2015/11/6 鹿野研究会聴講会 2 週目 第 1 班、第4班 2015/11/6 鹿野研究会聴講会 2 週目 第 1 班、第4班 「不動産譲渡担保」 額として支払っているから、2004 年 5 月 11 日には 4400 万円を提供すれば『解除』は可能なはず である。ただ、当社も現在資金に余裕がないから、今回は利息相当額の支払を免除してもう一度 ①1998 年5月 11 日、A 株式会社は、弁済期を 2000 年5月 11 日、利率年 20%の利息を元利一 期間を延長していただけるなら、2 年後の解除権行使金を 5600 万円とすることに同意する」と提案 括返済するとの約定で、Y 株式会社から 4000 万円を借り受けた。同日、A と A の親会社である X した。このような提案がなされた背景には、甲の近隣地域の都市再開発計画が発表され、低迷し 株式会社および Y の三者間で、「1,X が所有し、倉庫と駐車場として使用している本件土地とその ていた不動産価格が再度急上昇する兆しが見え始めたという事情があった。 土地上の建物(以下、この不動産を合わせて甲という。当時の時価は 8000 万円前後)を 5600 万 ④2006 年 5 月 6 日、Xは、2004 年 4 月の上記提案に対してYの財務部長Bから口頭で同意を 円で Y に売却する。2,X の Y に対する代金債権と、Y の A に対する元利金債権は、三者間で2年 得ていたとして、5600 万円の現金を提供して、甲の所有権の返還と登記名義の回復を求めたが、 後に相殺することを予約し、この相殺予約完結権は Y が有する。3,X は、2000 年5月 11 日まで Yは、Bがそのような同意をした事実はないと争い、この申出を拒んだ。その直後の 5 月 8 日、Y に、5600 万円(解除権行使金)を支払えば、本売買契約を解除して、Y から甲の所有権を回復す は、AやXに通知をすることなく、甲をZ株式会社に 6000 万円で売却し、即日、Zへの所有権移転 ることができる」、と合意した。翌日、X から Y へ「平成 10 年 5 月 11 日売買」を原因とする甲の所 登記がおこなわれた。Yの代表取締役Cは、Zの取締役を兼ねているほか、CとZの代表取締役D 有権移転登記がおこなわれた。X は Y から無償使用の許諾を受けて、従来通り倉庫や駐車場とし は夫婦で、Zは実質的にはCが支配している会社である。 ⑤ZがXに対して甲の明渡しを求めて訴えを起こした。 て甲の使用を続けた。 ②2000 年 3 月末ごろ、Aの経営は危機状況に陥った。以下では、この時点で清算が問題になる ⑥現時点は、2006 年 6 月 30 日で、2006 年 5~6 月時点の甲の価格は約 8000 万円である。 場合と清算が繰り延べられた場合に、事例が分岐する。すなわち、後記のQ(1)は(1)についての 問題であり、Q(2)は、(1)の事実がなく(2)の事実を前提にした問題である。 ~関係図(共通)~ X 株式会社 (事例1)Aの主要な財産に差し押さえがなされてAは事実上倒産した。また、甲の時価は 5600 (A の親会社) 万円前後で激しく動いていた。そこで、2000 年 4 月 4 日、XとYは、手間と費用のかかる鑑定をおこ なわずに清算することにした。すなわち、「1. 5 月 11 日の時点で、『解除権行使期間』を終了させ て、Yの所有権取得を確定させる。 2. 甲の価格が『解除権行使金額』以上であっても、Xは、Y 甲 に対して、清算金の支払を免除する。 3. 甲の価格が『解除行使金額』以下であっても、YはA およびXとの間に債権債務関係が残らないことを確認する」との合意がなされた。しかし、この合 意が実行される前に、Xについて破産申立てがなされ、2000 年 5 月 1 日、Xに破産宣告がなされ、 X’が破産管財人となった。この問題については、現在の時点は、2000 年 6 月 30 日とする。 駐車場、倉庫 (事例2)Aは倒産には至らなかったが、Yからの借入金を返済するだけの余裕はなかった。一 方、Yも、当時、甲の価格が 400 万円程度に下落しては、いたので、この時点での清算を希望しな A 株式会社 Y 株式会社 かった。2000 年 5 月 2 日、Yは、Xに対して、「1600 万円が支払われるなら、代金債権の弁済期と Xの約定解除権の存続期間 2 年間延長し、三者間相殺の予約完結時期も 2 年後とする。解除権 行使金は、従前同様、5600 万円とする」と提案し、Xの同意を得て、Xから 1600 万円の支払を受け た。2002 年 4 月 30 日にも、同様のYの提案にXが同意し、XからYに 1600 万円の支払がおこなわ れ、期間は、2004 年5月 11 日まで 2 年間再延長された。 ③2004 年 4 月 5 日、Xが、Yに対して、「本件特約の『解除権行使金』は実質的にはAの借入金 とその利益の合計額である。利息制限法により本件で許される利息の上限は年額 600 万円、この 6 年間の累積額で 3600 万円である。したがって、XはAに代わって、すでに 3200 万円を利息相当 1 2 2015/11/6 鹿野研究会聴講会 2 週目 第 1 班、第4班 2015/11/6 鹿野研究会聴講会 2 週目 第 1 班、第4班 ~事案の概要~ ~論点~ 1998・5・11 A・Y間、弁済期 2000・5・11、利息年 20%、元利一括返済との約定で、4000 万円の消費貸借契約締結。 1998・5・12 (共通) ① XY 間の契約が買戻し特約付き売買であるのか、それとも譲渡担保契約であるのか。 る代金債権と、YのAに対する元利金債権は、三者間 2 年後に相殺すると予約し、 (1) 相殺完結権はYが有する。