研究ノート 各種木ねじによるスギ厚板の1面せん断性能

研究ノート
研
ト
研究ノート
各種木ね
ねじによる
るスギ厚板の1面せん
ん断性能
各種木ねじによるスギ厚板の1面せん断性能
木材利用課 中田 欣作
木
木材利用課
課 中田欣作
作
1. はじめに
に
木造住宅の
の中で柱や梁
梁等の構造材に
に板等の造作
作材
を打ち付ける
を
るためにはくぎが古くから用いられて
てお
り、現在でも
り
も合板等の面
面材や製材品の
の接合にはく
くぎ
が一般的に用
が
用いられてい
います。近年で
では、施工性
性が
良く、くぎよ
良
よりも引き抜
抜き抵抗が高い
い木ねじが注
注目
され、住宅内
さ
内での木ねじ
じは、建具の留
留め付けなど
どの
造作的な用途
造
途に加えて、各種ボードや
や接合金物の
の留
め付けなどの
め
の構造的な用途が拡大して
ています。こ
これ
らの用途には
ら
は多くの種類
類の木ねじが使
使われており
り、
図1
厚板耐力
力床の試験体
体(幅 1820×
×長さ 2730mmm)
用途に合った
用
たものを選択
択することが重
重要となりま
ます。
図1に示す
すような厚板
板耐力床や厚板
板耐力壁では
は、
スギ厚板と梁
ス
梁材あるいは
はスギ厚板どうしを木ねじ
じで
留め付ける必
留
必要があり、高いせん断耐
耐力が要求さ
され
ます。そこで
ま
で、各種の木
木ねじを用いて
て厚板の1面
面せ
ん断試験を行
ん
行い、せん断
断性能の向上の
の可能性につ
つい
て検討しまし
て
した。
2.試験方法
2
法
厚さ 40mm
m のスギ厚板、幅 100×厚さ 100m
mm
のスギ正角と
の
と木ねじ 4 本を用いて、図
本
図2に示すよ
よう
に繊維方向お
に
および繊維直
直交方向で木ね
ねじの1面せ
せん
断試験を行い
断
いました。荷重速度 2mm
m/min とし、 精
度 1/200mm の変位計 2 個を用いて厚
厚板と正角あ
ある
いは厚板どう
い
うしの相対変位
位を測定しま
ました。
表 1 に示
示すように、 厚板床用と して長さ 70
0~
90mm
9
の木ね
ねじ 11 種類および鉄丸く
くぎ 2 種類、 厚
板壁用として
板
て長さ 45~5
57mm の木ね
ねじ 6 種類お
およ
び鉄丸くぎ
び
1 種類を用いました。
繊維直交方
方向加力では
は、後述するよ
ように厚板床
床お
表1 木ね
ねじの種類
略号 長さ 直
直径 外観(縮尺 1/2.5)
(mm) ((mm)
パネ
ネル用木ねじ a) P 90 66.0
パネ
ネル用木ねじ a) J 90 55.0
W 90 55.0
床用
用木ねじ b)
コー
ーススレッド c) R90 90 44.5
コー
ーススレッド c) F 90 44.5
H 90 44.5
床用
用木ねじ b)
N90 90 33.75
鉄丸
丸くぎ
75 66.0
コン
ンクリートビス c) C
B75 75 44.5
万能
能ビス c)
N75 75 33.4
鉄丸
丸くぎ
L 70 55.5
床用
用木ねじ b)
a)
D
床用
用木ねじ
70 55.5
A 70 55.0
ALCビス c)
コー
ーススレッド d) M 57 33.8
T 55 44.2
耐力
力壁用ねじ c)
c) R51
51 33.8
コー
ーススレッド
B50 50 44.2
万能
能ビス c)
細め
めスリムビス c) S 50 33.3
N50 50 22.75
鉄丸
丸くぎ
K 45 55.5
金物
物用ビス e)
a)EJ 社、b)W 社、c)KI 社
社、d)KM 社、e)
)KN 社
繊維
維方向加力
厚板
厚板床
床用試験体
板壁用試験体
体
名称
繊維直交方向
向加力
厚板壁用試
厚板床用試験
験体
試験体
図2 木ねじの1面
木
面せん断試験の方法、○:木ねじ
― 2 ―
長さ 70~75mm
F
R90
10
8
6
N90
H
4
荷重 (kN)
W
12
14
J
C
12
L
10
D
B75
A
8
6
荷重 (kN)
P
14
荷重 (kN)
長さ 45~57mm
16
N75
4
16
14
14
12
12
10
8
4
M
B50
R51
N50
2
2
0
0
0
5 10 15 20 25 30
変位 (mm)
0
5 10 15 20 25 30
