電話回線ネットワークの概要 - CQ出版WebShop

このPDFは,CQ出版社発売の「現代エレクトロニクスの基礎知識」の一部分の
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http://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/15/15221.htm
―3―
電話回線ネットワークの概要
02
基本は黎明期と大きく変わっていない電話の世界
一般電話の音がよくないのは,世界の常識で
“加入者線”はそれぞれに電線2本(一組)があり,
す.日本の電話回線では,通常,3.4kHzまでの
送受信共用のため多重化はむずかしいのです.し
帯域しか伝送していません.オーディオCDの周
かし,市内線の場合も不必要に帯域が広がって雑
波数の上限は 20kHz なので,いかに帯域が狭い
音が増えるのを防止するために,図3-2-1のよう
(音が悪い)かがわかります.
なローディングと呼ばれる帯域制限が行われてい
これは電話会社の努力不足というわけではな
ます.
く,会話を伝えるために必要十分な帯域幅を国際
家庭からの電話線は,一番近くの電話局の加入
会議で検討して,国際組織であるCCITTの勧告
者交換機に入ります.最近は無人の電話局も増え
という形で3kHzの帯域幅を決めたためです(伝送
たので,思わぬところにこの交換機のみ設置され
テストにはエスペラント語が使われた).
た局があります.この加入者交換機では,ダイヤ
遠距離を結ぶ回線(市外線)では,一つのケーブ
ルやプッシュ・ボタンで指定した電話番号のとお
ルに多くの信号を重畳した周波数多重通信をする
りに接続するだけでなく,電話機を制御するため
のが普通ですが,このときに一つの信号の周波数
の信号の検出,付加をするという作業もしていま
幅が広いと,その分だけ乗せられる信号数が減っ
す.
てしまいます.帯域を制限するのはやむを得ない
措置だったということです.
受話器を上げた,下げたといった端末機(電話
機)の動作情報を検出するだけでなく,電話機の
一方,単位地域(MA)内の回線(市内線)では,
ベルを鳴らすための16Hz(約70V)の信号を付加
デジタル伝送をしない限り通常は多重化されてい
したり,カーボン・マイク(今でも古い電話機に
ません.特に,各家庭(事業所)と電話局を結ぶ
使われている)やプッシュ信号(トーン)を発生す
5
〔dB〕
0
−5
−10
−15
−20
電話線の特性
帯域制限後
0.1
0.2 0.3
0.5
1
〔kHz〕
2
図3-2-1 電話線の特性例
60
第3章 有線通信の基礎知識
3
5
10
加入者線は1本が1回線で,端子ボックスで分岐している