公開特許公報 特開2015

(19)日本国特許庁(JP)
〔実 5 頁〕
公開特許公報(A)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-198588
(P2015−198588A)
(43)公開日 平成27年11月12日(2015.11.12)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A23L
1/31
(2006.01)
A23L
1/31
Z
4B035
A23L
1/015
(2006.01)
A23L
1/015
4B042
審査請求
(21)出願番号
特願2014-78473(P2014-78473)
(22)出願日
平成26年4月7日(2014.4.7)
未請求 請求項の数2 OL (全7頁)
(71)出願人 390010674
理研ビタミン株式会社
東京都千代田区三崎町2丁目9番18号
(72)発明者 須藤
兼二
埼玉県草加市青柳1丁目3番3号
理研ビ
タミン株式会社草加工場内
Fターム(参考) 4B035 LC02
LG15
LG42
LP01
LP22
4B042 AC01
AD39
AG02
AG03
AG07
AG30
AH01
AH03
AH04
AK10
AK16
AP30
(54)【発明の名称】食用エキス加工品の製造方法及び食用エキス特有の不快臭のマスキング方法
(57)【 要 約 】
(修正有)
【課題】食用エキス特有の不快臭がマスキングされた食用エキス加工品の製造方法を提供
する。
【解決手段】食用エキスと、魚類由来のコラーゲンとを含有する混合物を100∼130
℃の温度で加熱処理する工程を含むことを特徴とする食用エキス加工品の製造方法および
食用エキス特有の不快臭のマスキング方法。
【選択図】なし
( 2 )
JP
1
2015-198588
A
2015.11.12
2
【特許請求の範囲】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた
【請求項1】
結果、食用エキスと魚類由来のコラーゲンとを含有する
食用エキスと、魚類由来のコラーゲンとを含有する混合
混合物を100℃以上の温度で加熱処理することで上記
物を100∼130℃の温度で加熱処理する工程を含む
課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの
ことを特徴とする食用エキス加工品の製造方法。
知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至
【請求項2】
った。
食用エキスと、魚類由来のコラーゲンとを含有する混合
すなわち、本発明は、
物を100∼130℃の温度で加熱処理することを特徴
1.食用エキスと、魚類由来のコラーゲンとを含有する
とする食用エキス特有の不快臭のマスキング方法。
【発明の詳細な説明】
混合物を100∼130℃の温度で加熱処理する工程を
10
含むことを特徴とする食用エキス加工品の製造方法、
【技術分野】
2.食用エキスと、魚類由来のコラーゲンとを含有する
【0001】
混合物を100∼130℃の温度で加熱処理することを
本発明は、食用エキス特有の不快臭がマスキングされた
特徴とする食用エキス特有の不快臭のマスキング方法、
食用エキス加工品の製造方法に関する。
からなっている。
【背景技術】
【発明の効果】
【0002】
【0008】
畜肉エキスや魚介エキスなどの食用エキスはスープやた
本発明の製造方法により、食用エキス特有の不快臭をマ
れなどの様々な飲食品に用いられている。しかし食用エ
スキングすることができる。
キスは、しばしば生臭い、けもの臭の様な臭い(以下「
【発明を実施するための形態】
食用エキス特有の不快臭」という)を有することが知ら 20
【0009】
れており、食用エキスの添加量によっては、飲食品の風
本発明で用いられる食用エキスとしては、飲食品の調味
味に好ましくない影響を与えるという問題があった。
を目的として用いられるものであれば特に制限はないが
【0003】
、例えば、畜肉エキス、魚介エキスなどが挙げられる。
食用エキスの有する不快臭をマスキングする方法として
【0010】
は、魚介類を主原料とする魚腥臭ある液汁にふすま、藁
上記畜肉エキスとは、例えば、豚、鶏、牛などの家畜類
、木屑、木質ゴム、アラビヤゴム、糠、粗糖等のペント
の肉、骨などの原料から抽出して得られる抽出物であり
ーズ、ヘキソーズ等の縮合多糖類を主成分とする諸物質
、具体的には、ポークエキス、チキンエキス、ビーフエ
の鑛酸處理物を添加することなどを特徴とする魚腥臭の
キスなどが挙げられる。
脱臭方法(特許文献1参照)、魚体、貝類などの水産動
上記魚介エキスとは、例えば、魚類(カツオ、マグロ、
物またはその他の動物質原料より得られた水溶液又は懸 30
サバ、イワシ、サケなど)及びその節類、貝類(ホタテ
濁液を脂肪酸モノグリセライドと脂肪酸ジグリセライド
、アサリ、カキなど)、甲殻類(エビ・カニなど)など
の存在下に水不溶性油脂溶剤により抽出することを特徴