③Ⅹは、2000・5・11 までに、5600 万円(解除権行使 ①破産決定後に受戻権を行使できるか 金)を支払えば、本件売買契約を解除して、Yから甲の所有権を回復することが (所有権的構成か担保権的構成かにふれつつ) できる。」と合意。 ⅩからYへ売買を原因とする甲の所有権移転登記。YからⅩへ無償使用の許 (2) 諾。従来通り倉庫・駐車場として使用。 ①弁済期について 「①Ⅹ所有の本件土地・建物(甲)を 5600 万円でYに売却する。②ⅩのYに対す →a)2004 年 5 月 11 日 b)2006 年 5 月 11 日 2000・3 月末 Aの経営危機。 事例(1) 2000・4・4 「①2000・5・11 の時点で、『解除権行使期間』を終了させて、Yの所有権取得 算金を免除する。③甲の価格が『解除権行使金額』以下であっても、YはAお a)弁済期後の場合 よびⅩとの間に債権債務関係が残らないことを確認する。」との合意。 (・弁済期到来時に即取得するのか?通知まで必要か?) を確定。②甲の価格が『解除権行使金額』以上であっても、ⅩはYに対し、精 2000・5・1 Ⅹに破産宣告。Ⅹ′が破産管財人。 ②Y はいつ完全な所有権を取得するのか(Y に処分権限があるのか) b)弁済期前の場合 (・所有権的構成、担保権的構成、設定者留保権構成) 2000・6・30 現在。 事例(2) 2000・5・2 Ⅹが 1600 万円支払って約定解除権の存続期間を 2 年間延長。 ③X は登記なくして(設定者留保権を)Z に対抗できるか 2002・4・30 同じく、Ⅹが 1600 万円支払って期間は 2004・5・11 まで延長。 (Z は背信的悪意者か?) 2004・4・5 Xが、Yに対して、「本件特約の『解除権行使金』は実質的にはAの借入金とそ の利息の合計額である。 利息制限法により本件で許される利息の上限は 600 万円、 ④清算義務があるか この 6 年間の累積額で 3600 万円である。したがって、Xは、Aに代わって、す でに 3200 万円を利息相当額として支払っているから、 2004 年 5 月 11 日には 4400 ⑤留置権の成否 万円を提供すれば『解除』は可能なはずである。ただ、当社も現金に余裕がない (X は清算金が支払われるまで明渡を拒める から、今回は利息相当額の支払を免除してもう一度期間を延長して頂けるなら、 2 年後の解除権行使金を 5600 万円とすることに同意する。」との提案をする。 2006・5・6 Ⅹは、上記提案にYの財務部長Bが同意したとして、5600 万円の現金を提供 して、甲の所有権の返還と登記名義の回復を求めた。Yは、同意した事実なしと して争った。 2006・5・8 Yは、Z社に 6000 万円で売却。即日、Zへの所有権移転登記。 *Yの代表取締役Cは、Zの取締役を兼務。CとZの代表取締役Dは夫婦、Zは 実質的にはCが支配している会社。2006・6・30 現在。甲の価格は約 8000 万円。 3 4 2015/11/6 鹿野研究会聴講会 2 週目 第 1 班、第4班 ~参照条文~ 民法 (抵当権の効力の及ぶ範囲) 第三百七十条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当 不動産」という。)に付加して一体となっているもの物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めが ある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合 は、この限りでない。 (物上保証人の求償権) 第三百五十一条 他人の債務を担保するため質権を設定した者は、その債務を弁済し、又は質 権の実行によって質物の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して 求償権を有する。 (委託を受けた保証人の事前の求償権) 第四百六十条 保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げると きは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。 一 主たる債務者が破産手続き開始の決定を受け、かつ、債権者が破産財団の配当に加入しな いとき。 二 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、 保証人に対抗することはできない。 三 債務の弁済期が不確定で、かつ、その最長期をも確定することができない場合において、保 証契約のあと十年を経過したとき。 (不動産に関する物権の変動の対抗要件) 第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する 法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 (虚偽表示) 第九十四条① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。 第九十四条② 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができな い。 (留置権の内容) 第二百九十五条① 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債 権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、 この限りでない。 第二百九十五条② 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。 5
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