(無断複写・転載を禁ず) 第65回税理士試験(所得税法) 第一問の解答 ボーダーライン37点、確実ライン42点 【問1】(30点)合格点24点 1 債権以外の資産損失 ⑴ 相違点(1点) 事業の場合には、全額必要経費に算入され、事業と称するに至らない業務(非事業)の場合には、所得を限度に必要経費に算 入され、災害等による損失のときは、雑損控除との選択適用となる。 ⑵ 事業の場合(2点) 居住者の営む不動産所得を生ずべき事業の用に供される固定資産、繰延資産について取りこわし、除却、滅失その他の事由に より生じた損失の金額(保険金、損害賠償金等により補てんされる部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じた ものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入する。 ⑶ 非事業の場合 ① 所得限度の必要経費算入(3点) 居住者の不動産所得を生ずべき業務の用に供され又は不動産所得の基因となる資産(生活に通常必要でない資産を除く。)の 損失の金額(保険金、損害賠償金等により補てんされる部分の金額、資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの及び事 業用固定資産・繰延資産の損失若しくは事業上の債権の損失又は雑損控除の対象となるものを除く。)は、それぞれ、その者の その損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額(この規定適用前の金額)を限度として、その年分の不動産所得の金額 の計算上、必要経費に算入する。 ② 雑損控除(2点) 居住者又はその者と生計を一にする親族でその年分の課税標準の合計額が基礎控除額以下であるものの有する資産(生活に 通常必要でない資産、棚卸資産、事業用固定資産・繰延資産及び山林を除く。)について災害又は盗難若しくは横領による損失 が生じた場合(災害等関連支出をした場合を含む。)において、その年におけるその損失の金額(災害等関連支出を含み、保険 金・損害賠償金等により補てんされる部分の金額を除く。)の合計額が、一定の方法により計算した足切額を超えるときは、そ の超える部分の金額をその居住者のその年分の課税標準から控除する。 2 貸倒損失 ⑴ 相違点(1点) 事業の場合には、貸倒年分に全額が必要経費に算入され、非事業の場合には、収入計上年分に遡ってなかったものとみなされ る取扱いが適用される。 ⑵ 事業の場合(2点) 居住者の営む不動産所得を生ずべき事業についてその事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権 の貸倒れその他一定の事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額の計算上 必要経費に算入する。 ⑶ 非事業の場合(3点) その年分の不動産所得の金額の計算の基礎となる収入金額又は総収入金額(事業から生じたものを除く。)の全部又は一部を回 収することができないこととなった場合には、次に掲げる金額のうち最も小さい金額は、その不動産所得の金額の計算上、なか ったものとみなす。 3 ⒜ 回収不能額 ⒝ 回収不能が生じた時の直前において確定しているその収入金額又は総収入金額の計上年分の課税標準の合計額 ⒞ 上記⒝の金額の計算の基礎とされる不動産所得の金額 個別評価の貸倒引当金の必要経費算入 ⑴ 相違点(1点) 事業の場合には、個別評価の貸倒引当金を設定できるが、非事業の場合には、設定できない。 ⑵ 事業の場合(2点) 不動産所得を生ずべき事業を営む居住者が、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる金銭債権 で、その一部につき貸倒れその他一定の事由による損失が見込まれるもの(以下「個別評価貸金等」という。)のその損失の見込 額として、各年において貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち、その年12月31日において一定の方法で計算した繰入限度額に 達するまでの金額は、その者のその年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する。 ⑴ (無断複写・転載を禁ず) 4 同一生計の親族に対する対価 ⑴ 相違点(1点) 事業の場合には、青色事業専従者給与又は事業専従者控除により一定金額を必要経費に算入できるが、非事業の場合には、必 要経費に算入できない。 ⑵ 事業の場合 ① 青色事業専従者給与(3点) 青色申告者である居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専ら青色申告者の営む不 動産所得を生ずべき事業に従事するもの (以下「青色事業専従者」という。)がその事業から支払を受けた給与の額で、次の⒜ ⒝のいずれにも該当するものは、原則にかかわらず、その居住者のその給与の支給年分の不動産所得の金額の計算上必要経費 に算入する。 ⒜ ⒝ ② 「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載されている方法に従い、記載されている金額の範囲内であること 労務に従事した期間、労務の性質等に照らしその労務の対価として相当であると認められるもの 事業専従者控除(3点) 居住者(青色申告者を除く。)