の魚介類の肉、骨などの原料から抽出して得られる抽出
とする動物質原料より得られた水溶液又は懸濁液の脱臭
物であり、具体的には、ボニートエキス、イワシエキス
方法(特許文献2参照)などが開示されている。
、ホタテエキス、アサリエキス、エビエキスなどが挙げ
【0004】
られる。
しかし未だ十分納得のいくものが得られていないのが実
【0011】
情であり、より好ましい方法が要望されていた。
本発明で用いられる食用エキスの製造方法に特に制限は
【先行技術文献】
ないが、例えば、上記原料を水などの溶媒を用いて加熱
【特許文献】
【0005】
し、抽出することによって得る方法が挙げられる。該加
40
熱における条件としては、好ましくは加圧した状態での
【特許文献1】特許公告昭25−2634号公報
約105∼130℃での加熱である。
【特許文献2】特許公告昭46−4146号公報
【0012】
【発明の概要】
本発明で用いられる食用エキスは、上記抽出で得た抽出
【発明が解決しようとする課題】
物から油脂や不溶性固形物を分離・除去する処理、抽出
【0006】
物を濃縮する処理、抽出物を乾燥する処理などの処理の
本発明の目的は、食用エキス特有の不快臭がマスキング
1種または2種以上を行って得たものであってもよい。
された食用エキス加工品の製造方法を提供することであ
【0013】
る。
本発明で用いられる食用エキスの形態に特に制限はない
【課題を解決するための手段】
が、例えば、冷凍処理した冷凍食用エキス、固形分含量
【0007】
50
を約20∼75%まで濃縮処理した濃縮食用エキス、乾
( 3 )
JP
2015-198588
A
2015.11.12
3
4
燥処理した乾燥食用エキスまたはこれらの処理の2種以
の原材料を配合することができ、例えば、調味料(食塩
上を組み合わせた食用エキスなどが挙げられる。これら
、砂糖、うま味調味料、酸味料など)、酸化防止剤、着
各形態の食用エキスは、市販品を用いることができる。
色料などが挙げられる。
なお、本発明における食用エキスの固形分含量とは、食
【0021】
用エキス質量から水分含量を除くことで求めた値を意味
本発明の食用エキス加工品の製造方法は、食用エキスと
し、水分含量は常圧加熱乾燥法(105℃、3時間乾燥
、魚類由来のコラーゲンとを含有する混合物を100∼
)による測定である。
130℃の温度で加熱処理する工程を有する。該加熱処
【0014】
理は、公知の装置を用いて行うことができ、例えば、撹
本発明で用いられる魚類由来のコラーゲンとは、魚類の
拌機付の加圧ニーダー、攪拌機付の加圧反応釜などの装
皮、鱗、骨などから得られるコラーゲンであり、該コラ 10
置が挙げられる。
ーゲンに含まれる全アミノ酸中にヒドロキシプロリンが
【0022】
約5∼10質量%含むものである。本発明で用いられる
上記加熱処理する際の温度は、混合物の品温が約100
魚類由来のコラーゲンには、魚類由来のコラーゲンを加
∼130℃であり、好ましくは約115∼125℃であ
熱変性して得られるゼラチン、及び該ゼラチンを酸、ア
る。上記範囲内であれば加熱処理した混合物が焦げるこ
ルカリ、あるいは蛋白質分解酵素などで加水分解処理し
となく、本発明の効果を得ることができる。なお、品温
て得られるコラーゲンペプチドも含まれ、好ましくはコ
が約100∼130℃に達してからの加熱時間は、好ま
ラーゲンペプチドである。
しくは約0∼30分、より好ましくは約10∼20分で
【0015】
ある。
上記魚類としては特に制限はないが、例えば、カツオ、
【0023】
マグロ、カジキ、スケソウタラ、アジ、サバ、サケ、マ 20
本発明においては、上記加熱処理の後に、所望により冷
ス、サンマ、ウナギ、カワハギ、ハタ、オヒョウ、カレ
却処理、濃縮処理、乾燥処理等を行うこともできる。
イ、ヒラメ、ニシン、イワシ、ティラピア、ナマズ、サ
【0024】
メ、エイ、フグ、ブリ、カサゴ、メバルなどが挙げられ
かくして得られた食用エキス加工品は、従来の畜肉エキ
、好ましくはスケソウタラ、ティラピア、ナマズである
ス、魚介エキスなどの食用エキス特有の不快臭がマスキ
。
ングされているため、従来の食用エキスと同等量あるい
【0016】
はそれ以上の量を各種飲食品に添加することが可能であ
本発明で用いられる魚類由来のコラーゲンの分子量とし
る。
ては特に制限はないが、例えば、分子量分布を測定した
【0025】
際に、80%以上が分子量10000以下である魚類由
食用エキス加工品を添加する対象となる飲食品に特に制
来のコラーゲンなどが挙げられる。分子量分布は、ゲル 30
限はないが、例えば、たれ、だし、ドレッシング類、ト
浸透クロマトグラフィー分析によって測定することがで
マトケチャップ、スナック用調味料などの調味料類、味
きる。
噌汁、吸い物、コンソメスープ、わかめスープ、ポター
【0017】
ジュスープ、麺用スープ(めんつゆ、うどんつゆ、ラー
本発明で用いられる魚類由来のコラーゲンの形態として
メンスープなど)などのスープ類及びその加工品、ハム
は特に制限はないが、例えば、液状、粉末状などが挙げ
