ミラ-法による累進レンズフィッティング

シンポジウム No.66
ミラ-法による累進レンズフィッティング
(有)ナルホ堂・日本眼鏡技術専門学校
校長
辻
一央
1.累進レンズフィッティングの目的
a.累進レンズは遠見から近見迄切れ目なく明視できることが最大の利点であるが、遠見周辺
視時や中間から近見視時には収差の影響で、注視野が狭く、歪んで見えたり十分な視力
が得られなくなることが欠点となる。
b.通常累進レンズ装用時に単眼の視力が弱くても、両眼視時には視力累加により実用上問題
なくなる場合が多い。したがって近見時の両眼共通注視野を最大にするようなフィッテ
ィングが必要となる。
c..近用の単眼及び両眼注視野に影響を及ぼすパラメ-タ-にはどのようなものがあるのか、
またどのような影響がそれによって生じるかを知ったうえで正確なフィッテイングを
行う。
2.フィッティング(近用EP)に影響を及ぼすパラメ-タ-
a.近用PD(インセット量)
*近用PDは両眼共通注視野に直接影響する。またレンズの近用有効部分の大きさも影響し、
それが狭いほど近用PDのずれに対する影響が大きくなる。
*近用PDが2mmずれると、レンズ上の有効幅が 10mmであれば両眼共通注視野は 20%
狭くなるが、有効幅 4mmでは 50%狭くなってしまう(度数は考慮していない)。
b.頂間距離(HSA)
*遠用のHSAは 12mmを基本とするが、累進レンズ使用時の近用HSAは、前傾角と累進
帯長によって影響される。また近用HSAが変わることによってどの様な変化が起こる
かを知っておく必要がある。
*通常HSAが大きいと注視野は狭くなり、HSAが小さいと注視野は大きくなる。計算上
HSAが2mm変わると注視野は10%変わる(度数は考慮していない)。
c.前傾角(α)
*前傾角が強くなると近用HSAが小さくなり視線通過点が上にズレ、近見EPを使用する
のに必要な視線下げ角は大きくなる。
d.フロントソリ角及び前後ずれ
*ソリ角は近用HSAに影響し、前後ずれは近用HSAの左右ずれの原因となる
3.ミラ-法の実務
a.ミラ-と被験者の距離を使用時と同じに保つ
b.遠見水平アイポイントをビクトリンの方法でマーク(左右の目の高さに合わせる)
c.使用レンズのアイポイントシ-ルは水平に張る必要がある
d.近見の視線通過点とアイポイントシールのずれがあればフィッティングを再修正する