K
6
2
0
性能の良い木ねじ
16
荷重 (kN)
長さ 90mm
16
変位 (mm)
0
T
P直交
P
10
8
T直交
6
T
4
S
2
0
5 10 15 20 25 30
変位 (mm)
0
5 10 15 20 25 30
変位 (mm)
図3 1面せん断試験の荷重と変位との関係、略号:表 1 参照
よび厚板壁用の中で最も性能の良かった木ねじ P お
約 1/10rad と考えられ、厚板の幅が 105~150mm
よび T を用いました。木ねじ T は厚板壁に用いる
の場合には厚板相互の変形は 10.5~15mm となり
ための特注品です。
ます。木ねじ P、J および C の最大耐力時の変位は
3.試験結果
15.4、26.7 および 21.6mm であり、木ねじ P は厚
図3に示すように、1面せん断試験では、変位
板床において効果的に耐力を発揮できると言えます。
30mm まで加力を行いましたが、厚板床用の木ねじ
木ねじ J および C では破断が生じますが、木ねじ P
P、W、F、B75、L および D と鉄丸くぎ N90 およ
は破断が生じません。以上より、木ねじ P は厚板床
び N75、厚板壁用の木ねじ T および R51 と鉄丸く
に適していると考えられ、一般的な鉄丸くぎ N75
ぎ N50 では木ねじの破断は認められませんでした。
と比較すると、最大耐力は 2.3 倍、変位 1mm 時の
一方、厚板床用の木ねじ J、R90、H、C および A、
耐力は 1.8 倍となります。
厚板壁用の木ねじ M、B50、S および K は、胴部と
厚板壁用の木ねじの中では、木ねじ M、T および
ねじ部の境界で木ねじの破断が生じました。木ねじ
K は、最大耐力および変位 1mm 時の耐力が高く性
R90 および H は、頭部形状がトランペット頭であ
能が優れていました。木ねじ M、T および K の最
り、木ねじ M および B50 は、木ねじ単体の曲げ試
大耐力時の変位は、いずれも約 10mm でした。木
験における最大曲げ角度が小さく、頭部形状や靭性
ねじ M および K では破断が生じますが、木ねじ T
が木ねじの破断に影響を与えたと考えられます。
では破断が生じません。以上より、木ねじ T は厚板
図4に1面せん断試験の結果を示します。最大耐
壁に適していると考えられ、一般的な鉄丸くぎ N50
力および荷重初期の性能を示す変位 1mm 時の耐力
と比較すると、最大耐力は 2.0 倍、変位 1mm 時の
は、木ねじの直径と長さの積である木ねじ面積の増
耐力は 1.3 倍となります。
加とともに増加し、高い相関が得られました。
繊維直交方向での性能を繊維方向と比較すると、
厚板床用の木ねじの中では、木ねじ P、J および
木ねじ P では、最大耐力および変位 1mm 時の耐力
C は、最大耐力および変位 1mm 時の耐力が高く性
は、繊維方向のそれぞれ 1.2 および 1.2 倍、木ねじ
能が優れていました。厚板床における最大変形角は
T ではそれぞれ 1.0 および 0.9 倍となりました。
8
最大耐力 (kN)
14
12
10
8
M
B50
6
4
N50
2
0
0
J
W
F
B75 D H
N90 L R90
A
K
P
T
N75
R51
S
y = 0.0276x - 0.2824
R² = 0.9246
200
400
木ねじ面積 (mm2)
600
7
J
6
4
3
2
1
y = 0.0101x + 0.7222
R² = 0.6994
0
200
400
木ねじ面積 (mm2)
600
P
14
P
N90
L
W
K B75 D
A H
T
B50
N75 F R90
N50
M
R51
S
5
0
16
C
最大耐力 (kN)
C
変位1mm時の耐力 (kN)
16
W
12
10
L B75 D
H
R90 N90
M
N75
R51
S
J
F
A
K
T
B50
8
6
4
N50
2
0
C
0
5
y = 0.4507x + 2.2271
R² = 0.6932
10
15
20
25
最大耐力時の変位 (mm)
30
図4 繊維方向加力による1面せん断試験の結果
●:長さ 90mm、▲:長さ 70~75mm、■:長さ 45~57mm、●、▲、■:鉄丸くぎ、略号:表 1 参照
― 3 ―