と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢15歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営 む不動産所得を生ずべき事業に従事するもの(以下「事業専従者」という。)がある場合には、その居住者の不動産所得の金額 の計算上、各事業専従者につき、次の⒜、⒝のいずれか低い金額を必要経費とみなす。 ⒜ ⒝ 86万円(事業専従者が配偶者以外である場合には50万円) その不動産所得の金額(この規定適用前) 事業専従者の数 5 + 1 青色申告特別控除 ⑴ 相違点(1点) ⑵ 事業の場合(2点) 事業の場合には、一定の要件をもとに65万円の控除ができ、非事業の場合には10万円の控除ができる。 青色申告者で不動産所得を生ずべき事業を営むもの(小規模事業者の現金基準の適用を受ける者を除く。)が、その事業につき 帳簿書類を備え付けて、これにその承認を受けている年分の不動産所得の金額に係る取引を記録している場合(これらの所得の 金額に係る一切の取引の内容を詳細に記録している場合に限る。)には、その年分の不動産所得の金額は、次に掲げる金額のうち いずれか低い金額を控除した金額とする。 ① 65万円 ② この規定適用前の不動産所得の金額 ⑶ 非事業の場合(2点) 青色申告者の承認を受けている年分 (下記⑶の適用を受ける年分を除く。)の不動産所得の金額は、次に掲げる金額のうちいず れか低い金額を控除した金額とする。 6 ① 10万円 ② この規定適用前の不動産所得の金額 利子税(1点) 事業の場合には、一定の金額を必要経費に算入できるが、非事業の場合には、必要経費に算入できない。 ※ 1年超の長期前受に係る収入計上時期、債務処理計画に基づく減価償却資産等の損失の必要経費算入の特例を解答していれば、 加点項目(各1点)である。 ⑵ (無断複写・転載を禁ず) 【問2】(20点)合格13点 1 給与所得の意義(1点) 2 非課税(2点) 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(給与等という。)に係る所得をいう。 ⑴ 出張手当、転居手当等でその旅行に通常必要なもの ⑵ 通勤手当のうち、通常必要なもの(1月当たり最高10万円) ⑶ 使用者から受ける金銭以外の物で職務上必要なもの ⑷ 在外手当 ⑸ 外国政府等に勤務する特定の者の給与 ⑹ 3 ストックオプション (特定新株予約権等) の行使による株式の取得に係る経済的利益 計算方法(1点) 給与所得の金額は、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とする。 4 特定支出の控除の特例 ⑴ 内容(2点) 居住者が、各年において特定支出をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が給与所得控除額の 1/2相当額(125 万円を限度)を超えるときは、その年分の給与所得の金額は、給与所得控除後の残額からその超える部分の金額を控除した金額 とすることができる。 ⑵ 特定支出の範囲(4点) 特定支出とは、居住者の次に掲げる支出(給与等の支払者により補てんされる部分があり、かつ、その補てんされる部分につ き所得税が課されない場合のその補てんされる部分を除く。)をいう。 ① 通勤のための支出で通常必要であると認められるもの ② 転任に伴う転居のための支出で通常必要であると認められるもの ③ 職務の遂行に直接必要な技術習得を目的とする研修のための支出(資格取得のためのものを除く。) ④ 資格取得のための支出 ⑤ 単身赴任者の帰郷のための支出で通常必要であると認められるもの ⑥ ⑶ 書籍等、制服等の購入又は交際費等の支出で職務の遂行に直接必要なもの(65万円を限度) 申告要件(1点) この規定は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に適用を受ける旨及び特定支出の額の合計額の記載があり、かつ、一定 の書類の添付がある場合に限り適用する。 5 課税方法(2点) 給与所得の金額は、原則として、他の所得と合算され総所得金額を構成し、超過累進税率により所得税及び復興特別所得税が課 税される。 この場合において、下記6の源泉徴収税額は、確定申告により精算される。 6 源泉徴収(4点) 給与等の支払の際、次の所得税及び復興特別所得税が源泉徴収される。 ⑴ 賞与以外の給与等 月給、週給、日給等の別、給与所得者の扶養控除等申告書の提出の有無、その申告書に記載されている扶養親族の数などを基 として別表第2、第3により求めた所得税額及び復興特別所得税額 ⑵ 賞与 前月の給与等の支払の有無、給与所得者の扶養控除等申告書の提出の有無、その申告書に記載されている扶養親族の数などを 基として別表第4により求めた率を賞与の金額に乗じて計算した所得税額及び復興特別所得税額 また、この源泉徴収については、年末調整により源泉徴収税額と年税額とを比較し精算される。 7 確定申告との関係(3点) 居住者は、その年分の課税所得金額につき計算した所得税の額の合計額が配当控除額等を超えるときは、確定申告義務があるが その年中に支払を受けるべき給与等の金額が 2,000万円以下であるものは、その給与等の全部について所得税の徴収をされた又は されるべき場合において一定のときは、その年分の課税退職所得金額以外の課税所得金額に係る所得税については、確定申告を要 しない。 ※ 源泉徴収義務、年末調整の取扱いを解答していれば加点項目(各2点)とする。 ⑶
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