民法予習編 第 18 回目 レジュメ

第 18 回目
民法予習編
レジュメ
・弁済と相殺
・弁済=債務の履行をすること
⇒債権の消滅をもたらす行為である
↓
債権の消滅をもたらす行為とは何か?
415 条前段
「債務者が
その債務の本旨に従った履行をしないときは、
債権者は、
これによって生じた損害の賠償を
請求することができる」
債務の本旨に従った履行が、弁済
・民法 474 条「債務の弁済は、第三者もすることができる。
ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、
又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。」
・民法 483 条「債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、
その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
」
⇒現状引渡
・民法 484 条「弁済をすべき場所について別段の意思表示がないときは、特定物の引渡し
は債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者
の現在の住所において、それぞれしなければならない。
」
⇒債権者の住所地が弁済の基本的な場所
⇒持参債務が原則
・民法 485 条「弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の
負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費
用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。」
・弁済の提供
民法 493 条「弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。
ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債
権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の
催告をすれば足りる。」
「弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。」
⇒民法 492 条「債務者は、弁済の提供の時から、
債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。」
⇒債務不履行責任を負わない
「ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、
又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、
弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。」
⇒口頭の提供
<判例>債権が契約そのものの存在を否定し、受領拒絶した場合
⇒口頭の提供は不要
←口頭の提供をしても、債権者の気が変わることは考えられ
ないので
・民法 413 条「債権者が債務の履行を受けることを拒み、
又は受けることができないときは、
その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。」
⇒受領拒絶した場合、債権者の責任を重くする条文
受領遅滞の責任とは?
① 債務不履行責任説
② 法定責任説
<債務不履行責任について>
民法 415 条 損害賠償請求
民法 540 条「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、
その解除は、相手方に対する意思表示によってする。」
民法 541 条「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、
相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がな
いときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
」
債務不履行の場合、債権者がとりうる手段
⇒履行の請求、損害賠償、解除
・受領遅滞の責任とは?
① 債務不履行責任説
債権者には、弁済を受領する義務があると考える
受領義務を債権者が果たしていないから、債務不履行責任を負う
⇒受領遅滞が発生することで、
債務者が損害賠償請求または、契約の解除をすることが可能
② 法定責任説
債権者に、受領する義務はないと考える
債務者が弁済の提供をしている以上、公平の観点から、債権者に対して、
法が特に規定した責任が、条文上の、「遅滞の責任」であると考える見解
⇒損害賠償請求、解除はできない
ただ、信義則上の受領義務を認めれば、損害賠償請求、解除が可能
・債権の準占有者に対する弁済
債権の準占有者=債権者らしい外観を有する者
・民法 478 条「債権の準占有者に対してした弁済は、
その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、
その効力を有する。
」
⇒債権の準占有者に対する弁済は、その弁済をしたものが、
善意無過失であるならば、有効である
←本来、債権を有していないものは、債務の弁済を受ける権限を有してい
ないので、この者に対する弁済は無効であるのが原則
ただ、取引の流通をはかるため、一定の場合は、
債権の準占有者に対する弁済も有効とした
相殺とは?
① 合意相殺
② 法定相殺(505 条)
民法 505 条 1 項本文「二人が互いに
同種の目的を有する債務を負担する場合において、
双方の債務が弁済期にあるときは、
各債務者は、その対当額について相殺によって
その債務を免れることができる。」
「双方の債務が弁済期にあるとき」
⇒自分の債務は、弁済期にない場合でも、期限の利を放棄することに
より、弁済期を到来させることが可能
⇒弁済期であることが求められているのは、相殺の相手方
A
B
(100 万円の債権)
(80 万円の債権)
AがBに 80 万円返して、BがAに 100 万円返すよりは、
対当額である 80 万円について相殺して、
BがAに差額 20 万円だけ返したほうが効率的
⇒相殺の簡易決済機能
B銀行がAに 80 万円を貸したとして、仮にAが 80 万円返してくれなくても、
AがB銀行に預けている預金に対して相殺することで、
強制的に貸した 80 万円を返してもらうことができる
⇒相殺の担保的機能
相殺の機能
① 簡易決済機能
② 担保的機能
民法 505 条 1 項本文「二人が互いに
同種の目的を有する債務を負担する場合において、
双方の債務が弁済期にあるときは、
各債務者は、その対当額について相殺によって
その債務を免れることができる。」
「双方の債務が弁済期にあるとき」
⇒弁済期であることが求められているのは、相手方のためである
←相殺には、強制的に相手方から、債務を回収する機能があるから
相殺の効果⇒対当額について債務を免れる
⇒決済される
・民法 505 条 1 項但書「ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」
Ex.引っ越し作業の相殺
・民法 506 条 1 項「相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。」
⇒相殺には意思表示が必要
2 項「前項の意思表示は、
双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼって
その効力を生ずる。
」
⇒相殺適状時に遡って相殺の効力が発生する
・民法 511 条「支払の差止めを受けた第三債務者は、
その後に取得した債権による相殺をもって
差押債権者に対抗することができない。
」
債権β
債務者B
第三債務者C
債権α
債権者A
Aがβを差し押さえると、
Cは、このβについてBに対して支払いをすることができなくなる
債権γ
債権β
債務者B
第三債務者C
債権α
債権者A
Aによって差し押さえがなされて、Cによる支払が差し止めを受けるならば、
Cは相殺できない
⇒AとC、どちらが優先するか?
民法 511 条「支払の差止めを受けた第三債務者は、
その後に取得した債権による相殺をもって
差押債権者に対抗することができない」
⇒その前に取得した債権、すなわち、支払差し止めを受ける前に取得した債権
ならば、Cは相殺をもってAに対抗することができる
⇒Aによる差し押さえの前に、Cが債権γを持っていたならば、Cは相殺をす
ることができる
債権γ(自働債権)
債権β(受働債権)
債務者B
第三債務者C
債権α
債権者A
Cによる相殺を制限すべき場合があるのでは。
受働債権の弁済期が先に到来し、その後に自働債権の弁済期が来る
⇒Cはその間、債務不履行状態になっているのに、自分に債権(自働債権)の弁済
期が来た時に相殺するのは、虫がいいのではないか
⇒自働債権の弁済期が先に来て、その後、受働債権の弁済期が来る場合のみ、
Cを保護すべきではないか
=制限説
差押前に取得した債権による相殺の可否
① 制限説(自働債権の弁済期が先に来る場合のみ可)
② 無制限説(判例)
(レジュメここまで)