国際医療研究開発費:21 指3 「開発途上国における保健医療サービス強化のための学校保健普及についての研究」 班会議 議事録 2011 年 6 月 4-5 日 総合地球環境学研究所 6月 4日 (土) 国際医療研究開発費:学校保健研究会班会議 13:00-15:00 進行:溝上哲也 主任研究者: 最終年度の方向性と、来年度申請に向けて 研究の概要 途上国において地域保健サービスの強化に資する包括的な学校保健の導入を図 るため、アジアにおける先駆的事例を取り上げ、その効果を検証しつつ、学校保 健を推進する諸要因を国・県・地域レベルで分析する。その上で、様々な国・地 域に適用できる再現性の高い学校保健モデルを開発し、その導入を図るためのマ ニュアルを作成する。調査対象国における学校保健政策及び具体的戦略の策定に あたり提言するとともに、アフリカ地域への展開と国際的な枠組みへのフィード バックを行う。 最終年度の活動 ・各分担研究者: 研究データのとりまとめ →論文化 ・各活動事例の要点抽出 →スケールアップや、他国や他地域での展開に参考になる手順書 ・学校保健を推進するための環境整備(政策、人材、資金、地域組織化、国際連携、など) 成果物(→随時、主任研究者にお送りください) ・論文(別刷) 、本、学会発表、新聞報道(コピー) ・その他の有用な資料: アセスメントシート(手順書付き)、調査票、調査報告書 次年度以降の研究費申請 ・研究テーマ、研究組織、研究費種別(国際、厚労科研、文部科学、その他) ・国内の学校保健との連携(例:食育、被災地における小中学校の支援) 分担研究者: 最終年度の方向性と、来年度申請に向けて 研究内容: 1. 国レベルの施策に関する研究(神馬) ラオスでの政策への助言により、学校保健活動の対象範囲の拡大が政策に反映された。 タイにおける学校保健政策の実施プロセスの成功要因を特定するためデータ収集を行った。 メコン圏及びネパールにおける青少年の喫煙・飲酒の効果的な予防教育の実施及び政策策 定に貢献するエビデンスを提示した。 Q&A 小林博:MOE と MOH の協力関係は、タイは他の国と比べてどのような特徴があるのか? 神馬:ラオスに関しては、2005 年に MOE と MOH の両者がコラボレーションの合意ドキュメン トにサインをした。そのきっかけが、ACIPAC のトレーニングであった。タイに MOE と MOH の役人を一ヶ月呼んで、トレーニングして信頼関係を築いてもらった。そうしたインフォ ーマルな関係が、実際のオフィシャルな関係作りの構築にも貢献したのではないか。 門司:協定を結んだ後、現在の状況は? 神馬:最初は MOH がリーダーシップをとっていた。今は、モデルレベルでは MOH だが、それ を国レベルに広げていくのは MOE であり、MOE の方がリーダーシップが強くなっている。 MOE のやる気は、今も続いている。 2. 県レベルにおける学校保健施策に関する研究(門司) 学校保健と地域保健・母子保健・環境保健とを融合させた包括的な教育体制づくり(エコ ヘルス教育)を進めており、そのモデルをラオスで構築し、実証的な研究を進めている。 カリキュラムの開発・評価に関する調査や伝統民謡を活用した教材の開発を行った。 Q&A 神馬:ラオスの public health forum は、まだ、インターナショナルスタンダードになってい ない。内容はスタンダードだが、形式がまだ。そのあたりの準備は改善可能だと思うので、 例えば、abstract の 250word 超えは、250 以内に統一するなど。タイからくる発表者のよ いプレゼンが続いていて、この状態が続くと、タイからのプレゼンターが来なくなってし まう危険性もあり、今、改善のしどきか。 Human security のプロジェクトがうごいていて、世界的ムーブメントにしようとしている。 たとえば、フレームワークを作って、political influence を持たせようとして、また、 2012 年の 2,3 月までに提言書を作ろうとしている。Human security のケーススタディを 行おうとしているが、方向性がなかなかうまく作れない。国レベルの index は世銀が作っ ているが、human security を action に結び付けようとしたときに、県レベルではないだ ろうか。地球研の研究が、human security を評価していくうえでの助言がないか。 門司:human security は、かなり緊急援助的に出てきたのが最初。国際社会としてのサポート。 長期的支援としては、彼らが暮らすべき生活をそれを支える環境があるというところまで、 みていきたい。地球権としては、環境保全までも含めた human security を考えたい。そ の測り方に関しては、まだ不安定。焼畑などのマイナーな人の評価は考えていたが、国家 レベルにまでは、まだ考えられていない。 3. 学校保健が困難な国・地域における導入の試み(アフリカへの適用を含む) (小林潤・溝上) マラリア対策においてメコン圏での学校保健によるアプローチをアフリカ(ガーナ)で適 用し、その有効性を確認した(論文発表)。 タイ国境の移民自治学校において包括的学校保健の自己評価と表彰システムに基づく学校 保健活動を支援展開した。 (学会発表, 論文投稿済み) 。現在、ニジェールで同評価法の導 入を進めている。さらに移民自治学校では学校保健においてアジア地区で重要となってい くと考えられ、メンタルヘルスに関しての健康調査を実施した見地を得ている。 (論文投稿 準備済み) スリランカ西部州プロジェクトにおいては貧困地区や少数民族を対象にしてパイロット的 に介入を行い、他の地区と同様に学校保健活動を活性化しうることを確認した。 4. 