ キソ印刷)導入選定の手掛かりとなる。 ②条件を振ったサンプルを手軽に作れるため、開発 スピードが上げられる。 ③少量の材料で試験できるので、高価な材料を有効 に使える。 ④作業時間・段取り換え時間が、生産機を使っての 実験に比較し格段に節約できる。 ⑤結果として、プリンタブルエレクトロニクスの研 究が少ない開発費でできる。 プリンタブル エレクトロニクス 市場拡大の促進 印刷のメリット Dry → Wet 設備コスト ダウン 工程簡素化 ロールto ロール 大量生産 小型印刷試験機での 検証による研究・開発 導入設備の方式決定 印刷条件設定 材料選定 (スクリーニング) 印刷適正確認 技術要素 ナノテク 新素材 図1 印刷試験機の役割 2009 Printable Electronics 165 第4編 プリンタブルエレクトロニクス製造技術・装置 4. 松尾産業の印刷試験機(グラビア/グラビアオフ セット/フレキソ/均一膜の塗布) 当社は、英国RK Print Coat Instruments社製の印刷試験 機を取り扱っており、日本総代理店として30年以上に わたり活動している。同社の製品は小型・卓上サイズ (400×500mm∼)で少量の材料で適確な試験ができる ため、日本においても数多く採用されている。 近年、導電性インク(Ag、カーボンナノチューブ) のパターニング印刷、レジスト塗布、導電ポリマー塗 布など、プリンタブルエレクトロニクス開発目的の照 会が多くなってきている。 5. 装置の特徴 5.1 Kプリンティングプルーファー/K303マルチコータ 「Kプリンティングプルーファー/K303マルチコータ」 の特徴を以下に示す。 ①1台ベースがあれば、ヘッドを交換することによっ て多目的の試験ができる(グラビア印刷、グラビアオ フセット印刷、ラミネート、バーコーティング、アプ リケータ塗布) 。 ②マイクロメータにより微調整ができる。 ③小型・卓上サイズである。 ・Kプリンティングプルーファー:設置面積400× 500mm ・K303マルチコータ:設置面積690×410mm 5.2 フレキシプルーフ100UV 「フレキシプルーフ100UV」の特徴を以下に示す。 ①生産機と同条件でフレキソインク(水性、溶剤系、 UV)の校正印刷ができる。 ②マイクロメータにより微妙な印圧設定ができる。 ③アニロックスロール交換、フレキソ版貼り替えが 手軽にできる。 ④UV照射器搭載。 ⑤最大スピードが99m/minである。 ⑥小型・卓上サイズである(設置面積550×450mm) 。 今後、UV LED光源の搭載も検討している。 6. ショールーム 当社では、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、 フレキソ印刷、バーコータやアプリケータによる均一 塗布膜作成を手軽に体験できるショールームを設置し サンプル:ライン/スペース 30μm/300μm 機材:PETフィルム 50μm厚 使用機械:フレキシプルーフ100UV 写真2 フレキソ印刷によるパターニング印刷 サンプル格子:ライン/スペース 30μm/300μm 機材:PETフィルム 50μm厚 使用機械:Kプリンティングプルーファー 写真1 グラビアオフセットによるパターニング印刷拡大写真 166 2009 プリンタブルエレクトロニクス 写真3 ショールーム(新横浜、左:フレキシプルーフ 100UV、右:Kプリンティングプルーファー) 第4編 プリンタブルエレクトロニクス製造技術・装置 ている。 そこでは、印刷試験機の性能と使い勝手の確認のた めに立ち会い試験を行っている。また、今回紹介した 印刷試験機器類を設置し、ユーザーの目的に合った機 械を薦めている。場所は新横浜駅より徒歩5分で、随時 予約を受け付けている。 7. おわりに 設定したものの、印刷機・コータというと大掛かりな 装置を連想し、どこから手をつけたらよいかよくわか らないという研究者も多い。そのような方も、当社シ ョールームに印刷基礎の勉強を兼ねて来社されている。 入門手段として、印刷試験機の役割は大きくなって きていると感じている。当社は、印刷試験機がプリン タブルエレクトロニクスの開発促進に役に立てればと 考えている。 開発テーマを“プリンタブルエレクトロニクス”に 2009 Printable Electronics 167
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