、ソーセージなどの畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛
られ、好ましくは粉末状である。
などの水産加工品、漬物などの野菜加工品、煮物、揚げ
【0018】
物などの惣菜類などが挙げられる。
本発明で用いられる魚類由来のコラーゲンとしては市販
【0026】
品を用いることができ、例えば、ニッピペプタイドFC
本発明によって食用エキス加工品を得られるが、食用エ
P(商品名;ニッピ社製)、イクオスHDL50F(商 40
キスと、魚類由来のコラーゲンとを含有する混合物を1
品名;新田ゼラチン社製)などが挙げられる。
00∼130℃の温度で加熱処理することを特徴とする
【0019】
食用エキス特有の不快臭のマスキング方法も本発明の形
本発明における食用エキスと魚類由来のコラーゲンとを
態のひとつである。
含有する混合物における、魚類由来のコラーゲンの配合
【0027】
量としては、食用エキスの種類や、固形分含量によって
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単
も異なるので一概には言えないが、固形分含量が約20
に説明するだけのものであって、本発明を限定するもの
∼75%の食用エキス100質量部に対して約0.1∼
ではない。
5質量部、より好ましくは約1∼2質量部である。
【実施例】
【0020】
【0028】
上記混合物中には、本発明の効果を阻害しない範囲で他 50
≪魚類由来のコラーゲンの作製≫
( 4 )
JP
5
2015-198588
A
2015.11.12
6
スケソウタラの皮100gに水400gを加えて85℃
で1時間加熱抽出した後、金属網を用いて固液分離する
ことで抽出液を回収した。次に、該抽出液を65℃まで
冷却した後に蛋白質分解酵素0.1gを添加して、65
℃で1時間の酵素処理を行った。次に、該酵素処理液を
90℃まで昇温して酵素を失活した後、60℃まで冷却
して活性炭を5g添加し、脱臭脱色処理を行った。次に
、濾過により活性炭を除去し、該濾過液を濃縮、乾燥す
【0033】
ることで、粉末状の魚類由来のコラーゲン10gを得た
(3)食用エキス加工品の作製方法
。なお、得られた魚類由来のコラーゲンの分子量分布を 10
表1及び2の等倍量の食用エキスと各種コラーゲンをス
ゲル浸透クロマトグラフィー分析により測定したところ
テンレス製ジョッキに加えて混合し、得られた混合物を
、80%以上が分子量3000以下であった。
、オートクレーブ(型式:SN300;ヤマト科学社製
【0029】
)を用いて、品温が表1及び2に記載の加熱温度に達す
≪食用エキス加工品の作製≫
るまで加熱処理し、さらに該温度に達してから、表1及
(1)食用エキス加工品の原材料
び2に記載の加熱時間加熱処理し、食用エキス加工品(
ポークエキス(商品名:冷凍がらスープ(ポーク);理
実施例品1∼8、比較例品1∼4)を得た。
研ビタミン社製
【0034】
固形分含量約20%)
チキンエキス(商品名:冷凍がらスープ(チキン);理
≪食用エキス加工品の評価≫
研ビタミン社製
得られた食用エキス加工品(実施例品1∼8または比較
固形分含量約20%)
ビーフエキス(商品名:mzビーフエキス207NDW 20
例品1∼4のいずれか)20gを200mLビーカーに
;丸善食品工業社製
入れ、さらに180mLの湯(95℃)を該ビーカーに
固形分含量約58%)
カツオエキス(商品名:カツオエキスA25;理研ビタ
入れて、食用エキス特有の不快臭のマスキング度合いに
ミン社製
ついて下記表3に示す評価基準に従い10名のパネラー
固形分含量約75%)
魚類由来のコラーゲン(上記で得られたもの)
で評価をおこなった。結果はそれぞれ10名の評価点の
豚由来のコラーゲン(商品名:日本ハムP−LAP;日
平均値として求め、下記基準にて記号化した。結果を表
本ハム社製)
4に示す。但し、比較例品4は焦げ臭を有していたため
鶏由来のコラーゲン(商品名:日本ハムC−LAP;日
評価対象から除外した。
本ハム社製)
記号化
【0030】
◎:平均値3.5以上
(2)食用エキス加工品の配合
30
〇:平均値2.5以上3.5未満
上記原材料を用いて作製した食用エキス加工品の配合及
△:平均値1.5以上2.5未満
び食用エキス加工品を作製する
×:平均値1.5未満
際の加熱処理条件を表1及び表2に示した。
【0035】
【0031】
【表3】
【表1】
40
【0036】
【表4】
【0032】
【表2】
( 5 )
7
JP
2015-198588
A
2015.11.12
8
結果より、魚類由来のコラーゲンを用いた実施例品1∼
8は、食用エキス特有の不快臭をマスキングすることが
できた。魚類由来のコラーゲン以外のコラーゲンを用い
た比較例品1、2では食用エキス特有の不快臭を十分に
マスキングすることができなかった。また、魚類由来の
コラーゲンを用いた場合でも、加熱温度を100℃未満
とした比較例品3では、食用エキス特有の不快臭をマス
キングすることができなかった。