先駆的な学校保健モデルの効果についての評価(小林博、溝上) スリランカ南部州の4つのモデル校で、 「子どもから親へ」の情報伝達を基軸にした生活習 慣病予防のための学校保健の地域への波及効果を量的・質的に評価するため、フォーカス グループディスカッション及び子ども自らが参加した地域住民の調査を完了した。 スリランカ西部州において、子ども・教師・親の健康及び幸福度の向上をめざした学校区 を対象にした学校保健モデルを開発し、その評価のための介入研究を実施している。ベー スライン調査データをまとめるとともに、対象校での支援的介入を継続している。 Q&A 大村:健康教育をしていくうえで、子供たちの健康の改善にインパクトがあったかどうか。 それが、登校率の上昇につながっていったか?健康改善という指標ははかったが? 子供から親への影響力は? 小林博:アンケート調査は行ったが、データとしては出ていない。朝礼で倒れる子供の原因は、 朝の欠食であった。朝食摂取を促したら、朝礼で倒れる子供は減った、ということはいえ る。いい親子関係がスリランカにあるからうまくできたのであって、同じことが日本でで きるとは限らない。親子の絆ができているからこそ、今回の成功事例があったと思う。 神馬:タイでは、学校給食の実施で、子供が増えた。結果、インフラが整っていない学校なので、 困ってしまった。何かが良くなった時に、それに対応するほかのシステムが同じスピード でついていけなくて、かえって、いろいろな問題が起こるのでは、という危惧がある。そ うしたときに、エコヘルスの方たちはどういう解決ができるのか 門司:マラリアで死ななくなったことで、ほかの問題がでてくる。じゃぁ、子供たちが死んでい っていいのかというのとは違う。いいことが起こったときに、副作用的におこる問題は、 それに対応していくしかないだろう。乳幼児死亡率がさがったら、family planning を併 用させてきた歴史があるように、人智を使ってやっていくしかないのでないかと思う。 5. 情報発信とネットワークづくり、及び新たな潮流づくり(研究班全員) 研究活動を学校保健研究班のホームページ(http://www.schoolhealth.jp/index.html)を 開設した。また、自由集会や市民公開講座で情報発信した。 国際保健医療学会の学校保健のセッションにて、分担研究者・協力研究者が座長や演者を 務めた。また、学校保健に関連している研究者、JICA、NGO に班会議を案内し、学校保健関 係者のネットワークづくりを進めた。 研究班のメンバーが中心となって「国際学校保健研究会」を設立した。 学校保健の世界的機関である Partnership for Child Development (PCD)の年次会議に参加 し、東南アジア・メコン圏における学校保健政策決定者を招いた国際会議を主催し、本研 究班活動から得られた成果の一部を報告した。 コメント 神馬:論文を出す必要性がある。欧米の学校保健研究に入り込めていない問題がある。PCD との 連携もよいが、ワークショップタイプなので、アカデミックグループとの連携がもっと必 要であろう。IUHPE の学校保健会議が 11 月にあるので、そこでも関係つくりができるとよ い。また、意識的な論文の環境つくりがもっと必要かもしれない。さらに、最近のトレン ドとして、リスク要因よりもプロテクティブ要因への関心が高まっている。そのためのツ ールとして sense of coherence, resilience などの言葉が増えてきている。そのツールを 考える上で、若い人の力はパワーになるし、それは途上国の強み。学校保健はポテンシャ ルが高いと思うので、それを強みにしてやっていけたらよい。最近は科学論文とリンクさ せて映像を流していくというトレンドがある。そう考えると、学校保健は映像を非常に見 せやすい分野であるので、現場でそうしたデータを集めていくとよいだろう。 6 月 5 日 (日) 関連研究班打ち合わせ 9:00-11:50 9:00-9:50 進行:溝上哲也 1)バングラ大村班打ち合わせ (大村、他) 10:00-10:50 2)学校保健政策研究打ち合わせ (斉藤、他) 11:00-11:50 3)ニジェール学校保健研究打ち合わせ (竹内、他) 参加者 25 名 溝上哲也 :国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部 部長 小林博 :公益財団法人札幌がんセミナー 理事長 小林潤 :国立国際医療センター 国際医療協力部 厚生労働技官 門司和彦 :総合地球環境学研究所 研究部 教授 神馬征峰 :東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学教室 教授 朝倉隆司 :東京学芸大学 教育学部 教授 渡辺久実 :琉球大学分子生命科学研究センター 教授 大村真樹子 :明治学院大学 経済学部 准教授 湯浅資之 :順天堂大学大学院医学研究科 准教授 山本加奈子 友川幸 :広島県立看護大学 助教 :信州大学 教育学部 助教 荒木麻由 :横浜薬科大学 助教 野中大輔 :琉球大学大学院 熱帯医学研究科 助教 サトウ恵 日浦瑞枝 :新潟大学 医学部保健学科 基礎生体情報学 助教 :熊本大学大学院保健学教育部 地域看護学 助教 竹内理恵 秋山剛 :琉球大学熱帯生物圏研究センター :琉球大学熱帯生物圏研究センター Siyan Yi 西本太 :国立国際医療研究センター 国際保健医療研究部 :総合地球環境学研究所 研究部 蔡国喜 福士由 紀 :総合地球環境学研究所 研究部 : 総合地球環境学研究所 研究部 蒋宏偉 斎藤順子 : 総合地球環境学研究所 研究部 :東京大学大学院 医学系研究科 国際地域保健学教室 橋場文香 土屋良美 :長崎大学大学院 国際健康開発研究科 修士課程 :長崎大学大学院 国際健康開発研究科 修士課程 以上
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